小説『2対1』
作者:カノン()

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俺らが変な円盤で飛ばされた先は……。
紛れもなく、いつものバスケ公園。桃音より早く来れたのはいいのだが……。

「あ、あの、姫野さん……何で俺の太ももに座ってるのかな?これに何の意味が?」
「……これは、転送したときの起動に由来すること。誤作動ではない」
「うん。それはいいけどさ……そ、その意外とや、やわらかいね……」
「……意外って言わなくても。顔が真っ赤だしニヤけてて、気持ち悪い」

姫野さんが不機嫌そうにそっぽを向いて、俺から立ち上がろうとしたその時……。

「ハァハァ……よくも騙したわね!ってな、何してるのよぉ〜〜!!先に来たからってこんの変態がぁ〜〜〜!!」
「ぐはっ!バスケットボールは人に当てるものじゃ……ち、ちょっとまて、誤解だ!俺はわざと姫野さんとくっついているわけじゃ……って桃音が手に持っているのは、バスケ公園の前の標識だよね?『止まれ』だよね?標識にも書いてあるじゃないか!と、ま、れ!俺は、別に姫野さんのお尻が極上に柔らかかったなんて……」
「……ド変態に制裁を」
「くそっ!話は既に聞こえていないってか……。そうだ、姫野さん!今こそあの怪しいトランクの力を……って姫野さんがいない!まさか、危険を察知して逃げたってのかっ!?」
「……ぐるるるるるる」
「ひぃぃい!目がもう既にイカれてらっしゃる!兎に角、ここから出なければ……」
「くらえ変態!正義の鉄槌。標識セイバーぁぁあああああああ!」

桃音の怒りの熱を帯びて赤くなった標識を間一髪で避ける。標識はバスケ公園のコートに深くめり込んでいる。コート地割れしとる……。修繕費はどうするおつもりで?
俺は修羅の如く豹変してしまった桃音から、距離を置くためにひとまずバスケ公園を出ることに。目指すは、バスケ公園横にある森の茂み。森の茂みは薄暗い上に木がひっきりなしに密集しているため、隠れるのにはうってつけの場所だ。

「よしっ!ここならばれない……って今何かいなかったか?」

今、森の中で黒い何かが動いた気が……。
ん?また動いた……。あれはスーツ……あれは、人っ!?

「怪しいな……何か独り言言ってるし……」

こちらはまだ怪しいスーツメンに気づかれていない。俺は本日二度目の好奇心的行動を発動して、ばれない範囲まで近づいて独り言を聞き取ることに。
てか、独り言ではないな……。あれは、無線機か?

『……こちら、コードナンバー3500。次期議長候補、姫野宗雲の家系に繋がる可能性が高いとされる、『竹霧』を発見。どうしますか?』
『了解。まだ、過程の段階だからな。公にばれない様にサイレンサーを使用して射殺せよ』
『はっ!』

今なんて言った?竹霧?それは、明らかに桃音の名前じゃねーか!
しかも、今サイレンサーを使って、射殺っていたよな……。
てか、姫野宗雲って……。姫野さんとの関連性は……。

「どうすりゃいいんだ……」
俺は悩む。まだ、死にたくはない。あっちに突っ込んだら、命の保障はない。相手の銃に対して、俺は生身。その差は歴然だ。
……けど。

「このまま、何もしないで桃音が死ぬのを見ているなんかできねぇ……」
絶対、捨て身の特攻かけて桃音の銃殺を阻止したほうがいい!少しくらいの怪我は仕方ない!

「うおぉぉぉおおおおお!桃音はやらせねぇえええええ!」
「なにっ!」

スーツメンは俺の大声でやっと俺に気づく。そして、スーツメンは慌ててこちらに銃口を向けた。
そして、スーツメンがトリガーを引きそうになったその時……。

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