そうかぁ、2時間かぁ・・・・。
まぁ、いいけど・・・・・・。
それまで時間どうやって暇つぶししてようかな・・・・、と考え込んでるとき、城が俺の後ろの方に向かって声をかけた。
「あぁ! 曲礼(キョクライ)さんっ、待ってたよ。急に頼んでごめんなぁ。中入ってよ」
曲礼・・・・・・?
振り返ってみると、さやが楽譜を持って、俺と城の方を見ていた。
一瞬、瞳が合ったけど、俺は知らない顔をして、瞳を逸らした。
さやも知らないふりをして、俺の前を通り過ぎ、城にはペコリとあいさつして、部屋の中に入って行った。
「今のは・・・・・・?」
俺は気になって、城に聞いてみた。
とりあえず・・・・、あくまで、さりげなく・・・・ね。
「ん? あぁ、ピアノの伴奏してくれるんだ。曲礼さんって知ってる?
転校して来たばかりなんだけど、すっげ―ピアノが上手でさぁ・・・・。それで、頼んだんだ」
「あれ? 定演(=定期演奏会)のときの伴奏の人は?」
そ―だよ。定演のときは、さや弾いてなかったよな・・・・・・。
「あぁ、曲礼さんに頼んだのは、NHKのコンクールの分なんだ。
NHKのヤツはさぁ、ピアノ伴奏が学校の先生か、学生じゃないとだめなんだ。
他のは、別のピアノの先生に頼んでるんだけど、NHKだけはね・・・・。
そういうことで、曲礼さんにお願いしたんだ」
そうかぁ、いろいろあるんだナ・・・・。
「それにしても、高橋、おまえ定演に来てくれたんだ」
城が嬉しそうに言った。
――― ふざけんじゃね――!
おまえから無理矢理、チケット売りつけられたんじゃねーかっ!
おれはちょっと、城のこと睨みつけながら、
「あ―あ、行ったよっ! おまえに・・・・・・」
この際だ、文句言ってやろう、そう思ったのに、言いかけた途中で、
「じゃ、俺 練習に戻るから・・・・」
城は、何にも聞こえなかったよ・・・・というふりをして、さっさと部屋の中に戻って行ってしまった。
絶句している俺を残して・・・・・・。