小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>



〜16話〜




Side 一誠


 ライザーが、去った後今日の部活は中止となった。部長と朱乃さんは作戦会議をするために、旧校舎に籠っている。

「十日後か・・・・・・・・」

 すぐじゃないか。ナギは襲い掛かってきた相手を簡単に倒していたが、俺が相手にしたら負けていたと思う。

「どうにか、強くならなきゃな・・・・・・・・」

 俺は左手を見る。上限のない力の増加を可能にする『|赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』。こいつを使いこなせれば話は別だろうが、俺にそこまでの力量はない。むしろ、人間のままで、悪魔や堕天使と戦える渚がすごいのだろう。まあ、魔力で強化したりしているだろうが。

「はあ・・・・・・・・・・・・。ああもう! やめやめ!」

 部長は結婚したくないと言っていた。上級悪魔の家柄とか複雑なことはわからないけど、俺は部長の下僕として精いっぱい頑張るだけだ! 修行をもっと頑張ろう、うん!

 俺はそう思って、風呂に入っていないことに気づいた。なので風呂場に行こうと決める。やることを決めたので、心なしか先ほどより気分がいい。

(明日、部長に修行についてお願いしよう)

 服を脱ぎ捨てながら、そんなことを考えて、いざ、風呂に入ろうとして扉を開けた時だった。

「あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「な・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 風呂場でアーシアと出くわせた。

(お、落ち着け! 落ち着いて現状を確認するんだ)

 俺 ← 風呂に入ろうとしていたのだから、当然全裸!

 アーシア ← 風呂に入っていたんだから、当然全裸!

(入ってたのかぁぁぁあぁぁぁ!)

 考え事していたから、まったく気が付かなかった!

 アーシアの体は当然濡れていて、お湯に濡れた髪はぴったりと肌に張り付いている。

(なかなかいいプロポーションだな・・・・・・)

 思わずまじまじと見てしまう。細く引き締まった腰。小ぶりなお尻が何とも言えない。細くもなく太くもない太もも。スリットから見えたら俺は撃沈するだろう。

 そして、おっぱい! 服の上からじゃわからなかったが、なかなか悪くない大きさだ。

(クソッ! なぜスリーサイズスカウターがない! 今度元浜から教えてもらわなければ!)

 アーシアの裸体を見ながら、そう決める。

 って、まずい! 俺も全裸だったんだ。早く、息子を――――

 アーシアを見ると、きょとんとしていたアーシアの視線が徐々に下に下がっていく。

「ホワァ!」

 ど、どうだ・・・・・・・間に合ったか・・・・・・・? 思わず、意味不明な声を上げてしまったが、そんなことはどうでもいい。今は見られたか見られてないかが重要なのだ。

「――――はうぅ」

 ふっ・・・・・・・・どうやら間に合わなかったらしい。アーシアは全身を紅潮させて、顔を背ける。

(ちょっと、隠そう、隠そうよ! 見えてるから! それとも、隠すの忘れるくらい俺の息子はグロいですか!? でも、眼福です! ありがとうございます!)

 そんなことを考えていたが、ふと、解決方法を思いついた。

「ご、ごめん! 俺出てくから!」

 そう、退避である。これですべて解決する。そう思ったが―――

「すみません。そ、その男性のを見たのは初めてでして、すみません」

 なぜかアーシアに腕を掴まれて、引き止められていた。しかもなんか「すみません」って謝られてる。悪いのは俺なのに。

「い、いや、俺も悪かったよ・・・・・・・・。確認せずに風呂場に入ってきちゃったし。それにアーシアの・・・・・・・いろいろ見ちゃったし」
 
 俺もアーシアに謝罪する。ホントにちゃんと確認するべきだった。住む人が増えたんだから注意すべきだった。だが、アーシアの裸は脳内メモリーに保存したぜ! これは後悔も反省もしてない!

 ちなみに、渚が入っている時に風呂場に入ってしまい、鼻血を出して気絶したのは黒歴史だ。

 そんな時だった。不意に風呂場の扉が開く。

「アーシアちゃん。バスタオル、ここに置いて―――――」

 現れたのはお母様でした。タオルを洗濯機の上に置きに来たらしい。しかし、俺とアーシアを視界に映すと、そのままの姿勢で固まってしまった。

 ・・・・・・・・・・・・フ、フハハハハハハ! 言い訳できねぇよ、こんちくしょう! どう見ても風呂場で情事をしようとしている男女のようにしか見えない!

 母さんは、カクカクとした動きで風呂場を出ると、叫んだ。

「お、お父さーーーーーーーんっ! 渚ぁぁぁっ!! 孫が! 孫ができるわよーーーーー!」

「「なんだって!?」」

 父さんと渚の声が聞こえた。

「か、母さん! それはホントなのかいっ!」

「そうだよ母さんっ! ホントなの!? 僕はこの歳で叔父さんにはなりたくないよ!? 兄さんゴムしてなかったの?!」

 俺は全裸のまま、お風呂場を飛び出した。アーシアが唖然としているが今は構ってられない。俺は両手で顔を覆いながら、自室に駆け込む。俺は自室で強く強く思った。

(死にたい!! 誰か俺を殺してくれぇぇぇぇぇぇ!!!)





■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■





 次の日の朝。

 両親は渚を連れて深夜営業のディスカウントショップに行って、赤ちゃん関係のものを買ってきたらしい。俺がどんなに言い訳しても、

「いいのよ、わかってるから。最近は出来ちゃった結婚も容認されるわ。安心しなさい。あー、私、初孫は女の子がいいわ」

「俺もおじいちゃんかぁ・・・・・・・・。男の子なら鯉のぼり新しく買わなくちゃなぁ。俺の家もインターナショナルになったもんだ。英語、習おうかな?」

「兄さん、僕はこの歳で叔父さんにはなりたくないけど、子供ができたなら素直に祝福するよ」

 と言って、まともに話してくれなかった。

 もうダメだ。渚だけはまともだと思っていたのに、父さんと母さんに洗脳されているらしい。ちくしょう・・・・・・。

「と、まあ、兄さんをからかうのはこれくらいにして」

「おい! からかっていたのかよ!?」

「当たり前じゃないか。わからなかったのかい?」

 からかわれていたのはイラッとくるが、渚はまともだったので言うことはない。安心した。

「兄さん、アーシアさんにちゃんと話しておくんだよ」

「それくらいわかってるよ」

 渚にそう言って俺はアーシアと話をしにいった。


Side out





■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■





Side 渚


「ひーひー」

「ほらほら、兄さんファイト!」

 兄さんがアーシアさんと話をしに行ったしばらく後に、リアス先輩がやってきた。なんでも、修行をするために山に行くらしい。今はちょうど登っているところだ。

 そして、兄さんは背中に巨大なリュックサックを背負っている。まあ、僕も同じくらいの大きさの奴を背負っているんだが、魔力を使っているので苦でもない。魔力様様である。

「ほら、イッセー。早くしなさい! 」

 遥か前方から、リアス先輩が檄を飛ばしてくる。その隣にはアーシアさんがいる。

「・・・・・・あの私も手伝いますから」

「いいのよ、イッセーはあれぐらいしないと強くなれないわ」

 二人の会話が聞こえる。アーシアさんは本当にやさしいな。

「部長、山菜摘んできました。夜の食材にしましょう」

 祐斗が巨大なリュックサックを背負いながら、途中で山菜を摘み、山道を登っている。

「・・・・・・・ナギ先輩、先に行きませんか?」

 兄さん以上に巨大なリュックサックを背負いながら、小猫ちゃんがやってきた。その荷物の量はさすが|戦車(ルーク)といったところだろう。

「んー。いいよ」

「ちょっ! 渚! 見捨てないで!」

 兄さんが僕を引き留めようとするが、僕は構わず先に行くことにした。

「それじゃあ、兄さん。先に行ってるよ」

「・・・・・・・・・・・お先に」

 僕と小猫ちゃんはペースを上げて、山道を登って行く。

「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 しばらくすると、遥か後方から兄さんの叫び声が聞こえた。

 結局、僕たちが目的地に着いてから、数分後に兄さんはやってきた。死にそうになっていたのは言うまでもない。





■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■




 僕の目の前にある木造の建物は、グレモリー家の所有物らしい。

 普段は魔力で隠蔽されていて、人前には表れない仕組みになっているようだ。

 兄さんはリビングで床に倒れこんでいる。女性陣は着替えるために二階に上がっていった。

「僕も着替えてくるね」

「それじゃあ、僕も」

 祐斗は青いジャージを持って浴室へ、僕は黒いジャージを持ってトイレで着替えることにした。

「「覗かないでね」」

 声が揃ったので、祐斗を見ると、祐斗もこちらを見ていた。

「マジで殴るぞ、この野郎どもがっ!」

 疲れている兄さんが、睨んできた。

「そんなこと言ったって、兄さん前に僕の裸見て、鼻――――」

「すみません! お願いですから言わないでください!」

「わかったよ」

 見事なDO☆GE☆ZAだったので、黙ってやることにした。祐斗が首をかしげているが、気にしない。

 僕はトイレに向かった。



=数分後=



 着替え終わって、トイレから出ると女性陣、並びに祐斗はすでに着替え終わっているようだ。あとは兄さんを待つのみらしい。

「ナギ、さっき言いかけていたのは何だったんだい?」

 祐斗が話しかけてくる。

「うーん・・・・・どうしようかな? 教えてもいいって言えばいいけど」

「何の話?」

 リアス先輩が話に混じってきた。

「いえ、さっきナギが何か言おうとしたらイッセーくんが土下座したんですよ。それで何を言おうとしたか気になって」

 祐斗がリアス先輩に説明する。

「・・・・・・・・私も聞きたいです」

「あらあら、私も興味がありますわ」

「あ、あの、私も聞きたいです」

 すると、全員が話に混ざってきた。みんな、興味があるらしい。

「イッセーが土下座ね・・・・・・・・。ナギ、なにを言おうとしたの?」

「・・・・・・・・気になります」

 アーシアさんはこくこくとうなずいている。朱乃先輩も笑みを浮かべながら、僕を見ていた。

「あー・・・・・・・・みんなが知りたいんなら仕方ないですね」

 僕は観念して話すことにした。

「兄さんがまだ悪魔になる前・・・・・と言っても、二カ月くらい前ですか? その位だったと思います」

 みんなが聞き入っている。なんか変な感じがするな・・・・・・・。

「僕がお風呂から上がって、体を拭いていたら兄さんが入ってきたんです。僕は驚きましたが、同性なのであまり気にしなかったんです。でも、兄さんはそうじゃなかったみたいで、鼻血出して気絶したんですよ」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 一同、無言だ。

「ちょっと集合!」

 突然リアス先輩が、声を上げる。僕を除いた全員が少し離れたところで集まった。

「(朱乃・・・・・・どう思う?)」

「(しかたないかと)」

「(・・・・・・・・・必然です)」

「(同感です)」

 何やら、内緒話をしてうなずきあうと、こちらに戻ってきた。同時に兄さんもやってくる。

「イッセー・・・・・・」

 部長が兄さんに話しかけた。

「なんですか、部長?」

「ナギの裸を見て鼻血を出すのは仕方ないわ」

 あれ? 兄さんの方につくの?

その後、僕を除く全員に兄さんは慰められていた。


Side out

-20-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える