小説『ボーンシルヴィアの罪』
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王記674年5月21日。

その日はどんよりと厚い雲が空を覆い、時々思い出したかの様に生暖かい風が吹いていた。
春の陽気など微塵も感じないほど生暖かく、不吉な空気に奇妙な胸騒ぎを感じる。

収容所に来てから2年も経つとある程度体も成長し、4キロの鉱石運搬の業務は以前程苦痛を感じなくなった。35キロにもなる籠を担ぐ両肩の激痛は相変わらずだった。

エリスグール収容所での業務はおおむね坑道での鉱石発掘業務と鉱石を発掘する男たちの手伝い、鉱石の運搬、鉱石の加工に分かれる。過酷な作業は男に、そうでない作業は女子供が担当した。それを一定の周期でローテーションしている。
 

シャーリィは鉱石を発掘する男たちの手伝いだった。鉱石の加工は激しく手が痛むため、坑道での手伝いの方が体にかかる負担は少ない。シャーリィはまだ、幼い少女という事もあって、最も楽な坑道での手伝いが続いている。

どこまでも重い鉱石を心の底から恨みながらやっとの思いで鉱石を加工場まで運び、坑道へ向かう。
鉱石を運びながらの4キロは長くて辛いが、坑道に戻る4キロの道のりも果てしなく長い。

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