小説『超次元ゲイムネプテューヌ 黒閃の騎士』
作者:()

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時間を超え
宇宙を超え
次元を超え


世界を超えた一人の少年がいた


その少年は優しすぎた
その少年は頑張りすぎた
その少年は知りすぎた


だからこその絶望、なにをしても変わらないどれほど努力し強くなり弱きものを守り、助けたとしてもそれが無駄だと分かったからだ。所詮、運命なんて変えられない絶対不変なものだと少年は語った


でも、その少年は足掻いたこんな結末は嫌だと自分はこんな運命に従うのは嫌だと


そして足掻いても、努力しても、頑張っても無駄だとなことを本当に知った少年は逃げた。今ある全てを捨てた富も金も与えてくれた自分の運命を造る者から人間であるがゆえにいまある現実からの逃亡


そんな少年がたどり着いた世界、それが(ゲイムキョウ界)かつて一つであった大陸は女神戦争と呼ばれる争いにより四つに分かれた


革新する紫の大地
『プラネテューヌ』


重厚なる黒の大地
『ラステイション』


雄大なる緑の大地
『リーンボックス』


夢見る白の大地
『ルウィー』


そんな歴史があるこの世界に少年は静かに暮らすことにした。現実から目を背くように
その世界も彼というイレギュラーの存在を気にせずただ平凡で静かで平和な時間が過ぎていくと思った・・・そう願った

突如、世間に噂される魔王『ユニミテス』の存在、それと同時に急増するモンスター
平和だと思われたこの世界に今魔の手が伸びようとしていることは、まだその少年は気付くことなくいつもの朝を迎えていた

















「ふわぁぁぁ〜〜」

大きくベットの中でいつものように眠気との決闘。その結果は勝利
重たい身体を動かし毛布を綺麗に整え食パンをポップアップ式トースターに突っ込みパンが焦げる前に薄く油を引かしたフライパンに卵落とし一口サイズに切った野菜を皿に盛り付けそこでチンっとトーストからパンが飛び出す。
パンにマーガリンを塗り先ほど調理した目玉焼きをパンにのせる

「いただきます」

一人で住むには十分すぎる大きさの家に静かな呟きが響いた
彼の名前は零崎(れいざき) 紅夜(こうや)この雄大なる緑の大地『リーンボックス』に住む凄腕のハンターだ。その証拠に彼の近くにはモンスターの命を狩る為の武器が沈黙を守っている。
食事を終えた紅夜は、食器を片づけ身を隠すような大きな漆黒のコートを着る。本来彼は、この世界にいるべき人間ではないそのことを誰よりも紅夜は理解していていた。なので出来るだけ他人との関係を持たないようにしたこれも自分のためもしどこかで奴に自分の場所がばれることになればこの世界の住民に迷惑がかかる
結論から言えば隠居生活を送っていた。

ゴーン、ゴーン、ゴーーン

中世を思わせる町一番の大きい協会のベルが鳴らされる
朝礼の時間だ。紅夜はさっそく協会に向かったこの大陸の守護女神『グリーンハート』に紅夜は合ったことがあり細かく言えば命の恩人と言っても過言ではない
もちろん紅夜はグリーンハート様に信仰していた・・・とはいえグリーンハートとは親しい仲であり裏表を知っているので少し彼女を信仰する自分がおかしく思う時がある
高級感あふれる絨毯の上を歩きグリーンハートが祀られる女神像の近くの席に座り聖書を読む宣教師の話に耳を傾ける
何度聞いたであろう宣教師の読む声を聞きながらうとうとしてしまう。そして・・・

---お前に造られる運命に従うのはもう、嫌なんだ!

「っ!・・・寝ちまったか」

どうやら寝てしまったようだ近くにはもう人の姿はない重くなった腰を浮かばせ協会を出ようと足を動かそうとしたとき廊下の陰から手が飛び出し紅夜の手を掴んだ。

「ちょ、おい・・・」

されるがまま連れて行かれる。犯人はだれか分かっているが彼女のその豊胸の谷間に腕が挟まれており抵抗したくても出来ない自分がいた


バタン!


結局、半強制的に連れて行かれ彼女の部屋に閉じ込められる

「えっと、何か用事でしょうか。グリーンハート様」

腰まである蜂蜜色の髪に穏やかな雰囲気がとれ露出度が多い服装をしたお姫様のような美少女

「もう、二人っきりの時は『ベール』って読んでくださいと言いましたわよ」

少し拗ねたように彼女は言うこの人こそこのリーンボックスの守護女神グリーンハート様である

「はぁ、じゃ『ベール』予想は付くんだが・・・何の用事だ?」
「遊びましょう♪」

にっこり母性溢れるその巨乳を揺らしながらベールはさらに奥の部屋へと紅夜を連れていった







「でっ、なにやるんだ?」
「ゲームですわ。そうね今日は格ゲーで対戦をしましょう♪」

内心大きなため息をつく。彼女は所謂オタクに近い存在で本人いわくゲーム、漫画、アニメは三種の神器だと剛言しているほどだ

「協会のみんなさんは弱いのよ。相手になるのはあなたくらいしかいませんの」
「仕事はどうした。仕事は」

こんなほんと、普通(?)な少女もこの大陸の守護女神なのだ。モンスター討伐等やることはたくさんあるはず・・・なのだが

「いいじゃない。少しぐらいあなたと遊ぶくらいの時間は許してくれますわ」
「はぁ、朝からゲームはどうかと思うけど」
「コウヤは朝礼と依頼の時しか協会に顔をださないじゃないですか」

確かにそうだけど・・・と言いかけたが寂しそうな彼女の顔に口を慎む立場上ベールに『友達』はいないと言っても過言ではない自分と仲良くなったのはほぼ奇跡と言ってもいい

「ベール、コントローラー貸せ」
「!・・・はい紅夜」

向日葵のような笑顔で譲られたゲームのコントローラーで持ち準備運動に軽く操作する。
朝っぱらからゲームという体に悪そうだと紅夜は思いながらニコニコする隣の女神を見れるだけで幸せと呼べるだろうか……少なくても彼女の信仰者からすれば我が一生に一片の悔いなしと叫ぶほどだろう。
だが紅夜はベールをただの良くて友人程度&恩人ぐらいしか思っていなのでその関係は全く進まない。

「昇竜拳!」
「うわっ、ちょ」
「そこよ!波動拳!!」

因み、その対戦の結果は二勝一敗でベールの勝利となった













「今日はここまで」
「えっ〜〜」

かわいらしく拗ねるベールをスルーする。
ゲームとは魔境の兵器だ呑みこまれば時間を忘れ潜り込んでしまう

「お互い仕事があるだろう。それにお前の侍従に見つかると面倒だ」

紅夜の姿はいつも漆黒のコート建物の中でも必要最低限はフードを取らないそんな恰好は勿論他の人から見たら怪しまれる。
一応、ベールの部屋ではフードを取っていたのだが昔、今日のように遊んでいたら何らかの用事のために入ってきた侍従に発見され。その怪しい姿から女神の暗殺者と間違えられてそこから大騒ぎ、協会の全兵が紅夜に襲いかかり逃げても逃げても血眼となって襲いかかる兵士は恐ろしくベールの声によりなんとかその場は抑えられたが紅夜は大目玉を喰らった苦い記憶がある

「あのときは大変でしたわね」
「他人事のように言うなこっちは酷い目にあったんだぞ」

信仰心が強いのは恐ろしいものだ、おれはまさしく眠れる獅子を起こしてしまった。




「そうだわ。紅夜、私とパーティーを組みませんか?そしたら一緒にいられますわ」

やたら『一緒』を強調するベールだがその本心は紅夜に伝わることは無かった。

「あぁ・・・確かにその案はいいけど出張なんだラステイションに」
「・・・・・なんですって?」

少なくても笑顔だったベールの顔に亀裂が走り、眉を細め追い詰めるのように紅夜との距離を一気に近づて黒いオーラを放つ。

「なぜ、ラステイションに行かなければならない理由を言ってみなさいコウヤ」

なぜこれほどまでベールが真っ黒オーラを放つのか全く理解できない紅夜だったが、ここで話さなければ断罪の槍が今にでも襲い掛かりそうなので紅夜は冷や汗をかきながらベールに事情を伝えた。
曰く、初心者のダンジョンに突如巨大なモンスターが現れた。そのモンスターは驚異的な強さで討伐しに行った冒険者達は一人として帰ってくることは無かった。このままではいつ街に襲いかかってきてもおかしくないそこで『黒閃』と呼ばれているあなたの実力をお借りした・・・とのこと

「だからちょっと、行ってくる」

半分隠居生活をする紅夜だが彼は、とにかくお人好しで困っている者には迷いなく手を貸す性格をしている。そんな彼が家でじっとしていることも出来ることもできず。大陸を飛び出し熟練の冒険者達が集団となってもまったく歯が立たないモンスターをいとも簡単に一人で討伐したり街を襲った百匹のモンスターを一人で殲滅したとかそんな偉業を成し遂げた有名人なのだ。
その実力は、不謹慎だが女神でさえも凌駕するなど噂が流れるほどそんなこともあり紅夜は時折他の大陸の依頼を持つことがありどちらかといえば家で寝泊まりするより宿屋で寝泊まりするほうが数が多かったり意外に多忙なのだ
因み『黒閃』は漆黒のコートを靡かせ閃光のようにモンスターをなぎ倒すことから名づけられた(勝手に)名だ



「・・・無理をしないでくださいね」

紅夜の性格をよく知っているベールは、止めても無駄だと理解しているのでとくに何も言わない。

「そんなしょぼくれた顔するなベール、とっとと終わらして帰ってくるから・・な。その時は一緒にパーティ組んでモンスター討伐しような」
「二人が条件ですわ」
「あぁ、分かった。二人っきりでだな」

なぜそこまで二人っきりという条件を重要そうに言うのか紅夜にしたら全くの謎だと思いながらも紅夜は頷いた。ここで何か言えば本気で槍が来ると安易に予測できるからである。
それにしても近い、顔が今にでもくっ付きそうだ。紅夜とベールの身長は紅夜が高いそうなると自然と紅夜はベールを見下ろすようになるのだ

『グリーンハート様、いらっしゃいますか?』

バッ、と第三者の声にお互いの距離は開き緊張の空気となる紅夜はすぐさま部屋の窓を全開に開ける

「分かりました。少しお待ちなさい」
『分かりました』

ベールも皆いるときの口調になる

「いきなりになっちゃったけど行ってくる」

窓に足をかけ大きく跳躍するため力を込める

「待って、紅夜」
「ん?」
「いってらしゃい」
「いってきます」

顔を合わすことない小さな挨拶お互い間にはなにも無い二人にだが他人には見えない何かによりつながっている。
大きく跳躍し中世の家々を飛び越えていく。
目指すはリーンボックスとラステイションを繋ぐ架け橋だ
風を切る感覚を感じながら背中に重く乗る生命を奪うための武器を掴み紅夜はさらにスピードを上げた。−−−自分を待ってくれる人がいるから











「・・・・・・・」


遠く影になっていく彼を見つめるベール。彼との出会いは本当に偶然だった
色々あり今の関係になったがベール本人としては今の関係はいまいち不服だった

「失礼します。グリーンハート様・・・誰かいらっしゃたのですか?」
「いえ、部屋の空気を入れ替えていたところでしたわ・・・今日のスケジュールを教えてくれます?」

彼はとにかく人の気持ちに疎い。
なのに彼は本当に優しい困っている人がいれば手を差しのばす彼は自分が思っている以上に有名人だ。
いつもは漆黒のコートで隠れているがひとたびそれを脱げば魅了(特に女)される美少年
それに彼は性格も良し実力も強し家庭的でもあり弱点があるかどうか疑問にもつほどの完璧人
いつか自分のように彼に惹かれる女性も増えるかもしれない
しかし、グリーンハート改めベールは負けるつもりは一切ない。それに・・・







ーーー恋は壁がある方が燃えるでしょ


彼女の呟きは雄大な自然に生み出される風に溶けていった



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