小説『ハイスクールD×D 黒と赤』
作者:shimo()

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イッセーの怒り

side レオン

 陣地ではイッセーたちが悔しそうな表情をしていた。

『さあ戦いもゲームの中盤戦を超えてようとしているかもしれません! サイラオーグ・バアル選手の残り三名、リアス・グレモリー選手の残り八名となっています。数ではグレモリーチームの方が有利ですがバアルチームは数こそ少ないですが残りのメンバーは強力です! 巻き返しなるか!』

 実況が会場を盛り上げていた。
 両者の『王』がダイスを振っていくが残りが少ないバアルチームは『女王』と『王』そして駒価値が7の『兵士』しかいないのでダイスの合計が6以下の数字が出ると再度振り直しになる。何度か振り直したあとダイスの合計が9になった。

「さて、あちらが出せるのは『女王』と『兵士』ね。おそらく『兵士』は出ないわね」

 リアスが断言するとイッセーが

「どうしてそう言い切れるんですか?」
「サイラオーグは『兵士』をなるべく出したくないと思うの。温存していると思ったけどさすがに温存しすぎると思うの。第二試合の時に投入してもいいと思ったわ」

 リアスがそういうがイッセーはわからないような顔をしていた。

「なら出てくるのは『女王』ですか、部長」
「ええ、佑斗。サイラオーグの『女王』―――クイーシャ・アバドン。『番外の悪魔』(エクストラ・デーモン)アバドン家の者が来るしょうね」

 皆が考えていると

「―――私が行きますわ」

 朱乃がリアスに進言した。

「・・朱乃、いいの? 相手の『女王』のアバドンの者よ。記録映像を見たけど相当な手練れよ」

 記録映像ではその『女王』は、絶大な魔力とアバドン家の特色の『穴』(ホール)を使って他者を圧倒していた。

「俺が行きましょうか? 俺なら勝てる算段もありますし」

 イッセーがそういうと

「それは例のトリアイナを使った場合でしょう? あれは終盤までとっておいた方がいいですわ。それにまだ佑斗君やゼノヴィアちゃん、ロスヴァイセさん、部長にイッセー君、それにレオン君も控えているから無茶できるんです」

 ニコニコと笑顔で朱乃は答えた。

「・・・わかったわ。朱乃、頼んだわよ」
「ええ、リアス。勝ちましょう」

 そういうと朱乃は魔法陣の上に立ち転移していった。
 朱乃が転移した場所は無数の石造りの塔が立っているフィールドだった。その一つの塔のてっぺんに立っていた。反対側の塔のてっぺんの上に相手の『女王』アバドンが立っていた。

『やはりあなたが来ましたか、雷光の巫女』
『ええ、不束者ですが、よろしくお願いいたします』

 二人が軽く挨拶をしていると

『第五試合、開始してください』

 審判が開始の合図とともに朱乃とアバドンは翼を出して空に飛びあがりお互いに魔法を打ち合っていた。試合の序盤こそは互角の戦いをしていたがアバドンはまだ『穴』を使用していなかった。
 朱乃が雷に光を乗せて雷光を放つとアバドンは『穴』を使い吸収したが

『ここですわ! これならどうでしょう!』

 朱乃は狙っていたかのようにさらに天から雷光を走らせた。

ドガガアアガガガアアガガガッ!
 
 幾重もの雷の音が鳴り響き雷が落ちてくる。雷が落ちてあたりの塔が壊れていく中アバドンは『穴』を広げてさらに複数の『穴』も増えていって雷光をさらに吸収していく。

『私の『穴』は広げるとともに複数出すことができるのです。そして『穴』で吸収したものを分解して放つこともできるのです。―――このように』

 朱乃を囲むように『穴』が出現した。それらはすべて朱乃に向けられていた。

『雷光から雷を抜いて―――光だけをお返ししますわ』
ビィィィィィィッ!

 無数の『穴』から光が朱乃に襲った。光は悪魔にとって猛毒なのでそれをくらえばひとたまりもない。

『リアス・グレモリー選手の「女王」リタイヤ』

 審判からアナウンスが響いて第五試合が終わった。
 陣地では見ていたリアスたちは衝撃を受けていた。

「まさか『穴』をあんなふうに使うとはね」

 木場が絞り出したような声をだした。

「・・・気を取り返していきましょう。終盤にさしかかっているのだから、気を抜けないわ。これからよ」

 リアスは自分にも言い聞かせるように言った。
 第六試合の選手を決めるダイスが降られた。―――合計は12。最大数値になった。

『出ました! 最大数値の12! この数字の意味をはもちろんサイラオーグ選手が出るということです!』
「「「「ワァァァァッ!」」」」

 実況がそう言うと観客から声援が沸いた。サイラオーグはその声援に応えるように上着を脱いだ。下には戦闘服なのか、ぴっちりとした黒い服を着ていた。
 合計が12になったので相手はサイラオーグが出てくるだろう。俺は準備運動しながら魔法陣に向かうが

「ちょっと待ちなさい! レオン! あなたはまだ出番じゃないわよ!」

 リアスがそういって俺の腕をつかんだ。

「え? 俺じゃないんですか?」

 俺は不思議そうに振り返りリアスを見ると呆れたような顔をしてため息をついた。

「そうだよ。レオン君。ここは僕たちに任せてくれないかい?」

 木場が俺の肩に手を置きそういった。

「僕とゼノヴィアとロスヴァイセさんで行こうと思う」

 『騎士』が二人で6、『戦車』が一人で5、だから合計は11か

「ならおれも居れて12でいいじゃね?・・・「ガシッ!」・・・おい、イッセー? 何している?」

 俺がしゃべっているとイッセーがブースデット・ギアを発動して俺を羽交い絞めにしていた。

「それじゃあ行ってきます。部長。出来るだけダメージを与えて次のレオン君との戦いに響かせますので。ゼノヴィア、ロスヴァイセさん。お付き合いできますか?」

 木場が二人に確認をとると

「ああ、もちろんだ。部長とイッセーとレオンに繋ごうではないか」
「役目がハッキリしている分やりやすいですね。出来るだけ長く戦って疲弊させましょう」

 二人が頷き魔法陣に向かっていった。リアスはそんな三人を見て覚悟を決めたのか

「お願いするわ、三人とも。サイラオーグにできるだけダメージを与えてちょうだい。・・・ごめんなさいね。さっきのギャスパーの覚悟を決めたのを見たときに決めたばかりなのに、またあなたたちに教えられたわ。・・・本当に私は甘くて、ダメな『王』ね」

 リアスがそういうと木場は首を横に振り

「そんなことないですよ。僕たちは部長と出会って救われました。ここまで来たのもあなたのおかげなんです。だからこそ、このゲームに勝利をあなたにもたらします。僕たちで」

 木場はそれを言うと二人に続いて魔法陣に向かって歩きだした。その途中に

「レオン君。イッセー君。後は頼むよ」
「任せたぜ、ダチ公」

 イッセーがそう返したが俺は

「木場」
「なんだい?」
「負ける気で戦うんじゃねぇ。お前らがサイラオーグを倒すつもりで行けよ」
「・・・フフ、そうだね。じゃあ勝ってくるよ」

 木場は軽く笑い魔法陣で転移していった。そんななかイッセーが驚いたような顔で俺を見ていた。
 
「なんだよ?」
「いや、てっきり『俺が行くから代われ』っていうと思ったからさ」
「うるせぇ。俺だって戦いたかったよ。でもこれはチーム戦だ。『王』であるリアスの言うことは守るさ」

 俺は椅子に座って戦いを見ることにした。試合結果はサイラオーグの勝ちだが、木場がサイラオーグの片腕を斬り飛ばしたために、サイラオーグはフェニックスの涙を使い、治した。これで相手は回復が出来なくなった。木場たちは最低限の仕事をしたといえる。
 第七試合目のダイスの合計は9。相手は『女王』が出てくるだろうな。
 
「部長。アーシア。レオン。それじゃあ俺が行ってきます」

 イッセーがそういい魔法陣に向かっていった。その顔は―――憤怒に歪んでいた。
 なんかやばそうだな・・・

「リアス。俺も行くぞ」
「え? レオンも? どうして?」

 俺が行くと言ったら不思議そうな顔をしていった。

「保険だよ。保険」
「そう・・・いいわ。行って頂戴」

 俺はリアスの許可を貰って魔法陣で転移していった。

side out

side リアス

 イッセーとレオンがフィールドに転移していくとアーシアが

「リアスお姉さま・・イッセーさん顔が・・・」
「えぇ、そうね。きっと耐えていたのよ」

 でもレオンはどうして一緒に行ったのかしら? 今のイッセーなら『女王』くらいは倒せると思うんだけど・・・
 モニターにはイッセーとレオンが相手の『女王』と対峙していた。
 
『兵藤一誠、妙な落ち着きをしていますね。女である私が相手ならばもっと喜ぶと思っていましたが・・・』
『・・・・・。うれしいッスよ! 美人は歓迎します!』
『・・・相変わらずだなお前は』

 イッセーが一拍あけて、そういうとレオンがいつもどおりに答えていた。審判が開始の合図の前にイッセーが両手を広げて独り言を始めた。

『もういいよな? もう、我慢しなくていいよな? 木場、朱乃さん、小猫ちゃん、ゼノヴィア、ギャスパー、ロスヴァイセさん。―――俺、もう無理だわ』

 イッセーのつぶやきにアバドンは怪訝な表情をしていた。

『第七試合、開始してください』

 開始を告げたがアバドンは動かなかった。

『赤龍帝。禁手化となりなさい。私の主があなたの本気を見てみたいと所望している。ならば「女王」の私もそれを望みましょう』

 カウントが済み鎧を纏ったイッセーが一言だけ、アバドンに漏らした。

『・・・手加減できません。死にたくなかったらすべて防御につぎ込んでください。そうしたらリタイヤだけで済むはずです』
『行ってくれるわね。いいでしょう。私も全力であなたに臨みます。赤龍帝だろうが私は主の・・・』
『・・・警告はしました』

 イッセーの体が赤い閃光に包まれ
 
『龍星の騎士(ウェルシュ・ソニックブースト・ナイト)ォォォッッッ!』
『Change star Sonic!!!!』(チェンジ スター ソニック)

 鎧がパージされ神速でアバドンに向かっていく

ビュンッ! 
 
 ここから見ている私でもアバドンに近づくスピードが見えなかったからアバドンとしては何が起こったかわからないでしょうね
 イッセーの体にまた赤いオーラが溜まっていき

『龍剛の戦車(ウェルシュ・ドラゴニック・ルーク)ゥゥゥゥゥッ!』
『Change Solid Impact!!!!』(チェンジ・ソリッド・インパクト)

 肉厚になったイッセーの鎧。

『うおおおおおおおおおっっ!』

 絶叫するイッセー。肘にある撃鉄を打ち鳴らし、オーラを噴き出し拳の勢いが激しく増す。その一撃がアバドンに容赦なく振り下ろされた。

ドゴォォォォォォンッ! 

 辺り一面に煙が舞いどうなったかわからなかったが、煙が晴れていくと、私たちは驚いた。

「なっ!!」

 そこには『卍解』状態で仮面をつけたレオンがイッセーの拳を剣で受け止めていた。

side out

side レオン

 俺は、いやな予感が当たったため急いで卍解して、さらに仮面をつけて相手の『女王』の前に瞬歩をして天鎖斬月でイッセーの拳を受け止めた。

『な、なんということでしょう! 仲間であるはずのレオン選手が乳龍帝の攻撃を防ぎ、アバドン選手の守っています!』

 まあ見た人は驚くわな。敵を守っているんだからな。
 そう思っていると後ろにいたアバドンが消えていった。

『サイラオーグ選手の「女王」リタイヤ』
 
 どうやらサイラオーグが強制的にリタイヤさせたらしい。

「どうしてレオンがそこに居るんだよ」

 前から顔の部分を開けたイッセーが訊いてきたので俺は

『お前、あの「女王」を殺そうとしただろ?』
「ちゃんと警告したぞ。俺は」
『警告したからってすぐにできるか。それに相手はお前を迎え撃とうとしていたから防御はろくにできなかったぜ。・・・少しは頭を冷やせ。これはゲームだ。実践じゃない』
「・・・レオンは朱乃さん、ロスヴァイセさん、ゼノヴィア、木場、ギャスパー、小猫ちゃんがやられて悔しくないのか? やり返したくないのか?」
『確かに悔しいが、それで相手を殺していいと思ているのか』
「―――ッ!」

 俺が殺気を込めながらそういうとイッセーは驚き目を見開いた。
 イッセーは悔しそうにうつむき拳を下した。俺はそれを確認してから仮面を解除した。俺は息を吐きサイラオーグの方を向いた

「悪かったな。イッセーがそちらの『女王』を殺そうとして」
『いや、こっちも強制退場のタイミングが少し遅れた。レオンが守ってくれなかったら危なかった。感謝する』

 そういってから俺は陣地に転移していった。陣地に戻るとイッセーを見ると先ほどよりは冷静になったようだった。リアスが言ったのだろう

「リアス。何か言ったのか?」
「まあ、少しは言ったわ。『相手を殺してまで勝利はしたくない』って」
「・・・そうか。ならこれ以上あいつに言うことはないな」

 俺たちは気を取り直してリアスがダイスを振ろうとすると

『すまないがこちらから提案があるのだが―――委員会に問いたい。もうダイスを振るのはいいと思う。残った連中で団体戦を希望する・・・ッ!』

 サイラオーグの提案に会場がどよめいた。実況の人も

『おおっと! ここでサイラオーグ選手からの提案が出てしまいました!』

 解説の皇帝が

『確かにこの後の流れが読めてしまう。これほどつまらない勝負はないでしょう。それにサイラオーグと赤龍帝、もしくはレオン選手との勝負で決まりでしょう』

 横でアザゼル先生も手を顎に置いて。

『それなら、次の団体戦でケリを付けた方が面白いし観客も喜ぶだろう。委員会もどう判断するか楽しみだ』
「私もその提案に賛成するわ」

リアスもサイラオーグの提案に賛成した。数分後、実況が

『え、はい。いま、委員会から報告が来ました。―――認めるそうです! 次の試合、事実上最後の決戦となる団体戦になります! 両陣営の残りメンバーの総力戦です!』

 それを聞いた観客が沸いた。

side out

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