小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

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〜第20話〜




Side リアス


「ほーら、イッセー! 気張るのよー!」

「ナギくんも頑張ってくださいね」

 私と朱乃は、イッセーとナギの修行に付き合っていた。

「おおっす!」

「了解です」

 二人は険しい山道を背中に岩を縄で巻きつけて駆け登っている。さらにその上に、イッセーのほうには私が、ナギのほうには朱乃が岩に座っている。本当はナギのほうにはだれも乗らない予定のはずだったんだけど、朱乃が協力してくれることになった。最近、妙に朱乃がナギの近くにいる気がするのは気のせいかしら?

「ナギは魔力のほうはやらなくていいの?」

「大丈夫です。兄さんと一緒にやった時に、いろいろ新しい案が出たんで試しましたけど、問題ないです。朱乃先輩のおかげですね。それにこれにも魔力は使いますから修行になりますし」

「あらあら、そう言ってもらえると手伝った甲斐がありますわ」

 ナギは魔力関係のほうは問題ないようね。新しく考えた魔術についてかなり気になるけど・・・・・・・・・・・。また|神討つ剣狼の銀閃(フェンリスヴォルフ)のようなものじゃないでしょうね?

「それより部長? これいつまでやるんですか?」

 もうこれをやりはじめてからそれなりに時間が経っているので、イッセーはそろそろ限界のようだ。

「そうね・・・・・・・・・あと2往復ってところかしら?」

「そのぐらいでちょうどいいと思いますわ」

「イッセー、ナギ、あと2往復よ」

「わかりました」

「それじゃあ、ペースあげますよ! 朱乃先輩!」

「わかりましたわ」

「お先に失礼します。リアス先輩」

 ナギはそう言うと、走るペースを上げて私たちを置いて行った。

「イッセー! 負けちゃだめよ! こっちもペースを上げなさい」

「わっかりましたー!」

 私たちはナギと朱乃の背中を追いかけた。




2往復後




 結局、イッセーはナギに追いつけることはなかった。

「・・・ゼェ・・・ゼェ・・・ゼェ・・・・・」

 イッセーは地面に大の字になって倒れている。

「すぅ・・・・・・はぁー」

 ナギは深呼吸して息を整えていた。元から運動していたナギと運動をしていなかったイッセーでは差があるのは仕方ないわね。

「ほら、イッセーにナギ、次は筋トレよ。腕立て伏せね」

「へ、へーい・・・・・・・」
 
「了解です」

 基礎能力が不足しているイッセーにはほかの部員より練習量を多くしているけど、悪魔だからできることだ。それに余裕とは言わないけど、ついてきているナギは本当にすごいわね。

 腕立て伏せの姿勢になったイッセーの背中に岩を乗っける。魔力を使っているので楽にできる。

「うう・・・・・・」

 まずは一個。

「うぬぬ・・・・・・」

 そして二個。

「ふぬぬぬ・・・・・・・」

 最後に私が乗って準備は完了だ。イッセーの腕はプルプルと振るえている。ナギのほうも朱乃が岩を二個乗っけて、その上に朱乃が座った。

「ナギくん・・・・・・・大丈夫ですか?」

「・・・・・・・大丈夫です」

 イッセーほどではないけどナギも腕がプルプルと振るえていた。

「さあ、腕立て三百回。いってみましょうか」

「オーッス!」

「はい!」

 これでも、魔力を使っているナギの方が早く終わっていた。


Side out





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Side 一誠


「うおおおおお! うめえええええ! マジでうまい!」

 今日の修行を終えて、俺たちは夕食を食べていた。

 テーブルには豪華な料理が盛られている。木場がとってきた山菜はおひたしにされていた。肉料理に魚料理といろいろな種類がある。そのほかにも色とりどりの料理が並んでいた。もちろん俺が皮をむいた野菜も使っている。

「あらあら。おかわりもあるからたくさん食べてくださいね」

 今回の料理は朱乃さんの手作りだ。今日は本当に疲れたので箸がよく進む。

 あの大量の荷物はほとんどが調理器具だったらしい。重たい思いをして運んだ甲斐があった。

「本当においしいですね。これなら、どこにお嫁に行っても大丈夫ですよ」

 ナギがそう言って、朱乃さんの料理を褒めた。

「あらあら。それならナギくんがもらってくれますか?」

「え?」

「どうなんです?」

「えっと・・・・・・まあ、やぶさかではないですね」

「うふふ、そうですか」

 なんかあの二人から甘い空気が感じられる。俺以外の部員も感じたようで、みんなで顔を見合わせている。クソッ! これだからモテる奴は!

「イッセーさん、私のスープはどうですか?」

 アーシアが俺にスープを差し出した。どうやらアーシアのお手製らしい。

「どれどれ」

 俺はアーシアから皿を受け取ると、一気に飲み干す。コンソメと玉ねぎの甘みがあってとてもうまい。

「うまいぞ、アーシア! 最高だ! もう一杯くれ」

「本当ですか! よかったです!」

 うむ。美少女の手作りというだけあって、実にいいものだった。

「さて、イッセー。今日一日修行してみてどうだったかしら?」

 部長がお茶を飲んだ後に俺に訊いてきた。

 いったん箸をおいて、正直な感想を言う。

「俺が一番弱かったです」

「そうね。それは確実だわ」

 ・・・・・・・はっきりと言われると結構泣けるな。心にグサッと来るね・・・・・・うん。

「朱乃、祐斗、小猫はゲームの経験がなくても実戦経験がそれなりにあるわ。だから感じをつかめれば十分に戦えるでしょう。ナギは目の良さ、魔力による強化、それに生来のセンスがあるから実戦経験が無くても十分戦えるでしょう。あなたとアーシアは実戦経験が皆無に等しいわ。でもあなたの『|赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』とアーシアの『|聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』による回復は無視できない。ライザーもそれは理解しているはずよ。最低でも相手から逃げられるくらいの力はほしいわ」

「逃げるのってそんなに難しいんですか?」

 俺の質問に部長はうなずく。

「逃げるのも戦術の一つだわ。でも相手の力量によっては殺してくださいって言っているようなものだもの。無事に逃げるのも実力の一つ、だから逃げ方も教えるわ。もちろん面と向かって戦うすべも教えるわ。覚悟しなさい」

「了解っす」

「はい」

 とりあえず、アーシアを守る力くらいはつけないとダメだな。最低でもアーシアの盾になる。そのぐらいの覚悟は持とう。

「それじゃあ、食事を終えたらお風呂に入りましょうか。ここは温泉だから景色がいいのよ」

 な、なにーーー! 部長の一言で俺の意識がエロに染められた。

 露天風呂っすか! 露天風呂といえば覗きだ! そう、覗きが王道なのだ! 男に生まれて覗かないでどうする!

「僕は覗かないよ、イッセーくん」

 木場がニコニコスマイルで先制パンチを放ってきた。

「バッカ! お、お前な!」

「あら、イッセー。私たちの入浴を覗きたいの?」

 部長の発言で全員の視線が俺に集中する。渚はやれやれといった顔をしている。すごい気まずいぜ・・・・・・・。

「なら、一緒に入る? 私は構わないわ」

 な、なんだと!

「朱乃はどう?」

「私はどちらでも構いませんわ」

 朱乃さんは俺が入ってもいいらしい。ば、バカな・・・・・・アリなのか!? そんなのアリなのか!?

「アーシアは愛しのイッセーとなら大丈夫よね?」

 アーシアは顔を真っ赤にしてうつむいてしまったが、小さくうなずいていた。

 ど、どどどどど、どうしよう! こんな展開が待っているなんて予想もしてなかったぜ!

「最後に小猫。どうかしら?」

「・・・・・・いやです」

 小猫ちゃんは両手で×を作る。拒否られたぁ!? ま、待て。感覚がおかしくなりそうだけど、これが普通の反応だ。

「じゃあ、なしね。残念、イッセー」

 クスクスと笑う部長。上げられたとたんに、一気に奈落に落とされた気分だ。しかし・・・・・・ならば、覗くしかない。

「兄さん、言っとくけど僕も覗かないからね」

「覗いたら、恨みます」

 渚も先制パンチを放ってきた。小猫ちゃんも釘を刺してきたぞ。やはりダメなのか・・・・・・・。

「あら? ナギは何を言っているの? あなたは|こっち(女湯)よ」

「えっ?」

 突然の部長の発言に渚の動きが止まる。驚愕と言った表情がぴったりの顔をしている。

「温泉を血で汚すわけにはいかないわ」

 俺が渚の裸を見て、鼻血を出したことを言っているんだろう。しかし、なんて羨ましいんだ! 俺も女湯に入りたい!

「小猫もナギならいいわよね」

「・・・・・・・ナギ先輩なら構わないです」

 これが普段からエロい俺と渚の差なのか・・・・・・・。小猫ちゃんもかまわないなんて・・・・・・・。

「私も歓迎しますわ」

「ちょ、ちょっと待ってください。僕は男! 男です!」

 渚はそう言うが、徐々に渚の包囲網が完成している。

「さあ、行くわよ」

 じりじりと距離を詰められていく渚。

「さ、サラダバーーーーーーッッ!!!」

 部長たちに詰め寄られていた渚は猛スピードで逃げ出した。しかし、なぜネタを入れたんだろう。気が動転していたのか?

「あら、逃げられたわね。諦めましょうか」

「そうですね。強化もしてましたし追いつけませんわ」

 一目散に逃げ出した渚を見て、部長たちはあきらめたようだ。おそらく木場は追いつけるだろうが、追いかける気はないみたいだ。

「それじゃあ、朱乃、小猫、アーシア行きましょう」

 部長は女性陣を引き連れて、温泉へと向かった。

「イッセーくん、僕と裸の付き合いをしよう。背中流すよ」

「うっせぇぇぇぇぇぇぇッ! マジで殺すぞ、木場ぁぁぁぁぁ!」

 俺の慟哭が山に響き渡った。なんで男と裸の付き合いをしなきゃ、ならねぇんだよ! BLなんて嫌だからな!? 俺はノンケなの! ノーマルなの!

 そんなことがあったが、俺たちは普通に温泉に入った。いい湯でした! 覗けないことが心残りだが、機会はまたあるはずだ。次の機会を待つぜ!

そうそう、結局渚はみんなが寝静まった頃に戻ってきて、風呂に入ったらしい。どこでそんなに時間を潰したのかが気になった。


Side out

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