小説『ボーンシルヴィアの罪』
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ふと、僕は僕たちが苦労して採掘し、運搬し、加工している鉱石が誰の手に渡っているのだろうと考えた。王都カサンドラの貴族達だろうか。そうとも王妃マリー=ソフィア=ベアトリスだろうか。王妃は大変な浪費家で連日連夜貴族達を招いてパーティを催し、贅沢な衣服、食事、装飾品に財をつぎ込みまくる事で国の財政が傾き、平民への生存税の増税に繋がっている。ならば僕らが人畜に落ちた原因の一端は王妃にあるじゃないかと思った。

だが、今そんなことを考えても現状は何も変わらない。まずは目の前のなすべき事に集中しなくてはと僕は頭を振る。

その時、前方から一人の男が血相を変えて、全身汗だくでこちらに走ってきているのが見えた。

服装から人畜だと判断した。

妙だと思った。

今はまだ業務の真っ最中である。

自分の持ち場を離れて兵士達が黙っているはずがない。

脱走か。

いや、違う。

追手が来ないわけがない。

何かあったんだと直感的に悟った。

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