小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第2話〜赦しと断罪、そして旅立ち〜















昴「そんじゃ、行くぜ!」

俺は太股の外側に携えた朝陽、夕暮を引き抜き敵陣に飛び込んだ。

昴「俺に魅了された者には、死神にも魅了されるぜ!」

左右の剣で賊を薙ぎ、突き、時に蹴り飛ばしこれらを一連の動きで、繰り返す。
まるで舞を踊るかのように。














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趙雲side

趙「何という//」

御剣殿は次々と賊を葬り去っている。その姿は艶やかな踊り子だ。その姿、一言で・・。

美しい・・。

そんな感想しか浮かばない。戦場や武人同士での一騎討ち。その武は強ければ強いほどその相手や第三者に与えるのは圧倒的な恐怖である。しかし今の御剣殿は圧倒的な武をふるっているにもかかわらず、そこから感じるものは恐怖でなく、見るもの全てを魅了する美なのである。

趙「これが天の御遣いと呼ばれる者なのか・・」

「あの女だ! あの女を狙え!」

一部の賊がこちら目掛けて迫ってくる。

趙「舐めるな!」

槍を握り返り討ちしようとした刹那、また新たに驚愕することになる。

昴「おいおい、こっちを無視するな」

ザシュ! ブシュ! ・・!

言うや否や、4人者の賊を斬り捨てた。

御剣殿と私とはかなりの距離があった。あれだけの距離を一瞬で、いったいどうやって・・。

呆然と御剣殿を眺めていると、

昴「趙雲よ」

趙「はっ!」

何故か身体に緊張が走る。

昴「まだ動けるか?」

御剣殿の問いに・・。

趙「無論です。我が武はこの程度では曇りませぬ」

昴「そうか、なら・・」

こちらを振り向き・・。

昴「背中は任せるぜ」

溢れんばかりの微笑み向けた。

趙「ふふっ・・」

不思議な笑顔だ、さっきまで重かった身体が嘘のように軽い。それどころか身体からどんどん力が湧いてくる。

昴「ならば行くぞ! 力無き民を脅かす賊を俺たち手で討ち果たす!」

趙「承知!」

御剣殿と共に敵陣へと飛び込んで行った。














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昴side

趙雲が加わったことにより戦況はこちらの優勢に傾く。だが依然として賊の数は多い。

キリがないな・・。

いつまでもこんな事を繰り返しても埒があかない。なら一気に片をつけるか。俺は足に氣を集中させ・・。

昴「趙雲! 少しの間俺から距離を取れ!」

ドン!!!

上空に跳躍し賊の中心部に降り立った。

趙「御剣殿! 何を!?」

俺は朝陽、夕暮に新たに練り込んだ氣を集中させ・・。

昴「氣功多連弾!」

技名を唱えると、双剣を左右に向けピンポン玉サイズの氣の塊をマシンガンのように打ち出した。

ダダダダダッ!!!

前後左右目につく賊を氣で撃ち抜いていく。
氣で撃ち抜かれた身体の箇所からは穴が空きそこから鮮血が飛び交った。

「がは!」

「ひぃ!」

「ぎゃあ!」

俺に近い敵は双剣で突き、薙ぎ払い離れた敵は氣で撃ち抜いていく。賊たちに先程の余裕はなく、徐々に恐怖に支配されていく。

「何だよこいつ・・」

「化け物だ!」

「槍の女もただ者じゃねぇ!」

恐怖が賊全体に伝染していく。千いた賊も気が付けば残り200にも満たなかった。

昴「だいぶ、減ってきたな」

この調子なら問題なく・・・・ん?

「逃げるんじゃねぇ! 戦え、戦え!」

賊の頭見ーつけた。

目の前の賊を斬り伏せると頭目掛けて駆け出した。















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昴「ようやくご対面だな」

頭「な! いつの間に! おい! 早くこいつをやっちまえ! 俺を守れ!」

頭が部下に指示を飛ばすが、誰1人動かない。いや、動けないのだろう。

頭「どうした! 何故言うこと聞かな『無駄だ』なんだと!」

昴「分かんないか? 動けないんだよ。奴等が今渦巻いてるのは恐怖だ。それに、命を賭けてお前を守る理由もないんだろうがな」

頭がワナワナとさせていた。

趙「御剣殿、こちらはあらかた片づきました」

昴「趙雲か」

見ると趙雲の後方には賊の死体が並んでいた。

昴「趙子龍の名は伊達じゃないな」

頭の方に振り返り、

昴「さて、この戦も終幕と行こうか?」

頭「ま、待ってくれ! もう俺たちはもうあの街には手を出さない! だから命だけは見逃してくれ!」

昴「お前はそうやって言ってきた者を見逃してきたことがあるのか?」

頭「と、当然だろ、俺たちはあくまで物を頂くだけ『嘘だな』な!?」

頭が驚愕の顔を浮かべた。表情に出しすぎだ。嘘だと言わんばかりじゃないか。

昴「下らない」

戯志才の時と一緒だ、言葉に戸惑いがあるし、瞳が揺れている。そして何より・・。

昴「お前の身体からは大量の血の臭いがする。1人2人殺めた程度じゃそんな臭いはしないはずだ!」

武人なら身体に返り血を浴びるような戦いも殺めた方もしない。現に趙雲は得物である、槍以外に血はついてない。抵抗してきた民をやむを得ず殺めたも却下だ。こいつは見てのとおりの小心者に臆病者。無抵抗の人間か圧倒的有利での状況じゃなければ、剣を振るわないだろう。

昴「終わりだ。」

頭「ひぃ!」

多少殺気をぶつけただけで、この様だ。

俺は朝陽、夕暮鞘に戻し・・。

昴「だが、まぁ、せめてもの慈悲だ。」

頭に背を向けた。

趙「なっ!」















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趙雲side

昴「だが、まぁ、せめてもの慈悲だ」

趙「なっ!」

御剣殿が賊の頭に向けた刹那・・。

頭「馬鹿め!」

頭が腰の剣を引き抜き斬りかかろうおとした・・・・が。

頭「えっ?」

賊の頭(かしら)の胸から上と下半身がズレ始めた。

頭「そんな、見逃してくれるんじゃ・・。」

昴「お前みたいなゲスにそんな都合のいい選択肢があると思うか?」

頭(かしら)の身体がどんどんズレていく。

昴「せめてもの慈悲だ楽に死なせてやる。」

上半身と下半身が完全に別れを告げた。

昴「次人としての転生賜るなら戦乱無き世に産まれてくれ。」

頭の身体が崩れ落ちた。

何という・・。

私は見た、双剣を収め、賊の頭に背を向ける刹那、腰の長剣を恐ろしい速さで引き抜き、身体を切り裂き、鞘に長剣を戻した。並みの者では目にも止まらない速さであった。

やはりこの御方、ただ者ではない・・。

御剣殿に見とれていると、

「頭がやられた!」

「もう駄目だ!」

「逃げろ〜!」

頭を失い統制を失った部下たちが我先に逃げ出し始めた。

趙「逃がすか!」

賊を追いかけようと駆け出そうとすると御剣殿が手で制し・・。

昴「追う必要はない」

趙「御剣殿! みすみす賊を逃がすおつもりか!」

昴「そうじゃない、あれを見な」

指差す方向見ると・・。

戯「今です!」

程「皆さ〜ん、一斉に弓を放って下さい!」

あれは稟に風か! 街の警備兵と民を一つの小隊に纏めあげたのか。

賊は稟と風達の小隊の放つ矢に次々に討たれていき、最後の1人が討たれた。

昴「全く、街の防衛をしてくれと言っただけなんだがな」

やれやれと言わんばかりに呟いた。

昴「何にせよ、これで街は救われた」

趙「そのとおりですな」

昴「さてと、後片付け・・・ん?」

御剣殿が私のもとに近づき、

昴「腕を怪我しているな?」

趙「あぁ、この程度ただの掠り傷です。気になさるな」

昴「そういうな。せっかくの綺麗な身体に傷が残ったらもったいないだろ?」

御剣殿がそういうと私に片目を閉じて微笑んだ。

趙「なっ//」

全く、なんということをおっしゃるのだ、この御方は!

御剣殿が私の腕に手を翳すと傷がみるみる塞がっていく。

趙「これは!?」

昴「これは内功と言ってな、俺の氣と君の氣を同調させて傷の治癒を促してるんだ」

趙「ふむ?」

昴「要するにな、傷や怪我とかは放って置いても治るだろ? 俺がやっているのはその速さを爆発的に高める為の処置だ」

趙「なるほど!」

それなら分かりやすい! 見ると傷はもう完全に塞がっていた。

趙「何から何まで助かります。それでは一度街に・・・あっ?」

突然脚から力が抜けその場に座り込んでしまった。

趙「ははっ、申し訳ありません、今すぐ立ちますので」

立ち上がろうとしたがうまくいかなかった。

趙「これは、どうしたことでしょう?」

昴「君の身体はとうに限界を越えているんだ、さっきまでは夢中で忘れていただけだ」

趙「何とも情けない姿をお見せしてしまったようですな」

昴「すまないな、内功は体力までは元に戻せないんだ。だから街までこれではしばらくこれで我慢してくれ」

御剣殿が私に近づくとおもむろに膝下に手を回し抱き上げた。

趙「きゃっ!」

昴「街までだ、我慢してくれ」

なんということを御剣殿のお顔こんな近くに。よく見ると透き通った肌にサラサラ黒髪、そして何より・・。

綺麗だ・・。

見るもの全て魅了しかねない、そんな顔立ちだ。

昴「しかし、趙雲も少しは自重をだな・・」

星「星です」

昴「ん?」

星「星とお呼びください」

昴「それ真名だろ? いいのか?」

星「貴方ほどの御仁ならば是非にも」

昴「わかった。星君の真名を受け取ろう。なら俺のことは昴と呼んでくれ。それが真名に1番近いからな」

星「分かりました、昴殿」

昴「やっぱりそう呼ばれる方が落ち着くな」

星「後これが命を救っていただいたお礼です」

昴「ん?」

チュッ・・。

昴殿の首に両手を回すと昴殿の頬に口づけを交わした。

昴「せ、星!?」

星「お礼と申したでしょう?」

昴「全く//」

昴殿も存外うぶですな。武人の道を歩み男を愛するなど決してないと思っていたが。やはり人生は何が起こるか分からん。ふふっ! 昴殿? 私は決して貴方を逃がしませんよ?

















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程立side

程「こっちは終わりましたよ〜」

戯「こっちも終わりましたよ」

お兄さんに言われて警備兵と民を纏め街の防衛に当たりましたがお兄さんと星ちゃんが思いの外賊を討ち追いつめていたので撃って出ることにしました〜。

戯「それでは星殿と御剣殿をを迎えに行きましょう」

程「そうしましょう〜」

歩いてゆくと星ちゃん達を見つけました。何やら星ちゃんは抱き抱えられてるようです。お〜、星ちゃん大胆ですね〜。星ちゃんがお兄さんの頬に口づけをしました。

戯「口づけ、恋仲・・、結婚・・」

おやおや稟ちゃんの妄想が始まったようです。

戯「ぶはっ!」

稟ちゃんの鼻から血が飛び出しました。

程「はい〜稟ちゃんトントンしますよ〜トントン」

戯「ふがふがっ!」

















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昴side

俺たちは一度街に戻った。

昴「俺は少し用事があるから後は頼む」

程「何処へ行くんですか〜?」

昴「街の外だ。賊の死体をあのままに出来ないからな」

戯「どうなさるおつもりで?」

昴「死体を一ヶ所に纏めて火葬する。死体をそのままにすると伝染病の元になるからな」

星「そうなのですか?」

昴「あぁ、俺が旅で学んだことだ」

戯「そういうことならば街の皆にも力を借りましょう」

昴「ん〜、そうだな、そうしてもらおう」














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街の皆は以外にも総出で手伝ってくれた。夜まで覚悟してたんだか、日没前に作業が終わった。今俺は人ほどの高さの岩を剣で削っていた。

昴「ふぅ〜、こんなもんか?」

戯「何をなさっているのです?」

昴「これか? これは墓標さ」

戯「賊のですか?」

昴「あぁ」

戯「どうして賊なんかの?」

理解出来ないって感じだな。

昴「あいつらは賊だ。人から物を奪い時に殺め、それを繰り返す。ま、死んでも文句は言えないよな?」

戯「・・・」

昴「でもな、あいつらだって産まれた時から賊だったわけではないし、あいつらにも友や家族だっているだろう」

戯「はい」

昴「あいつらの被害にあった奴らから言わせればとても許容できないだろう。でもな、こいつらには裁き下った。だから誰か1人ぐらい弔う奴がいてもいいだろ?」

戯「御剣殿」

昴「まぁこれはただの・・・・自己満足だ」

削った岩を持ち上げ賊の火葬した場所に建てた。後にしばらく黙祷した。

昴「・・・」

10秒程黙祷を捧げ、

昴「それじゃ、街に戻るか!」

そのまま街に歩き出した。その道中、

戯「御剣殿、貴方は不思議な方だ」

昴「そうか?」

戯「戦場では勇ましく、戦場以外ではひょうきんで、今は寂しそうです」

昴「それが俺さ」

少しカッコつけすぎたか。

昴「あ、そうそう」

戯「?」

昴「俺のことは御剣ではなく昴と呼んでくれ。そっちのほうが落ち着く」

稟「分かりました、では私のことは稟とお呼びください」

昴「いいのか?」

稟「是非貴方に呼んでいただきたい」

昴「分かった、稟、君の真名を受け取ろう」

稟「改めまして私は姓は郭、名は嘉、字は奉考、真名は稟です」

郭嘉、なるほどやっぱり後の名軍師だったか。

昴「稟宜しく頼む」

稟「はい!」

?「おやおや〜、稟ちゃんに先を越されましたか〜」

稟「風!?」

風「お兄さん〜、風は程立、字は仲徳、真名は風です〜」

昴「程立まで」

風「預ける理由は稟ちゃんや星ちゃんと一緒なのですよ〜」

昴「分かった、風。君の真名を受け取ろう。宜しくな」

風「宜しくです〜」

?「おうおう、姉ちゃんみたいな兄ちゃん、おいらは宝ケイだ宜しくな」

置物が喋りやがった。

風「これこれ、姉ちゃんみたいは余計ですよ」

帰り道に2人の真名を受け取った。














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街に戻ると街を挙げて祝杯をしてくれた。遠慮したんだが、お礼にと言われたから断れなかった。祝杯は夜更けまでに及んだ。













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翌朝・・。


昴「いろいろ世話になったな」

星「それはこちらも同様です」

風「お兄さんお兄さん」

昴「ん?」

風「お兄さんはこれからどうするのですか〜?」

昴「そうだな、とりあえず見聞を広げる為にこの国を巡ろうと思う。とりあえず次は幽州だな」

風「そうですか〜。」

昴「後は俺が力を預けるに足る主を見つける」

稟「貴方自身が王として立ち上がろうとは思わないのですか?」

昴「ははっ、俺は王の器じゃない。あくまで中身だ。俺が立ち上がったところで結局本物の王の器を持った者に潰されるだけだ」

稟「そうですか・・」

昴「さてと、そろそろ出ないと日没までに次の街に着かないから俺はそろそろ行かせてもらうよ」

星「左様ですか」

昴「それじゃ星、稟、風、またな!」

星「また会いましょう!」

稟「えぇ! また何処かで!」

風「またなのですよ〜!」

手を振りそのまま歩き出した。

昴「星、稟、風・・。面白い奴らだったな。敵か味方か、次はどういう形になるかな?」

群雄割拠の時代が訪れればいずれかと敵として会いまみえる。

昴「ま、そりゃその時に考えればいいか?」

俺は新たな地、幽州を目指して歩みを進めた。















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※※※※


星side

風「行ってしまいましたね〜」

昴殿は我々に手を振りそのまま歩いて行った。

風「正直・・」

星「?」

風「もしお兄さんが立ち上がってくれたなら、風の知略策謀、お兄さんの為にふるってみたかったです〜」

稟「風もですか?」

星「皆考えてることは一緒というわけか」

稟「しかし、本人が望まないのですからこればかりは仕方ありません」

星「そうだな。」

風「では、我々も行きましょうか〜」

稟「そうだな。」

星「うむ」

昴は幽州、星、稟、風達は陳留方面へ向かった。




かくして御剣昴のこの外史始めての戦は終結した。昴の向かった幽州。そこには自身が求める王、そして昴すらを変えてしまう王との出会いがあるなど知るよしもなかった。








続く

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真・恋姫†無双 ~乙女繚乱☆三国志演義~
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