小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第54話〜幼き心、生まれる心〜















美「むむむ・・」

昴「・・・(サラサラサラサラ・・)」

美「ふむぅ・・」

昴「・・・(サラサラサラサラ・・)」

ただいま美羽はお勉強中。俺は横で政務をしている。

美「む・むむ・むむむ・・」

今美羽は俺が作ったテストをしている。美羽には毎日時間を作って政や軍略、時に武も教えているのだが、定期的にテストを行い、しっかり知識として身に付いているか確認をしている。出来が良ければご褒美をあげて、出来が悪ければ補習をして改めて身に付けさせて再テストといった具合だ。

美「むぅ・・・出来たのじゃー!」

昴「おっ、どれどれ」

いったん政務を中断し、早速採点を開始する。

美「(ドキドキ)」

昴「ふむ・・」

これは丸っと。これも丸だな。こっちは・・ん〜惜しいな。これは・・・。
次々に採点を進め、やがて・・。

昴「ふむ」

採点が終わり、筆を置く。

美「ど、どうじゃった?」

昴「採点の結果は・・」

美「う、うむ」

昴「採点の・・結果は・・」

美「(ドキドキ)」

昴「・・・」

美「(ゴクン)」

部屋を沈黙が支配する。

昴「正解率・・・・8割合格だ」

美「やったのじゃーーー!」

美羽は跳び跳ねながら喜びを顕にする。今回のテストの合格のための正解率は7割。見事合格だ。

昴「良く頑張ったな、美羽」

美「妾なら当然なのじゃ! もっと褒めてたも!」

美羽は大きく胸を張った。

昴「えらいえらい」

美羽の頭をナデナデする。

美「えへへ〜//」

昴「良く頑張った美羽には何かご褒美をあげないとな。後少しで政務も一段落着くから少し待っていてくれ」

美「うむ、分かったのじゃ!」

飴と鞭ではないが、厳しさの中に優しさを入れてしっかり教育する。それが俺の美羽の教育の方針だ。しっかり身に付いてるみたいで良かった。・・さてと、早く終わらせるか。

昴「(サラサラサラサラ)」

美「・・・」

昴「(サラサラサラサラ)」

美「・・のう昴」

昴「ん〜?」

政務を続けながら返事をする。

美「その・・昴の膝に座ってもいいかの?」

昴「膝に?」

美「駄目かや?」

美羽がおずおずとお願いする。

俺は椅子を少し引き・・。

昴「いいよ。ほら、おいで」

美羽の顔がぱあっと笑顔になり・・。

美「ありがとうなのじゃ!」

美羽が俺の膝に座る。

昴「大人しくしてるんだぞ?」

美「うむ! 昴の邪魔はせぬのじゃ!」

美羽はどうやら俺の膝の上がお気に入りみたいで、たびたび座ってくる。そういえば、華琳のところにいた頃に季衣や雪蓮のところではシャオが良く座ってきたっけな。季衣とシャオは元気かな・・。よし、政務を続けよう。

昴「(サラサラサラサラ)」

美「♪〜♪ 昴の膝の上は気持ちいいのじゃ〜♪」

昴「ふふっ・・」

微笑ましいな光景だ。

美「・・これは何の書簡なのじゃ?」

昴「これは街に住む人達の陳情だよ」

美「ほう・・こっちはなんじゃ?」

昴「こっちは流民の受け入れに関する意見書だ」

美「ほうほう・・」

美羽はいろんな事に興味を示す。俺はそれにちゃんと答えてあげている。興味を示すのは良いことだからな。このあとも美羽の質問に答えながら政務を続けた。




















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


昴「ふう。こんなところかな」

美「終わったのかや?」

昴「ああ。残りは後でゆっくりやるよ。待たせて悪かったな」

美「構わぬのじゃ!」

大喜びの美羽。ちょうどその時・・。

七「美羽様〜、昴さん〜、お茶をお持ちしましたよ〜・・あらあら♪ もうお勉強は終えたのですか?」

美「うむ! しっかり合格したのじゃ! のう、昴!」

俺は美羽の頭を撫でながら・・。

昴「ああ。美羽は良く頑張ったよ」

七「そうですか〜、でしたらこれからお出掛けですか?」

昴「その予定だが、せっかく七乃がお茶を持ってきてくれたんだ。いただいてから行くよ。美羽もいいね?」

美「うむ! 七乃も座るのじゃ!」

七「はいはい〜。今お茶を淹れますからね♪」

七乃が手際よくお茶の準備をする。手慣れてるな。そういや美羽が太守の時からお茶は七乃が出していたって言ってたっけ。お茶は美羽の大好物なハチミツ水・・ではなく、一般的なお茶だ。ハチミツ水は高級品だから頻繁には出さない。贅沢は敵ってのをしっかり教えこんだ。最初は結構わがままを言っていたが、しっかり言い聞かした。
















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


昴「ご馳走様」

美「ご馳走様なのじゃ!」

七「お粗末様でした♪」

美「では昴、街に行くのじゃ!」

美羽が俺の腕を引っ張り、急かすように言う。

昴「分かった分かった。慌てなくても街は逃げないだろ? 七乃はどうする? 一緒に行くか?」

七「はい、お供致します♪」

昴「よし。それじゃ、行こうか」

美「うむ!」

七「はーい♪ それではお片付けをして準備してきますね。美羽様、行きましょう」

昴「それでは城門で待ってるぞ」

七「はーい」

美「またあとでなのじゃ!」

美羽と七乃が部屋を出ていった。

昴「さてと・・」

俺は身仕度をし、書簡を各将のところに持っていき、城門に向かった。


















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※※※※


美「昴、遅いのじゃ!」

昴「悪い悪い」

七「美羽様、私達も今来たばかりですよ」

美「ぐむ・・」

昴「それじゃ、行こうか」

美「うむ!」

七「はーい♪」

俺が美羽の右手と手を繋ぎ。逆の手を七乃が繋ぎ、歩き始めた。

















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


美「♪〜♪」

美羽は繋いだ手をプラプラさせながら道を歩く。

昴「ふふっ」

七「美羽様可愛いです〜♪」

俺は美羽を結構街に連れ出す。城に籠りっぱなしじゃ気が滅入るし、何より、俺には街の、民の暮らしを肌で感じてもらいたいからだ。百聞は一見にしかず。書で知るより我が目我が耳でだ。やがて一軒の出店に到着し、いつものやつを購入する。

昴「ほら美羽」

美「ハチミツ水なのじゃー!」

美羽はハチミツ水の入った器を受け取り、早速飲み始める。

昴「ゆっくり味わうんだぞ?」

美「ゴクゴクゴクゴク・・・ぷはぁー、美味なのじゃー!」

ああもう聞いちゃいない。

昴「ほらハチミツ水が顔に付いちゃってるぞ。」

俺はポケットからハンカチを取りだし、美羽の口を拭う。

美「むぐむぐ、ありがとうなのじゃ」

昴「まったく・・」

七「あははー」

そのあとも街を3人で見てまわった。出店や屋台など、目につく場所を寄っていった。
















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


美「(ジー)」

街を見てまわっている途中、美羽が何やら見つめている。目で追ってみると・・。

「まてまて〜!」

「こっちだよ〜!」

「こっちこっち〜!」

街の子供達が広場で遊んでいた。

美「・・・のう昴、あれは何をやっておるのじゃ?」

昴「あれか? あれは鬼ごっこだな」

美「おにごっこ?」

昴「簡単に説明すると、鬼を1人決めて、決めた鬼以外は鬼から逃げる。鬼は追いかけ回して、鬼に触れられたら鬼を交代してまた逃げ回る。そんな遊びだ」

美「ほう」

知らないのか?と聞こうとして止めた。名門貴族の生まれの美羽なら知らなくて当然だからな。

美「(ジー)」

なおも美羽はその光景を見つめている。

昴「一緒に遊んでくるか?」

美「わ、妾はあのような子供の遊びになど興味ないのじゃ!」

と言ってるが美羽はチラチラ子供達を覗いている。

昴「・・まったく、しょうがないな」

俺は美羽の手を取り、子供達のところに歩み寄る。

昴「君達、この子も混ぜてもらっていいか?」

美羽を子供達の前に出す。

美「す、昴!?」

「だぁれ〜?」

「?」

昴「ほら、自己紹介」

美「う、うむ・・え・・美羽なのじゃ」

さすがに袁術の名は出さなかったみたいだな。

「みうちゃん?」

「いいよー!」

「いっしょにあそぼー!」

子供達が美羽の手を引っ張っていく。

美羽が俺に振り返り・・。

美「遊んできても良いのかや?」

昴「いいよ。たくさん遊んでこいよ」

美「!? ・・うむ!」

美羽は子供達と広場に走っていった。















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


美「待つのじゃ〜!」

「こっちこっち〜!」

「わーい!」

今は美羽が鬼となり子供達を追いかけまわしている。俺と七乃は広場の隅にある倒れている木に座り、美羽と子供達を眺めている。

美「昴ー! 七乃ー!」

美羽が時よりこちらに大きく手を振る。俺と七乃はそれに手を振り返して応える。

七「あははー。こうやって見ると美羽様は子供みたいですねー」

昴「子供さ。きっとこれが本来の美羽なんだと思う」

七「そうなんでしょうね〜」

昴「袁家みたいに責任を負わなければならない立場ではなく、普通の家柄に生まれていれば美羽は真っ直ぐに育ったんだろう。名門貴族ってのは大なり小なり醜い一面もあるからな」

七「昴さん・・」

昴「乱世の常とはいえ、戦して、家を失って。美羽は七乃にしか心を開けなくて、きっと寂しい思いをしてきたんだろうな」

七「・・でも今の美羽様は私が見てきた中でも1番楽しそうですよ」

昴「そうか。・・なら俺はあの笑顔を守らないとな」

美羽に兵法とかも教えているが、正直、それが戦場で生かされるようなことにはしたくないな。美羽が戦場に出るようになる前に乱世を治めたい・・いや、治める。必ず。俺は新たに決意した。

その横で・・。

七「美羽さまハァハァ、美羽さまハァハァ・・」

横で七乃は悶えていた。
















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


やがて夕刻となり、子供達は家に帰る時刻となった。

「みうちゃんまたね〜!」

「またあそぼーねー!」

「バイバイ〜!」

子供達が手を振り、帰っていく。

美「またなのじゃ〜!」

美羽も手を振り返す。

子供達の姿が見えなくなくなるまで見送ると、美羽が俺達の元に駆け寄ってきた。

美「いっぱいいっぱい遊んだのじゃ!」

昴「そうか」

美「いっぱいいっぱいお友達が出来たのじゃ!」

昴「良かったな。今日は楽しかったか?」

美「うむ!」

満面の笑みでそう答えた。

昴「それじゃ、帰ろうか」

美「うむ、帰るのじゃ!」

美羽は俺と七乃の手を繋ぎ、城へと歩き始めた。


















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※※※※


七乃side

美「ス〜・・ス〜・・」

美羽様は今昴さんの背中でぐっすりおやすみ中です。いっぱいお勉強していっぱい遊んだから疲れちゃったんですね〜。

七「可愛い寝顔ですねー」

昴「まったくだな」

昴さんが美羽様を背負いなおしました。昴さん、とっても優しげなお顔です。

七「ふふっ、こうして見ていると、昴さんは美羽様のお父様みたいですねー」

昴「・・それを言うなら兄じゃないのか?」

七「いーえ、美羽様を見守っている時の昴さんの目はお兄様じゃなくてお父様そのものでしたよ?」

昴「ハァ、年齢的には父じゃなくて兄なんだがな」

昴さんは複雑そうな表情を浮かべてます。でも嫌そうでもなさそうです。ふふっ、昴さんもからかったら楽しいですね♪

昴「・・あ、でも俺が父親なら母親は七乃だな。・・・って事は、俺達は夫婦で美羽は俺達の子供になるわけだな」

七「なっ//」

昴さんったら何を!?

七「も、もう、私も母親って言われる歳じゃないですよー」

昴「ははっ、冗談だって」

七「もう・・」

あ〜、びっくりした。昴さんは・・笑ってる。良かった、動揺してたの気付かれなかった。からかうのは慣れてますけどからかわれるのは慣れませんね。




















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※※※※


やがて日が沈んだ頃にお城に着きました。

昴「それじゃ、俺はここで」

昴さんから美羽様を受け取り、美羽様をおぶる。

美「ん・・ムニャ・・」

昴「またな」

七「はいー♪」

昴さんはそのままお部屋に戻って行きました。私達もお部屋に戻って美羽様をお布団に運びました。

美「うにゅ・・昴・・。」

七「ふふっ、美羽様可愛いですー♪」

このままずっと眺めていたいですけど、その前に政務を終えちゃいましょう。

さてと、お仕事お仕事♪

私は残った政務を終わらせて、私は美羽様の眠るお布団で一緒に眠りました。















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


その日、私はおかしな夢を見ました。とてもとてもおかしな夢。私はただの街の住民で、私はお店での仕事を終えて家へと帰宅しました。

美「お帰りなのじゃ!」

七「ただいま〜♪」

可愛い私の娘がお出迎えしてくれました。

美「今日もいっぱい勉強していっぱい遊んだのじゃ!」

今日あったことを楽しそうに話してくれます。私はお話を聞きながら食事の用意をします。出来た料理を卓に並べて、2人で椅子に座って待っていると・・。

?「ただいま!」

旦那様が帰ってきました。

美「お帰りなのじゃ〜!」

娘の美羽が旦那様に胸に飛び込む。

?「ただいま美羽。いい子にしてたか?」

美「うむ!」

旦那様は抱っこしたまま頭を撫でる。

七「お帰りなさい〜♪」

?「七乃、今帰ったよ」

七「食事の準備が出来てますよ・・・昴さん♪」

とてもとても素敵な旦那様が帰ってきました。そのまま3人で食事をして、お話して、やがて娘を寝かし付けました。

昴「お疲れ、七乃」

七「あ、昴さん」

昴さんはお酒を飲んでいました。私がお酒のお供を作ろうとしたところ・・。

七「ひゃっ!」

昴さんが後ろから私を抱きしめました。

昴「嫌だったか?」

七「いえ、そんなことは//」

とても嬉しいです。

昴「・・・」

七「・・・」

昴さんが私の顔を無言で見つめる。・・・やがて、両目を閉じて私に顔を近付ける。私も両目を閉じ、そして・・・。













・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


七「ひゃぁぁぁぁぁっ!!!」

私はお布団から飛び起きました。

私ったら、なんて夢を//

美「うにゅ・・ななの〜・・どうしたのじゃ〜・・」

七「い、いえ、何でもありませんよ、美羽様!」

いけないいけない。美羽様を起こしてしまいました。

美「うむ・・・ならばよい・・・スー・・スー・・」

美羽様は再び眠りにつきました。

七「ふー・・、それにしても、どうしてあんな夢を見たのでしょう」

美羽様が娘で昴さんが旦那様だなんて。・・・・・あ。

昴『・・あ、でも父親が俺なら母親は七乃だな。・・・ってことは俺達は夫婦で美羽は俺達の子供になるわけだな』

きっとあれのせいですね。だからあんな夢を・・。

七「・・まだ日が昇ったばかりですね」

まだ起きるには早いですけど、胸のドキドキのせいで眠気はすっかり覚めてしまいました。

七「もう寝られませんね」

とりあえず洗い場で顔を洗ってすっきりしてきましょう。















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※※※※


洗い場は・・・ありました。洗い場は私達の部屋から遠いのが難点なんですよね〜。

洗い場に着くと・・。

ドクン!

七「っ//」

そこには昴さんがいました。いつもの白の服ではなく、どうやら寝間着で、髪は後ろに流している。

昴「ん? 七乃か。おはよう。早いな?」

七「す、昴さんも早いですね」

昴「俺はいつもこの時間に起きてるぞ?」

七「そ、そうなんですか〜」

昴さんは髪留めを口にくわえて髪を束ね始めた。

昴さん・・すごく綺麗な黒髪です・・。身体も引き締まっていて、わずかに覗いた胸板も・・。私は思わず見惚れてしまった。

昴「―――乃、七乃?」

七「っ!? ひゃい!」

気が付くと昴さんが私のすぐ傍で顔を覗いていた。

昴「大丈夫か? もしかして何処か体の調子でも悪いのか?」

七「い、いえ、大丈夫です。別に何処も・・・・っ//」

ドクン!

昴さんが私の額に手のひらを当てる。

どうしよう。今きっと私、すごく顔が赤い。それにさっきから胸のドキドキが収まらない。もしかしたら胸の音、聞かれちゃうかも・・。

昴「ん〜・・熱はなさそうだけど、顔がすごく赤いな」

七「だ、大丈夫ですから//」

私は思わず昴さんから顔を逸らした。

昴「でも・・」

七「大丈夫ですから!」

昴「七乃?」

私は駆け出した。これ以上その場にいたら心臓が飛び出してしまいそうだったから。















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


七「ハァ・・・ハァ・・」

思わず部屋まで走ってきてしまいました。

ドクン! ・・ドクン! ・・!

胸の鼓動が収まりません。

七「あんな夢を見たから・・」

昴さんを意識してしまいました。そういえば以前、何かの書で夢はその者の願望だと書いてあったような・・・・っ!? それでは私の願望は・・。

ふと、ついさきほど見た夢を思い出す。昴さんと夫婦のように暮らし、そして昴さんに抱きしめられ、両目を閉じて私に顔を近付ける夢を・・。

ドクン!

七「っ//」

あれが私の願望なのでしょうか!? あれが、私の・・。

七「どうしましょう。もう昴さんの顔を見られません・・」

・・・そうだ! しばらく昴さんに会わないようにしましょう。しばらく会わなければ胸の鼓動もきっと収まるだろうしこの気持ちだって・・。

七「そうしましょう」

私は昴さんに会わないようにしようと胸に誓った。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


あれから数日、私は昴さんに会わないように気をつけて過ごした。そうすれば以前と同じように昴さんと話せるようになると思ったから。・・・でも。

七「はぁ・・」

駄目だった。時間が経てば経つほど昴さんへの想いが強くなっていく。ボーッとしている時間も増えました。

七「今さらですよね・・」

私が・・昴さんを・・好きだなんて。

七「会いたい・・」

でも会ってどうしましょう。きっと私、昴さんの顔を見れません。

七「どうしましょう・・」

このままではきっと私、おかしくなってしまう。

七「・・・とりあえず部屋に戻りましょう」

美羽様が待ってるでしょうから。














・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


七「美羽様〜・・どちらに・・っ!?」

ドクン!

部屋に戻るとそこには・・。

昴「よう」

昴さんがいました。

七「す、昴さん、どうしてこちらに? それに美羽様は?」

昴「美羽なら俺の部屋でお勉強中だ」

七「そ、そうでしたか〜。それでは〜・・」

そそくさと部屋を後にする・・つもりだったのですが・・。

昴「待った」

昴さんが私の手を掴む。

ドクン!

七「な、何でしょう〜?」

昴「美羽から話を聞いてな。七乃の様子がおかしいって。っていうか俺の事避けてないか?」

七「っ!? ・・あはは〜、気のせいですよ〜!」

昴「あれだけ露骨に避けといて気のせいはないだろ。それに・・」

昴さんが私の顔を覗く。

ドクン!

私は昴さんから目をそらしてしまった。

昴「気のせいだって言うなら何で目をそらす?」

七「・・気にしないで下さい」

昴「するよ。俺が何かしたなら謝らせてくれ」

七「・・・放っておいて下さい」

昴「放っておけるか。七乃は大切な仲間だ」

七「・・もう、やめて下さい」

昴「だから何で!」

七「やめて下さい! ・・でないと・・」

昴「ん!?」

私は昴さん口付けをしてしまった。

七「でないと、私は昴さんをもっと好きになってしまいます!」

それだけ言って部屋を飛び出した。


















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※※※※


七「ハァ・・ハァ・・」

ひたすら走り続け、気が付くと以前に昴さんと美羽様と来た広場に来ていた。

七「ふふっ・・皮肉ですね。逃げて、たどり着いた場所がここだなんて」

私は広場の隅にある木に腰掛けた。

七「はぁ・・どうしましょう・・」

昴さんと顔を合わせづらいな。私が1人悩んでいると・・。

?「七乃さん」

七「!? ・・桃香さん?」

桃「走っていく七乃さんの姿が見えてんで・・横、いいですか?」

七「構いませんよ〜。でも1人で街に出ていいんですか?」

桃「あはは〜、愛紗ちゃんには内緒にしといてね」

七「ふふっ、分かっていますよ〜」

おそらく無駄でしょうけど。

七「・・・」

桃「・・・」

私も桃香さんもただ黙って座っている。

桃「・・ご主人様のことで悩んでる?」

七「・・どうしてそう思うんですか?」

桃「女の勘です・・・嘘、実は少しだけだけど話が聞こえちゃって」

七「やっぱりそうですか」

桃「どうして悩むんですか?」

七「あはは〜、私は降将なんですよ? そんな私が昴さんとなんて・・」

桃「ご主人様はそんなこと気にする人じゃないよ?」

七「・・そうかもしれませんね。でも、もし仮に昴さんが私に応えてくれたとして、私は怖いんです。後から来た私が昴さんと結ばれた事で皆さんがバラバラになってしまうのではないかと」

皆昴さんの事を愛しています。降将の私が。後からやってきた私が昴さんと結ばれたのを見て、良くは思わないでしょう。

桃「・・七乃さんは私達の事分かってないよ」

七「桃香さん?」

桃「私も皆も。ご主人様が選んだ人なら喜んで祝福するよ」

七「桃香さん・・」

桃香さんが私の手を握る。

桃「自分に素直になって。自分の想いを大切にして。・・でもでも、私達も頑張るから誰が結ばれてもうらみっこなしだからね♪」

桃香さん・・強いな。

七「ふふっ、そうですねー♪」

心がすごく楽になりました。桃香さんはすごく心が広い人ですね。恋敵を相手に助言をするなんて・・。だからこそ、皆桃香さんを慕っているのですね。

桃「あーでもでも! ご主人様と口づけなんてずるい! 私もしたことないのにー!」

七「あはは〜、早い者勝ちですよ〜」

桃香さん・・ありがとう。


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


翌日、城の廊下を歩いていると・・。

昴「よう、七乃」

七「あ、おはようございます。昴さん」

トクン!

心臓が鼓動する。でも昨日まで違って今はそれがすごく心地いい。

昴「えっと・・昨日の事だけど・・」

昴さんがおずおずと訪ねる。

七「昨日の事は冗談でも何でもないですよー」

昴「・・そうなのか。・・・ええっと」

うふふ、昴さん、とても困ってますー! 意外にうぶなんですね。

七「今は何も言わないでいいですよ。また以前みたいに接してくださればそれでいいです」

昴「いや、でもだな・・」

もう、昴さんは分からず屋ですねー。そんな昴さんの口に人差し指を当てる。

七「いいと言ったらいいんですー。そんな分からず屋な事言うとまた昨日みたいに口を塞いじゃいますよー?」

昴「昨日・・っ//」

昴さんは昨日の事を思い出して顔を赤らめちゃいました。あはは〜、やっぱり人をからかうのは楽しいですね。

七「美羽様共々、これからもよろしくお願いしますねー」

昴「ん〜・・まあいいか。これからもよろしく頼む」

七「それでは失礼しますねー」

私は美羽様のいるお部屋に向かった。

今日も楽しい1日になりそうですねー♪

また1つ、新たな想いが生まれた。










続く

-56-
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