小説『超次元ゲイムネプテューヌ 黒閃の騎士』
作者:()

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そこは元から何もなくなったようになくなっていた。
残るのはなにかに削られたように消えた大地、天空には確かにそこに入道雲があ浮かんでいたが杭でも撃ち抜かれように巨大な大穴を開けられていた。
そしてその中心に立つのは闇そのものを纏った青年、この世の全ての負を一時的に司、り背負うことで唯一無二の力を手に入れることができるその青年だけに許されたスキル、なぜ自分がこんなものを使えるのかは知らない。
本能が教えてくれた紅夜にとって切り札のそれは偽神化(シン・クレアトール)と名付けられている。

『・・・終わったぞ』

外形は恐ろしくてもその声は慈悲に溢れ、しゃがみこんでいる三人に優しく語りかけた。

「・・・・あれ?工場は」
『消した』
「消したって・・・紅夜、あんた何者なの・・・」
『さぁな、そのことに関する記憶がない』

実際には思い出さないようにしているだけだがそのことは紅夜自身もあまりよく分かってない

「ねぷねぷと同じなんですか?」
『記憶消失・・・に近いが。俺の場合は記憶が一部欠けているだけで全部は忘れてない記憶障害っていうのかな』

紅夜は確かに全てを忘れているように見えるが断片的に思い出すこともある。
ただ、それを理解することや覚えることができないのだ。

「なんだ・・仲間が増えたと思ったのに・・・・・」

明らかな普通に会話が成立しているのに紅夜は眉を細めた

『俺が言うのはおかしいが・・・怖くないのか?』

禍々しく揺れる負のオーラ、複数の人語が混ざった不可解な声、恐怖を感じるほど暗黒色に染まった髪、闇を連想させるほど濃い紫色の瞳。
その全てがあまりにも異体で異常、恐怖そのものと言っても過言ではない。

「確かにちょっと怖いですけどこぅさんはこぅさんはですから」

少し前に頭を撫でられた温かさは間違いなく自分が知っている零崎 紅夜で間違いないとコンパは言う。

『はは、前に言ったな似たようなこと』
「あっ!覚えているよそれ私に言ったときでしょ」
『そうだな。変身したときのあのネプティーヌは綺麗だったな』
「えっ、そう思う!?ならこぅちゃんのためにいつでも変身してあげるよ!」
『別に無理はしなくていいぞ。今のネプティーヌは逆に可愛いしな』
「はぅ・・・」

たとえ変わろうとやはり紅夜は紅夜だった

「「…………」」

さてこの朴念仁に乙女心を一粒でも理解できる時はくるのやら









ーーー辞めてくれ!俺の工場を壊さないでくれ!!

『・・・・・』

頭に流れ込んでくる哀しみの負に紅夜は一点を見詰めた。

『なるほどな・・』
「えっ?どうしたのなにか閃いたの?」

一人呟く紅夜にネプティーヌが問う

『これは時間稼ぎだろう。いまあっちの方角の工場が壊されている・・俺は知らないがお前たちは関係しているだろう』
「あっちの方角・・って!」
「確かシアンさんの工場のですぅ!」
『俺がいたから生き残ること前提に企ていたわけか』

悔しさが紅夜の心の中で渦巻き、これを企てであろうアヴニールの代表アンジュに憎悪を抱いた

「それなら急がないと!」

一刻の猶予もない急いで行かないとお世話になった人が傷ついてしまうネプティーヌ達は走ろうとした

『まて』
「なに!?急がないといけないのに」
『走るより飛んで(・・・)行った方が速い』
「どいうことですか?」

ネプティーヌ達に疑問は生まれるが紅夜は気にせず口を開いた

『百聞は一見に如かず・・・どこでもいい俺の身体に掴まれ』
「掴まれ・・って。そのえっと」

さすがに突然と体につかまれと言われ困惑するネプテューヌ達であるが紅夜は急がせるように口を開く。

『急ぐんだろ?早く』

紅夜に急かさせれ背中にネプティーヌ、右腕にアイエフ、左腕にコンパと掴んだ。

『それじゃ、離すなよ・・!』

その瞬間ネプティーヌ達の目前が一気に上昇した

「ねぷっ!?浮かんでいる!?飛んでいる!?」
「ひゃあぁぁぁ〜〜!!」
「すごいですぅ〜〜!」

大気を切り裂きながら空を駆けるその姿は正に鷹のように、偽神化ではこうした異常なことをさも当たり前のようにできるのだ。
通常時でもできるか、途中でガス欠になることがあるので滅多に使わない。

『離すなよ離したら大ケガするからな』
「ちょ、聞いてないわよ!!」
『聞かれてないからな』

びっくりが成功したように紅夜はほくそ笑んだ
彼女たちが飛んでいるのは上空30m付近でかなりのスピードで進みもう街の中へ入っていた

『見えてきた。一気に接近して叩き潰すのと上空から落ちて奇襲しかけるのどっちがいい?』
「「「前者でお願い(するわ)(するですぅ)!!!」」」

即答である。飛ぶこと自体初体験と言ってもいい彼女たちにとって後者はシートベルト無し手すりだけの恐怖ジェットコースターに乗るようなものである。

『そ、そうか・・・じゃ、行くぞ!!』

三人の気迫に驚きながら今まさにモーニングスターを振りかざそうとしているロボに突撃した
予期せぬ攻撃にロボは倒れ連撃とばかりにネプティーヌ、アイエフ、紅夜の斬撃そしてコンパの零距離射撃が襲いかかった。

『お前に怨みはないが・・・消えろ!!』

ーーー斬滅煉獄殺

網のように組まれた斬撃は一瞬にしてロボをバラバラにした

「・・・私たちいらなかったじゃない?」
「それ私も思うわ」
「一人でやっつけちゃたですぅ・・・」

一撃しか与えてない三人の呟きあったことはその三人しか知らない。

『・・・時間切れか』

地面に降りたところで紅夜の頭に響く鋭い痛み、それは限界を超えた警戒音これ以上は身を滅ぼすことになる。
偽神化は負を司ることで昇華した姿で、精神的にも肉体的にもかなりの負担がかかるのだ。
辺りを見渡せばネプティーヌ達はこの工場の責任者らしき人物をと話しているのが見えた
どっしりと腰を付く爆発に巻き込まれ時の怪我は既に全治していた
不生不死、紅夜の身体に刻まれている力。生きること、死ぬことそんな機能が紅夜の身体には存在しないまるで紅夜そのものの過ぎる時間がないように、傷つけばなかったように塞がり、身体の一部が吹き飛ばされば再生していく。
人間ではない・・・しかし紅夜は自分のことを人間と信じている今もずっと・・・ずっと

『ネプティーヌ』
「あっ!こぅちゃん。どうしたの?」
「おぉあんたがかの有名な黒閃か中々だったな。あのロボ一発で倒しちまうとわな!」

ネプティーヌ達と一緒に来たのはちょうど紅夜と同じくらいの青年だった。

『・・・あんたは?』
「ぶっ壊されたこの工場の社長シアンっていうんだよろしくな」

今の紅夜には負を感じ読むことができるだからこそ分かったこいつがあの哀しみの負の元凶ということが心の中は少し落ち込み気味だったがなにかにふっきれた輝かしさも紅夜は感じてとった。

『よろしく、ネプティーヌ話がある』
「なに?言っておくけど遺言とかはノーサンキューだからね!!」

腕でばってんの形を造るネプティーヌに紅夜は少し笑い

『ははそんな話じゃない・・・ネプティーヌ頭貸せ』

正直今にでも意識が落ちそう紅夜とってシアンとの会話は正直に言うと時間が惜しい

「ねぷっ!?///」

半ば強引に引きよせるいきなりのことにネプティーヌは紅夜の胸に埋まったそれを見たシアンは「見せつけてくれるねぇ〜」とオヤジ臭いこと言っていたが紅夜は完全スルーの方向だった。

「ふわぁ・・・頭になにか流れ込んでいくる・・・」

紅夜がいままで集めたアヴニールの情報と追い出されてしまった教院の人達の居場所など喋ること出来ないほど衰弱していたのでネプティーヌそれらのことを送った。

『俺が集めた情報だ。あとはなんとかやってくれ』

頭に響き蠢く怨嗟の声、負の念に身体を徐々に侵されていく感触、偽神化による肉体負担は不正不死である紅夜には関係ないことなのだがその畏怖の念は紅夜の剛毅な精神力によりなんとか自我を保っている状況だ。
正直いつ暴走してもおかしくない。

『解除』

負による浸食が拡散していき紅夜の瞳と髪は元に戻るが身体に重い脱力が襲う。

「頼む、無責任かも知れないが・・・ラステイションの未来を守ってくれないか?」

なんとか頭を動かし彼女と顔を合わせる。

「・・・任せて!!」
「はっ、・・・頼んだ」

ネプティーヌは屈指のない太陽のような笑顔を向け紅夜は安心するように静かに瞳を落とした。

「こぅちゃん・・・こぅちゃんーーー!!!」









































「あれ、気絶しただけだろ?」
「そうね・・・羨ましい」
「そうですぅ!ねぷねぷだけおいしすぎです!」
「あんたは頭撫でてもらったでしょ。私なんて会話しかないんだから・・・」
「「・・・・はぁ」」
「黒閃って罪な男なのか?」

影でそんな話があることは泣きつくネプティーヌと疲労困憊で気絶する紅夜には届くことは無かった

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