小説『2対1』
作者:カノン()

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そして、スーツメンがトリガーを引きそうになったその時……。
『ぎゃいぃん!』
「なっ!何だっ!?」
スーツメンの持っているサイレンサーの銃口を、一筋の鋭い弾丸が貫く。
弾丸の飛んできた方向から、覆面の人物が現れる。

「くそっ!誰だかしらねぇが、よくもやってくれたな!!俺の後ろ盾にはあの、有名マフィアが……」
「……」
『バンッ!バンッ』

覆面はスーツの脅しに対して、まったく動揺せず銃を放射する。
一つの弾丸は、スーツメンの銃に直撃。たった一発でサイレンサーをバラバラに解体。
もう一つの弾丸は頬を掠める。スーツメンは頬を伝う血を見て、恐ろしくなったのかガクガクと震えながら後退りする。

「ひぃい!お、覚えてろよ!」
『バンッ!』

また銃声。しかし今度は覆面が放った弾丸ではない。
弾丸はスーツメンの太ももにヒットする。太ももからは鮮血が迸り、スーツメンは太ももが痛むのだろう。ジタバタと悶え苦しんでいる。その、悲惨な光景に、俺は目を逸らす。

「不甲斐無い部下が不快感を、催したことは本当に申し訳なかった。謝罪の意として、我が部隊の恥さらしを徹底的に教育することを約束しよう」
「……」
「そして、もうひとつの謝罪の意を込めて……邪魔な貴女達をを全力で殲滅させていただく」
「っ!?」
「えっ!?」

流石に今の状況に、二人は驚き及び恐怖を覚える。
数十人のスーツメンに俺らは囲まれてしまっている。全員が銃を構えている。

「では、君たちを手早く片付けて、ターゲットを撃退することにしよう。総員構え。撃て!」
「くっ……」

俺は目を瞑る。
……。…………。……あれ?痛くない。死んでない?
てかなんだ……この禍々しい殺気は一体?

「た、隊長っ!?あ、あれは一体!?あの、鬼は一体!?」

目を開けてみると……。
俺の目の前には、一体の悪鬼。ではなくこれは桃音の変身版だ……
やべぇ……忘れてた……。

「ダ…マ…シ…タ……ナ……」
「ひぃい!」
「……(ガクガク)」


やばい。
正直、銃を持ったスーツメンより、標識を持った修羅……では桃音の方が怖ぇ……
なんか、標識が焔を帯びて、大剣みたいになってるし。ロープレの最強装備みたいになってるし……。これは、エクスカリバー?

銃を見ても堂々としてられた覆面さんも、恐怖で震えてるよ……

「く、くそ!鬼でも銃には敵わないはずだ!撃て!!」
さっきまで『殲滅する』とかかっこつけていた隊長さんですら、声が震えている。てか、一つ間違えてる。

……銃なんぞで敵うはずないだろ?こいつはエンゲージしちゃならない敵なんだよ。
お前、とんずらってアビリティ知ってるか?知らなかったらお前の負け。ゲームオーバー。

「タテツクノカ?コッケイダ」

桃音は標識を地面に突き刺す。すると、同心円状の赤い波動が放たれる。
波動は、隊長以外の部下全員に直撃。部下は宙に浮く。粉々になった銃たちも宙に浮く。

「ひぃいい……」
隊長は、さっき撃たれた部下と同じように、恐怖で後退りする。そして、姫野さんが持っていたのと似た腕時計を弄くりだす。
アイツ逃げるつもりか?
覆面さんは、隊長が逃げることを察したのか、逃がしてたまるかと銃を構える。が、俺はそれを止める。

「ニゲラレルトデモ?」
そう、桃音から逃げる?もう、遅い。遅すぎる。
桃音は、まるで瞬間移動のように隊長の目の前に。地面に足が触れただけで、地面が揺らぐ。

「そ、そうだ!こうしましょう!うちの部隊に入ってはどうですかな?そうすれば、いい事三昧。もう望んだことなら何でも……」
「ザレゴトヲ」

赤を帯びた標識が、隊長の腹部を直撃。めり込んだ標識を見ると、敵ながら情けを掛けたくなる。
隊長は白目をむいている。ピクリとも動かない。桃音は、隊長を振り払う。

「ふぅ…………」
「一件落着か」

俺が一息つくと、覆面さんが俺に続いて安心したように答える。
ってこの声は……逃げたんじゃなかったのか?

「まさか、俺を助けてくれたんですか?姫野さん?」
「えっ!?あ、そういえば声出してしまった……」

姫野さんは、素顔を隠す意味がなくなったので覆面を外す。

「ま、とりあえずお礼を。ありがとう。そして、警告を」
「警告?」
「勘違いしているようですが、本番はこれからです。こんどこそ、逃げてもかまいませんよ?」
「本番?どういうことだ?さっきの敵なら、全員倒しただろ?」

どうやら、今の状況を姫野さんは理解していないようだ……
さぁ……俺はここから、どう逃げようか?


「デハ、ココロノジュンビハデキタカ?デキテイナクテモ、オマエニミライハナイガ」


桃音は標識を構える。何故か俺には桃音がさっきよりも臨戦態勢に入っているように思える。
……俺明日、学校行けるだろうか?

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