小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

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〜19話〜




 Side 渚


「おっと!」

 黄色ジャージを着た小猫ちゃんとの素手での組手をしている。今はボディを狙った一撃を回避したところだ。

「・・・・・・・・・当たってください」

 再び小猫ちゃんの攻撃を避ける。今度は足払い。バックステップで避ける。

 実を言うとこんな感じのことを、もう五分間以上続けている。小猫ちゃんが攻め、僕がそれを避ける。

「シッ!」

 女の子に手を出すのはいささか抵抗があるが、僕も攻撃を繰り出す。胴体を狙った蹴りだ。しかし、小猫ちゃんは容易に防ぎ、カウンターのように攻撃してくる。

 いかんせん、僕の攻撃が効かないのだ。小猫ちゃんは|戦車(ルーク)の特性を活かしているので、防御力が高い。|鞘に収まりし魔剣(スウァフルラーメ)を持っていればまだ違うだろうが、今回は素手での組手。魔力も身体強化以外は使用禁止だ。身体強化した攻撃でも、小猫ちゃんの防御は今のところ貫けない。僕の一撃が軽いのだ。

「ふっ!」

 子猫ちゃんのカウンターを避ける。さっきからずっとこの調子。小猫ちゃんの攻撃は僕には当たらないが、僕の攻撃も小猫ちゃんにはダメージにならない。千日手っぽくなってきたようだ。

「おーい。まだかー?」

 兄さんもさっきから同じような、攻防なので飽きてきたみたいだ。最初は高度な戦いを見るような目だったが、ずっと同じことの繰り返しじゃ仕方がないだろう。

「いったんここでやめにしない? このままじゃ結構時間がかかりそうだし」

「・・・・・・・・・・賛成です」

 鳩尾を狙ったパンチを避けながら、小猫ちゃんに提案すると、あちらもそう思ったのか拳を引いてくれた。

「おっ! やっと俺の番か!」

 座ってみていた兄さんが勢いよく立ち上がり、こちらに向かってくる。僕は兄さんと交代するように移動した。

 子猫ちゃんは、肩をぐるぐると回して戦闘態勢に入る。

 兄さんもボクシングのような構えをとった。

「・・・・・・・・行きます」

 子猫ちゃんがそう言って、兄さんに向かって駆け出した。小柄な体なので結構素早い。

「うわああああああああああああああああああああああああ!」

 さて、兄さんはどう対応するのかと思ったら、小猫ちゃんのボディーブローが兄さんに突き刺さっていた。そして兄さんはその威力で吹き飛んでいく。

(人が宙を舞う威力って・・・・・・・・当たらなくてよかった・・・・・・)

「あべしっ!」

 吹き飛んだ兄さんは、周囲に生えていた木にぶつかった。見かたを変えると、兄さんが木に抱き着いているようにも見える。なんて熱い抱擁なんだ・・・・・・・・。

「に、兄さん? 大丈夫かい?」

 声をかけると、兄さんは起き上がった。どうやら大丈夫だったらしい。さすが、悪魔頑丈にできている。それにどうやら小猫ちゃんは手加減したようだ。手加減しても人が宙を舞う威力には驚きだが。

「まだまだぁ!」

 今度は兄さんのほうから仕掛けるようだ。小猫ちゃんに向かって右腕を振りかぶりながら駆け寄っていく。

「・・・・・・・・・大振りすぎます」

 小猫ちゃんは兄さんのパンチを苦も無く避けると、小猫ちゃんのカウンターが兄さんの腹に決まった。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 再び宙を舞う兄さん。さっきと同じような軌跡を描いて木に向かっていく。

「ひでぶっ!」

 先ほどとは別の木に、熱い抱擁をしていた。

「う・・・・・・・・まだまだぁ!」

 多少、ふらついたが兄さんは立ち上がって、小猫ちゃんに向かって走っていく。本当に悪魔はタフだ。

 そして、兄さんは先ほど小猫ちゃんに言われたからか、今回はコンパクトに構えている。

「おりゃ!」

 小猫ちゃんの顔に向かって、右ストレートが放たれた。身長差のせいでボディに手が届きにくいのはわかるけど・・・・・・・なんだかなぁ・・・・・・・・。

 兄さんに攻撃された小猫ちゃんは、右ストレートを避けて伸びた状態の腕を掴み、一本背負いみたいにして、兄さんを投げた。

「ぬがあああああああああああああああああああああああああ!」

「ぐふっ!」

 再び、木に抱擁をかます兄さん。しかも今回は前宙をした後に木に抱き着いた。軽々男を投げ飛ばす小猫ちゃんの腕力に少し危険を感じる。

「・・・・・・・・・・・・弱っ」

 ぼそっと言ったみたいだけど聞こえてるからね? 起き上がろうとしていた兄さんがorzになっているじゃないか。心にグサッと刺さったみたいだよ。

 小猫ちゃんが兄さんのいるところまで移動する。

「・・・・・・・打撃は体の中の中心線を狙って、的確かつ抉りこむように打つんです」

 小猫ちゃんはそう言うと、シャドーボクシングのようにシュッシュッと拳を打ち込む真似をする。

 そうは言っても、素人の兄さんには当てることすら難しい気がする。今までに兄さんに武道の経験はないのだ。正直な話、10日でどうにかなるとは思えない。

 そして、小猫ちゃんは腕をぶんぶん回したあと、兄さんに拳の照準を定める。

「・・・・・・・・さ、もう一回です。立ってください」

 その後、兄さんは何回も宙を舞い、木に抱擁をしていた。


Side out





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Side 小猫


 イッセー先輩の相手を何度かした後、ついにイッセー先輩はダウンしてしまいました。

「大丈夫かい?」

 ナギ先輩が、イッセー先輩に声をかけるが反応は返ってこないみたいです。

「・・・・・・・無・・・・・・・・理」

 かろうじて、イッセー先輩はそう言った。まあ、少しやりすぎたかもしれません・・・・・・。

「小猫ちゃん、兄さんもう無理みたい」

 私の方を見て、ナギ先輩が言う。男だとわかっているが、相変わらず女の子みたいな容姿です。

「・・・・・・・・なら、さっきの続きをしましょう」

 私はそう提案する。避けられてばかりだったので、今度こそ攻撃を当てるつもりです。

「そうだね。そうしよう」

 イッセー先輩は休ませておいて、ナギ先輩と続きをすることになりました。

 ルールはさっきと同じで、素手のみ。魔力は身体強化だけ。そう言うルールです。

 お互いに距離を取る。5メートルくらいでしょうか? 私もナギ先輩もその気になれば一瞬で詰められる距離です。

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 私とナギ先輩はお互いに無言で向き合う。ナギ先輩は剣と同じで一撃必殺のカウンタータイプなので、構えも必然的にそういう構えになっています。左腕を前に出し、右手を引いたあからさまなカウンターの構え。

 このままでは埒があきません。渚先輩は基本的に攻めてこないので私が攻撃します。

「・・・・・・・・・フッ!」

 カウンターをもらわないように、なるべき隙のないパンチをジャブのように繰り出す。その際に、動くことも忘れない。足を止めてしまえば、格好の的ですから。

 ナギ先輩は時には体捌きで避け、時には左手で捌いていく。かなり本気の速度で攻撃しているつもりなのに、すべて見切られているようです。祐斗先輩の攻撃を見切っていたあたりで予想はしていましたけど、すごくやりづらいです。ガードすれば、私の力でガードの上からでも、ダメージは通せるのですがいなされてばかりなので、まさに暖簾に腕押しの状態です。

「ハァッ!」

 こちらの攻撃の合間の隙を狙ったカウンターの右ストレート。

「・・・・・・・・・・ンッ!」

 両腕をクロスして防御。私の駒は|戦車(ルーク)なので、ダメージにはなりません。まあ、部長と朱乃先輩が言っていた『|神討つ剣狼の銀閃(フェンリスヴォルフ)』というのをやられたら、防御の上からでもやられると思いますけど。

 私は攻撃して伸びているナギ先輩の右腕を掴んで引き寄せる。膂力は私の方が上なのでナギ先輩はこちらに引き寄せることができた。

「!?」

 突然引っ張られてナギ先輩は何とか振りほどこうとしているが、私ががっちりと掴んでいるので振りほどけない。

 私はそのまま腕を引っ張りながら、イッセー先輩にしたように背中を向け背負い投げのようにナギ先輩を投げる。

 投げられるのは予想していなかったようで、私の背負い投げは成功した。

「ガハッ!」

 なんとか受け身を取ったみたいですけど、背中から落とされて肺から空気が押し出されたようです。

 私はそのまま、ナギ先輩の上に馬乗りになる。

「・・・・・・・・・・・・私の勝ちです」

「僕の負けだ」

 ナギ先輩の顔の前に拳を突きつけて、勝利宣言をする。ナギ先輩は素直にそれを認めた。私はナギ先輩の上からどいて、倒れている先輩に手を差し出す。

「ありがとう」

 引っ張り上げられた先輩はお礼を言うと、服の埃を落とすためにジャージをはたいている。

「いやはや、まさかあそこで投げられるとは思わなかったな」

「・・・・・・・・・・・・油断大敵です」

「その通りだね。打撃しかないと思った僕が悪い」

 ナギ先輩は肩をすくめました。そこで、イッセー先輩の方をチラッと見ました。

「兄さんはまだダウンしているようだし・・・・・・・・もう一本お願いできるかな?」

「・・・・・・・・・・・・・もちろんです」

 私たちは再び構えをとった。

 その後、イッセー先輩が復活するまで私たちの組手は続く。イッセー先輩が復活したあとは、組合せと変えて、何回も組み手をやりました。


Side out


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