小説『ボーンシルヴィアの罪』
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「少佐」
 
声が聞こえる。
僕を呼ぶ声が。

「ドレーク少佐!」

統合作戦本部に続く廊下を上の空で歩いているとグレマン准将に呼び止められた。

「や、これは准将殿」
内心、僕は舌打ちをした。

でっぷりと肥えた体。その小さい目から放たれる視線は落ち着きがない。

グレマン准将はまさに無能の将軍そのものだった。
名門貴族出身のグレマン准将はただ、貴族というだけで将軍に上り詰めたと評判の男だった。

何よりも階級制度を憎む僕にとってグレマン准将も憎悪の対象から外れる事はない。

「ご無事のご帰還。何よりです」

僕は敬礼してみせた。
もちろん内心は無事を喜ぶ心などさらさらない。

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