小説『ハイスクールD×D 〜銀白の剣士〜』
作者:strik()

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〜第45話〜





Side 渚


「イッセー、ナギ、アーシアちゃん。あとでお父さんと一緒に行くからね」

 朝から気合の入っている母さん。今日は授業参観日。まあ、目的はアーシアさんなのは明白だ。

 その本人は元気よく「はい!」と返事をしている。

 授業参観、正確には公開授業。親御さんだけではなく中等部の子たちが高等部はどんな授業をしているのか身に来たりする日だ。

 自分たちの親だけじゃなく、中等部の子も来るとあって無駄に緊張している。後輩の前で恥はかきたくないからだ。

「・・・・・・・気乗りしないわね」

 リアス先輩がため息をつきながら言った。どうやら授業参観が嫌なようだ。やはり親が授業を見に来るのは恥ずかしいものがあるのだろう。

 僕の両親はアーシアさんが目当てのようなので、僕は普通に授業をさせてもらうとしよう。

 そんなこんなで、学校に到着。昇降口でリアス先輩と別れ、教室の前で兄さんとアーシアさんと別れた。

「ねえ? 渚くんの両親って、今日来るの?」

 席に着くと話しかけられた。前の席の高橋恵美さんだ。

「アーシアさん目当てで来るみたいだよ。父さんはわざわざ有給取ってたし」

「それはわかるな。俺もアーシアちゃんが娘だったら絶対に観に行くわ」

「急に話に入ってくるんじゃないわよ! 一樹!」

 高橋さんが鋭い目で睨みつける。

「別によくね!? なんでそんな嫌悪されなきゃいけないの!? 渚もそう思うよな!」

「一樹だから仕方ないよ」

「ひどい!」

 あんまりだと一樹が膝をつく。津島一樹。それが彼のフルネームだ。

高橋さんと僕はそれも見て小さく笑った。この二人は幼馴染でよく一緒にいる。しかし、付き合っているとかそういうことはないらしい。このクラスになって新しくできた友達である。

「相変わらず、渚くんの周りは騒がしいわね」

「おはよう。委員長」

 今話しかけてきたのは日下響。このクラスのクラス委員で通称委員長だ。おさげに眼鏡と狙っているとしか思えない。彼女とは去年からの付き合いである。席がたまたま隣だったのだ。

「委員長! こいつら酷いんだ! いじめだと思います!」

「はいはい。そうね〜」

「まともに取り合ってくれない!?」

 委員長と一樹の漫才を高橋さんと一緒に見て笑う。

「ナギ」

 そのまま一樹をいじっていると、ゼノヴィアが近づいてくる。一樹が一瞬で復活した。ゼノヴィアの人気の高さゆえだろう。男女問わず人気が高い。

「どうしたの、ゼノヴィア?」

 僕がそう聞き返すと、ゼノヴィアは頭を下げてきた。

「先日は突然あんなことを言ってすまなかった」

 あー・・・・・・。あれね。先日のプールでのことを言っているのだろう。高橋さんと一樹に委員長は何の事だかわからずにポカンとしているな。

「私はキミのことを考えずに突っ走りすぎたらしい」

「いや・・・・・・・まあ、わかってくれたならいいよ」

 いきなり、抱きなさいとか子作りをしようとか普通は言われることないからな。

「そう言ってくれるのか・・・・・・・」

 まあ、いきなり子供を作ろうなんて言われるなんて思わなかったね。最近、自分の常識が通じないことが多いから、僕がおかしいんじゃないかって思うこともある。

「そんなわけでだ。私もいろいろと試してみようと思う」

 ゼノヴィアはそう言うと僕の右手を取り、自分の胸に押し当てた。周囲がざわつくのと自分の思考が停止するのがわかる。

「この前は抱き着いてみるだけだったので、今回は胸を触ってもらっているわけだが・・・・・・どうだろう?」

 どうだろう? どうだろうってどういうことだ? 胸の感触についてか? それともクラスのみんながいるこの場所でのこの行動についてのことを言っているのか?

「ふむ・・・・・・。これもなかなか恥ずかしいな」

 ゼノヴィアの顔がほんのりと赤くなっている。

「ナギ、私の胸はどうだ?」

「柔らか―じゃなくて!」

 素直に感想を述べそうになって慌てて誤魔化す。ついでに胸を触っていた手を引き戻した。

「ゼ、ゼ、ゼノヴィアさん?」

「なんだ?」

 委員長がゼノヴィアに話しかける。委員長は目の前で行われた出来事に動揺を隠せないようだ。

「ふ、風紀を乱すような行動は慎んでくださいね」

「委員長が言うなら従おう。っとそうだ」

何かを思い出した様子のゼノヴィアが、ごそごそとスカートのポケットに手を突っ込み何かを取り出した。

「これもナギの母親からもらってね。今度使ってくれとのことだ」

 ポケットから取り出したのは四角形のパッケージに包まれたゴム―――コンドームだ。

 クラス全員がゼノヴィアの取り出したコンドームを見る。

「な、何してんのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 即座にゼノヴィアから奪い取る。しかし、すでにこの場にいる全員が見ていた。取り返しがつくわけがない。あちらこちらでひそひそ話が展開される。

「私のいたところではこれの使用に一悶着あったが、やはりつけたほうが都合がいいのだろう。何より、せっかくもらったのだ使わないのはもったいない」

 ちくせう! なんでゼノヴィアはみんなの視線が平気なんだ!

「ま、まさか・・・・・・渚とゼノヴィアさんがそんな関係だったなんて! 二大お姉さまや小猫ちゃんとも怪しいのに! これはすぐにみんなに伝えないと!」

 一樹がケータイを取り出す。

「不潔よ!」

 高橋さん、ニヤニヤしながらそれを言うのはやめてくれないか? 明らかにこの現状を楽しもうとしているだろ!? とりあえず一樹を止めてくれ! このままだと、学校生活に支障が絶対に出る!

「く、クラスの風紀が・・・・・・」

 委員長はショックを受けている。

「それじゃあ、ホットなネタをありがとよ! 渚!」

 電話をしようと教室から出ようとする。大変だ・・・・・・これは少々手荒になっても止めるしかない。

「さて、まずは―――」

―バキ!

 思わず魔力で強化したシャープペンシルと投擲して、ケータイの画面を貫通させた。

「ノォォォォォォォォォォッッ!! 俺のケータイがぁぁぁぁぁぁ!」

 無残にシャープペンシルの突き刺さったケータイを掲げる。これで情報のこいつからの情報の流出は防がれた。あとは口を開かないようにするだけ。

「一樹・・・・・・・少し、O☆HA☆NA☆SHI・・・・・・しようか?」

「へ? あっ、ちょっと! 渚! どこに連れて行くんだ!?」

 一樹の襟首を持ち、引きずって教室から出た。

「ふむ。いつこれを使うか予定を決めようと思ったのだが・・・・・・」

 僕が去った後にゼノヴィアがそうつぶやいたらしい。高橋さんから教えてもらった。

 このあと、校舎裏から男の悲鳴が響き渡ったのを、全校生徒が聞いたようだ。





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 お昼休みになった。授業参観はつつがなく終了している。

「よくできているわね」

 リアス先輩が手にしているのは、粘土で作られた全裸のアーシアさんだ。作成したのはもちろん兄さんである。作られた本人は顔を紅くしている。

「あらあら、本当によくできていますわ」

 朱乃先輩もアーシアさんの像の出来映えを見ている。

「それにしても、そんなのいつ作ったんだい?」

 僕の知る限りでは兄さんがそんなものを作っている様子はなかったはずなんだが?

「ああ、さっきの授業で作ったんだ。英語の授業だったんだんだけど、教師がわけのわからんことを言い出して工作の授業になった」

 その教師に何が起こったのだろう? 英語の教師から工作の教師になったのだろうか? まあ、僕のクラスは保健体育で、第二次性徴について先生が熱く語っていた。内容が生々しかったが、まあ普通の授業だっただろう。ただ、性交の有無を聞く必要はなかったと思う。

「そう言えば、部長。サーゼクス様はいらっしゃったんですか?」

 兄さんがリアス先輩に問いかける。サーゼクスさんは気安く読んでほしいみたいなので、兄さんにそう呼ぶように言っていた。

「ええ、父も一緒に来たわ」

 リアス先輩のお父さんか・・・・・・。実質婚約をダメにしたのは僕だから何か言われるかな? サーゼクスさんは気にしなくていいって言ってけど。

「あ、部長。それにみんなも」

 そこへ祐斗が現れる。

「何かあったの?」

 リアス先輩が訊くと、祐斗は廊下の先をさした。

「いえ、何やら魔女っ娘が撮影会をしていると聞いたもので、ちょっと見に行こうかなと思いまして」

 僕が魔女っ娘と言われて思い出したのはミルたんだった。

(さすがに違うよね・・・・・・・?)

 少し不安になりながらも、気になったので僕らもついていくことにした。


Side out


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