プロローグ 悪夢
そこは……熱気があたりを支配していた。
燃え上がる街……。
それは街だけではない。
人も……動物も……全ての命も……例外なく燃やしていた。
大切な思い出も何もかも……。
紅蓮の業火で焼き尽くされていく……。
『そ……んな………。』
街の惨状を目の当たりにした1人の男は……。
ガクリとその場に膝をついた。
全ての民家は等しく炎に包まれており。
最早、手の施しようが無いのは明らかだった。
『き……さ……ま………キッサマァァ!!』
男は声を振り絞り叫んだ!
その炎の中心にいるある人物に向かって……。
その人物は……。
ゆっくりとした動作で…。
男の方を向く。
『なぜ……なぜなんだあああ!』
“ニヤリ………ッ”
男は間違いなく見た。
その男はフードを被っており、表情は見えないはずなのだが……。
紅蓮の業火の中で……。
燃え逝く街を嘲笑うように笑っていたのを……。
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それが……始まりだった。
やがて、運命は交差をしてゆくことになる。
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そこは……光がいくつもさしかかる森の奥
「ん………。」
その光は男の顔を照らし出した。
瞼が明るくなってゆくのがわかる。
「んん………。朝……か?」
ゆっくりと目を開けた。
そこはまるで光の世界。
その光は森の木々……葉で形が変わり、
ただの朝の光景がとても幻想的だった。
「……あの夢か……。久しく見ていなかったが……。」
男は口ずさむ。
覚醒したと同時に先ほどの業火……。
身を焼かれるような思い。
全てが夢だったと悟った。
そう……忘れられない遥か過去の………忌まわしき記憶。
「よっと……。」
男は立ち上がると背伸びをし、朝の一呼吸をした。
「さて……夢はもういいとして……さっさと食扶ちを探さないとな……。てきとーに狩でもするか。」
男はそう言うと歩き出した。
あてなんか無い。
ただ気のままに、この世界。
【|魔法世界(ムンドゥス・マギクス)】を旅していたのだ。