やばいよなぁ・・・・・・。
俺たちは気まずい思いをしながら、さやの方へと顔を向けた。
さやはちょっと意地悪気な勝利の笑みを浮かべながら、テーブルに頬杖をついて、俺たちの食べっぷりを満足そうに眺めていた。
「ほーら、言った通りでしょ? ケーキにはちょっとうるさい『さやちゃん』の言うこと、信じてくれないんだもん」
そう言って、さやは自分のケーキをつつき始めた。
「ん。おいしいっ!」
・・・・・・クスッ、確かにすっげーうまいけど・・・・・・。
それよりなにより、ケーキを食べてるさやの表情は、とろけそうなくらいほころんでいて、可愛かった。
そして、俺が思わず笑ってしまったのをさやも見逃さなかった。
「なーによ?」
ちょっと口先を尖らせて、聞いてくる。
「いや・・・・、本当に旨そうに食うんだな・・・・、と思ってさ」
そう答えると、
「だって、本当においしいんだもんっ。ねっ?」
と、黙って俺たちの会話を聞いていた史生を、話に引き込んだ。
「えっ? ・・・・うん、すごくおいしい・・・・・・。
僕もケーキに関しちゃ、うるさい方なんだけど、これは食べたことなかったな。どこで買ったの?」
「“ラグタイム”ってとこ・・・・、知ってる?」
さやは自慢気に答えた。
“ラグタイム”だって・・・・?
知ってるよ。近くだし、コーヒーがおいしいから、みんなよく行ってるとこだけど・・・・、ケーキなんてあったっけ?
俺が思ったことをそっくりそのまま尋ねたのは、史生の方だった。
「よく知ってるよ。コーヒーがすごくおいしいよね・・・・。
ラボのみんなとよく行くけど、コーヒー専門でケーキなんてメニューにないし、見たことないよ」
「うん、そうなんだってね。けど、密かに予約しておいたら、焼いてくれる裏メニューがあるんだって。
ふみくんが教えてくれて、予約入れておいてくれたの・・・・・・。
ここまでされたら、悪戯の一件、許さないわけにはいかないでしょ?」
さやがクスクス笑いながら、説明してくれた。
へぇ・・・・、意外なもんだな。結構、いろいろおいしい店押さえてたのに、そんな近くのポイント、見逃してたんだ。