小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第52話〜多忙なる日々、飛来する闇と報〜















徐州を出発し、曹操軍に追われながらも無事益州にたどり着き、先日、めでたく益州の平定をした俺達劉備軍。ここまで駆け足で進んできたこともあり、ゆっくり休みたい所だが、まだやらなければならない事がたくさんある。さしあたって、益州の地を立て直す為に内政状況を調べたのだが・・。

昴「酷いな・・」

朱「酷いですね」

雛「酷いです」

ある程度は覚悟していたが、現状はかなり酷かった。とにかく劉璋に侍る官吏達は民から巨額の税を搾り取り。自らの懐にしまいこみ、残りは内乱に当てていたのだ。そのため、田畑水田は荒れ放題。道もろくに整備されていないなど、挙げたらキリがない。改めて、劉璋に見切りを付けた民の気持ちが理解できた。

昴「治水工事、農地整備に道の舗装に税制改革等々・・。やることは山積みだな・・」

朱「まったくです・・」

雛「あぅ・・」

さて、どうしたものかな。手間取れば民心はあっという間に離れる。迅速な対応が必要だ。

昴「ん〜・・ならいっそのこと、大改革しちまうか?」

朱「大改革、ですか?」

昴「ああ。とりあえず―――」

俺が提案したのは独立治安維持部隊である警備隊。これは華琳のところでも実施したやつだ。次に役所の設立。役割は領内の住民に戸籍や商人達に証明書を発行し、商売人を認定すること。他にもいくつか提案したが、大規模な改革はその2つだ。

昴「―――ってな感じな改革を行おうと思うんだが、どうだ?」

朱「・・・」

雛「・・・」

朱里と雛里は固まっている。

昴「朱里? 雛里?」

2人に声を掛けると・・。

朱「す、すごいお考えです! そのような改革、思いつきませんでした!」

雛「そのヤクショと言うのも素晴らしいです! それが設立されれば税を払う人達が確定出来ます!」

朱「警備隊も設立されれば犯罪件数は大幅に減少しますね!」

2人は大いに盛り上がっている。

昴「通常、ここまで大改革をすれば反対者は多数出るだろうが、劉璋達が圧政を敷いていたから税率を下げる等の対策を取れば反対者はあまり出ないだろう」

朱「そうですね」

雛「そのとおりかと」

昴「明日までに草案を纏めてくるから2人は今日のところは帳簿を調べて私服を肥やしている官吏やそれに群がる商人の所在を洗ってほしい」

朱「それは構いませんが・・」

雛「どうされるんですか?」

昴「事情聴取を行って、黒とみたら財産を没収し、場合によっては国外と追放する」

朱「分かりました。放置すれば国は食い物にされてしまいますからね」

雛「やむを得ないかと」

昴「今日はこんなところか・・。しばらくは皆・・特に朱里と雛里にはかなり負担をかけることになるけど、よろしく頼むな」

朱・雛「はい。任せてください♪」

昴「それじゃ、この山積みになっている書簡を片付けるとしますか」

朱・雛「御意です♪」

書簡との戦が始まった。


















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2月は書簡とのにらめっこは続いた。その量は徐州の州牧の時の比じゃない。日の入りより少し前に起きて政務を始め、深夜まで作業。睡眠時間は2時間、少ない時で1時間だ。まあ桃香や他の皆は違うけどね。俺は自身の鍛練とか軍務もあるからこんな具合になる。通常2月もこんな生活すれば確実に過労でぶっ倒れるが、俺は寝る前に以前に華琳や冥琳に渡した丸薬を飲んでいるので昨日疲労はあまり残らない。今日も今日で書簡との格闘が始まる。
















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


とある日の昼下がり。

桃「ふへぇ〜・・」

桃香が机に突っ伏す。

昴「お疲れさん。はい、次これな」

ドン! っと桃香の前に新しい書簡の山を並べる。

桃「えぇー! こんなにー!?」

昴「当然だ。怠ればそのツケは明日に回ってくるぞ」

桃「うぅ〜・・」

涙目の桃香。

朱「桃香様、私達もお手伝いしますので」

雛「頑張りましょう。桃香様」

桃「・・・うん。頑張る・・」

まあ、2月もこんな調子じゃ、桃香でなくても参るよな・・。

昴「これも王の務めだ。しんどいだろうが頑張ってくれ。・・俺は息抜きに散歩にでも行ってくるな」

桃「あ〜! ご主人様だけずるい〜!」

昴「俺はもうこれだけ終わらせたがな」

量は桃香の3倍以上だ。

桃「もうこんなに終わらせたの!?」

昴「まあな。・・それじゃ、桃香、朱里、雛里、任せた」

朱「はい♪」

雛「御意です♪」

桃「ふえーん(ToT)」

すまんな。頑張ってくれ、桃香。



















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※※※※


城の廊下にて・・。

愛「あ、ご主人様、お疲れ様です」

昴「愛紗も、調練お疲れ様」

愛「ご主人様はこれからどちらに?」

昴「政務も一段落したからちょっと散歩にな」

愛「そうですか。でしたら私もお供致します」

昴「・・あ〜、悪いな、少し1人になりたいんだ」

愛「ですが、お一人では何かあった時に・・」

昴「散歩と言っても領内だ。心配いらないよ。俺より桃香のところに行ってあげてくれ。書簡に囲まれて今にも泣き出しそうだったから」

愛「・・分かりました。・・ご主人様と二人きりになりたかったのに(ボソッ)」

昴「ん? 何か言った?」

愛「い、いえ// 何でもありません。ではご主人様、お気をつけて」

昴「? ・・ああ」

俺は愛紗に手を振り、城の外へと向かった。


















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※※※※


街を軽く見て回った後、近くの森へとやってきた。

昴「う゛ー、疲れた〜・・」

肩を回し、コキコキ鳴らしながら森を歩く。

昴「やっぱデスクワークは肩にくるな〜・・」

まだしばらくはこんな日々が続くんだよな〜。

チュチュン・・。

小鳥達のさえずりが森に響き渡る。

昴「癒されるな〜」

マイナスイオン効果だっけ? 心身共に癒されてる気がする。

昴「提案した改革も順調に進んでるし、今のところ言うことはないな」

役所や警備隊の設置。間諜や騎馬隊の強化等々。順調順調。















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


昴「・・・」

しばらく、森を眺めながら散歩する。少し開けた場所で立ち止まる。

昴「・・・居るのは分かってる。出てこい」

俺の後方に問い掛ける。

?「おやおや、まさか気付いていたとはね」

やはりこいつか。

昴「良くそんな戯言を言えるな。あからさまな気配を垂れ流しといて。・・・何の用だ、刃」

刃「くくくっ、俺のラブコールに気付いてくれて嬉しいよ。何、益州を平定したみたいだからね。祝いの言葉を贈りに来てあげたよ。御剣昴君♪」

昴「お前がそんな律儀な奴だとは思えないがな。・・・本題は何だ?」

刃「あれから君がどれほど者になったか。確かめたくなってね」

昴「・・なるほど」

刃に殺気をぶつける。

刃「・・なるほど、確実に育っているみたいだね。俺は嬉しいよ」

昴「ほざいてろ」

村雨に手を置き、構える。

刃「くくくっ、良いね良いね〜、この空気。それじゃ・・殺ろうか?」

刃が自身の刀に手を置く。

あの構え・・、何をするつもりだ?

刃「ねえねえ、ちょっとこれ、見てくれない?」

何を・・っ!? あの構え、まさか!?

刃「くくくっ」

ドォン!!!

刃が俺との距離を詰める。

あの構え、腰元の刀に手を置き、重心を前に置いたあの構えは・・。

ザシュ!!!

北辰流抜刀術、疾風・・・だと・・。

俺の身体が2つに別れる。

刃「あはっ♪ 出来るもんだね♪」

刃が高笑いをする。

刃「まさか、こんなあっさり・・」

ブォン!!!

刃の背後から斬りつける。

昴「・・ちっ!」

外したか・・。

刃「縮地の高速移動による残像か。ま、分かってたけどね」

昴「・・・」

俺の秘技の1つの疾風を一度見ただけで再現したのかよ・・。

刃「いきなりじゃ再現仕切れないや・・。後2、3回試せば、ちょろいね」

昴「・・くっ!」

人が苦労して修得した技を嘲笑いやがって! ・・だが、直前で気付かなかったら本当に真っ二つだった。

昴「・・・」

刃「・・・なるほど、やっぱり確実に育っているね。今の君なら本気で戦えそうだよ」

チン・・。

刃はそう言うと、刀を鞘に納めた。

昴「何のつもりだ」

刃「まだ足りない。今の君なら俺の本気を引き出すことが出来るだろうけど、本気の俺を相手したら今の君では相手にならない。もう少し待ってあげるよ」

昴「後悔するぞ」

刃「是非させてよ。それこそが俺にとって1番の愉悦だよ。いずれ最高の舞台を用意してあげる。その時まで・・じゃあね〜♪」

刃の周りに木の葉が群がる。

昴「待て!」

刃に飛び込み、村雨を一閃する。

ブォン!!!

しかし斬れたのは木の葉のみで、そこには刃の姿はなかった。

昴「・・くそっ」

まだ俺は刃に及ばないのか・・。

昴「もっと強くならないと・・」

俺は奴を倒せない。

昴「・・ふぅ。今日は何とも珍客が多いな・・・そっちも出てこい。覗き見なんざ趣味が悪いぞ」

そう問い掛けると大木の陰から・・。

?「あらん、気付いていたのねん♪」

やっぱり・・。

昴「お前か、・・貂蝉」

貂「あら、私のラブコールに気付いてくれてのね、嬉しいわん♪」

昴「悪いが、今俺は機嫌が悪い。用があるなら手短に頼む」

貂「・・つれないわねん、分かったわ、要件を伝えるわ」

昴「その様子じゃ、あまりいい話ではなさそうだな」

貂「そうね。いい話ではないわね」

はあ、やっぱりか・・。

貂「それで要件だけど、管理者同士での話し合いで決まったことだけど、もし、あなたが刃に敗れたら、その時点でこの外史を消滅させる事が決まったわ」

昴「何だと・・」

消滅・・だと!?

貂「刃と言えど、外史消滅のエネルギーを食らえば無事ではすまないわ。たとえ仕留めきれなくてもその直後に封を施せば永遠に封印が出来る・・かもしれないわ」

昴「そんな簡単に外史を消滅させるのかよ」

貂「やむを得ないわ。どのみちあなたが敗れればこの外史は刃によって壊されるだろうし、そして他の外史も同じ運命を辿る事になるでしょうから」

昴「・・くそっ!」

好き勝手言いやがって!

貂「チャンスは一度きり、あなたとの戦いで消耗した直後の一度きり。でも消滅なんてしないわ」

昴「?」

貂「あなたが刃を倒すから。そうでしょ?」

昴「!?」

そうだよ。俺は何で負けた時のことなんて・・。

昴「そりゃそうだ。刃は俺が倒す。それ以外の結末なんて考える必要はないな」

貂「そうよん、期待してるわよん♪」

昴「任せろ! 俺はもっと力を付ける。刃を倒すために。そしてこの乱世も終わらせ、この外史を守る! それが俺の守り手としての使命だからな」

貂「その意気よ♪」

この外史を、刃や管理者の思惑通りに行かせない!

俺は新たに覚悟を決めた。

益州平定後の、最も慌ただしい1日が終わった。











続く

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