小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第1話〜新たなる外史、初名乗りは盛大に〜















昴side


昴「ここが新たな外史か」

光の柱を抜けるとそこは見渡す限りの荒野だった。

昴「着いたはいいが、ここが何処だか分からんし、何処に行ったらいいのかも分からん」

ここに来る前に貂蝉からこっちで使える多少の路銀を貰っている。最悪俺の手持ちの荷物を売れば路銀は当分は持つだろう。

昴「まずは近くの村にでも、『おう姉ちゃん、随分と珍しい物持ってるな』ん? 何だ?」

振り返るとそこにはナイスミドル、デブ、チビの3人組の男達が並んでいた。

「今すぐにテメェの荷物と金と服を置いていきな!」

言うなりナイスミドルが腰の剣を抜きこちらへ突き付けてきた。

昴「・・・」

こいつら賊か? なら片付けるだけだが・・。

斬り捨てようとしてやめた。以前に別の外史で賊と思って斬ったらその国の駐留軍で指名手配されたんだよな。まだデカイ騒ぎは起こしたくない。仕方ないか・・・。手持ちの鞄から以前に他の外史で手に入れたルーズリーフを取りだし・・

昴「これやるから、何処かに行ってくれ」

「着てる物も荷物も全部出せって言ってるんだよ! おい、この姉ちゃんひっぺがせ。後は俺たちでゆっくり楽しんだ後奴隷にでも売り飛ばすか」

「へへ、そうですね」

「た、楽しむんだな」

デブとチビが近づいて来る。

おーそうかそうかこいつら相当調子にのってんな。それより1つ気になることが。

昴「なぁ、さっきから姉ちゃんって俺に言ってんのか?」

「はぁ? テメェ以外に誰がいんだよ! さっさと出すもの出しな!」














昴「(-_-#)」














「「「(°д°;;)」」」














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※※※※


数分後



「「「キュウ〜〜!」」」

昴「ふん! 口ほどにもない。」

「テメェ、俺たちにこんな真似してただで済むと・・」

昴「あぁん!?#」

「「「(ToT)」」」

すっかり怯えきった3人組はスタコラサッサと言わんばかりに逃げようとする。

昴「お前達」

「「「は、はい!」」」

昴「今回は命だけは助けてやる。だがもし次賊まがいな真似してるところを見かけたら・・」

「「「見かけたら?」」」

昴「明日の日の出は拝めないと思え!」

「「「ひぃ〜〜! 申し訳ありません!」」」

3人組一目散に逃げて行った。

昴「乱世とはいえ、あんなのが蔓延ってるなんて世も末だな。さてと・・・」

背後に聳え立つ大木に・・。

昴「そんな見づらいところじゃなくて、もっと見やすいところで見たらどうだい?」

















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※※※※


?side

このあたりに一筋の流星が落ちたので気になって見に来たのだか・・。

?「何もありませんね〜」

?「確かにこのあたりに落ちたはずなのです。」

さっきからこの周辺を調べているが何も見つからない。

?「むっ?」

前方を良く見ると黒髪の女性が3人組の賊に襲われているではないか!

?「今すぐ助けねば!」

一目散にそこに駆け出した。

?「あ、星殿!?」

?「星ちゃん!?」















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※※※※


「はぁ? テメェ以外に誰がいんだよ? さっさと出すもの出しな!」

まずい、今すぐ助けに・・・なっ!?

黒髪の女性から恐ろしい怒気が溢れると3人組が瞬く間にのされて行く。

昴「今回は命だけは助けてやる。だがもし次賊まがいな真似してるところを見かけたら。」

「「「見かけたら?」」」

昴「明日の日の出は拝めないと思え!」

「「「ひぃ〜〜!申し訳ありません!」」」

3人組は一目散に逃げ出した。

何と? 賊をみすみす見逃すというのか?

昴「乱世とはいえ、あんなのが蔓延ってるなんて世も末だな。さてと・・・」

一言呟くとこちらを向き。

昴「そんな見づらいところでじゃなくて、もっと見やすいところで見たらどうだい?」

っ!? こちらに気付いていたのか! ならば出ていくしかあるまいな。


















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※※※※


昴side

?「これは失礼、助けにと思い参ったのですが、無用だったようですな」

見ると1人の女性が現れた。この女性身のこなし、かなりできるな。

昴「何、別に気にしていないさ」

特に殺気は感じなかったから放っておいたが。

?「しかし、みすみす賊を見逃しても良かったのですかな? また同じ事を繰り返すだけなのではないか?」

あいつらやっぱり賊だったか。

昴「その時は責任をもって斬るだけだ」

まぁ、更正してくれる事を祈るだけだな。とりあえずせっかく出会った人だ、この女性にいろいろ尋ねてみるか。

昴「ところで貴女の名前と幾つか聞きたいことがあるんだが。」

?「ふむ・・、人に名を尋ねるならまず自分からではないですかな?」

昴「これは失礼。俺の名は御剣昴。」

?「それは姓は御、名が剣、字が昴ですかな?」

そういやこの時代の人間には姓名以外に字があるんだったな。

昴「あ〜違う違う、姓が御剣で名が昴。字は無いんだ」

?「字がないとは・・」

やっぱり驚くよな。

昴「それで貴女の名は?」

?「あ〜、そうでしたな、私は・・・」

?「星ちゃ〜ん」

?「星殿」

何やら2人組の女性が駆けてきた。連れか?

?「お〜、稟に風か、遅かったな」

?「あ、貴女が速すぎるのですよ」

2人供かなり息があがってるな。

?「そちらの女性はどちら様ですか〜?」

何やら飴をくわえた女の子が尋ねてくる。ん? 女性?

?「賊を始末しようと来てみたらこちらの方には無用だったようでな」

?「そうでしたか〜」

趙「失礼しました。自己紹介がまだでしたな。私は趙雲と申す」

程「風は程立です〜」

戯「私は戯志才です」

趙雲に程立に戯志才ね。ん? 趙雲? 趙雲・・、趙雲・・、趙雲!? まさか・・な。

昴「趙雲、君はもしかして常山群の趙子龍か?」

趙「ほう! 私のことをご存知でしたか!」

うわ〜、やっぱりか! 趙雲って確か男だったような気がしたが・・、なる程、あくまで三國志を基点とした外史という分けね。

昴「まぁ、風の噂で、な」

それに程立に戯志才って確か有名(になる)な軍師だよな。

昴「改めて、程立、戯志才、俺は姓は御剣、名は昴。字はない」

程「字がないとは珍しいですね〜」

昴「まぁな、ところで近くに街や村等はないか?」

戯「この近くに街が1つあります。これからそちらに向けて行く予定でしたから、良ければご一緒しますか?」

昴「助かる、是非一緒に行かせてもらおう」

程「ではでは〜、一緒に行きましょう」

俺は程立達の案内のもと一緒に行くことになった。


その道中・・。


昴「そういや、さっきから気になってることがあるんだが」

程「何でしょう〜?」

昴「君は姓が趙、名が雲、字が子龍だよな?」

趙「いかにも」

昴「今戯志才が趙雲に向けて呼んだのは何だ?」

戯「?」

昴「ほら、今君は趙雲とも子龍とも違う呼び方を趙雲にしただろ?」

確か星、だったかな?

戯「? 真名・・ですが?」

昴「真名?」

初耳だな。

趙「真名をご存知でないと?」

昴「あぁ、何せこの国に来たばかりなんでな」

聞いてみると真名というのはその者のもつ本当の名前で、家族や親しい者以外が気軽に呼べば首をはねられても文句の言えない神聖な名らしい。危ねぇ、あだ名だと思って呼ぶところだった。流石に趙子龍と殺し合いは避けたい。

昴「なるほど。しかしこんな荒野で3人とも何してたんだ?」

俺を助けにってのは結果論だろ。どう考えても寄り道だ。

趙「じつは今この国ではとある噂が広まっていまして」

聞くところによるとその噂の内容が、世が乱れし時、この地に一筋の流星に乗った御目麗しい天の御使いが乱世を治め、この地に平和をもたらす・・。

戯「私達は別段噂を信じていたわけではないのですが、つい先程、この近くに一筋の流星が落ちたので。」

趙「そこに向かってみたら貴女と先程の賊どもがいたというわけです。」

やっぱりか、守り手が外史に降り立つ時はどうしても登場が派手になるんだよな。1度管理者側にどうにかならないかって打診したら一言『無理』って返された。ある程度人目のつかない場所に降ろしてはくれるんだが。
ま、そんなことより。

昴「さっきから君達は誤解してるようだから言っておくが」

趙・戯・程「?」

昴「俺は男だ」

趙・戯・程「・・えぇーーーー!!??」

はぁ、何処に行ってもこの反応だ。何で俺ってもっと男らしい顔に産まれてこなかったんだろ。例えるなら○オウとか○ンシロウみたいな(笑)。

趙「(これほどの美しさを持って男だと!?)」

戯「(私より美しい)」

程「(女として自信を無くしそうです〜)」

うーん、やっぱりこんな反応だよな。

昴「ま、そういうことだからよろしくな3人とも」

俺は笑顔を浮かべながらウインクをした。

趙・戯・程「っ・・//」

ん? 何やら3人とも顔が赤いな? まぁいいか。お? 街が見えてきたな。
















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※※※※


街の食堂にて・・。


今俺たちは一軒の食堂で食事をしている。やっぱり男だからお代は払おうとしたんだが、丁重に断られ、結局割り勘ということになった。

程「お兄さんに1つ聞きたいことがあるのですよ〜」

昴「何かな?」

何だか気になるな。

程「率直に聞きます、お兄さんは何者ですか?」

やっぱりそうくるよな。

昴「何者、と言われても御剣昴、としか言い様がないな」

程「お兄さんが風達の名前を聞いた時何やら驚いた反応をしました」

まぁ、実際驚いたないろいろ。

戯「後ですが、貴方は真名の存在を知らなかった事を考えてこの国に来て間もないのでしょう。にもかかわらず星殿の事を常山群の趙子龍と知っていました。星殿の武は本物ですがこの地に来て間もない星殿が、まだこのあたりでは名が知れているとも思いません」

最もだ、迂濶だったな。

昴「それはだな」

戯「はい」

昴「秘密、ということで」

人差し指を口に当て、言ってみた。

程・戯・趙「はぁ?」

昴「人にはいろいろ秘密があるんだ。例えば戯志才、君が偽名を名乗ったようにな」

戯「!? ・・何故偽名だと?」

昴「君が名を名乗る時に微かに言葉に躊躇いがあったのと、名乗った時に瞳が軽く揺れていた。嘘をついてる人間の典型だ」

戯「・・・」

昴「あぁ、別に気にしてないからな。初対面のしかも得体も知れない人間に偽名を名乗るのは寧ろ必然、俺でもそうしていただろうからな」

両手を広げ自分の前で振りながらフォローした。

趙「時に御剣殿この後はどうなさるおつもりです?」

昴「そうだな・・」

見聞を広げる為に旅に出る。そう告げようとした刹那・・。

「ぞ、賊だーーー!」

昴・趙・戯・程「!?」

1人の街人が騒ぎだしていた。

「本当なのか!!!」

「街の外で見たんだ! 間違いない!」

この反応、マジだな。ち、さっきの仲間か!

すると趙雲が・・。

趙「この街の県令や警備の兵はどうした?」

「県令はとっくにとんずらしちまったよ! 警備の兵も県令がいないから混乱してるだけだ! あんた達も巻き込まれる前に早く逃げな!」

趙「ふむ、ならば!」

趙雲は駆け出した。

戯「星殿、どうするつもりですか!?」

趙「たかが賊など我1人で十分だ!」

戯「星殿! 無茶です!」

静止も聞かず飛び出した。

昴「時に、賊の数はどのくらいだ?」

「ざっと千近くはいるんじゃないのか?」

千か、趙雲1人ではちときついだろ。

昴「程立、戯志才」

戯「はい!」

程「何でしょう〜!」

昴「この街の警備兵と民を纏めて街の防衛をしてほしい。出来るか?」

出来るはずだ。何せあの程立と戯志才(本名知らないがきっと有名な武将だろ)なのだから。

戯「可能ですが貴方はどうなさるつもりですか?」

昴「俺か? 俺は趙雲と共に賊を片付ける」

多分俺の蒔いた種だしな。

戯「無茶です!」

昴「大丈夫。何せ俺は・・・・」















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趙雲side


賊がぞろぞろと、数はおよそ千、といったところか?だが関係ない我が槍で一掃してくれよう!

賊「何だ! もしかして俺たちと楽しみにきたか?」

賊どもは下卑た笑いを浮かべていた。

趙「黙れ賊ども。きさまらを地獄に突き落としてくれよう!」

ザシュ!!!

1番前にいた賊を一突きで仕留めると。賊が騒ぎだした。

賊「こいつを殺せ! 殺せー!」

趙「舐めるな! はいはい、はいー!!!」

ザシュ! ザシュ! ザシュ!

次々と向かってくる賊を突き殺す。

目につく賊をところ構わず我が槍にて葬り去る。

どれ程繰り返したであろうか、百を越えた辺りで徐々に状況が変わってくる。

賊どもの死体で足場が! それに、身体が重くなってきた!

賊「囲め囲め!」

趙「くっ!」

槍を構えた矢先・・。

趙「しまった!」

後ろの死体に足をとられ、賊の剣が腕を掠めた。

賊「ヘッヘッへ、ここまでたな!」

趙「くっ!」

身体が自分のとは思えないほど重い。

これまでか!

街の民は避難出来たであろうか、何、稟に風がいる。あやつらがうまくやってくれるだろう。

私はここまでのようだ、すまぬ。

走馬灯のように浮かんできたのは、自分の両親に、共に旅をしていた風と稟。そして・・・

ははっ、御剣昴殿か。面白そうな御仁であったな。もう1度話してみたかったな・・。

賊が自分に向けて剣を降り下ろす。

咄嗟に自分に走るであろう激痛に身を震わせた。

しかしいつまでたっても何も変わらない。

いったい何が・・・!?

目を開けるとそこには先程会いたいと願った者が自身に降り下ろされた剣を素手で受け止めていた。

昴「ギリギリセーフ、って言ったところか?」

















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昴side

俺は急いで趙雲のもとへ向かった。さすがは趙雲だ、千もの賊を相手に善戦していた。しかしいかに趙子龍でも、足場が悪すぎるし何より体力も限界に近づいている。突然現れた賊に対応した矢先に賊の死体に足をとられ、転倒した、幸い賊の剣は腕を掠めただけだった。賊は趙雲に向けて手に持つ剣を降り下ろそうとしている。

まずい!!

俺は足に自身の氣を練り上げ、特殊移動術の縮地をもって一気に趙雲との距離を詰め、降り下ろされた剣を素手で受け止めた。

昴「ギリギリセーフ、って言ったところか?」

「何だテメ、『邪魔だ。』がは!」

前蹴りで賊を蹴り飛ばす。賊は10メートル後方に飛ばされた。

昴「趙雲よ、無理と無茶は別物だぜ? それに君はこんなところで死ぬ人間でも死んでいい人間でもないはずだ」

趙「御剣殿」

さて趙雲も心配だが今はこいつらだな。

俺は賊に向けてにじり寄る。

「な、何者だテメェ!」

昴「俺か? 俺は・・・・」

さてせっかくの新たな外史での初戦だ、盛大に行きたいな。そういやこの外史にくる前にあの変態(貂蝉)が言ってたな。

















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貂「1つ言い忘れてたわん」

昴「?」

貂「これから昴ちゃんが行く外史だけど、今1つの噂でもちきりよん」

昴「噂?」

貂「流星に乗ってやってくる天の御遣いが乱世を治め、平和に導くであろうってねん」

昴「随分都合のいい噂だな。・・・まさか貂蝉」

貂「そ、外史に軽く介入しておいたわ。でも私に出来るのはここまで。後は・・」

昴「自分でどうにかしろってことだろ? 十分だ」
















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※※※※


御目麗しいってのは余計だったが好都合だ。

昴「我が名は御剣昴! 乱世を憂いこの地に舞い降りた天の御遣いだ! 善行改める者は武器を置いて去れ! 悔い改めぬ者は天に変わりお前たちに天罰を下す!」

去るものは・・・やはりいないな、噂を信じるにしろ信じないにしろ、賊にとっては迷惑な話しだし、なにより、実績もないしな。

さて始めるかこの外史の乱世を治めに。

御剣昴の新たな外史での初戦の火蓋が切って落とされた。







続く

-2-
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