「うん・・・・、わかってるけど、ひどく干渉してくるからね、ユキは・・・・・・。
検診も行かなきゃって思うけど、今度の打ち上げが終わるまでは、暇が取れなくって・・・・。
あ・・・・、大丈夫だよ。ちゃんとラボ専属のドクターに診てもらってるし、僕の不在が多いだけで、ユキや家族には、
連絡先教えてあるんだからね・・・・・・」
さやが心配しないようにと、史生はそう説明していた。
俺も史生が病院の検診に行ってないと聞いたのは初耳だった。
そりゃあ、征生も心配だろう。
征生は、MZグループ出資の総合病院で、心臓外科医として勤務しているんだ。
高校のときに同じ病院で手術を終えた史生は、その後もずっと、定期的に受診を続けている。
史生の主治医は、循環器内科のドクターが担当していたんだけど、征生は研修医の期間が終わると、
すぐに史生の担当を希望し、その熱心さが認められて、今では外科医ながら、内科に通院する史生の主治医になっているのだった。
昔から、『史生の病気は俺が治す』って言ってたもんな・・・・・・。
すごいよな・・・・・・。
俺が記憶を辿って、一人で考え込んでいる間に、さやと史生は話を別の方向に進めているようだった。
急にまた、俺に話を振られて、ちょっとびっくりしてしまった。
「・・・・・・、ねぇ直さん。いくら仕事が忙しいって言っても、日曜日くらいはお休みなんでしょう?」
「え・・・・? ああ、いや、日曜は発射台のある島へ下見に行かなきゃいけないんだ。
だから・・・・・・、そう、明日の土曜の夜から、史生と雍也と一緒に行って来るよ。
帰ってくるのは・・・・、多分日曜の夜遅くかな・・・・・・」
俺の答えに、さやはちょっと不服そうだ。
「え―――? お休みもないの・・・・?」
「さやちゃん・・・・、人工Moonの打ち上げが終わるまで、休んでる暇はないくらい、僕等には予定がギッシリなんだよ。
さやちゃんならわかってくれるよね・・・・?」
さやにうまく答えられず、詰まっている俺に代わって、史生がさやを宥めてくれた。
「う・・・・ん。けど、一緒に行きたいとこがあるのにな・・・・」
さやはしばらく考えるようにうつむいたあと、ニッコリ笑って顔を上げた。
「じゃ、お休みが出来たら・・・・、ね? 約束だよ・・・・?」
「ああ、もちろん」
俺はホッとした。
さやのことだから、ちゃんとわかってくれるだろうと思ってはいたものの、やっぱり女の子だもんな・・・・。
構ってやんないと、拗ねちゃうし・・・・・・。
でも、ホントによかった・・・・。
その夜は、話をするのもその辺で切り上げて、史生の部屋に帰ることにし、俺と史生は帰り道を急いだのだった。