序章 〜外史の守り手〜
正史と外史
2つの世界が存在する。
正史とは全ての外史の基点となる世界である。
外史とは正史から生まれた可能性の世界であり、正史に住む人間の『想い』、『願い』、これらが具現化し、生まれた世界である。
外史によっては正史とは全く異なる歴史や文化を辿った外史も存在する。
次に外史には管理者と守り手の2つがいる。管理者とは生まれた外史を管理維持を目的とする存在である。
守り手とは外史内の争い、戦争等を終結させ、外史を直接安定させる者である。
一言で言うと管理者とは外側から、守り手とは内側から外史を守る存在である。 これから始まる物語は1人の守り手がとある外史での出会い、成長し、そして困難を突き進む物語である。
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?「ふぅー、これでこの外史はもう問題ないな」
俺は遠くに見える平和な街並みを見ながら呟いた。
ここで自己紹介をしておこう、俺の名前は御剣 昴(みつるぎすばる)、守り手の1人だ。
俺は今この外史での仕事を終えたところだ。
昴「しかしまぁ、この外史も何かと面倒だったが、これでもう何も心配ないだろ」
守り手というのは何かと大変だ。何せ大多数ある外史に対して守り手の人数が圧倒的に足りないからだ。まぁ守り手に求められる資質が英傑並みの武力と知力の両方必要だから仕方ないんだが。
昴「さてと、そろそろ次の行き先案内人が来るはずなんだが・・・っ!?」
?「昴ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」
昴「せぇぇい!!」
ドゴォォォォォォン!!!
とっさにやってきた邪な気配に拳を撃ち込む。
?「ブルァァァァァ!!!!」
顔面に拳をめり込ませ、1人の巨漢が吹っ飛んでゆく。
?「酷いわ昴ちゃん」
巨漢が殴られた顔を撫でながら呟いた。
昴「悪いな、殺気以上に不愉快なものを感じたんでな」
今俺が殴り飛ばした巨漢の名は貂蝉、外史の管理者1人だ。
見た目は巨漢に下着1枚というもしかしなくても変態だ。 これで管理者としてはかなり優秀でしかも管理者としての地位が高いというのだから驚かせる。
昴「それで、一体何の用だ?」
貂「そうねん、昴ちゃんにこれから行ってほしい外史があるのよん」
腰をくねくねさせながら言ってくる。正直かなり気持ち悪い。つうか常人なら軽く死ぬぐらいの力で殴ったのに何ともないようだな。相変わらず底が知れない。
昴「お前直々に指令とは珍しいな」
大概次の外史への指令は白装束が手紙を無言で渡し、内容を理解した上で次の外史に飛ばされる。有無を言わさず。管理者直々での指令はめったにない。
貂「ちょっと重要で急を要するに指令だから私が直々に来たってわけ」
昴「なるほどな。それでその外史というのはどんなところだ?」
貂「そうねん、三國志を基点とした外史、と言えば分かるかしら」
昴「三國志か・・」
俺も知っている。生憎俺が産まれた外史は三國志が存在しない、言わば正史とは違う歴史を歩んだ外史なので詳しいわけではないが以前別の外史で多少書物を読んだことがある。
昴「三國志というとあれだよな? 劉備に孫策に曹操が出てくる世界のことだろ?」
貂「そう、その三國志よん」
正直少しわくわくしてきた。何せ何百年も語り継がれる王とその重臣である武将がいる世界に行くことができるからだ。
貂「あら、ずいぶんと楽しそうね」
昴「そりゃな、俺も守り手である前に武人だからな。英傑と手合わせ出来る機会があるかもしれないならこれ以上に楽しいことはないな」
貂「話を続けるわ。やってほしいことが2つあるの。1つはこれからその外史で起こる乱世を鎮めること。もう1つは―――――
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貂「以上が次の外史での指令よ」
昴「分かった、問題ない」
貂「ちなみにその2つを達成させるやり方は昴ちゃんに任せるわ」
昴「つまり歴史を無視して違う結末になっても構わないってことでいいのか?」
貂「そういうことよん」
昴「なら俺のやり方でやらしてもらうぜ」
俺は少し胸を躍らせていた。
そこに一筋の光の柱が現れた。
貂「この柱をくぐれば次の外史に行けるわ」
昴「なら行ってくるぜ」
俺はその柱に飛び込む。その瞬間、目の前が光に包まれた。
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side 貂蝉
貂「行ってしまったわね」
昴ちゃんが柱をくぐると柱は消失した。
?「あやつで大丈夫なのか?」
そこに1人の巨漢が現れた。
名は卑弥呼、私と同じ外史の管理者で同じ漢女道を歩む同士であるわん。
卑「乱世を鎮めるのはともかく、もう1つの件は今のあやつでは・・」
貂「そうねん、今の昴ちゃんでは奴にはかなわないでしょうね」
卑「ならば!」
貂「でもね卑弥呼、現存する守り手で奴を倒せる可能性を持つのは昴ちゃんだけよん。現時点では無理でも昴ちゃんなら必ずやってくれるわん」
卑「お前がそこまで言うなら信じようではないか」
貂「えぇ、信じてあげてねん」
貂「(昴ちゃん、あなたを信じるわ。あなたならきっと奴を止めてくれると)」
かくして御剣 昴の新たなる外史での物語が開幕した。
続く