。。。chapter14
「史生(シオ)、おまえ準備できたのか・・・・?」
自分の準備が出来てしまった俺は、史生に部屋の外から声をかけてみた。
―――――――。
返事がない・・・・。確か、部屋にいたはずなんだけどな。
俺はドアノブに手をかけると、ゆっくりとドアを開けることにした。
ほんの少しだけドアが開いた時、中から何か物音がしているのに気づいた。
・・・・・・、・・・・・・。
何の音だ?
カタッ、タタ・・・・。カタン、タン・・・・・・。
・・・・・・キーボードを叩いてる音か。それにしちゃ、妙にリズミカルだよな・・・・。
微かに聞こえる物音は、史生がコンピュータを扱ってるのだと納得して、俺は史生がそこにいることを確信した。
ドアをスッと開いて、部屋の中に足を踏み入れると、確かに史生はいた。
しかし、俺に背を向けた格好で座ったまま、見向きもしない。
ヘッドフォンをつけて、頭を微妙に動かしながら、リズムを取っている。
・・・・・・な―んだ。この音だったのか・・・・。
キーボードはキーボードでも、史生が叩いているのは、デジタルピアノの鍵盤だった。
ヘッドフォンをつけて、サイレント演奏にしているから、俺にはカタカタという鍵盤の動く音しか聞こえなくて妙だし、
史生は俺が部屋に入ってきたのに気づかない。
調子良さそうに指を動かしている。
しばらくして、史生の指と身体の動きが止まった。
どうやら一曲弾き終えたのだろう。俺は後ろから拍手をしてやった。
静かに身体の動きを止めていた史生が、ビクッとして振り返る。
ヘッドフォンを外しながら、俺を見上げて、
「やっぱり直は突然だね・・・・」
と、微笑った。
「何が突然・・・・だよ。おまえがいつも返事してくれないんじゃないか・・・・・・。それより、もう準備は出来たのか?」
どうせ文句言ったって、全然史生にはこたえないことを思い出して、俺は話を切り替えた。
「うん、大丈夫だよ。たった一泊だし、何もなくったって平気なくらいだからね。それより、さやちゃんどうだった?」
「え? ああ、まぁ・・・・。別に変わりないよ・・・・」
史生の質問に、ちょっと詰まってしまった俺だった。