小説『超次元ゲイムネプテューヌ 黒閃の騎士』
作者:()

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あれから数日がたった
たまにネプティーヌ達がやってきては、人助けの名目として強いモンスター討伐に付き合ったりそれなりに忠実した毎日を過ごしていた。
だが、街で囁かれるラステイションで一番大きい会社アヴニールは他の工場の仕事を横取りしてすさまじい勢いで大きくなっていき他の企業は不景気になるばかりだとか、ネプティーヌ達曰く総合技術博覧会でアヴニールの不正を暴かせるとか協力したいが、こっちも次々と仕事が送られて自由に動けなくなっている。とはいえひそかに証拠集めやら協会側の人間と接触しているが・・


ーーー魔神剣・斬刀

「ふぅ・・・これで終わりっと」

一刀両断され崩れるモンスターの残骸を確認し黒曜日にこびり付いたモンスターの体液を振り落とす

「次の依頼は・・・」

今の時刻は大体朝の9時くらい早朝3時くらいから起床しずっとこの調子だ。
眠気を抑えながら今日のスケジュールを確認する。

「うわぁ・・・」

今日もハードスケジュールだった
今日だけで恐らくあと100体以上のモンスターを狩らなければいけないさらに転々とダンジョンを回らなければならないといけないという条件付きで目が回りそうなほど忙しい一日になりそうだと紅夜は頭を抱えた。

「今日は何時に帰れるのか・・?」

昨日は11時過ぎだった気がする。
だが、もう少しでリーンボックスがラステイションに急接近する日だこれを逃せば本当にベールが怖い、船でという選択肢もあるがお金は大切なので出来るだけ節約したい。
昨日の様に使うときは使うが、出来れば使いたくないからな。

「愚痴ってもしかたないか・・」

黒曜日を背中の鞘に収め俺は駆けだした。



「生死は問わない?」
「えぇ、我が社が開発している電子基板のプリント配線にモンスターの神経組織は必要なので神経組織を取り出したモンスターは死んでしまうので生死は問いません」

ある廃墟とかした工場の前で紅夜とアヴニールの社員が依頼の内容を話していた。

「分かった。任せろ」

あまり機械のくわしく知らない紅夜は男性の言葉を信じ工場に入ろうとした。

「あ、あの、」
「ん?」

どこかおどおどし額にはどっぷりに汗を掻く男性、紅夜はその態度に少し疑問を抱いた。

「お気を付けて」
「あぁ、ところでこの工場にはモンスターが本当に住み着いているのか?」

廃墟とかした工場を見渡し問う……モンスターが住み着いていると聞いたがあまりに静かすぎる。
長年と言うほどでもないが、紅夜はいままで数々のモンスターと戦っているそのため、薄らとモンスターの気配を感じれる。

「そ、そうです社長からの直接の依頼ですし・・・間違いないと思います」

怪しいと思ったがこれ以上言っても無駄だと思い紅夜は工場の中へ一歩、入った

「あ、そういえb・・」

言い残したことがありふり向いた瞬間、その男性の手にはなんらかのスイッチのようなものを握っていた。


ドゴォォォォン!!!

男性がスイッチを押した瞬間、爆音が響き渡る。
紅夜は並外れた身体能力で体を丸めて爆発の直撃を避けるが、落ちて来る凶器となった機材は計算されたように真下にいる紅夜に降り注いだ。

「ちぃ・・」

赤を超え、真っ白になっている爆風に紅夜は迫りくる爆風と凶器に目を閉じた。








ーーー自爆システム起動。従業員は速やかに退去してください残り900秒ーーー


「ねぷっ!?どういうこと!?」

紅夜とは違う場所で既に中に入っていた三人組のパーティーの一人が突如、流れた放送に耳を疑い声を上げた。

「本当に爆発する気なのね・・」
「やっぱり、私たち・・・助からないんですか?」

彼女たちネプティーヌ、アイエフ、コンパはガナッシュという男の策略にはまりこの工場に閉じ込められていた。

「大丈夫だよ!自爆する前に脱出してしまえばオールクリアだよ!!」

焦る顔になるアイエフ達を励ます様にネプテューヌは笑顔を振りまき二人の背中を押す。
ネプテューヌの励ましにアイエフ達も顔色を良くして急いで進もうとしたとき、工場を降らすほどの爆発は鳴り響いた。

「爆発!?」
「……もしかしたら、風穴があいているかもしれない。そこから脱出できるかもしれないわ」

アイエフの考えにネプティーヌ達は頷くその爆発が起きた場所に向かって走る。
途中、行方を阻む何体からロボットが襲いかかってきたが、ネプティーヌはそれらを次々蹴散らしながら先へ進む。

「ここも爆発されている完全に閉じ込めるつもりね」

要約、たど着き三人が見たものは、恐らく出口だったであろう残骸だった。

「・・・・・・」
「ん?どうしたのコンパちゃ・・」

冷静に状況を判断するアイエフをしり目にコンパはある一点を見つめ動けなくなっていた
ネプティーヌもそれに気付きコンパと同じ方向を見る。
そこには三人の記憶にまだ新しい漆黒のコートが見えた。

「こぅ・・ちゃん?・・・こぅちゃん!!」

間違いない。
焼け飛び露出する皮膚は惨く焼け爛れた。
資材の破片は小さいながら飛び、運悪くところどころに突き刺さり血溜りをつくり
フードは爆風により一部吹き飛んでいたのではっきりと顔を確認ができた。
それが自分たちの気になり始めている人、零崎 紅夜と認識するのに大した時間は掛からなかった。

「こぅちゃん!!大丈夫!?こぅちゃん!!!」

直ぐにネプテューヌ達は近づき紅夜の肩を揺らすが反応がない。

「コンパ!治療をお願い!!」

すぐに状況を掴んだアイエフはパーティの中で治療術が長けているコンパを呼ぶ。
あまりのことにフリーズしていたコンパはアイエフの叫びが聞こえていない様にしばらくそこで立ち尽くしたが、二度目の呼び声に意識を取り戻し直ぐに回復薬を取り出す

「・・・・あっ・・?」

コンパの適切な治療により紅夜は蒼と紅の瞳をゆっくりと空いた。

「・・・お前、達・・なん、でここ。に?」
「こぅさん!大丈夫ですか!?」
「コン、パが・・治療して、くれたのか?」
「紅夜喋らないで、ネプティーヌ肩持って一緒に脱出するわよ」
「アイアイサー!」

アイエフの指示によりネプティーヌは紅夜の肩をすぐに持とうとするが。紅夜はそれを振るいネプテューヌの手を弾いた。

「・・俺の、事はいい・・!早く、行け!!」
「なっ、何言ってんのよ!!そんな身体じゃ動けないでしょ!ここはもう自爆するの!はやく行かない吹き飛ぶわよ!」

拒否する紅夜を無理やり手ごとつかんで引っ張ろうとするが、彼女たちの力では紅夜の重さを動かすことは出来なかった。

「みんな助からないと意味がないですよ!」
「そうだよ!ほら肩持つよ!!」
「無理、だ!全部の出口、非常口は爆発された!」
「「「えっ・・・」」」

紅夜の言葉にネプティーヌ達は停まった

「俺は、アヴニールの不正を暴こうとして、裏で考察していた!。・・ばれたがな。さっき所々に、爆発音が、聞こえた・・!。やっかいな、俺を確実に、葬る気だ・・・・!」

なぜ彼女たちが巻き込まれたのが謎だが紅夜は嵌められたのだ。
紅夜という存在程、大陸が恐れているものはない。
なにせ、女神と対等に戦えるのだ。
もし自分たちに牙を向けられた場合、どんな状況に追い詰められるのか考えるだけ恐ろしいのだ。
だから、なにが合っても紅夜を殺す方法を取ったのだ。

「そんな・・打つ手なしなの?」
「ここで終わり・・なのですか?」


絶望色に染まり始めるアイエフとコンパ
身体中を走る激痛と何故巻き込まれたという罪悪感を抑えようと口をきつく噛む。

「・・・だめだよ!」

そんな中でネプティーヌが吠えた。

「生きることを諦めたらその時点で死んじゃうよ!きっと道はあるよ!」
「「「!!!」」」

彼女の言葉、紅夜は心を打たれた。


「(・・・そうだよな。生きることから逃げたら死んだと同じか……あぁ、全くその通りだな!!)」

人の根本は生きるか、死ぬか。
紅夜は自ら人間でないこと知っている。
この程度では死なないと自負しているが彼女たちは違う。

「紅夜!?」
「こぅさんまだ動いちゃだめですよ!!」

震える手で
痙攣する足で
地面にいつもの血滴を垂らしながらそれでも紅夜は立ち上がった。
生きる価値なんて最初から定められたものじゃない。
正直、紅夜はこの工場が自爆していようと生きている自信があった。
彼女たちは違う、力ある者はそれ相応の責任が伴いことを何故か紅夜の記憶に刻まれていた。
そして、意識は一瞬反転して穢れない大地の上で『』は儚げな表情で

ーーー綺麗な花を咲かせるためには雑草を抜きとることがいいんだよ?

そう呟いた。


「『偽神化(シン・クレアトール)』!!!」

叫ぶように命じた。
世界に『神』として
世界に渦巻く力((絶望)を寄こせと
その全てを背負い
紅夜はこの刹那に人間では無くなる。


「こぅ・・ちゃん?」

その姿にネプティーヌ達はただ見ることしかできなかった。
綺麗な銀髪は黒く漆黒の空を想像させる暗黒に染まり、蒼と紅のオッドアイは闇を連想するさせるほどの濃い紫色に染まり、吸収された負の念は禍々しいオーラは鎧のように煌めき、ここに偽りながら『神』をも凌ぐ絶対的力を携えた紅夜ではない紅夜が誕生した。

「紅夜・・なの?」

その問いに紅夜ではない紅夜は静かに頷き、いくつもの資材が重なりあい強固となった壁の方向に身体を向かせて無造作に手を掲げると瓦礫の山から黒曜日が飛び出し紅夜の手に収まる。

『突破口を開く・・離れてろ』

子供とも男とも女とも老人ともモンスターとも聴こえるその声は全てを自分の心臓を握りつぶすほどの不快感を与えた

「あっ・・・」
『治療ありがとなコンパ』

そんな姿で紅夜ではない紅夜は優しくコンパの頭を撫でた。
こんな状況でも一瞬だけコンパの瞳にはいつものように頼りになり優しい瞳を持った零崎 紅夜が映った


ーーー残り100秒ですーーー

いまからこのガラクタを破壊し、離れるだけでは多分自分と同じように彼女達はまた爆風に巻き込まれるであろうと紅夜はノイズの走る思考の中で考えながら大剣を構える。
普段の紅夜なら状況を冷静に観察して、自分の出来る精一杯のことをすることに全力を出す。
今回もこれだ。
ただ、それがいつもより絶望的状況で何もできないというわけではない。
強く。
強く。
紅夜は柄を握りしめ静かに強く魔力を込め上げていく。
元から黒い刃だった黒曜日は、更に黒い漆黒の輝きを放ちながら柄の部分からブーストのような四つの放射が始まった。
その負の瘴気と黒い魔力が混ざり合いそれは悪魔の翼のように見えた。

『………消えろ』


ーーー魔神剣・殲光翼

紅夜の呟きと共にラステイションの空は一部、暗黒に染まった。

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