小説『IS〜インフィニットストラトス―ディケイドの力を宿す者 ―』
作者:黒猫(にじファン)

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写真撮影のあと俺達、接客班は休憩を頂いた



いやー、感謝感謝



全員で行くのはなんか多いしってことで、一人十分くらいの持ち時間で、それぞれ順番に学園祭を見回ることになった



ちなみに順番としてはシャル、ラウラ、セシリア、箒の順







「じゃあ行こ士♪」



「はいよ〜」



移動中に



「ん」



手をだしてくるシャル



「ん?」



なんだ?



「ん!」



今度は強調して手を出してくるシャル



手を握ればいいのか?



「ほいよ」



その手を握る俺



「♪〜〜〜」



すると途端に上機嫌になった



「で、どこ行く〜?」



「あそこがいいな」



指を指した先に書いてあったのは



「料理部?」



「うん。日本の伝統料理を作ってるんだって。せっかくだから、作れるようになりたいなぁって」



「シャルは料理うまいしな〜……どんどんうまくなるよ」



「う、うん。じゃあ、また今度作ってあげるね///」



「ラッキ〜」



そんな会話をしながら、俺達は料理部が使っている調理室へと入った



「……ほぇ〜、こりゃすげーわ……」



簡潔に言うならお惣菜の販売なんだが、その数がまたすごい



ずらっと並べられた大皿には、肉じゃがにおでん、その他にも和え物、煮物に焼き物と豊富に取りそろえられている



「あ、もしかしてこれが肉じゃが?」



「そだよ〜。男が喜ぶ女の手料理No1が肉じゃがらしい」



「ふうん。どうして?」



「さあ?お袋の味ってやつが分かりやすいからとか?」



「もぉ〜、適当だな〜」



シャルがむくれていると、料理部部長らしい人が俺たちの前にやってきた



「おおっ、神谷くんだ!そして一度は男子だった噂のデュノアくん!」



「うっす」



「ど、どうも」



「どうしたのー?ふたりでデート?執事とメイドの秘密の逢い引き?っていってもミンチじゃないわよ?合挽だけに! なんっちゃってなんちゃって」



「うまい!料理だけに?」



「分かってるじゃない!」



「部長さんこそ!」



硬い握手を交わす俺達



同士だ!



「さあさあ、食べていってよ。同士に出会えた訳だしタダでいいわよ?その代わり、写真撮らせて〜。あとうちに投票してね?」



「ほ、本当ですか!投票もこのままいっちゃおうかな〜部長さんですもん!」



「嬉しいこと言ってくれるじゃない!」



「ち、ちゃんとお支払いします」



シャルがむすっとした表情で横から割り込んでくる



どうした?



「じゃあ、えっと、肉じゃががいただけますか?」



「はーい、どうぞ〜」



保温装置でできたて温度を維持しているから大皿から一杯盛って、シャルに手渡す料理部部長



ついでに俺も同じものを頼んで、早速食べてみる



「うめーーーーーー!」



「おいしいね、これ」



こういうのは苦手だから上手く表現できないけど、うまい!



「しかし、本当においしいですね。これ」



「これねー。圧力鍋を作ってるのよ。時間短縮だけじゃなくて、味付けも決まるからさぁ」



するとシャルが、料理部部長の言葉に耳を立てる



「圧力鍋……ほ、他にコツとかあるんですか?」



「ふっふっふー。これ以上は秘密よ。知りたければうちに入部してね!」



「料理部かぁ………。つ、士はさ、僕の料理がおいしいと嬉しい?」



「ん?それは嬉しいでしょ。まぁ、シャルはもともと上手いからな」



「そ、そう。そうなんだ。そっかぁ。………えへへ///」



どうしたんだろうか。シャルはにこにことしながら肉じゃがの残りを嬉しそうに頬張りだした



(シャルったら嬉しそうだね〜)



そんなこんなで、シャルとの休憩が終わった 









「よし!次は私だぞ!」



「おう、たしかラウラは茶道部に行きたかったっけ?ほら、行こうぜ」



そう言いラウラの手を持つ



「う、うむ///」









茶道部



「はーい。いらっしゃい。………おお!神谷くんだ!写真撮っていい?」



「ま、いいっすよ」



「茶道部は抹茶の体験教室をやってるのよ。こっちの茶室へどうぞ」



「へ〜、畳じゃん。いいね〜」



さっきの料理部もそうだったが、どの部屋も設備面で非常にしっかりしている



さすがは世界中から入学希望者が殺到するIS学園



「じゃあ、こちらに正座でどうぞ」



言われるまま、俺とラウラは靴を脱いで畳に上がる



「しかし、執事とメイドが畳で抹茶っていうのも、なかなかシュールな光景だな」



「ふ、ふん。格好を気にするなど、ずいぶんと女々しいぞ」



「ほぉ〜、言うじゃねぇかラウラさん。織斑先生に爆笑されているときに居づらそうだったのはどこの誰だったかな〜?」



ラウラのほっぺを突っつきながらそう言う



「う、うるさい!教官は特別だ!」



「うちはあんまり作法にうるさくないから、気軽に飲んでね」



「あ、は〜い」



あんまり騒がしくするのはよくないな



着物姿の部長さんはにっこり微笑むと、俺とラウラに茶菓子をよこす



それを受け取り一口食べると、甘い白あんが、さぁと舌の上に広がって溶けた



「うまい……」



「うぅ……」



ラウラは茶菓子に口をつけることなく、なにやら難しそうな顔をしている



「どないしはりました?」



おっと、変な口調に



「こ、これは、どうやって食べればいいのだ………」



ラウラの取った茶菓子は白あんで作ったウサギで、なかなか愛嬌のある顔立ちをしている



じぃっとラウラを見つめているかのようなそのウサギは『僕をお食べよ!』と言っているのか、はたまた『お、お情けを……』と言っているのか



「ラウラ」



「な、なんだ!?」



「食べないと抹茶が飲めないよ?」



「う、ううっ……!」



俺に促され、意を決したラウラはぱくんと一口でウサギを頬張る



「……んぐ。うむ、やはり和菓子はうまい」



さっきまでの葛藤が嘘のように満足そうな顔をしている



「どうぞ」



それから俺とラウラの前に抹茶が出される



「お点前いただきます」



一礼してから茶碗を取り、二度回してから口をつける



抹茶独特の苦味が口に広がり、口内に残った甘い茶菓子の味わいを流していく



すっとした喉ごしは心地よく、俺もラウラも飲んでから、一息ついた



「結構なお点前で」



これ言ってみたかったんだ〜



俺とラウラは再度一礼をする








「よかったらまた来てねー」



部長さんに見送られ、俺とラウラは茶室を出た



「結構良かったね〜」



「うむ。そうだな。やはり日本の文化は興味深い」



「興味深いっていえば、ラウラは和服とか着ないのか?」



「わ、和服か。そういえば着たことがないな……も、もしかして……み、見てみたいのか………?」



「すげー似合いそうだしな……うん、見たい」



「そ、そうか!」



珍しくラウラはぱぁっと表情を輝かせた



それから自分の反応に気がついたのか、はっとして俺に背中を向ける



「ま、まあ、機会があればな」



そんなやりとりで、ラウラの休憩時間が終わった









「そういえばセシリアってバイオリンが弾けるんだよね?」



「ええ。ピアノも多少は。そういえば士さんはどうなのですか?」






「ん?俺か。俺はドラムしかできないな……でもドラムには自信あるぜ」

(ちなみに、作者「僕」はマジでドラムには自信があります……まあ、ドラムしかできませんが)


「ドラム……」



「まあ、セシリアのピアノとかバイオリンよりかは粗雑な感じはするよな」



「そ、そんなことありませんわ!……ぜひ、一度見てみたいものですわ!」



「また今度な?とりあえずセシリアは何処に行きたい?」



セシリアが指を指した先には『吹奏楽部の楽器体験コーナー』と書かれた教室があった



「よし、行こうぜ」



そう言いながらセシリアの頭にポンっと手を置く



「セシリアが行きたいなら行かないとな」



「は、はい///」



セシリアは嬉しそうに俺の腕にしがみつくセシリア



実は彼女……この頃、調子があがらない



最近イギリスでISが一機奪われた



そのことを心配してか色々と悩みがあるような感じが



「で、では入りましょう!」



通りすがりの仮面ライダーにはこうやって元気付けることしか出来ないんだよ



扉を開けると、どうも閑古鳥が鳴いているのか部長だけが部屋の真ん中でぼーっと楽器の手入れをしていた



「あ、あの〜」



(話ずれー)



そんなことを考えていると、はっとこちらに気がついた吹奏楽部部長が顔尾を上げた



「おお!おお!やっと六人目のお客さんだ!さあさあ、こちらへ!って、神谷くんじゃん!写真撮っていい?」



「どぞどぞ」



「やたっ!」



ぴろりろりん♪と携帯がメロディを奏でる



とりあえずセシリアが咳払いをして切り出した



「んんっ!こちらでは、どの楽器を体験させてもらえますの?」



「んー。あるやつならどれでも!私のオススメはホルンよ。ホルンって形がすばらしいわよね。うにうにしてて」



「う、うにうに?」



「じゃあ神谷くん、早速どうぞ!」



そう言ってさっきまでチューニングしていたホルンにマウスピースを差して渡してくる



「じゃー、勢いよく吹いてみようー」



ええい、やけだ自棄!



ぶふぉ〜



「おおー、一発で音を出すなんて筋いいねー。神谷くん、入部しない?」



「いや、いいっす。セシリアはどう?」



「わ、わたくし!?」



「いや、やれそうな雰囲気だし」



「出来るのは弦楽器だけですわ。管楽器はやったことありませんもの」



「そうなの?なんかフルートとか似合いそうだけどな。深窓の令嬢って感じで」



「深窓の令嬢……」



なぜかぽつりとつぶやいて、その言葉を繰り返すセシリア



「ほい、やってみ?」



そう言って俺はホルンを手渡す



「え、あ、あの、これって、その……」



「ん?」



「……か、間接キス……」



「なんじゃい?」



「な、なんでもありません!なんでもありませんわ!」



なぜか焦ったように手をブンブンと振って、セシリアはホルンを見つめる



「で、では、いきます……!」



「あ、マウスピース交換するよ。はい、どうぞ」



「あっ……」



「うん?」



「…………」



マウスピースをひょいっと交換した部長を、ぎろりと睨むセシリア



「ささ、どうぞ?」



「結構ですっ」



そう言ってセシリアはホルンを部長に押しつける



「まったくもう、気が利かない……!」



なぜかご立腹のセシリアだった



「まあまあ、落ち着けよ。なっ、セシリア?」



こんな感じで三人目の休憩時間も終わる 










「私が最後とは……不覚だ!」



「まあまあ……折角だし行く?」



「どこにだ?私はどこでもいいが……」



そこで、ニヤッと笑い



「剣道部」





若干嫌がっている箒を引っ張り剣道部が出し物をしている教室に入る



「いらっしゃいませ」



「うわっと」



「おや。神谷くんに幽霊部員の篠ノ之くん」



「ぶ、部長ですか……それにしてもこの有様はいったい……」



「剣道体験なんてしたい女の子はいない。なぜなら……そんなことなら、最初ッから剣道やってるからねー!」



なんか、ふてくされてる?



まぁ、客足なさそうだし……



「まあ、うちはご覧の通り占いの館……早速占ってあげるからそこにお座り?」



どこの世界に剣道具をつけた占いの館があるのかは良く分からないがまぁ、そういうことらしいので2人で座る



「よしっ!2人の相性を占うわ〜」


「早速!?」



「お願いします!」



おお、どうした箒?



「えーと、それじゃあ2人とも右手を合わせて……向き合って?そうそう」



言われた通りにする



「じゃあ、このまま10秒維持してね?」



「これで何が分かるんですか?」



俺が問うと



「さあ?」



まさかの返答



「いや、ほらね?嫌いな相手だったら手を合わせて10秒とか嫌でしょ?というわけで、2人は嫌いになってませんね!終わり!」



……マジか……



「休憩時間も終わるし帰るか……」



「ああ……」



2人で教室出る



「また、来てねー」



誰が行くねん



その帰り道



「箒」



「なんだ?」



「その……なんだ……俺達の相性はきっといいからさ……あれはあんまり気にしなさんな……」



「っ!///」



おいおい、ただでさえ恥ずかしいんだから頬を染めるなよ



「はい!この話終わり!」



気恥ずかしくてすたすたと歩く



その背中を眺める大和撫子の表情は暖かい

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