小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

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〜第33話〜




Side 渚


 オーフィスと会ってから、さらに数日がたった。

 連日、兄さん、祐斗、小猫ちゃん、匙くん、僕が夕方、フリード捜索している。

 神父の格好をして、町中を歩きまわっているのだが、なかなか目的であるフリードに会うことはできなかった。

 正直言って、そろそろまずい。リアス先輩が勘付き始めているのだ。

「ふぅ、今日も収穫なしか」

 いつものように、歩き回るが成果なし。匙くんが気落ちするように言った。正直、一番気合が入っていたのは、匙くんだった。

「諦めずにやるしかないよ」

 僕が励ますように声をかける。そして、先頭を歩いていた祐斗が足を止めた。

「・・・・・・祐斗先輩」

 小猫ちゃんも足を止める。何か感じたらしい。

―ゾク

 これは殺気だ! 場所は・・・・・・。

「「上だ!」」

 僕と同じように気づいた匙くんが声を上げた。見上げると、長剣を構えたフリードが降ってくる。

「神父の一団にご加護あれってね!」

 祐斗が素早く、魔剣を創造し防いだ。

「フリード!」

 兄さんが叫び声をあげると、向こうも気づいたようだ。

「! その声はイッセーくんかい? これは珍妙な再開劇でござんすね! 女顔のキミもいるじゃないか! どうだい? そろそろ殺してもいいかい?」

 相変わらず狂っているな、フリードは。

 そして、あいつが持っているのがエクスカリバーね。確かにイリナやゼノヴィアさんのものと同質の気配を感じるな。

 僕らは神父服を脱ぎ棄てて、いつもの制服へと戻る。

「『|赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』!」

 兄さんが『|赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を発動する。メインは祐斗なので兄さんはサポート。つまりは力の譲渡をする役だ。ピンチになったらもちろん介入するけどね。

「伸びろ、ラインよ!」

 匙くんの手元から、黒い触手のようなものがフリードに向かって伸びた。

「うぜぇっす!」

 聖剣で切り払おうとするが、軌道を変えてフリードの足に巻きついた。

「木場! そいつはちょっとやそっとじゃ斬れねぇ! これで逃げられない、やっちまえっ!」

「ありがたい」

 祐斗は匙くんにお礼を言って、二本の魔剣でフリードを攻める。

「もしかして『|魔剣創造(ソード・バース)』ですかぁ? レアなモノをお持ちですこと! でも、俺の聖剣の相手じゃあないねぇ!」

―バリィィン!

 破砕音が響く。祐斗の持っていた魔剣は両方とも砕かれていた。

「くぅ!」

 再び魔剣を創造するが、さすがはエクスカリバー。一振りで祐斗の魔剣たちは砕かれていく。

「木場ぁ! 譲渡するか?」

「まだやれるよ!」

 兄さんのサポートを祐斗は拒否した。大分頭に血が上っているようだね。

「ハハハ! エクスカリバーを見る顔が怖いねぇ。もしかして憎悪とか持ってる?」

 相変わらず、調子が狂うというか、いらいらするしゃべり方だ。

 飛び出すフリードを祐斗が魔剣で受け止めようとするが、あっけなく砕かれる。これはまずいと思って、兄さんに譲渡を促そうと兄さんの方を向くと、兄さんは小猫ちゃんに持ち上げられていた。

「・・・・・・・イッセー先輩。祐斗先輩を頼みます」

 ピッチャー小猫、大きく振りかぶって・・・・・・投げました。今のことを表現するならこんな感じだろう。

「うおおおおおおおおっ! 小猫ちゃぁぁぁん!」

 悲鳴を上げながら、祐斗に向かって飛んでいく兄さん。

「木場ぁぁぁぁぁ! 譲渡するぞぉぉぉぉぉ!」

「うわっ! イッセーくん!?」

 空中で覚悟を決めたらしい兄さんは、祐斗に飛びつき力を譲渡した。

『|Transfer(トランスファー)

 音声が発せられると、祐斗に兄さんの力が譲渡され、祐斗の体をかなりの魔力が覆う。

「もらった以上は使うしかない!『|魔剣創造(ソード・バース)』ッ!」

 周囲一帯に魔剣が生える。

「チィッ!」

 フリードは自身に向かって伸びてくる魔剣を横薙ぎに聖剣を振るい破壊していく。

 祐斗はそのうちに、すきを見つけて魔剣を足場に駆け出した。しかし、フリードは祐斗を目で追うことができているようだ。

 そんな中、祐斗は足場の魔剣を抜き放ち、フリードへと投擲していく。その数はどんどんと増えていき、四方八方からフリードに向かって投げられた。

「面白いサーカス芸だね。腐れ悪魔がぁぁぁ!」

 フリードはうれしそうな顔を浮かべて、飛んでくる魔剣をすべて払いのけた。

「俺様のエクスカリバーは『|天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』! 速度だけなら負けないんだよぉぉ!」

 おいおい、びっくりだな。剣先が強化してないとはいえ目で追えなくなってきたよ。

 そして、フリードは周囲の魔剣を破壊しつくし、祐斗に向かって駆け出して斬りかかる。

「ダメか!」

 祐斗は魔剣で防御するが、聖剣によって砕かれてしまう。

「死・ね!」

 祐斗に向かって、聖剣が振り下ろされようとしていた。しかし、フリードは急に体勢を崩す。

「やらせるか!」

 匙くんか。フリードに繋がっているラインを引っ張って体勢を崩させたみたいだ。そして、そのラインは淡い光を放っていて、光はフリードから匙くんの方へ流れていた。

「木場! もう文句言っている状態じゃない! そいつを倒せ! エクスカリバーの方は後だ! このままだと、会長にも害がありそうだ! 俺が力を吸収するから、今のうちに倒せ!」

 匙くんが作戦を提案する。本当なら、みんなでフルボッコが最適なんだろうが、祐斗のこともある。妥協してこの作戦だろう。

「・・・・・・仕方ないか。確かにフリードはここで倒した方がいいだろう。奪われたエクスカリバーはあと二本ある。そちらに期待しよう」

「ハッ! 他の使い手より俺の方が強いんだぜ? 俺を倒したら満足な聖剣バトルはできませんことよ?」

 不敵な笑みを浮かべてフリードが言った。祐斗はそれを聞いて、目元を引きつらせている。余計なことを言ってくれたみたいだな。

「ほう、『|魔剣創造(ソード・バース)』か? 使い手の技量次第で無類の力を発揮する」

 フリードの後方から、声が聞こえた。そちらの方に視線を向けると、神父の格好の初老の男性。

「・・・・・・・バルパーのじいさんか」

『!』

 全員が目を見開いた。バルパーと言うことは、こいつがバルパー・ガリレイってことか。

「バルパー・ガリレイ!」

 祐斗が憎悪のこもった視線で睨んでいた。

「いかにも」

 男は堂々と肯定した。この男が祐斗の仇。

「フリード、体に流れる聖なる因子をできるだけ聖剣に集めろ。それでそのラインは斬れる」

「りょぉかぁい!」

 聖剣のオーラが一層とよくなっていき、フリードはそれを振るうと、匙くんと繋がっていたラインは斬れてしまった。

「逃げさせてもらうぜ! 次に会う時に決着だ!」

 捨て台詞を佩いて、逃げようとするフリードだったが―――。

「逃がすと思うか?」

 ゼノヴィアさんが、フリード目掛けて斬りこんでいく。

「やっほー」

 どうやら、イリナも来たらしい。これで、形勢は圧倒的にこちらが有利となった。

「撤退だ! バルパーのじいさん。コカビエルの旦那に報告しに行くぜ!」

「致し方あるまい」

「それじゃあね♪」

 ゼノヴィアさんと斬り結んでいる最中に、フリードは懐から出した閃光弾を取り出し、地面へと叩きつけた。

―カッ!

 眩い光が辺りを包んで、僕らから視界を奪っていく。視力が戻った時には、フリードもバルパーもそこにはいなかった。

「逃げられたか・・・・・・。どうしま―――」

「追うぞ、イリナ」

「うん!」

 みんなの意見を訊こうとした矢先に、ゼノヴィアさんとイリナは駆け出してしまった。

「僕も追わせてもらおう! 逃がすか、バルパー・ガリレイ!」

 祐斗は二人を追うようにして、駆け出して行ってしまった。

「おい! 祐斗!」

「木場! ったく! なんなんだよ!」

 兄さんも声をかけるが、祐斗はそのまま走り去ってしまった。兄さんが毒づくのも仕方ないだろう。

 僕と兄さんと小猫ちゃんと匙くんは取り残されてしまった。どうしようかと思案してると、背後から気配がした。

「力の流れが不規則になっていると思ったら・・・・・・・・」

「これは、困ったものね」

 聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはリアス先輩とソーナ会長の姿があった。

 兄さんと匙くんの顔が一気に真っ青になったのは、見ていてちょっと面白かったです。


Side out


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