小説『ボーンシルヴィアの罪』
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僕は統合作戦本部での会議を終え、その足でグラス中将の執務室に向かった。
 
グラス中将の執務室の前で僕は大きく息を吐いて、ドアをノックする。

「失礼致します。閣下」

「応」
 
ドアを開けるとグラス中将は執務机に腰掛け、葉巻を吸っていた。

「楽にしろ」

「失礼します」
 
グラス中将に促され、来賓用の椅子に腰かける。たったそれだけで僕の精神はひどく消耗する。
見る者を圧倒する圧倒的な威圧感は12年経ったいまでもまるで変わらない。

「此度の任務、ご苦労だった」

「はっ」

「次の任務は聞いたか」

グラス中将は新しい葉巻を取り出した。マッチを擦ってグラス中将に差し出す。

「アルスター街道防衛戦…ですね」

「そうだ」

グラス中将は盛大に煙を吐き出した。

「アルスター街道は王都カサンドラに続く一本道。最重要防衛拠点だ。そこを突破されると王都に穴が開く」

「死守…ですね」

「そうだ。今はラッツィンガー率いる第5、第6旅団が何とか抑えている。だが、第5、第6旅団共に消耗している。相当キツイだろう。なんせ敵の兵力は倍以上だからな。ラッツィンガーに初めて泣きつかれた」

「増援の件は」

「却下。すぐには出せん。10日間は貴様の大隊と第5、第6旅団だけで何とかしろ。ただし物資は際限なく支給する」

「既に手配済みです」

「ほう」

グラス中将は眉を上げる。

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