小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

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〜第26話〜




Side 渚


「で、こっちが小学生の時のイッセーなのよー」

 ライザーの一件からそれなりに、日が経ったある日のこと。

「あらあら、イッセーくん、全裸で海に」

「ちょっと朱乃さん! って母さんも見せんなよ」

 今日は家でオカルト研究部の会議をやる予定だったのだが、母さんが持ってきたアルバムでそれどころではなくなった。

 ちなみに、起床時に僕の部屋でひと騒動あったのは割愛させてもらう。え? 何があったかだって? リアス先輩が全裸で僕の隣に寝てたんだよ・・・・・・・・。しかも、タイミング悪くリアス先輩は起きちゃったのが何よりもきつかった。男性特有の朝の生理現象を見られたのだ。いや、もう過ぎたことは忘れよう・・・・・・・。

「そして、これが渚が幼稚園の時の写真なの」

「あらあら、これは・・・・・・・」

「・・・・・・・見事な美少年です。いや美少女ですか」

 どうやら、母さんが見せたのは幼稚園のお遊戯会の時に、劇の主役を僕がやった時の写真のようだ。あのころは、美少女みたいな美少年で通ってたからな・・・・・・・。懐かしい。しだいに美少年みたいな美少女になったのはショックだったけど。

「「小さいナギ(くん)・・・・・・・・」」

 リアス先輩と朱乃先輩が小さいころの僕の写真を見つめている。アーシアさんは兄さんの写真に釘付けだ。

「「幼いころのナギ(くん)幼いころのナギ(くん)幼いころのナギ(くん)幼いころのナギ(くん)幼いころのナギ(くん)幼いころのナギ(くん)幼いころのナギ(くん)」」

 二人はぶつぶつとつぶやいている。軽く怖いんですけど・・・・。

「朱乃、あなたたちにもわかるのね」

「ええ、もちろんですわ」

 なんか二人で通じ合ってるみたいですね。まさか二人にはショタコンの気があるのだろうか?

「お、おい! 木場! お前は見るな!」

 兄さんが祐斗の手からアルバムを奪おうとするが、祐斗はそれをひょいっと避ける。

「ハハハハ、いいじゃないか。もう少し、イッセー君とナギのアルバムを楽しませてよ」

 兄さんはさらに祐斗に飛びかかるが、祐斗はひょいひょい避けている。地味に実力の差が出ているな。

「くそ! 渚、手伝ってくれ!」

「ん〜・・・・・・。別に写真くらいいいじゃないか」

 兄さんに助けを求められるが、僕は手を貸さずに静観することにした。

 しばらく、兄さんと祐斗を見ていると、祐斗が予想外のものを見つけたといった感じで動きを止め、兄さんも何事かと祐斗の見ている写真を覗き込む。

「イッセーくんにナギ、これに見覚えは?」

 なぜか僕も呼ばれたので、その写真を見る。その写真には昔近所に住んでいた女の子とその親御さんと兄さんと僕が写っていた。女の子の名前は確か・・・・・紫藤イリナだったかな?

 そして、木場が指しているものを見る。古ぼけた西洋剣だ。

「うーん、いや、何分ガキの頃すぎて覚えてないけどな・・・・・・・」

「僕は少し覚えてるよ。なんか神聖なものだって聞いたよ」

「そうやっぱりか。こんなことがあるんだね。思いがけない場所で見かけるなんて・・・・・・」

 祐斗は苦笑した。でも、その眼は憎悪に満ちている。

「これは聖剣だよ」

 これが今回の事件の始まりだった。





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―カキーン

 晴天の空に金属音が木霊した。

「オーライ、オーライ」

 僕は飛んできた野球のボールをキャッチする。

 会議から数日後。僕たちオカルト研究部は、現在野球の練習をしている。

「ナイスキャッチよ、ナギ」

 リアス先輩が笑顔で褒めてくれた。なんで野球の練習をしているのかというと、

「来週は駒王学園球技大会よ。部活対抗戦、負けるわけにはいかないわ」

 リアス先輩がそう言ったからだ。さまざまな種目があって今日は野球の練習をしている。というわけだ。

 僕は兄さんの朝のトレーニングに付き合ってたりするので、ここ数日はかなり体力を使っている。

「バッティング練習はこれでいいわね。野球なら小猫は四番、ナギは一番に決定」

「わかりました」

「・・・・・・・了解です」

 僕は目がいいので、どんな変化球かすらわかるので、打てる球は100%打つことができる。小猫ちゃんは持ち前の怪力でホームランを連発だ。

「次はノックよ! さあ、みんな! グローブはめたらグラウンドにばらけなさい!」

 えらく気合が入っているリアス先輩。

「部長はこの手のイベントが大好きですからね」

 朱乃先輩が笑いながら言う。

「確かにリアス先輩は負けず嫌いですからね」

「そう言うことですわ。まあ、余程のことがない限り私たちが負けることなんてありませんわ」

 基本スペックが人間と悪魔じゃ違うからな。その通りだろう。

「ナギと朱乃! しゃべってないで、ばらけなさい!」

「あらあら、怒られてしまいましたわ」

 朱乃先輩はそう言って、僕から離れて行った。

「それじゃあ、アーシア! 行くわよ!」

 リアス先輩がアーシアさんのいるところにボールを打つ。

「はぅ! あぅあぅあぅ・・・・・・・・あっ!」

 アーシアさんは取り損ねて、ボールは後方へ行ってしまった。俗に言うトンネルだ。

「アーシア! 取れなかったボールはちゃんと取ってくるのよ!」

「は、はい!」

 アーシアさんはリアス先輩に言われたとおり、ボールを追いかけて行った。

「次、祐斗! 行くわ!」

 今度は祐斗の方へボールが飛んでいく。

「・・・・・・・・・・・・・」

 余裕でキャッチすると思ったが、ボーっとしていた祐斗の頭にボールが直撃した。

「木場! シャキッとしろよ!」

 兄さんが祐斗に声をかける。その声に祐斗は気づいて視線を向けるが、きょとんとしていた。どうやら頭にボールが当たったことに気づいてないらしい。

「・・・・・・・あ、すみません。ボーっとしてました」

 下に落ちたボールを拾って、リアス先輩の方に投げる。リアス先輩はため息をつきながら、ボールをキャッチした。

「祐斗、どうしたの? 最近、ボケッとしてて、あなたらしくないわよ」

「すみません」

 素直に謝る祐斗。だが、リアス先輩の言うとおり最近の祐斗はおかしい。どこか遠い目をしていたり、何かを考え込んでいたりしている。あの写真を見てからああなった気がするから、祐斗は聖剣に何かしらの因縁があるのだろうか。

「ふむ・・・・・・・」

 ん? リアス先輩がまた本を読みだしたな。最近リアス先輩はよく本を読んでいることが多い。

「まったく部長ったら・・・・・・・・」

「朱乃先輩」

 いつの間にか朱乃先輩が近くに来ていた。

「マニュアル本なんか読んでもその通りに行くわけありませんのに」

「?」

 朱乃先輩はなにやらリアス先輩の読んでいる本についてご存知のようだ。

「でも、部長が本を読んでいる間はチャンスですわね」

 よくわからないことを言いながら、朱乃先輩は戻っていった。

「さーて、再開よ!」

リアス先輩がバットを振り上げる。練習は再開された。





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 昼食をクラスの友人たちと食べた後、部室に向かう。

「渚」

「ナギさん」

 呼ばれて振り返ると、兄さんとアーシアさんがいた。

「一緒に行こうぜ」

 兄さんがそう言ってきたので、うなずいておく。

 しばらく歩くと部室に着いたので。入っていく。すると、そこには部員以外の人物もいた。

「せ、生徒会長・・・・・・?」

 兄さんがそう言う。確かにこの人は生徒会長だ。名前は|支取蒼那(しとり・そうな)

「なんだ、リアス先輩、もしかして俺たちのこと話してないんですか?」

 見ればその生徒会長さんの隣に、男子生徒が一人。最近生徒会に入った男子だ。匙元士朗と言って、僕は会いたくない人物だ。理由はまあ、いろいろあったのである。

「サジ、基本的に私たちは『表』の生活以外では、お互いに干渉しないことになってるのだから仕方ないのよ」

 ふむ・・・・・・・。どうやら、彼女も悪魔ということらしい。僕は匙くんから隠れるように兄さんの背中に隠れる。幸い気づかれていない。できればこのままやり過ごしたいものだ。

「この学園の生徒会長、支取蒼那様の真実のお名前はソーナ・シトリー。上級悪魔シトリー家の次期当主様ですわ」

 補足説明ありがとうございます。朱乃先輩。

 話を聞いていくと、学園生活を送れるのは生徒会のおかげらしい。

「俺の名前は匙元士朗だ。二年生で会長の『|兵士(ポーン)』だ」

「おおっ、同学年で同じ『|兵士(ポーン)』か!」

 兄さんは同じ『|兵士(ポーン)」がいてうれしいようだ。しかし、匙くんの方はあまりうれしそうではない。

「俺としては、変体三人組の一人であるお前と同じなんてプライドが傷つくんだけどな・・・・・・って、あ・・・・・・・」

 意外と手厳しいな。まあ、わからなくもないけど。そして、ばれた。

「どうも」

 無難なあいさつをしておく。視線は合わせない。

「あら、あなたたち知り合いなの?」

「ええ、まあ・・・・・・」

 リアス先輩の質問に答える。

「歯切れが悪いわね。何かあったの?」

「そうなのですか、サジ?」

 興味を持った会長さんが匙くんを問い詰める。

「それは、その・・・・・・」

 向こうも、言いにくそうだ。

「ナギ、何があったのか話しなさい」

 リアス先輩が不審に思ったのか強い口調で言ってきた。

「・・・・・・わかりました。あれは1年位前のことだったと思います」

「おい! やめろっ!」

「サジ、おとなしくしてなさい」

 止めようとしてくる匙くんを、シトリーさんが止める。

「まあ、自分で言うのもなんですけど、僕って女っぽいじゃないですか。名前も渚って男子でも女子でも使える名前ですし。それで男子の制服を着ていても、男装の女子って入学当初思われていたみたいなんですよね」

「待ってください・・・・・・。つまり、サジは・・・・・・」

「ええ、たぶん会長のご想像の通りです。彼に告白されました」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 沈黙が部屋を支配する。誰一人口を開かなかった。匙くんはorzの体勢だ。これが僕と彼の空気がよくない理由だ。

「仕方ないじゃないですかッ! 男子だなんてわからなかったんですッ! 女の子だと思ったんですよぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!! 俺は悪くないぃぃっ!!」

 涙を流し、床を叩きながら叫ぶ匙くん。そんな匙くんに兄さんが近づいた。まあ、男子からの告白は初めてではなかったが、顔を合わせたら気まずくなるのも仕方ないだろう。

「お前の気持ちはよくわかるぞ。匙」

 みんな兄さんに同意してうなずくのやめてもらえないかな?

「・・・・・・兵藤」

 兄さんは匙くんの肩をポンポンと叩く。慰めているようだ。構図は慰める兄さんと涙目で兄さんを見上げる匙くんという、なんともBL臭がする描写だ。

 ・・・・・・見ていて気持ち悪くなってきた。

 さっきまで嫌っているような感じの匙くんと兄さんの仲が深まった。

「・・・・・・ホモですか」

 小猫ちゃんのつぶやきがやけに心に残り、お尻がきゅっとなった。


Side out


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