小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

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〜第28話〜




Side 渚


「聖剣計画?」

 聞き覚えのない単語に僕は聞きかえした。

「ええ、祐斗はその生き残りなのよ」

 一通りの活動を終えた僕たちは家に戻ってきていた。

「数年前で、教会内で聖剣エクスカリバーを扱える者を育てる計画があったの」

「・・・・・・・初めて知りました」

 アーシアさんはこの計画のことを知らなかったようだ。極秘の計画だったのかもしれないので、耳に入らなかったかもしれないが。

 話を聞いていくと、祐斗はその計画の実験体の一人だったらしい。聖剣は悪魔に対して究極ともいえる武器だ。それ故に教会は、なんとか聖剣の使い手を増やそうとその計画を行ったらしい。

「じゃあ、木場は聖剣を使えるんですか?」

 兄さんがもっともな質問をする。

「祐斗は聖剣に適応できなかった。それどころか、祐斗と同期の者の中には一人も適合できなかったようよ」

リアス先輩は首を横に振りながら言った。

「そして、適応できなかった祐斗たちを教会は処分した」

 処分。おそらくは殺したということだろう。アーシアさんは愕然としている。

「そんな・・・・・主に仕える者がそのような事をしていいはずが」

 アーシアさんは目を潤ませながら言った。よほど信じたくない情報だろう。

「祐斗を悪魔に転生させたとき、あの子は瀕死の中で強烈な復讐を誓っていたわ」

 リアス先輩は、そんな祐斗に聖剣に縛られずに、悪魔としての生を謳歌してほしかったんだろう。

「でも、祐斗は忘れられなかったんですね。聖剣のことを、計画に関わった者を」

 リアス先輩は黙ってうなずいた。幼少の頃からの恨みとなると、相当なものだろう。かなり憎んでいると見ていいはずだ。

「とにかく、しばらく見守るわ。ぶり返した聖剣への想いで頭がいっぱいでしょうからね」

「あ、そう言えば、この写真が原因だと思うんですけど」

 兄さんがリアス先輩にあの時の写真を見せた。リアス先輩は写真を見るなり、眉をひそめた。

「二人とも、知り合いに教会に関わりがある人がいるの?」

「身内にはいないよな、渚」

「うん、いないよ。その写真は子供の頃に近所に住んでいた子で、今は引っ越したんでわかりませんが、その子はクリスチャンだったみたいです」

「そう・・・・・・。この写真に写っているのは間違いなく聖剣ね。なるほど、これで私の前任の悪魔が・・・・・・・」

 最後の方から何やらぶつぶつとつぶやき始めるリアス先輩。なにやら思うところがあるようだ。

「もう寝ましょうか。あれこれ考えても祐斗の悩みが解決するわけではないわ」

 しばらく考え込んだリアス先輩が、みんなに寝るように促した。それに従ってみんなが自分の部屋に戻る。僕を自分の部屋に戻った。

「それで、なんでいるんですか? リアス先輩」

「ナギと一緒に寝るからに決まっているでしょう」

 はぁ・・・・・・。すでに決定事項なんですね。僕と寝ることは。前にもいつの間にかリアス先輩が潜り込んできたときがあったが、僕のベッドは一人用なのだ。二人では寝られなくもないけど、密着しないとまず寝ることはできない。

 だが、そんなことを言ったところでリアス先輩が諦めないことは、長くはない付き合いだが理解している。僕が折れるしかないのだ。

「この際、寝ることに文句は言いませんから服は着てくださいよ?」

「ナギ、私は寝るときに服は―――」

「O☆HA☆NA☆SHIしますか?」

「わかったわ」

 リアス先輩の発言を遮って言うと、額に汗を浮かべながらリアス先輩は了承してくれた。

「わかってくれてうれしいです」

「そう・・・・・・。(さっきの目は本気だったわ・・・・・・危なかったわね)」

 いざこざはあったが、寝ることになったのでベッドに潜り込む。リアス先輩は紅い髪と同じネグリジェを着ていた。ネグリジェから透けて見える胸は裸の時よりエッチだった。何か着てくださいと言ったのは僕だったが、これは逆効果だったかもしれない。

「それじゃあ、お邪魔するわね」

 そう言ってリアス先輩もベッドに入ってきた。シングルベッドに2人で寝るので密着率が半端ない。それにリアス先輩は女性らしい体つきをしているので、柔らかい感触がいたるところから感じられた。

「よいしょっと。ナギ、おやすみなさい」

 そしてリアス先輩は僕の右腕に抱き着いてきた。腕が胸に挟まれてとても――――やめろ、考えるな・・・・・・。考えたら理性が死ぬぞ!!

 球技大会もあったので、リアス先輩はすぐに寝息をたてはじめるが、僕はそれどころではなかった。

(今日は・・・・・・・・寝られるだろうか?)

 そんなことを思いながら、まぶたを閉じた。

 結局、女の子特有の柔らかい感触のせいで、深く眠ることはできなかった。寝不足になったのは言うまでもない。





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 翌日。深く眠ることができなかったので、寝不足なのは言うまでもない。しかも、寝ている最中に服を脱いだのか、朝起きた時のリアス先輩は何も来ていなかった。思わず、大きな声を上げてしまい、兄さんたちに誤解されたのは言うまでもない・・・・・・。

 そして、現在は昼休み。つまり昼食の時間だが、眠くて食事をとる気にもなれなかった。いつも昼食を食べる友人にもそう言って、この昼休みは睡眠に充てることにする。僕は机に突っ伏した。

「ナ・・・・・ん、・・・・ギく・・・、ナギ・・・・ん」

 心地よく眠っていると、誰かに声をかけられているような気がしてきたので、起きることにする。

「んぅ?・・・・・・・誰ですか?」

「私ですわ」

 眠い目を擦りながら、呼びかけていた人物を見るとそこにいたのは朱乃先輩だった。

「あれ・・・・・・朱乃先輩、どうかしましたか?」

 眠い目をこすりながら、視線を朱乃先輩に移す。

「よかったら一緒にお昼をと思いまして」

 わざわざ、僕の教室までやってきたらしい。僕がすでに誰かと食べ始めていたらどうするつもりだったのだろか? まあ、手間をかけたのに追い返すわけにはいかないので、僕は応じることにした。


Side out





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Side 朱乃


 今日はナギくんを昼食に誘った。場所は部室。そして私もナギくんも食べ終わっていた。誘いに行ったときは寝ていたみたいでしたから、寝不足になるようなことがあったようですね。

「そう言えば、誘いに行ったときになぜ寝ていたんですか?」

 気になったので、訊いてみることにします。

「あー・・・・・・・。朱乃先輩ならいいですか」

「はい?」

 私なら話しても大丈夫な内容の話ですか・・・・・・。

「家にリアス先輩が住み始めたのは知っていますよね」

「ええ。知っていますわ」

「それで、リアス先輩がたまにベッドに潜り込んでくるんですよ。それで眠れなかった。というわけです」

「あらあら、大変ですね」

 そう言いながらも、内心穏やかではない。リアスは着実に距離を縮めようとしている。まあ、本を読んでいるうちは大丈夫だと思いますけど。

「よかったら、使いますか?」

 私は膝をポンポンと軽く叩きながら言った。好きな男の人に膝枕をするのはある種の憧れですわ。

「えっと・・・・・・・じゃあ、お願いします」

 少し、躊躇したみたいですが、眠気には耐えられなかったみたいですね。

 ナギくんは私の座っているソファーに移動して、体を横にした。私の膝の上にナギくんの頭が乗る。

「具合はどうですか?」

「悪くない―いえ、とてもいいです」

「なら、よかったですわ」

 何気なく髪をすくように撫でてあげると、少しくすぐったそうな表情に名なったが、すぐに寝息が聞こえてきた。

「すぅー・・・・・・すぅー・・・・・・・・」

 私はそのまま撫で続ける。ゆったりとした時間が流れていた。昼休みは有限だけど、ずっとこのままでいたいと思う。

「朱乃、いるの?」

 そんなことを考えていると、リアスがやってきた。

「リアス、静かにして」

 人差し指を口元にやる。そして、私の膝で寝ているナギくんを指した。今は部活中じゃないので、口調は変える。

「朱乃、なにしてるの?」

 心なしかリアスの声が震えている気がしますわ。

「膝枕ですわ。ナギくんが寝不足みたいだったのでしてあげてるの」

「朱乃、私に譲りなさい」

「嫌ですわ。リアスは家で一緒に寝ているのだからいいでしょう」

 リアスは同じ家に住んでいるというアドバンテージがあるのだから、膝枕くらいしてもいいと思いますわ。

「それとこれとは話が別だわ」

 でも、リアスは納得していないみたい。お互い初めて好きになった男の子だから譲りたくない、ということですわね。

ナギくんが寝ているので、小声で言い争う私とリアス。結局、私とリアスの言い争いはどちらも譲ることなく、ナギくんが起きるまで続いた。ちなみにナギくんが起きたのは昼休みを過ぎて、5時限目も終わってからだった。三人仲良くサボったことになりましたわ。


Side out

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