小説『ボーンシルヴィアの罪』
作者:()

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「兵站部局を脅しました。僭越ながら閣下のお名前も使わせていただきました」
 
グラス中将は低く笑う。

「構わん。王都が壊滅するよりはマシだ。貴様、兵站部局に何を求めた」

「通常の物資に加えて弾薬30基、高性能地雷780個。自動信管800個。軽臼砲、速射砲、擲弾砲台50門」

グラス中将は「そうか」とニヤリと笑う。
 
この情報だけで僕が何をしようとしているのか察しが付いた様だ。
頭の回転の速さも12年前と変わらない。むしろ速くなっている。

「ある意味この戦闘に王国の命運がかかっている。10日間だ。10日間、クリミア帝国本領軍からアルスター街道を死守しろ。失敗は許さん」

「はっ」
 
即座に敬礼。

「あぁ、それとな。貴様、上官には気を遣え」

「グレマン准将ですか」

「そうだ。俺の所に怒鳴り込んできたぞ。貴様の背中から弾丸をぶち込んでやるだそうだ」

「准将が吐くセリフとは思えませんね」

まさか本当にグラス中将の所に来るとは。もはや莫迦という次元を通り越している。

「名門貴族というだけで准将になった男だ。頭蓋の中にまで脂肪が詰まっているんだろう」

「もし、グレマン准将が裏切った時には…始末して構いませんね」

「無論だ。誇りだけが取り柄の将軍など軍には必要ない。そうは思わんか。ギルバート」

僕は眉間に皺を寄せた。

「閣下。その名を呼ぶのは遠慮願います」

「そうだったな。退出してよろしい」

まるで用済みだと言いたげにグラス中将は手を振った。


狸爺め。
貴様ほどの男が名を間違えるものか。
貴様はただ、こう言いたかっただけだ。


?貴様の首根っこは未だ握っているぞ?と。


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