「それはそうと、ふみとすずはどうした・・・・?」
さやが落ち着いてから尋ねると、
「昨日のうちに、お父さまとお母さまが連れて帰られたわ。二人とも疲れてて、すっかり眠っちゃってたけど・・・・・・」
さやは何かを思い出したように、瞳を細めていた。
・・・・・・そっか・・・・、さやを説得するのに、あいつらも大変だったんだろうな・・・・。
さやがこんなに落ち着いて俺を迎えてくれたのも、あいつらの努力の成果なんだろうな・・・・。
二人に感謝しなくちゃな・・・・・・。
さやの表情から、そんなことを考えていると、さやが閉まっていたカーテンを一気に開けて、こんなことを言い出した。
「・・・・・・もうすぐ夏休みが終わっちゃうね・・・・」
夏の朝の眩しい光が射し込んで、部屋中を照らし輝かせた。
そうだ・・・・、そうだな。あと3日で夏休みが終わってしまうんだ。俺もすっかり忘れていた・・・・・・。
けどまあ、仕方ないよな・・・・・・。
とにかく、もうこの辺で切り出してもいいだろう。
俺はさやに、元の世界へ帰れることを告げることにした。
しかし・・・・、さやの質問に先を越されてしまった。
「直さん・・・・。直さんが無事に帰ってきたってことは、史生さんも雍也さんも大丈夫だったんだよね?」
・・・・ズキッ・・・・・・、と、胸の奥で音がした。
本当は触れられたくないことだったけど、さやも心配してくれてたんだ。聞かないほうがおかしいよな・・・・・・。
俺はできるだけ自分の表情を変えないように意識して、
「もちろん・・・・・・」
やっとそれだけ答えることができた。
さやには、俺の動揺はわからなかったようだ。
大きく胸を撫で下ろして、安心したように何度も頷いていた。
これ以上、この話を続けていたら、俺もやばいよな・・・・・・。
俺は気を取り直して、さやを見つめた。
「・・・・さや、帰ろう、1994年へ・・・・・・。Bluesのところに連絡が入ったんだ。もう帰っていいって・・・・・・」
突然の宣告に、さやは直ぐに反応して、いつものように瞳を大きく見開いていた。
「・・・・・・ほ・・・・、ほんとに・・・・?」
俺は黙って頷いた。
「今すぐ帰るの?」
「帰りたくないのか?」
さやは俺の質問に、一瞬 『意地悪言わないでよ』 とでも言いたそうに睨んでいたが、直ぐ笑って、
「早く帰りたい」
そうきっぱりと答えた。