小説『ハイスクールD×D 黒と赤』
作者:shimo()

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ゲーム開始

 リアスたちがしばらく控え室で待っていると扉が開きそこからゲームの関係者らしい悪魔が来て

「リアス・グレモリー様。そろそろお時間ですので移動の方をお願いします」

 リアスはそういわれ頷き部屋を見渡し

「それじゃあ行くわよ」
「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」

 リアスたちは控え室をでて案内のもと移動を始めた。案内された場所は入場ゲートの前だった。

「それではアナウンスがあるまで待機をしていてください」

 案内した悪魔がお辞儀をしてどこかに行った。待っている中リアスが口をひらいた。

「みんな、これからは始まるのは実践ではなくレーティングゲームよ。けれど、実戦と同じくらいの重さと空気があるわ。観客が見ているけど臆しないように気をつけてちょうだいね」
『さあ、いよいよ世紀の一戦が始まります! 東口ゲートからはサイラオーグ・バアルチームの入場です!』
「「「「「「わあぁぁぁあああああぁぁぁぁっ!」」」」」」

 反対側にいるリアスたちまで会場の熱気が伝わるほどの歓声が会場に響いた。それを聞いたリアスたちは

「・・・緊張しますぅぅぅっ」
「・・・だいじょうぶ、みんな、かぼちゃと思えば平気です」

 緊張しているギャスパーに落ち着いている小猫が励ましていた。

「ゼノヴィアさん。イリナさんがグレモリー側の応援席で応援団長をしているって本当ですか?」
「ああ、アーシア。そのようだぞ。おっぱいドラゴン専用の応援席で応援のお姉さんをやるって言ってたぞ。本当はレオンを応援したいって言っていたが騒ぐのが好きなイリナだからなそっちにいったんだろう」

 などとあんまり緊張感のない会話をしていた。

『そして、いよいよ西口ゲートからはリアス・グレモリーチームの入場です!』
「「「「「おおおおおおぉぉぉぉおおおおぉぉぉっ!」」」」」

 また観客の歓声が会場に響いた。会場に行き前にリアスが

「ここまで私についてきてくれてありがとう。―――さあ、行きましょう、私のかわいい眷属たち。勝ちましょう!」
「「「「「「「「はいっ!」」」」」」」」

 レオンたちが返事をしてゲートをくぐった。

side レオン

 俺たちが入場ゲートから出ていくとそこには広大な楕円形の会場の上空に浮かぶ浮島があった。フィールドに浮いている岩のひとつにサイラオーグの眷属が乗っていた。

『さあ、グレモリーチームのみなさんもあの陣地に乗ってください』

 アナウンスの人がそう促した。岩に上るのは螺旋状になっている階段を上っていくようだ。階段を上りきるとそこには椅子が人数分置いてあり、謎の台が一つ置いてあり少し高いところに魔法陣が描かれた。反対側の方も同じような作りになっていた。
 俺は岩から下を見ると陸上競技用のトラックなどしかない。障害物もなく真っ向勝負しかできないフィールドになっていた。
 会場に設置された巨大モニターにイヤホンマイクを付けた男性の悪魔が映った。

『ごきげんようみなさん! 今夜の試合の実況は私、元七十二柱ガミジン家のナウド・ガミジンがお送りします』

 会場から歓声が上がった。
 すげぇ〜な。観客もそうだが実況役とかいるのか。

『そして今夜のゲームを取り仕切る審判役にはリュティガー・ローゼンクロイツッ!』

 宙に魔法陣が出現しそこから銀色の長髪をし正装の出で立ちのしたイケメンの男性が現れた。その男性が現れると観客の・・・特に女性の歓声が上がった。

「・・・リュティンガー・ローゼンクロイツ。元人間の転生悪魔にして、最上級悪魔、しかもランキング七位・・・」

 小猫が現れた男性についてつぶやいた。それを聞いたイッセーが驚き憧れを見るような目で男性を見ていた。

『そして、特別ゲスト! 解説として堕天使総督のアザゼルさまに起こしいただいています! どうも初めましてアザゼル総督』

 その瞬間モニターの画面いっぱいにアザゼル先生のニコニコしている顔が映った。俺たちは唖然としてそのモニターを見ていた。

『いや、これはどうも初めまして、アザゼルです。今夜はお願いします』

 いつもと違うアザゼル先生が挨拶をしていた。実況の人がそのままアザゼル先生の紹介に入った

『アザゼル総督はサーゼクス・ルシファー様を始め、各勢力の首領の方々と友好な関係をもち、神器研究の第一人者として業界内で有名ですが、今日の一戦、リアス・グレモリーチームのアドバイザーとしてどう見ますか?』
『そうですね。私としましては両チームともに力を出し切れば――――』

 などと営業スマイルをしながらアザゼル先生はしゃべっていた。俺は笑いを堪えるため下を向いて我慢していた。そのままアザゼル先生が話が終わり実況の人が

『さらに、もう一方呼んでおります! レーティングゲームのランキング第一位! 現王者! 皇帝! ディハウザー・べリアルさんですっ!』
「「「「「うおおおおおぉぉぉぉっ!」」」」」

 アザゼル先生の紹介された時よりも大きな歓声が上がった。モニターには端正な顔立ちに灰色の髪と瞳をした男性が映った。紹介された男性が

『ごきげんよう、みなさん。ディハウザー・べリアルです。今日はグレモリーとバアルの一戦の解説することになりました。どうぞ、よろしくお願いします』

 それから二人が見どころを紹介した後実況の人が

『さて、今回のフェニックスの涙ですが―――』

 そういうと全員がモニターの方に注目した。

『みなさんご存知の通り、最近『禍の団』のテロの影響でフェニックスの涙の需要と価格が上がっていまい用意するだけども至難の状況ですが』

 実況の人がそこまでいて言って指をモニターに指した。そこには高そうな箱の中に小瓶が二つ置いてあった。

『涙を製造しているフェニックス家の御厚意と、バアル、グレモリー、両陣営を支持しているたくさんの声が届きまして、両陣営に一つずつ支給されることになりました!』
「「ワアァ―――ッ!」」

 その知らせに会場にいた観客の声がわいた。観客は沸いたがイッセーたちが少し落ち込んだ。

「っていうことはあのサイラオーグ・バアルを二回倒さないといけないわけだね」

 木場が呟いた。
 まあそうだな・・・眷属の中で一番強いやつが使うだろうな。そして一番強いのは『王』であるサイラーグか。
 俺がそう考えていると実況の人が

『このゲームには特殊ルールがあります! その特殊ルールを説明する前にゲームの流れをご説明させていただきます。ゲームの内容はチーム全員がフィールドを駆け巡るのではなく試合形式になります。これは、今回のゲームを短期決戦を念頭に置いたものであり、観客の皆さんが盛り上がる為にこのような形式にしました。若手のゲームとはいえこの仕様はプロでも使用されています。』

 短期決戦か・・・まあそっちの方がやりやすいからいいけどな

『そして、特殊ルールを説明します。両陣営の「王」の肩は専用の設置台の方へお進みください』

 リアスが設置されている台に近くと、設置台から何かが機械仕掛けで現れた。その光景が前にある巨大モニターにも映し出された。そこにはサイコロが一つ映っているだけだった。

『そこにダイスがあります。それが特殊ルールの要! そう、今回のルールはレーティングゲームでもメジャーな競技のひとつ! 「ダイス・フィギア」です!』

 訊きなれない言葉に俺とイッセーが首をひねっていると

「ダイス・フィギア・・・か」

 木場が呟いていたのでイッセーが訊くと

「本格的なレーティングゲームにはいくつもの特殊ルールがあってね。今まで僕たちがやっていたゲームは比較的なプレーンゲームなんだ。それ以外にはフィールドを駆け回って複数のフラッグをとる『スクランブル・フラッグ』。そして今回みたいにダイスを使ったゲームを『ダイス・フィギア』っていうんだ」

 木場が簡単に説明してくれた。けっこう奥が深いなこのレーティングゲームは・・・。
実況の人が説明を続けた。

『ご存じない方のために説明させていただきます。使用されるダイスは通常の同様六面、一から六まで目があります。それを振る事で試合に出せる手持ちが決まります』

 ダイスで試合にでる選手が決まるのか・・勝敗は運だな。

『まず両陣営の「王」がダイスを振りその数の合計によって手持ちを出します。振り分けは駒の駒価値です。たとえば「兵士」が1、「騎士」と「僧侶」が3、「戦車」が5、「女王」は9となります。ただし「兵士」の駒を三つ消費して眷属になった場合はその駒価値は3となります。合計が7だったら、「騎士」を二人、「兵士」を一人出せます。このように合計になるまで選手を出せます。出せるのは合計の数までです。それ以上は出せませんので注意してください』
「イッセーは七つ消費したから駒価値は7か、ってことは俺は1ってことか!?」

 説明を聞いた俺が呟くとイッセーが

「レオンって絶対1じゃないよな? どうして『兵士』の駒一つで転生したんだ?」
「あれじゃね? その時は強くなかったからだろ?」
「でもその人の潜在能力が影響しているんじゃなかったっけ?」
「・・・どうしてだろうな」

 そんな話をしているとまだ説明されていた。

『しかしリアス・グレモリー選手のレオン選手しか1がいないのでダイスの合計が2以下の場合はやり直しとなります。「王」の場合の駒価値は試合前に審査委員会の皆様からの評価で決まります。それではさっそく発表しましょう』

 実況の人が叫ぶとモニターにリアスとサイラオーグの名前が悪魔文字で書かれ、すぐそばに数字が出された。

『サイラオーグ・バアル選手が12! リアス・グレモリー選手が8と表示されました! なんとサイラオーグ選手の数値が12。ということはマックスにならないと出れないということになります』

 おおッ! サイラオーグが12か・・・やっぱりそれだけ「王」としても優秀ってことか。

「・・・内容で巻き返すだけだわ」

 リアスがサイラオーグより評価が低かったからてっきり取り乱すと思ったが意外に冷静だった。

『それともう一つルールがあります。同じ選手が連続で出ることは禁止です。それは「王」も同じことですのでご注意を』

 なんだ連続で出れないのか・・・俺は1だから毎回出れると思ったのにな。

『それでは説明も終わりにしてゲームを始めたいと思います。両陣営、準備はよろしいですか?』

 実況の人が煽り、審判が大きく手を挙げた。

『それでは、サイラオーグ・バアルチームとリアス・グレモリーチームのレーティングゲームを開始いたします。ゲームスタート!』

 ゲーム開始の合図とともに観客の歓声が上がりゲームが始まった。

side out


『それでは、両『王』の選手は台の前へ』

 実況の人がそういうとリアスとサイラオーグが台の前に立った。

『第一試合を執り行います。出場選手をこれから決めます。両者共にダイスを振ってください』

 二人が台に置かれたダイスを手に取った。

『シュート!』

 審判の人の掛け声とともに二人がダイスを振った。ダイスは台の上で転がり、しばらくして止まった。巨大モニターに止まったダイスの映像が映し出され――実況の人が読み上げた。

『リアス・グレモリー選手が2! サイラオーグ・バアル選手が1! よってダイスの合計は3となります! 駒価値が3になるように選手を決めてください』

 続けて審判の人が

『作戦タイムは五分です。その間に出場選手を決めてください。なお「兵士」のプロモーションはフィールドに出てから可能になります。だたし、試合ごとにプロモーションが解かれますのでその都度、フィールドでプロモーションを行ってください』

 審判の人がそういうと両陣地に結界が張られた。

side レオン

 作戦タイムが始まると結界が張られた。

「防音対策。作戦が外に漏れないようにする為だね。さらに読唇術対策に顔に加工がされるんだ」

 木場が説明すると、俺は外にある巨大モニターを見てみると全員の顔にグレモリー家の紋章が加工されていた。
 俺たちは用意されている椅子に座った。その俺たちをリアスが見渡し言った。

「あちらはこちらが佑斗がでると思っているわね」
「何でですか?」

 イッセーが訊く。答えたのは木場だった。

「3が出た以上、こっちが出せるの選手は5名。『騎士』の僕とゼノヴィア。『僧侶』のギャスパーくんとアーシアさん。『兵士』のレオン君だよね。サポートタイプのギャスパーくんとアーシアさんは単独では戦えない。ゼノヴィアはパワータイプの『騎士』だよね。あちらの『騎士』と『僧侶』はテクニックタイプ――ハメ技を貰うリスクが高い」

 木場の言うことにゼノヴィアは頷き

「・・・うむ、無傷で勝利するには難しいが、テクニックタイプに送れはとらないぞ」
「なるほど。ゼノヴィアはわかったけど、レオンはどうしてだ?」

 イッセーはそう訊くと木場が俺を見ながら

「レオン君は・・・サイラオーグさんとしか戦いたくないって顔をしてるし」
「そ、そんなことないぞ。確かにサイラオーグと戦いたいが・・・その前に準備運動くらいなら・・・」

 俺は目を泳がせながら言った。そんな俺にみんなは呆れたような顔で見ていた。

「はぁ・・。レオンはいいとして。ゼノヴィアのエクス・デュランダルの能力を見せる確率が高いから出せないの。だからここは佑斗に任せるわ」
「読まれていても行かないとね。―――行くよ

 出る選手が決まり木場が魔法陣に移動してくるとイッセーが

「初戦から負けんなよ」
「当然勝つよ」

 木場が笑顔で返した。
 審判の人が

『時間になりましたので選ばれた選手の肩は魔法陣に移動してください。その魔法陣は移動式になっておりまして、そこか別空間に用意されたフィールドへ転送されます。試合はそのバトルフィールドで行われます。用意したフィールドは複数ありますがランダムで選ばれますのでどのフィールドになるかは移動したときにわかります。両陣営の結界は不可視結界となります選手がフィールドに出たときにその結界は解かれます』

 なるほど、相手の選手を見てから選手を変えるのを防ぐためにこの結界があるのか。
 俺がそう思っていると
 
「見ている人も出てくるまでどんな選手がわからないのも楽しませるためですね」

 ロスヴァイセさんがそういった。なるほどそういう楽しませ方もあるのかレーティングゲームもいろいろと考えているんだな。
 そう思っていると結界が濃くなって外が見えなくなっていく。

「では、行ってきます」

 イヤホンマイクを付けた木場がそういい魔法陣の上に立った。木場が立った瞬間に魔法陣が光だし木場が転移していった。

side out

 木場が転移した直後に上のモニターにいくつかの風景の映像が出た。一つは観客席の様子が映されている。一番大きく映されているのは広大な緑の平原だった。そこに木場が立っていて近くに青白い炎を全身から放つ馬を乗った甲冑騎士がいた。

『おおっと、第一試合の選手がバトルフィールドに出てきました! フィールドは見渡す限りの平原! 合計数字3によって選ばれたのは――――グレモリー眷属の神速の貴公子! 木場佑斗選手です! リアス姫のナイトが登場です』
「「「「キャァァァァァッ! 木場きゅぅぅぅぅんッ!」」」」

 実況が木場を紹介すると観客席の女性悪魔から黄色い歓声が上がった。

『対するバアル眷属は―――』

 実況が紹介しようとしたら甲冑騎士が兜のマスクをあげて顔を見せた。

「私は主君サイラオーグ・バアルさまに仕える『騎士』の一人、ベルーガ・フールカス!」

 そして高らかに名乗り出た。

「僕はリアス・グレモリーさまの『騎士』、木場佑斗です。どうぞよろしく」

 それに対し木場も応えた。フールカスは手元の円すい形のランスを天にかざした。

「・・・名高き聖魔剣の木場佑斗殿と剣を交える機会を主君にいただき、剣士冥利に尽きるばかり」
「こちらこそ貴殿と一戦を楽しみにしていました」

 木場が不敵に笑いフールカスに返した。

『アザゼル総督、あの青白い炎に包まれた馬のことですが』

 実況の人がアザゼルに話を振った。

『――「青ざめた馬」(ぺイル・ホース)、地獄の最下層ことコキュートスの深部に生息する高位の魔物ですな。名だたる悪魔や死神が跨るものとして語り継がれている。死と破滅を呼ぶ馬と言われています。あれを乗りこなすのは容易じゃない。気性が荒く、気に入らない者ならば主だろうが蹴り殺すといわれている』

 アザゼルがフールカスが乗っている馬について説明した。
 
「私の愛馬―――アルトブラウの足は神速。木場殿、いざ尋常に勝負!」

 アザゼルが説明している間にすでにフールカスは戦闘態勢に入っていた。
 審判が魔法陣を介してフィールドに現れ、二人の間に立った。

「第一試合、開始してください」

 その合図とともに二人は距離をとった。まず仕掛けてのはフールカスだった。

「私とアルトブラウの速度に貴殿に届くか勝負!」
ヒヒィィィンッ!

 フールカスが乗っている馬が鳴くと同時にフールカスがその場から消えた。

「―――速いッ!」

 木場がその速度に驚き声を出すがすぐに聖魔剣を構えた。そして気配を探るようにあたりを警戒していた。

ギィインッ! ギィンッ!

 鳴り響く金属音。神速で動くフールカスの剣を木場が剣で受け流している。木場が距離をとる為に後ろに下がり、フールカスの気配を探り、木場も神速で動き出した。

ギィインッ! ギィインッ! 

 両者の姿が見えずただ金属音があたりに響いた。

side レオン

 俺はモニターで木場の戦いを見ていた。木場がフールカスの攻撃を防いだ後木場が下がり木場も神速で動き出した。俺はそれを見て

「速ぇ〜な。あれが木場の本気のスピードか。初めて見たな」

 俺が呟くと横にいたイッセーが

「そうなのか? 俺はいつも木場と鍛錬しているから慣れているけどもう少し速い時があったぞ」
「マジか!? あれより少し速いのか。下手したら俺の本気より速いかも」

 イッセーと話していると

「レオン、イッセー。今は試合に集中しなさい」

 リアスに注意され

「すみません。部長」
「すみません」

 俺とイッセーが謝りモニターに目を向けた。複数のフールカスがいて、木場が不敵な笑みを浮かべていた

side out

「初手からあまり勢いよく手の内を見せるのはしたくなかったんだけどね・・・。どうやら、出し惜しみしていたら余計に体力を失いそうだ。ゼノヴィアのことを言えないな」

 そういうと木場は聖魔剣をしまい、手元に聖剣だけを持っていた。そして木場が堂々と宣言した。

「僕はあなたより強い。この勝負いずれ僕があなたを捕らえるだろう。けど、そうしていたら体力を消費してしまう。今後の戦い戦いに影響でないように短期決戦した方が効率がいい」
「自信満々のようですな。確かに貴殿の才能は私とアルトブラウを上回るでしょう。だが、ただではやられませんぞ! 後続のため、手足の一本でも斬り落とし、体力を奪う」

 木場の宣言を受けたフールカスがそう返した。

「そう、だからこそ、あなたが怖い。覚悟を決めた使い手ほど手強い人はいませんから。でも僕は―――もう一つの可能性を見せようと思います」

 木場がそういうと聖剣を構えて

「――禁手化」

 木場の聖魔剣とは違った雰囲気が溢れ出し、聖なるオーラが包み込んでいった。すると、地面から聖剣の刃がたくさん出現して、同時に甲冑の姿をした異形の存在が創られた。甲冑の異形たちは地面に生えた聖剣をとり、木場の周囲に集まっていく。その甲冑騎士の兜はドラゴンをモチーフにしたかのようだった。それを見ていたフールカスは驚愕に包まれた。

「・・・ッッ! バ、バカな!? 禁手化だと!? 貴殿の禁手化は『双覇の聖魔剣』(ソード・オブ・ビストイヤー)のはず! なぜ、違う禁手になれる!?」

 今までの木場の禁手は『双覇の聖魔剣』だったが、それは『魔剣創造』(ソード・バース)の禁手だ。木場には後天的に得たもう一つの能力がある。得心したようにフールカスが口から漏らした。

「・・・っ! まさか『聖剣創造』(ブレード・ブラックスミス)の禁手化か・・・ッ」

 その言葉に木場は頷いた。

「―――『聖覇の龍騎士団』(グローリィ・ドラグ・トルーパー)、『聖剣創造』の禁手にして亜種ですよ」

 そして木場は何かを思い出すように

「これに至る為に自前の聖剣で赤龍帝と戦ったけど・・・ふふ、肝が冷えたよ。死を覚悟したよ。なにせ、イッセー君は本気で殺しに来たしね。まあそのおかげでもう一つの禁手化になったんだけどね」

 モニターに映っているもう一つの映像ではアザゼルが面白そうに顎に手をやっていた。

『本来、「聖剣創造」の禁手は聖剣を携えた甲冑騎士を複数創りだす「聖輝の騎士団」(ブレード・ナイトマス)というものだが、木場選手の能力はそれを独自のアレンジで亜種として発現できたようだな。しかも龍の騎士団! かーっ! 木場、おまえな、イッセーの影響を受けすぎだぞ!』

 アザゼルが説明している間に木場は出現した騎士団を従えてフールカスの前に立ち

「フールカス殿! いざまいります!」

 木場が騎士団と共に駆け出した。

「くっ! まだ負けるわけにはいかん」

 フールカスもそれに対し馬を走らせて木場と騎士団に激突した。

ギィィィンッ!

 鳴り響く、一つの金属音。木場とフールカスは高速の一閃を交わした。騎士団とフールカスの幻影が消えていった。
 一拍あけ―――フールカスが光に包まれていく。甲冑が肩口から腹部にかけて砕けていて、傷口からは聖剣のダメージであろう煙が上がっていた。

「・・・見事だ」

 フールカスがそう言って光に包まれ消えていった。消えたと同時に審判が

『サイラオーグ・バアル選手の「騎士」一名、リタイヤ』

 それを聞いて観客の歓声が沸いた。一試合目はリアス・グレモリーチームが勝利した。

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