小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

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〜第29話〜




Side 渚


 朱乃先輩のお言葉に甘えて膝枕をしてもらい、そのまま寝てたら5限目をサボってしまった。部室にはいつ来たのか知らないけど、リアス先輩も来ていたのでなぜ起こしてくれなかったのか謎だ。

 そして、授業と部活を終えて帰路についている。リアス先輩は用事があるらしいので、三人での帰宅だ。

 兄さん、アーシアさんとたわいない話をしながら歩いていき、そして家の前まで着いた。そこから、兄さんとアーシアさんの様子がおかしくなった。

 兄さんは急いで、ドアを開けて家の中に飛び込んでいく。何事かと思って追いかけていくと、そこには見慣れない女の子二人と談笑している母さんがいるだけ。何を焦っていたのだろう?

「でね、これがイッセーとナギの小学生時代の写真なの」

「か、母さん?」

「あら、みんなお帰りなさい。どうしたの? 血相変えて」

「はぅぅぅぅ。よかったですぅ」

 アーシアさんがその場でぺたんと座り込んでしまった。この二人は危険人物なのか?

 そう思って、二人の女性を見ると胸元に十字架が輝いていた。キリスト教の関係者だろう。二人が心配していたのはこれのせいらしい。しかも、そのうちの一人にはどこかで会ったな気がした。

「こんにちは、一誠くんに渚くん」

 兄さんは緑色のメッシュが入った女の子の傍の、布に巻かれた物が気になるらしい。悪魔じゃない僕にも、あれは聖なるものだとわかる一品だ。

 そして、僕と兄さんに微笑んでいる栗毛の女の子。やはりどこかで会ったような気が―――っと、そうだ。あの子か。

「久しぶ「はじめまして」

 僕がしゃべろうとしたら、兄さんがかぶってきた。そして、兄さんは彼女のことを思い出せないらしい。

「兄さん? 覚えてないの?」

「なにを?」

 無理やり感を感じる笑顔で兄さんはこちらを向いた。

「渚くんの言うとおりだよ。覚えてないの?」

「だから、なにを?」

 再度、兄さんは僕らに訊いてきた。

「兄さん、彼女はあの写真の子だよ。紫藤イリナちゃん。よく遊んだだろ?」

「ナギ言う通りよ。紫藤イリナちゃん。この時は男の子っぽかったけど、今じゃ立派な女の子になって、お母さんもびっくりしたのよ」

 母さんが写真を出して、イリナを指しながら言った。兄さんは何度も写真と見比べている。確かに、だいぶ変わったのでわかりにくいだろう。

「久しぶりだね、イッセーくんに渚くん。もしかして、私のこと男の子だと思った? まあ、確かに女の子っぽくなかったし、私より渚くんの方が女の子ぽかったからしょうがないか・・・・・・。でも、お互い、しばらく会わないうちにいろいろあったみたいだね。ほんとう、再開って何があるかわからないね」

 僕が女の子云々は置いといて、どうやらイリナは兄さんの正体に気づいたようだ。





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「よく無事だったわね」

 あの二人が帰ったあと、リアス先輩が帰ってきてそう言った。兄さんの時と同じように血相を変えて入ってきたのが印象的だ。

「あの二人もさすがに一般人のいるところで事を起こすつもりはないみたいですよ」

 肩をすくめて僕は言った。

「ところで、用事ってなんだったんですか?」

 下僕の無事を確認した後、リアス先輩に兄さんが質問した。    
 
「どうやら、昼間にソーナたちと接触したみたいでね。その話だったのよ。ソーナの話では、彼女たちは私、つまりこの町を縄張りにしている者と交渉をしたいそうよ」

「教会の人間が悪魔と?」

 兄さんがもっともな疑問を上げ、それにリアス先輩はうなずいた。

「と言うことは、依頼なんでしょうか?」

 今度はアーシアさんがリアス先輩に質問する。

「わからないわ。でも、彼女たちは明日の放課後に部室に訪問してくる予定よ。こちらに一切の攻撃を加えないと神に誓ったらしいわ」

「信じられるんですか?」

「信じるしかないわね。それに近頃この町に訪れえる神父が惨殺されるみたいだし、教会側も相当切羽詰っているようね」

 難しい表情のリアス先輩。フリードのことを考えるとわからなくもないが。

 何かが起こる。この場に全員がそう思っていた。





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そして、次の日。

 約束通りにイリナともう一人の女の子が部室のソファーに座っている。対面しているのはリアス先輩と朱乃先輩。眷属と僕は隅に控えていた。

 そんな中、心配なのは祐斗だ。今にも斬りかかりそうな雰囲気で彼女たちを見ている。

「先日、カトリック教会本部バチカン及びプロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

 話を切り出したのはイリナだった。

しかし、奪われるって・・・・・・・・。大事な聖剣じゃないのか? しかも複数の教会から盗まれたってどういうことさ?

「・・・・・・・エクスカリバーは大昔の戦争で折れてしまったんです」

 疑問に答えてくれたのは小猫ちゃんだった。聖剣って折れるもんなんですね・・・・・・。ビックリだわ。

「折れたエクスカリバーの欠片を集め、錬金術によって七本の剣へと変わったのさ。そしてこれがその七本のうちの一本、『|破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクラクション)』。カトリックが管理している」

 布を巻き取って、その姿をさらす。兄さんの顔色がすごぶる悪い。悪魔にとってはかなりまずいもののようだ。

メッシュの女の子は再び布を聖剣に巻きつけた。イリナもそれに倣うように、懐から長い紐のようなものを取り出した。

 なんだろうと注目すると、紐がうねうねと動き出す。そして、一振りの刀へと姿を変えた。

「私の方は『|擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』。形を自由自在に変えられる聖剣よ。このように七本のエクスカリバーは特殊な力を持っているわ。こちらの管理はプロテスタント側ね」

「イリナ・・・・・悪魔にエクスカリバーの能力を教える必要はないだろう」

「ゼノヴィア、いくら悪魔だからって信頼関係を築かないと。それに能力を知られたからといって、悪魔に後れを取ることなんてないわ」

 メッシュの女の子―――ゼノヴィアさんがイリナに忠告したが、当のイリナは絶対に負けないのだから構わないと言う。よほど自信があるようだ。

 しかし、ここには二本のエクスカリバーが揃っているのはすごいことなんだろう。

 そんな中、祐斗の殺気がマジでヤバイ。本格的に斬りかかりそうだ。

「それで、あなたたちは私たちにどうして欲しいのかしら?」

 それに答えたのはゼノヴィアさんだった。

「カトリック側には二本。プロテスタント側にも二本。正教会にも二本のエクスカリバーがあった。そしてそれぞれから1本ずつ奪われ、奪った連中は日本のこの町に逃げ込んだ」

「そうなの、私の縄張りは出来事が豊富ね。それで奪った連中は?」

「『|神の子を見張る者(グリゴリ)』の幹部コカビエルだよ」

 リアス先輩は目を見開いた。

「聖書に記されし堕天使が出てくるとわね。結局、私たちにどうして欲しいのかしら?」

 苦笑いを浮かべるリアス先輩。

「先日から神父をこの町に潜り込ませているが、ことごとく殺されている。まあ、これはいい。私たちの要求は堕天使とエクスカリバーの争奪戦に悪魔が介入しないこと。つまりは今回の件には関わるなと言いに来た」

 おいおい・・・・・・随分な言い方だな。そちらが悪魔のことを信用してないのはわかるが、言い方があるだろう。ここは悪魔の管理する土地なんだから。

「それは牽制かしら? 私たちが堕天使と手を組まないように」

 リアス先輩も少し苛立ちを感じたようだ。

「そう取ってもらっても構わない。そちらの思っている通り、上は堕天使と悪魔のことを信用していない。まあ、魔王の妹であるあなたが、三すくみの状態に影響を与えようとは思わないが、一応ね」

「当たり前よ。私は堕天使と手を組むことなんてしないわ。絶対にね」

 その返答にゼノヴィアさんはフッと笑った。

「それが聞ければ十分だ。私たちも三すくみの状態に影響を与えたくない。よって協力は仰がない。この町にはコカビエルが持ち込んだ三本のエクスカリバーがあることだけは伝えておく。注意した方がいい」

 その後も、リアス先輩と教会側の話し合いは続けられた。

 そしてそれが終わり、二人が去ろうとしたところで問題が起きた。

「兵藤家で出会った時から、もしやと思ったが、『魔女』アーシア・アルジェントか?」

 その言葉を聞いて、アーシアさんは体を震わせた。イリナもそれに気づいたのかアーシアをまじまじと見つめる。

「あなたが、一時期教会内で噂のなっていた元『聖女』さん?」

「・・・・・・・・・・あ、あの・・・・・・私は」

 答えられないアーシアさん。なおも二人はアーシアに質問をしていく。あまりに不快にさせるような質問のしかただった。

 そんな中、彼女たちがアーシアさんに触れようとした時だった。

「触れるな」

 兄さんがアーシアさんを庇うように前に出た。


Side out


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