「ふみが教えてくれたって? よく知ってたな・・・・」
独り言のように呟いた俺の言葉に、さやがすかさず答える。
「お母さんに教えてもらったんだって」
そっか、みぃや姉さんなら知ってるかもな・・・・・・、納得。
俺は思わずうなずいてしまった。
「それにしても、そこまでするなんて、よっぽど一所懸命だったんだな・・・・」
「うん、二人とも必死・・・・、って感じだった。
『どうして?』って聞いたら『直兄に“絶交”なんてされたら、俺たちどうしていいかわかんないから・・・・』って言ってた。
『直兄は、俺たちの命を救ってくれたんだ。命の恩人で、俺たちの大切な人なんだ。
父さんからも、いつも言われてるし・・・・・・。あ・・・・、けど、父さんから言われてるだけじゃないよ。
俺たちホントにそう思って、一番尊敬してる人なんだ。
だから・・・・、だから、絶交なんて絶対ヤダ・・・・・・!』って、すっごい真面目な顔で訴えてたよ」
さやは、その時のふみの様子を思い出したのだろうか、優しく微笑いながら、俺に話してくれた。
ふ――ん・・・・・・。
俺たちの命を救ってくれた・・・・・・、か。
そんな風に思ってくれてたのか。
確かに俺は、すずの命を救ったことになっている。
18歳の夏に、ローラースケート場横の坂道で、すずが乗ったまま滑り落ちているバギーカーを全速力で追いかけて、
止めたのは良かったんだけど、俺自身は頭をぶつけて、即 隣の病院に運ばれたんだ。
・・・・・・けどさ、それって18歳の俺自身がやったことじゃない。
今のシチュエーションで言うと、18歳になっているEightがやったことだ。
そして、その病院で、史生に初めて逢ったのだった。ま、それはこの際、関係ないか・・・・・・。
とにかくそういうわけで、俺はふみやすずにとって、命の恩人になっているらしい。
・・・・・・?
20’sの記憶を辿っている途中で、何となく妙な感覚に襲われた。
なんか変な感じがする・・・・。
けど、何だろう・・・・? はっきりしないな・・・・・・。
そんな時、さやがまた史生に話しかけている声が耳に入ってきた。
「ねぇ、史生さんもあの子たちに何か悪戯された?」
「うん、ふみくんに、『100m走の競走しよう』って言われたよ。ふみくん、すごく足が速いんだよ。
だから、『俺を負かしたら、直兄の友達だって認めてやるよ』って言ってね・・・・」
史生の答えにさやは興味津々だ。
「・・・・で? ・・・・・・で?」
次の言葉を催促している。