「史生・・・・、すまん。二人に隠していた訳じゃないんだ。
この人工Moon計画が終了したら、オクテクス星人の了解を得て、NASAのSETI
(The Search for Extraterrestrial Intelligence =地球外文明の探査)計画に情報を提供しようと考えていた。
その時には、二人に一番に話そうと思っていたんだ・・・・・・」
俺はそう答えながら・・・・、でも今はこんなことを説明している暇はないのだということに気づいた。
「史生、今はこんなこと悠長に話している時じゃない。一刻も早くラボへ行かなければ・・・・。
オクテクスの長老にも連絡を取って、事の真相を聞いてみるよ。
雍也の作った監視装置に殺傷ビームの仕組み自体はなかったんだろうよ。雍也が気づかなくても、最もだ。
彼らは物質の転移に関する技術に優れている。多分、ビームも転送されたものだろう。
そして、この分だと、コンピュータの誘導も試みているに違いない。
コンピュータを乗っ取られるわけにはいかない。直ぐにでも監視装置を破壊しなければ・・・・・・。
・・・・・・それはわかってるんだ。けれど・・・・、どうすれば・・・・・・」
「中継を切れば・・・・」
突然、雍也が何かに気づいたように話し始めた。
「あの監視装置は、俺の部屋で中継されて機能している。俺に部屋の中継を切れば、あの監視装置には何の力もなくなる・・・・」
「本当か? だったら急ごうっ。雍也、直ぐに部屋へ帰って中継を切ってくれ。俺と史生はそのままラボへ向かう。
オクテクス星人に、雍也の件も含めて、何故こんなことになったのか問い正さなければならないし、
コントロール・ルームのコンピュータも誘導されていないか、チェックしないといけないしな・・・・・・。
よしっ、行こう」
俺はそう促したが、雍也はまだ戸惑ったような表情で見つめていた。
「俺を・・、俺をまだ仲間だと思ってくれているのか・・・・? 俺が信じられるのか・・・・?」
「雍也・・・・、おまえは俺たちを裏切っちゃいない。そうだろう? それはおまえが一番知ってることじゃないか。
現にこうして、おまえは本当のことを打ち明けてくれた。おまえは利用されていただけだ・・・・・・。
いいな・・・・、さぁ、行こう」
「直・・・・・・」
雍也がやっと頷いて、俺たちは部屋を飛び出した。
走ろう・・・・、と思ったが、目の前には修兄さんを始め、裡縞さん、さや、ふみ、すずが俺たちを待ち構えていた。
「・・・・スーパーバイザー・・・・・・」
「プレアデス、大変だ。先程の事件に加えて、人工Moonの裏側に、突然、未確認飛行物体が多数姿を現した。
他の観測衛星がその陰影を捕らえたと、今連絡が入った・・・・・・」
「・・・・・・多分、先程の事件と関係があると思います。
もしかしたら、何とか食い止めることができるかもしれません。俺たちは行きます」
俺は心配気に見つめる修兄さんにそう言って一礼すると、前へと足を進めた。
しかし・・・・、今度は目の前にさやが立ちはだかり、俺はまた止まらざるを得なかった。
さやは不安そうに俺を睨んで見上げている。