小説『ハイスクールD×D 黒と赤』
作者:shimo()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

ギャスパーの覚悟

 イッセーとレオンが陣地に戻るとリアスたちがが呆れたような目でイッセーを見ていた。

「酷い勝負だったよ」
「う、うるせぇ!」

 木場が苦笑しながら言うとイッセーが恥ずかしいのか軽く吠えて椅子に座った。次のダイスが降られると合計が8。

「8か。なら今度は私が出よう」

 ゼノヴィアがそういうとリアスもそれに頷き

「そうね。そろそろゼノヴィアに任せようかしら。後は・・・」

 リアスが周りを見ながら考えていると手を挙げた眷属がいた。それは・・・ギャスパーだった。

「・・・ぼ、僕が行きます。そろそろ中盤ですし・・・後半に強い佑斗先輩やロスヴァイセさんを残しておいた方がいいと思うので・・」

 全員がギャスパーの方を見て目を見開いていた。ギャスパーの性格上そんなことを言うと思わなかったので全員が驚いたためである。リアスがギャスパーの目を見ていてが、フッと笑い。

「そうね。じゃあ、ギャスパー。ゼノヴィアのサポートをお願いね」
「は、はい! 精一杯頑張ります!」

 同級生の小猫がやられたからなのかいつも以上に気合が入っていた。

「ギャスパー。頼りにしているぞ」
「は、はい、ゼノヴィア先輩」

 二人が魔法陣から転移していった。二人が転移した場所は足場が悪くゴツゴツした岩がたくさんある荒野だった。二人の前に相手が現れた。
 ひょろ長い体格の男性と、不気味なデザインの杖を持った美少年がいた。

『グレモリーチームは、伝説の聖剣デュランダルをもつ「騎士」ゼノヴィア選手。一部で人気の「僧侶」ギャスパー選手です!』
「「「うおおおっ! ギャーく〜〜〜ん」」」

 実況がギャスパーの紹介をすると観客から声援が上がった。なぜか男性(・・)の声援が。

『対するバアルチームは、なんと! 両者とも断絶した御家の末裔というから驚きです! 「戦車」のラードラ・ブネ選手、「僧侶」のミスティータ・サブノック選手。それぞれ、断絶した七十二柱のブネ家とサブノック家の末裔です』
『第四試合目、開始してください』

 審判が試合開始を宣言した。

side レオン

 試合が始まるとリアスがイヤホンマイクで指示をだした。

「ギャスパーはコウモリに変化して、ゼノヴィアはそのあとに攻撃」

 そういうとギャスパーはすぐに無数のコウモリになってフィールドに散らばった。ゼノヴィアはそれを見てからデュランダルの波動を相手に放った。相手の二人はそれを躱して『僧侶』の方が杖から複数の炎の魔力を放つが

『させません』
 
 ギャスパーの声が聞こえると同時にフィールドに飛んでいたコウモリの目が赤く輝くと飛んでいた炎の魔力が止まり、それをゼノヴィアが聖剣の波動で炎の魔力を打ち払った。

『ラードラ。サイラオーグさまからの指示が届いた。先に剣士からだ。僕は準備する』
『了解』

 サイラオーグから指示があったのか二人が行動を起こした。『僧侶』が後ろに下がり全身からオーラが溢れ出していた。その前に『戦車』の男性が立ち上着を破り捨てた。

ボコッ! ドンッ! 

 ひょろ長い男性の体がいきなり太くなっていく。それはどんどん大きくなり背中からは翼が生え、尻尾も生えてきた。口元も鋭い牙がむき出しになり、爪もとがって鋭利になっていく。『戦車』の男性がドラゴンになり

ギャオオオオオオオッッ!  

 咆哮を挙げてゼノヴィアの前に立ちはだかった。

「悪魔がドラゴンになるのか?」
「いや、彼はブネ家のものだからだよ。ブネ家はドラゴンをつかさどる一族なんだ。・・・でも変化できるものは一族でも一部の者だけ。まさか、彼がそうだなんて・・・ッ!」

 俺が問うとリアスが苦虫をかみつぶしたよう顔をして答えた。

『ギャスパー! あれを撃つ! 時間を稼いでくれ!』

 ゼノヴィアが何やら策があるようだ。ギャスパーがドラゴンの周りにまとわりついた。ドラゴンになった相手が周りに飛んでいるコウモリがうざいのか、口から炎のブレスを吐いた。だが、ギャスパーはブレスを器用に躱していた。ゼノヴィアがエクス・デュランダルを天に掲げてパワーをチャージしようとした瞬間、後方に下がっていた相手の『僧侶』が

『ここだ! 聖剣よ! その力を閉じよ!』

 その瞬間、杖が怪しく光、ゼノヴィアの全身を包み込んだ。光が治まるとゼノヴィアの体に不気味な模様が浮かんでいた。ゼノヴィアの手元が震え、ついにはデュランダルを下してしまった。

『・・・これはなんだ? デュランダルが反応しない』

 ゼノヴィアが不思議に思っていると相手の『僧侶』が息を切らせながら

『・・・僕は人間の血をひいていてね。―――神器「異能の棺」(トリック・バニッシュ)。最近になってようやく使えるようになった呪いの能力だ・・・』

 ゼノヴィアが封じたのを確認したドラゴンがゼノヴィアに接近して踏みつぶそうとした。ドラゴンがつく前にコウモリがゼノヴィアを包み込んだ。

ドゴオオオンッ! 

 誰もいなくなったところにドラゴンが踏みつけ攻撃した。どうやらギャスパーがゼノヴィアを岩陰に連れて行ったらしい。
 ギャスパーのやつしっかりとサポートをしているな。引きこもりからここまで成長したなんて感動するな。

『・・・すまない、ギャスパー。どうやら私は役立たずになりそうだ』

 ゼノヴィアがすまなさそうに言うが

『そ、そんなことないですよ! ゼノヴィア先輩の方が僕よりもずっと部長の役に立っていますよ!』

 ギャスパーは励まし、懐から小瓶やチョークやら何やら道具を出して

『ぼ、僕、この手の呪いの解く方法をいくつか知っています!』

 そういうとギャスパーは手のひらに魔法陣を出してゼノヴィアの体に当てた。どうやら呪いの解読をしているらしい。その間もドラゴンは手当たりしだい岩を壊している。見つかるのも時間の問題だな。

「ギャスパー、ゼノヴィアの呪いは解けそう?」

 リアスが訊く

『・・・わかりました。はい、僕流の解呪方法なら手元にある道具で解呪できます』

 そういうとギャスパーはゼノヴィアを中心にチョークで魔法陣を描いていく。魔法陣を描き終わると最後に小瓶を出した。その中身はイッセーの血が入っていてギャスパーの能力を底上げするものだった。

『今描いた魔法陣にイッセー先輩の血を流せば時間が掛かりますけど呪いは解除されます』

 それを聞いたゼノヴィアが慌てて

『ま、待て、ギャスパー。その血を使えば、お前は・・・』

 確かにそれを使えばギャスパーの力は底上げできるけど・・・
 ギャスパーは満面の笑みを浮かべて言った。

『ゼノヴィア先輩、僕、役目を見つけました』
『ギャスパー・・・?』

 訝しげに感じているゼノヴィア。魔法陣を完成させたギャスパーは岩陰から飛び出していった。

『ぼ、僕が時間を稼ぎます! 呪いが解けたらそのままデュランダルをチャージしてください!』

 血を飲まずにドラゴンに向かって特攻していく。

「無謀よ! ギャスパー! 隠れなさい!」

 それを見たリアスが引き留めるがギャスパーはそのまま突っ込んでいく

『ダメですぅっ! 僕が時間を稼がないと! 部長が勝つにはゼノヴィア先輩の力が必要なんですぅっ!』

 リアスはそれでも叫ぶ

「いいから、早く逃げてッ!」

 相手のドラゴンがギャスパーに気づき

『そこにいたか、ヴァンパイアめ。あの剣士を隠したか。だがここらへんにいるのだろう? 火炎をまき散らせば出てくるだろう』

 巨躯に迫られギャスパーは身震いしたが、逃げる素振りを見せず手を前に出して魔力を放つ体勢になった。

『暴れさせるわけにはいきません!』
『単独で臨む、か。その勇気、敬意を払うべきもの。たとえ、体が震えていようとも勇気が無ければドラゴンの前に立つことが出来んからな』

 そういうとドラゴンは、口から炎のブレスを吐いた。ギャスパーは障壁をはって防ぐが障壁が壊され火炎がギャスパーを襲う。

『うわぁぁあああぁぁっ!』

 火炎の一撃にギャスパーの体のあちこちにやけどの跡が出来ていた。

『・・・まだ。まだ大丈夫です!』
『ギャスパー! 無理はよせ!』

 ゼノヴィアが叫ぶ

『剣士の声? この辺にいるのか? 剣士め、どこだ?』

 ドラゴンが気づきあたりをキョロキョロと見渡した。

『あああああああああっ!』

ギャスパーが悪魔の羽を生やしてドラゴンの腕に食らいついた。

『―――ッ! 離せ! いつでも倒せるお前と違って、剣士は今のうちに倒さなければならん! あの呪いは有限だからな!』

 空いているドラゴンの手でギャスパーを捕まえ、ギュゥゥゥゥッっと握りつぶした。メキメキと嫌な音があたりに響いた。

『うわぁぁあああぁぁっ!』

 ギャスパーが激痛に絶叫した。あまりの光景にリアスは目をそむけたが俺は

「リアス。よく見ておけよ。あいつは誰のために戦っているんだ? リアスのためじゃないのか? そんなお前が目を背けてどうするんだ」
「・・・そうね。ギャスパーの勇士を見ないとね」

 そういいながらリアスはモニターを見るが、何度か目をそむけそうになりながらも見ていた。
ドラゴンが地に這いつくばったギャスパーに踏みつけ攻撃をしていた

『ギャスパァァアアアァァァッ!』

 踏みつけたときの地響きが伝わったのかゼノヴィアが叫んだ。ドラゴンがまだ動いているギャスパーに向かって火炎を吐こうとすると

『―――そうはさせん!』

 極大で異様なオーラを放ちながらゼノヴィアが岩陰から出てきた。その体からは呪いの模様が消えていた。
ゼノヴィアは倒れているギャスパーに近づいた。

『―――よくやったぞ、ギャスパー。男だな。すまない、私が不甲斐ないせいでお前にこんな・・・』
 
 ゼノヴィアが涙を流しながらギャスパーに謝った。

『呪いが解けたか!』

 相手の『僧侶』が杖を向けた。ドラゴンも両翼を広げ構えた。ゼノヴィアが静かに立ちあがりつぶやいた。

『・・・足りなかった』 

 カシャカシャとエクス・デュランダルの鞘がスライドしていき、攻撃フォルムに変わっていく。

『私には覚悟が足りなかったようだ。だから、あのような呪いを受けたんだ。その点ギャスパーは部長――主のために死ぬ覚悟をしていた。自分は情けない・・・ッ! 私は自分が情けない!』

 ゼノヴィアがそういうとそれを聞いていたみんなが改めて覚悟を持った表情をしていた。

『なら、どうすればいい? こいつの思いにどう応えればいい?』

 ゼノヴィアが呟きながら涙をぬぐった。

『そうだな。それしかないだろう。すまない、ギャスパー。――せめてお前のためにこいつらを完全に吹き飛ばしてやろう! それがお前の思いに応えだと思うからな!』
ゴオオオオオオオッ!

 天高く立ちのぼる、聖なる光の柱。それはエクス・デュランダルから発せられたオーラだった。

『そうはさせるかっ! 今度はこの命を代償にもう一度あの「騎士」の能力を封じる!』

 相手の『僧侶』が杖をかまえ、神器を発動させようとしたが、その体が停止した。ドラゴンは倒れているギャスパーに視線を送るとリタイヤの光に包まれ、意識を失いながらも双眸の目が赤く輝いていた。

『停止の邪眼かッ! バカなッ!』

 叫ぶドラゴンにゼノヴィアはエクス・デュランダルを大きく振り上げた。

『お前たちはギャスパーに負けたんだ―――ッ!』

 そうつぶやきながらゼノヴィアは振り上げたデュランダルをドラゴンと停止している『僧侶』に振り下ろした。

ザッパアアァァァンッ!

 大質量の聖なるオーラの波動が二人を飲み込んでいった。

『サイラオーグ・バアル選手の「戦車」一名、「僧侶」一名リタイヤ、リアス・グレモリー選手の「僧侶」一名リタイヤです』

 第四試合目の終了の宣言する審判のアナウンス。 

-85-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ハイスクールD×D 13【BD付限定版】 イッセーSOS (単行本)
新品 \0
中古 \9915
(参考価格:\4725)