。。。chapter26
全てを終えて、再び覚めない夢の中へ・・・・。
**** 1994年 8月 ****
・・・・・・もう着いたのだろうか・・・・?
何だか急に周りの空気が暑くなったような気がして、俺はそう思った。
気絶してしまっていたのか、それともずっと意識があったのか・・・・、よくわからない。
けれど多分、もう帰ってきたのだろう。
そう確信して、俺はゆっくりと瞼(まぶた)を開いてみた。
薄暗い、閉ざされた空間だった。
その中で、俺は壁に持たれて座っていた。
・・・・・・どこだ・・・・?
様子を探るために立ち上がろうとしたのだが、何故か身体が重くて、上手く動けなかった。
不思議に思ってよく見てみると、俺の腹の上には、さやがうつぶせていたのだった。
・・・・クスクスッ・・・・・・、そっか、ちゃんと一緒に、無事帰って来たんだ・・・・。
思わず笑ってしまった振動で、さやが目を覚ましたようだ。
静かに、頭や腕を動かし始めた。
「・・・・おはよ、さや・・・・・・」
俺の声に反応して、さやはゆっくり首を捻ると俺の方に視線を向けた。
「そんなにごそごそやってくれると、お腹がくすぐったくてしようがないんだけど・・・・」
まだ眠そうにボンヤリとしていたさやの瞳が、急にパチッと開いた。
・・・・と同時に、さやは飛び起きて俺から離れた。
「・・・・・・ごめんなさい・・・・。重くなかった・・・・・・?」
――― まったく・・・・、そんなこと気にしてるわけじゃないのに・・・・・・。
さやは本当に済まなそうな表情で、俺を見つめていた。
けれど、その表情も少しずつ変わっていった。
「直さん・・・・、高橋くんに戻ってる・・・・・・。制服着て・・・・・・」
そう言って、さやは俺を懐かしげに眺めるのだった。