小説『Indigo Moon ―――君と見つめた衛星(つき)――― Teen’s編 【完結】』
作者:杜子美甫(Indigo Moon ――君と見つめた衛星(つき)――)

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やばいよなぁ・・・・・・。

俺たちは気まずい思いをしながら、さやの方へと顔を向けた。
さやはちょっと意地悪気な勝利の笑みを浮かべながら、テーブルに頬杖をついて、俺たちの食べっぷりを満足そうに眺めていた。

「ほーら、言った通りでしょ? ケーキにはちょっとうるさい『さやちゃん』の言うこと、信じてくれないんだもん」

そう言って、さやは自分のケーキをつつき始めた。

「ん。おいしいっ!」

・・・・・・クスッ、確かにすっげーうまいけど・・・・・・。
それよりなにより、ケーキを食べてるさやの表情は、とろけそうなくらいほころんでいて、可愛かった。

そして、俺が思わず笑ってしまったのをさやも見逃さなかった。

「なーによ?」
ちょっと口先を尖らせて、聞いてくる。

「いや・・・・、本当に旨そうに食うんだな・・・・、と思ってさ」
そう答えると、

「だって、本当においしいんだもんっ。ねっ?」
と、黙って俺たちの会話を聞いていた史生を、話に引き込んだ。

「えっ? ・・・・うん、すごくおいしい・・・・・・。
僕もケーキに関しちゃ、うるさい方なんだけど、これは食べたことなかったな。どこで買ったの?」

「“ラグタイム”ってとこ・・・・、知ってる?」
さやは自慢気に答えた。


“ラグタイム”だって・・・・?

知ってるよ。近くだし、コーヒーがおいしいから、みんなよく行ってるとこだけど・・・・、ケーキなんてあったっけ?


俺が思ったことをそっくりそのまま尋ねたのは、史生の方だった。

「よく知ってるよ。コーヒーがすごくおいしいよね・・・・。
ラボのみんなとよく行くけど、コーヒー専門でケーキなんてメニューにないし、見たことないよ」

「うん、そうなんだってね。けど、密かに予約しておいたら、焼いてくれる裏メニューがあるんだって。
ふみくんが教えてくれて、予約入れておいてくれたの・・・・・・。
ここまでされたら、悪戯の一件、許さないわけにはいかないでしょ?」

さやがクスクス笑いながら、説明してくれた。

へぇ・・・・、意外なもんだな。結構、いろいろおいしい店押さえてたのに、そんな近くのポイント、見逃してたんだ。

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