小説『魔法少女リリカルなのは 〜俺にできること〜』
作者:ASTERU()

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62. 事後報告









 こうして“闇の書事件”は幕を閉じた。



 あれからユウの足取りは一向に掴むことはできない。
 “聖女のレンズ”はマナを源にしているため、
 現在の管理局の技術ではユウの転移先を把握することは不可能だった。


 闇の書の暴走プログラムがまだ存在すること、それがユウの身に宿っていることを知っているのは、
 事件の当事者以外は管理局の一部のみ。
 公式発表では、事件の諸悪の根源である闇の書の暴走プログラムは
 アルカンシェルによって消滅したということになっている。


 ユウが闇の書事件を解決したことが評価されたため、過去の事件での彼の罪は軽くはなるかもしれないが、
 それでもユウが犯罪者であることに変わりはない。

 
 その後、ユウは管理局によって秘密裏に追われることに。
 非合法な世界に手配書などがまわされ、
 ユウは史上最年少の賞金首という大変不名誉な称号を手に入れることとなった。




 魔道士襲撃事件や過去の闇の書事件、公務執行妨害、管理外世界でも魔法行使など、
 様々な違法行為を行った守護騎士たちは、当然罪に問われることとなった。
 

 だが、過去の事件も十分に情状酌量の余地があり、
 過去の事件が闇の書事件を解決に導いたことが評価されることとなり、
 保護観察と管理局への長期間無料奉仕をするということで決着がついた。


 当然周囲からは、それでは軽すぎるのではとの意見が幾つか出たようだが、
 年中人員不足に頭を悩ませている管理局にとって、
 守護騎士たちのような高レベルの古代ベルカ式の使い手の存在は、
 喉から手が出るほどの存在であること、
 “聖王教会”と呼ばれる古代ベルカの王を祀っている組織との関係向上のため、
 結果的に強引にゴリ押しされるという結果になることとなった。




 はやてについては今回の事件では完全に被害者だと判断され、罪に問われることはなかったが、
 償いのため管理局に従事することとなった守護騎士たちと共にその重荷を負うべく、
 Sクラス魔導騎士としての保護観察を受け、
 フェイトと同様に嘱託魔導師となる道を選んだ。


 全ては、何時までもずっと、家族と一緒にいるため。
 そして、みんなと一緒に家族が犯した罪を一緒に背負うため。
 



 ソーディアンに人格を移植したリインフォースは、ソーディアンの存在が未知数であり、
 研究と調査のため、管理局への提出を求められ、はやて達が立会いのもと調査が行われた。


 しかし結果は散々なモノ。
 ソーディアンに使われている物質は全て未知の物質。
 何を動力としているのか、どうして人格を移植することが出来たのか、
 それら全ての理由が不明だったのだ。


 どのような危険性があるかわからないとため、管理局はソーディアンをロストロギアに認定し、
 そのまま保管しようとしたがはやて達がこれを拒否。
 強引に引き渡すよう仕向けようとしたが、それもある日突然ピタリとやむこととなる。


 実は、グレアムが管理局の上層部と司法取引を行い、過去の違法行為の証拠資料と引き換えに、
 ソーディアンの引き渡しを止めさせたのだ。
 このことをはやて達が知ることはなかった。




 その後、グレアムたちは今回の事件で自分たちが起こしたことを黙秘する代わりに
 自主的に退職することを管理局側が要求。
 グレアムほどの高い地位にあるモノが、
 犯罪を犯したことが世間に知られることとなれば管理局のイメージダウンに繋がるとでも考えたのだろう。


 しかし、リーゼ姉妹がユウを殺傷設定で襲撃したことを自ら告白。
 管理局側もこのことには頭を悩ませることとなったが、公には自主退職をしたということにし、
 秘密裏に管理局と協力するということで決着は着いた。


 はやてへの支援は今でも続けており、はやてが成長したら事件の真実を語ると決めている。
 

 ちなみに、リーゼ姉妹と共にはやて達にユウを襲撃したことを正直に告げたところ、
 八神家全員から一発ずつ鉄拳制裁を受けることとなったが、それで許してくれたようだ。 
 グレアムたちが理由を聞いたところ、“ユウだったらこれで許すだろうから”とのこと。


 今でも手紙のやり取りを続けており、関係は良好。
 拳で語るという言葉はあながち嘘ではないようだ。 



 今回の事件が終わった後、なのは達はアリサやすずか、
 高町家のみんなに自分たちの正体と説明することとなった。
 初めはみんな驚いていたが、全てを聞き終わった後もなのは達を見る眼は全く変わらない。
 友達が、家族がどんなモノになろうともそれで関係が崩れるようなことは決してなかったのだ。


 ちなみに、ユウのことを説明した際に何人かの者は大変ご立腹な表情となっていた。
 もしユウが彼らと再会してしまった場合、どのような事態となるかは全く想像することができなかった。






 ――――その後のみんながどのような道を選ぶこととなったのか






 なのはは闇の書事件の際に、“仮”嘱託魔導士扱いとなっていたが、
 はやてと共にきちんと資格を取り、晴れて嘱託魔導士となった。
 正直、ユウを捕まえようと目論んでいる管理局に協力するというのは意外に見えるかも知れないが、
 なのは自身ちゃんとした理由があるらしい。




 フェイトは執務官になるべく勉強中。
 このことは以前から考えていたことらしく、
 フェイトが決めたことならとテスタロッサ家も納得し、協力してくれている。
 

 ユウの存在が、フェイトが執務官を目指すきっかけとなっているのを本人は知らない。
 ユウの時のようなことがもう起きないように、あんな思いはもう二度としたくないから。



 はやてと守護騎士たちは、検査などを行うため、しばらくの間管理局で生活することになった。
 本当に闇の書ははやての身体から消えたのか、闇の書の主ではなくなったのか、
 守護騎士達に危険はないのかなど、調べることは幾らでもあったから。


 その間、管理局に拘束されてしまうため罪の償いは出来ないが、ソレが終わり次第グレアムたちも協力し、
 少しずつだが、償いを行っていくつもりだ。




 ユーノは今回裏方に回り、
 管理局の本局に存在する管理世界の書籍やデータが全て収められた無限書庫で闇の書の調査を行い、
 事件解決に大きく尽力した。


 ユーノの部族“スクライア”は遺跡や古代史探索など過去の歴史の調査が得意な一族で、
 無限書庫での文書探索は得意分野だった。
 闇の書事件が一段落した後、ユーノはこの無限書庫の司書に誘われてこれを了承。
 近いうちに無限書庫勤務となるようだ。



 
 クロノやリンディ達ハラオウン一家は、今回の闇の書事件のことをクライドの墓前に報告。
 闇の書は完全に消えたわけではない。
 だけど、二人の顔は晴れ晴れとしたモノだった。


 何故なら信じているから。
 これで闇の書は潰えたのだと。
 ユウなら必ずやってくれるはずだと。
 




 これが、皆がそれぞれ選んだ道。
 だが、物語は続いていく。



 ――――これからもずっと……









◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


A's編 完・結!

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