小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第84話〜最凶の三の将、絶望なる力〜















第三者side

春・秋「!?」

凪「!? ・・霞・・様・・」

三の将、羅鬼が肩に担いでいる大剣に、傷だらけでボロボロになって乗せられていた霞の姿を見つけ、春蘭、秋蘭、凪が驚愕する。

羅「ほらよ」

ブォン!!!

羅鬼はその大剣を振るい、無造作に霞を3人のいる方へ投げ飛ばした。

凪「!? ・・霞様!」

凪が即座に反応し、地を蹴って投げ飛ばされた霞を抱き止める。

凪「霞様! ・・霞様!」

凪がすぐさま霞の安否を確かめる。

霞「う・・あ・・」

霞が掠れた声でうめき声を上げた。

凪「(・・良かった。傷は深いけどこれくらいなら命に別状はない)」

凪は霞の安否を確認し、安堵した。

羅「まったくよ・・」

凪「っ!?」

羅「将だっつうから相手にしたらよう、チョロチョロ動き回るだけのカトンボだったからよ、がっかりして、・・殺す気すら起きなかったぜ」

凪「っ!? 貴様・・!」

それを聞いて凪が羅鬼を睨み付ける。するとそこへ・・。

沙「凪ちゃ〜ん!」

真「凪〜!」

凪「沙和!? 真桜!?」

沙和と真桜の2人がやってきた。

沙「凪ちゃん、いったい何が・・!? 霞様!?」

真「姐さん! それに、なんやねんあいつは」

凪「・・沙和。真桜。霞様を連れて下がってくれ」

沙「えっ? でもそれなら・・」

凪「早く行くんだ!」

渋る沙和を怒鳴り付ける。

真「・・分かった。沙和、行くで。はよ連れていかんと姐さんが危ない」

沙「・・分かったの」

沙和と真桜は霞の腕を肩に担ぎ、自陣へと下がっていった。

秋「・・賢明な判断だ。こいつは我ら以外では相手に出来ぬだろう」

凪「・・・」

凪は無言で羅鬼に振り返る。

羅「はっ! 雑魚には用はねぇ。てめえら殺した後についでに殺ってやるよ」

春「貴様、霞をあんな目に合わせてただ済むと思うな!」

羅「あん? んなの弱ぇーのが悪いんだろ。知るかよ」

春「だったら貴様も今すぐ同じ目に合わせてやる!」

春蘭が七星餓狼を構えて羅鬼に向かっていった。

秋「姉者迂濶だ! 凪、姉者を援護しろ!」

凪「はい!」

凪もすぐさま飛び出し、秋蘭は矢をつがえた。

春「おぉぉぉーーっ!」

春蘭が羅鬼に突っ込み、七星餓狼を振り下ろした。

羅「へっ! しゃらくせえ!」

羅鬼は自身の右手の大剣を振り上げた。

ガキィン!!!

春「っ!?」

春蘭の斬撃は羅鬼の斬撃に押し負け、春蘭は後ろに大きくのけ反り、両腕は真上に跳ね上げられた。

春「な・に!」

秋「姉者が力負けしただと!?」

羅「おらよ!」

羅鬼は振り上げた大剣をそのまま春蘭に振り下ろす。

春「くっ!」

春蘭はすぐさま体勢を立て直し、後ろへ飛び、それを避ける。

ドゴォォン!!!

避けられた大剣は地面にぶつかり、大きく爆ぜた。

凪「次は私だ!」

春蘭と入れ替わりに凪が突っ込んだ。

凪「はぁ!」

ガチン!!!

凪は飛び込み様拳打を浴びせた。羅鬼はそれをもう一方の大剣の腹で防ぐ。

羅「ちっ!」

凪「まだまだ!」

凪は構わず拳打の嵐を見舞う。

ガチン! ガチン! ガチン! ・・!

羅「うざってぇ!」

羅鬼は右手の大剣を横に振るい、凪の首を狙った。凪はかがんでそれを避けた。

凪「次は私の・・っ!?」

斬撃を避けた後、反撃を試みようとしたが、羅鬼立て直しがそれ以上に速く。左手の大剣を凪に振り下ろした。凪は両手の拳を重ね、斬撃を閻王で防いだ。

ガァン!!!

凪「ぐっ!」

凪は何とか斬撃を防いだものの、あまりの破壊力に凪の体が少し地面に陥没する。

凪「(何という破壊力だ!)」

羅「おら! もう一丁!」

羅鬼は再度大剣を振り下ろす。

凪「(ま、ずい・・)」

凪は斬撃の破壊力のあまり、体が硬直しており、動けずにいた。凪は覚悟を決め、もう一度迎え撃とうと試みると・・。

ヒュン! ヒュン!

後方から矢が2本飛来する。

羅「ちっ!」

やむを得ず羅鬼は振り下ろそうとした大剣で矢を弾いた。凪はその隙に後ろと下がった。

羅「しゃらくせえ真似しやがってよ」

凪「ありがとうございます。秋蘭様」

秋「気にするな」

凪は秋蘭に礼を言い、羅鬼に振り返る。

羅「おら、早く来い」

羅鬼は右手の大剣を3人に突き付け、挑発する。

秋「姉者、凪。奴の大剣を受けるのは危険だ」

春「ああ。あれを受ければ否応なしに動きが止まり、狙い撃たれる。何より、あれを受け続けたらいつか剣か腕のどちらかが先にやられてしまうだろう」

春蘭の腕は先ほどの一撃で僅かに痺れていた。

凪「そうですね。奴の攻撃は極力避けるべきですね」

凪も同様に腕が痺れていた。

秋「付け入る隙はある。構えから見るに、奴は大剣の心得はない。おそらく素人。腕力で大剣を振るってるに過ぎない」

春「それにあの図体では動きも鈍いはずだ。私と凪は撹乱しながら奴を攻撃。秋蘭は援護を頼む」

秋「心得た」

羅「べちゃくちゃくっちゃべってるんじゃねぇ! とっとと来い!」

羅鬼は苛立ちながら叫ぶ。

春「・・よし、腕の痺れは治まった」

凪「私もです」

春「では行くぞ。私は左から、凪は右からだ」

凪「はい!」

春「では行くぞ!」

春蘭と凪は同時に飛び出し、秋蘭は矢を3本つがえ、羅鬼の額目掛け、狙い撃った。羅鬼は首を左右に振り、矢を避けた。

凪「次は私からだ!」

凪が最初に右側から羅鬼に攻撃を仕掛けた。

羅「おらぁ!」

羅鬼が先に左手の大剣を振り下ろした。

凪「甘い!」

凪はそれを跳躍して避けると、そのまま縦に一回転しながら羅鬼の頭目掛けて踵落としを見舞う。

ガキッ!!!

羅「ちぃっ!」

羅鬼は左腕で踵落としを防いだ。

羅「邪魔だ!」

羅鬼は鬱陶しげに左腕を振るい、凪を振り払う。

凪「はぁ!」

凪は離れ様に氣を手に集め、羅鬼目掛けて撃った。

ドゴン!!!

羅「ぐおっ!」

氣弾は羅鬼の胸に命中する。

羅「いてぇなこの・・っ!?」

羅鬼は凪に斬撃を見舞おうとしたが、反対側から来る春蘭に気付き、そちらに目を向ける。

春「おぉぉぉーーっ!」

羅「ちっ!」

ガキィン!!!

春蘭の一撃を羅鬼は右手の大剣で防いだ。

羅「次から次へと!」

羅鬼は大剣を春蘭に振り上げた。

春「当たるか!」

春蘭はスウェーで斬撃を避けた。

春「(この隙に・・なっ!?)」

春蘭は空振りをした隙を付こうとしたが、羅鬼はすでに斬撃体勢に入っていた。

羅「調子に乗るな!」

羅鬼は今一度斬撃を春蘭に浴びせる。

ガキィン!!!

春「くそっ!」

春蘭はその斬撃を七星餓狼で防いだが、後ろに弾かれてしまう。

凪「春蘭様! このっ!」

反対側から再び凪が攻撃を仕掛けた。

羅「とっととくたばれや!」

羅鬼は大剣を振るった。

凪「そんなもの!」

凪はそれを先ほどと同じように跳躍して避けたが・・。

凪「っ!?」

羅「チョロチョロ動き回るだけしか能がねぇなら、さっきのサラシの奴の方が断然マシだったぜ!」

間髪入れずに斬撃が凪を襲った。

ガキッ!!!

凪「ぐっ!」

凪は両腕を前に交差して組み、斬撃を防いだ。そして3回ほどバク転をしながら羅鬼から距離を取った。

春「こいつ、攻撃の継ぎ目が短すぎる」

春蘭と凪は驚愕した。通常、空振りをすれば隙が出来る。だが羅鬼は空振りをしてから体勢を戻すまでが異常なまでに早すぎるため、そこを突くことが出来ない。それは羅鬼の屈強な筋肉故に出来る代物だ。

凪「何てでたらめな筋肉だ」

羅「なんだなんだ? 結局雑魚じゃねぇか! この国は強ぇ奴はいねぇのかよ!?」

凪「っ!」

春「この!」

秋「っ!」

その言葉に3人は怒りを覚える。

羅「弱ぇ、弱ぇ! 弱すぎるぜ! 魏ってのは雑魚の集まりかよ! 覇王だがなんだか知らねぇが、こんな雑魚共囲って何が覇王だ、くだらねぇ、笑わせるぜ!」

春「!? 貴様、今何と言った!?」

秋「華琳様の侮辱は許さんぞ!」

羅「くだらねぇって言ったんだよ! 覇王だの生意気に名乗りやがって、なんだ? カリンつったっけか?」

春・秋・凪「!?」

秋「貴様! 華琳様の真名まで穢すとは!」

凪「許さない・・!」

春「貴様! すぐに八つ裂きに・・!」

?『いちいち相手の言葉を鵜呑みにして安い挑発に乗るな』

その時春蘭の頭にある言葉がよぎった。

昴『お前がただの武人か一兵士なら良いが、お前は将だ。お前の死が華琳の死に繋がる事だってあり得るんだ。戦場じゃ、頭を少し冷やせ』

それは以前に長坂橋で御剣昴に指摘された欠点だった。

春「(そうだ。以前に・・いや、ずっと言われ続けた事じゃないか。私はまた同じ過ちを繰り返すところだった・・)」

一度は完全に頭に血が登りかかった春蘭だったが、その言葉を思いだし、頭と心を落ち着けた。

秋「行くぞ!」

凪「覚悟しろ!」

秋蘭と凪が構える。

春「待て!」

秋・凪「!?」

春「それでは駄目だ。冷静さを欠いては奴には勝てない。一度心を落ち着けろ」

秋「姉者・・」

凪「春蘭様・・」

その言葉で2人も冷静さを取り戻した。

秋「まさか姉者に諭されるとはな・・」

凪「驚きました」

春「ふん! そんなことより・・」

春蘭が羅鬼の方を向き・・。

春「奴をどうやって討ち取るか。今はそれを考えなければならん」

秋「・・そうだな」

凪「・・・」

春「我ら3人が力を合わせても奴には及ばん」

秋「ああ。このままではいずれは殺られてしまうだろう」

春「・・悔しいが、我らではどうにか一撃を入れるのが精々だろう。・・ならばその一撃に賭ける他はないな」

秋「うむ。幸い、向こうは我らを侮っているだろうからな」

凪「確かに、こうしてる間にも仕掛けてくる気配がありませんね」

羅鬼は欠伸をしながら退屈そうにしている。これは明らかな余裕と侮りである。

秋「ならば、私と姉者で奴の隙を作り出す」

春「そして奴への一撃は凪、お前が行け」

凪「!? 私が、ですか?」

春「お前がこの中で奴の懐に1番素早く飛び込めるんだ。だからお前がやれ」

秋「案ずるな、私と姉者で必ず奴の隙を作り出す」

春「お前は昴の教えと日々の鍛練の成果を奴にぶつけてやれ!」

凪「はい! 分かりました」

秋「話は決まった」

3人が羅鬼に振り返る。

羅「作戦会議は終わったか?」

春「ああ。貴様を討ち取るためのな」

羅「そりゃ楽しみだ!」

羅鬼は不敵な笑みを浮かべた。

秋「姉者、僅かの間で構わないから奴の動きを止めてくれ。そうすれば後は私がどうにかする」

春「・・分かった」

春蘭が頷いた。

秋「では・・」

秋蘭が矢を取り・・。

春「行くぞ!」

春蘭が七星餓狼を構えて羅鬼に正面から突撃した。





















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


春蘭side

奴の動きを止める、か・・。どうする? 力は奴の方が上。剣を合わせても即座に弾かれてしまう。かといって、奴の一撃を避けてからの攻撃は奴の立て直しの速さ故に駄目だ。避けてからの攻撃が駄目なら、奴の一撃を避けながらこちらの一撃を加える。回避と攻撃を同時に行うしかない。しかしそれでは満足な一撃が撃てない。出来るか・・いや、私は何を考えている。出来る出来ないではない。やるんだ!

春「行くぞ!」

私は覚悟を決め、七星餓狼を構えると奴に突撃をした。

羅「てめえだけか? 無駄だってのがわからねぇのか!?」

奴が大剣を振るった。

一か八か!

私は奴の一撃が私に届く瞬間に私は足から滑り込み、体勢を下げ、上体を後ろに反らす事で大剣を眼前スレスレで避け・・。

春「うおぉぉぉぉーっ!」

その体勢から上半身のねじりと腕力で七星餓狼を奴に振るった。

羅「味な真似を・・!」

ガキィン!!!

奴はその一撃をギリギリのところで大剣で受け止めた。

くそっ、一撃入れられなかったか・・だが、役目は果たした!

秋「上出来だ、姉者!」

秋蘭が矢を放った。




















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※※※※


秋蘭side

注文通り、姉者が奴の動きを止めてくれた。次は私の番だ!

私を2本つがえ、奴に放った。向こうもこちらの放った矢に気付いたみたいだが、姉者が動きを止めてくれたことにより反応が遅れたため、避けるのではなく、大剣を前にかざし弾こうと試みた。

それも想定内だ。私が放った矢は1本は奴に、もう1本は奴の僅か横に向かっていった。もちろん外した訳ではない。これが私の狙い。私はすかさず新たな矢をつがえ、放った。矢は外れた矢にぐんぐんと追い付いていく。私の狙い、それは・・。後に放った矢が最初に放った矢に追い付き、その矢の矢じりの横を掠めた。掠めた事により、その矢の軌道が変わり、奴の真横から矢が襲いかかった。

羅「なに!?」

奴が驚愕する。

昴『駆け引きを覚えろ』

昴にそう指摘され、私はもう一度自身の弓を学び直した。その過程で駆け引きの一端として覚えたのが、矢を矢で弾き、軌道を変えて的を狙うこの曲芸射ちだ。実戦では使う事はないと思ったが、まさか役立つとはな。

弾いた矢は奴の額目掛けて進んでいく。

羅「ナメんなーっ!」

奴はすぐさま上体を後ろに反らして矢を避けた。

これすらも避けるのか。

羅「残念だったなぁ! そんな小細工は俺には通用しねぇ!」

恐ろしい奴だ。だが・・。

秋「私の役目は果たした」

奴は矢を避けたが体勢は大きく崩し、奴に隙が出来た。

凪「おぉぉぉぉーっ!」

凪が奴へと向かっていった。




















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※※※※


凪side

春蘭様があいつに突撃して僅かに動きを止めてくれた。そこを秋蘭様が矢で狙い射った。それに合わせて私は縮地であいつの懐目掛けて飛び込んだ。秋蘭様の矢が突如軌道を変え、あいつ目掛けて飛来していった。だが奴はその矢を体を反らして矢を避けた。矢は避けられたが、その事によって奴に隙が出来た。春蘭様と秋蘭様が奴に隙を作ってくれた。後は私だ。お二人が作ってくれたこの機。必ず生かし、奴を仕留める! 私は右手の手のひらをかざし、氣をそこに集中させた。手のひらに氣が集まると、それを左回転に回した。

凪「行くぞ! 我が師、御剣昴より授かった技が1つ!」

私は奴の懐に飛び込み・・。

凪「喰らえ! 旋氣掌!」

私は氣を集め、回転させた氣の塊を内側にねじり込みながら奴の腹に撃ち込んだ。

ドゴォォォン!!!

羅「ぐわぁぁぁぁ!!!」

奴は叫び声を上げながら吹っ飛んでいった。

凪「これが師匠より授かりし奥義、旋氣掌だ」

奥義、旋氣掌は三の将羅鬼に直撃した。





















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霞side

霞「う・・」

真「姐さん、気ぃついたんか!?」

霞「ここは・・」

沙「今本陣に戻る途中なの」

戻る・・!? せや!

霞「あいつは!? あの敵将はどないしてん!?」

真「それやったら春蘭様達が相手してはりますけど・・」

あかん!

霞「ぐっ・・!」

ウチは急いで惇ちゃん達のもとへ行こうとするも、激痛により蹲ってしまった。

真「姐さんあきません! 姐さんは重症なんですよ?」

沙「そうなの!」

霞「行かな・・あかん・・。行かな・・」

沙「心配いらないの。敵将には春蘭様以外に秋蘭様と凪ちゃんもいるから大丈夫なの」

真「せやで、確かにごっつ力ありそうな体つきしとったけど、それでも・・」

霞「ちゃうねん。あいつの恐ろしいんは見た目の筋肉ちゃうねん。あいつは、昴や凪と同じ―――」




















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第三者side

春「良くやった。凪」

凪「いえ、春蘭様と秋蘭様が隙を作り出してくれたおかげです」

秋「敵将が討たれたと知れればもはやこちらの完全勝利だ。これで・・」

?「ぎゃははははっ!」

凪・春・秋「!?」

突如笑い声が耳に響いた。その笑い声は敵将羅鬼から。

羅「なかなかやるじゃねぇか!」

そういい放つと羅鬼は何事もなかったかのように立ち上がった。

凪「馬鹿な!? 完全に旋氣掌が決まったはずなのに・・」

羅「へっへっへっ、うっ、ゲェーーっ!」

羅鬼は嘔吐し、吐き出した。

羅「・・ふぅ。さっき食ったもんが全部でちったよ・・、へっ! やるじゃねぇか!」

凪「くっ! 旋氣掌を喰らってその程度なのか・・」

羅「本命前の前座程度としか思ってなかったが、なかなか楽しませてもらったぜ! 礼に良いもの見せてやるよ」

ザクッ! ザクッ!

羅鬼は手に持っていた大剣2本を地に突き刺し、ガッツポーズのような構えをとると、体がほのかに光を帯び始めた。

凪「(あれは・・氣か!?)春蘭様秋蘭様、気を付けて下さい! 奴は・・」

羅「余所見してんじゃねぇ!」

凪「っ!?」

凪は驚愕する。離れたところにいたはずの羅鬼が一瞬の間に目の前にいたからだ。

羅「まずはてめえからだ。」

バキッ・・ボキッ・・。

凪「がはぁ!」

羅鬼の拳が凪の腹に突き刺さり、そのまま吹き飛ばされた。

春「凪ーっ!! 貴様ぁーーっ!!」

春蘭が激昂し、羅鬼に突撃した。

春「覚悟ぉ!」

ブォン!!!

春蘭が羅鬼に七星餓狼を振るった。七星餓狼が羅鬼に当たる直前、羅鬼が春蘭の眼前から消える。

春「!?」

羅「どこ見てんだよ?」

春「くっ!」

春蘭は声のした方に慌てて振り向くがそこには誰もおらず・・。

羅「遅ぇーよ」

春蘭の背後から春蘭の腰に拳を撃ち込んだ。

ドス!!!

春「ぐふっ!」

春蘭は口から血を吐き出し、その場に倒れる。

秋「姉者ーーーっ!! 貴様、よくもーーっ!!」

秋蘭は矢をつがえ、羅鬼に射ち込んだ。

ドス!!!

放たれた矢は羅鬼の額に命中し、羅鬼の頭は矢の勢いで上を向いた。

秋「どうだ!」

矢は確かに額に命中した。しかし・・。

羅「痛ぇーな」

秋「!? ・・な・に・・」

羅鬼はゆっくり頭を戻す。矢の命中した場所には僅かに赤くなった程度だった。

羅「痛ぇーじゃねぇか」

秋「っ!」

羅「痛ぇーって、言ってんだよ!」

羅鬼は地を蹴り、秋蘭の眼前に一瞬で移動する。

羅「おらぁ!」

羅鬼は右の拳を振り上げ、秋蘭に拳打を振るう。

秋「くっ!」

秋蘭は何とかギリギリその拳を避けた。

秋「(まずい、距離を取らなければ・・)」

羅「チョロチョロしてんじゃねぇ!」

羅鬼は足を上げ、地に力強く叩きつけた。

ダァァン!!!

秋「!?」

羅鬼が足を叩きつけたことにより、その衝撃で秋蘭の体が僅かに浮いてしまう。そして、そのことにより、秋蘭は行動の自由を失う。

羅「これで、終いだぁ!」

羅鬼はそこへすかさず、秋蘭の腹に拳を撃ち込んだ。

ドス!!!

秋「がぁっ!」

その拳の威力で秋蘭は吹き飛ぶ。

魏が誇る最強の猛将3人が僅か1分足らず地に伏せられてしまった。

羅「ぎゃははははっ! やっぱり無手は良いなぁ! 喜べ! 俺は俺が認めた奴にしか拳は使わねぇんだ! 剣だと一撃で真っ二つになっちまって戦いが楽しめねぇからよ! まぁ、雑魚は相手が面倒だから剣ですぐに真っ二つにしちまうがな」

春「かはっ・・」

秋「くっ・・」

凪「ぐくっ・・」

羅「良い余興だったぜ。それじゃ、早いトコ、総大将ぶっ殺して刃と合流すっかな」

羅鬼は踵を返し、魏の本陣に向かおうとする。

凪「ま・・て・・」

凪が肋を押さえながらよろよろと立ち上がる。

羅「あん? てめえ、まだ立てんのか? そういや、てめえだけ手応えがおかしかったな・・」

凪は拳が直撃する直前に後ろへ飛び、拳の威力を殺していた。だがそれでも肋骨を2本ほどヒビを入れられてしまった。

羅「うぜぇよ。雑魚は寝てろ」

凪「くっ・・そ・・」

羅「何だその顔は? そんなに悔しいか? 俺様のせいじゃねぇ。てめえが弱ぇーのが悪ぃんだ」

凪「ぐっ・・」

羅「弱ぇー奴は強ぇー奴に奪われる。強ぇー奴は弱ぇー奴を従え、全てを手に入れる。早ぇー話、力こそ正義だ。良い時代だよな?」

凪「そんなこと・・」

羅「あるんだよ。現にてめえは俺から奪われる。てめえはそこで俺から奪われるのを黙って見てな」

羅鬼は高笑いしながら魏の本陣へと足を向けた。

凪「ま、待て!」

凪が追い掛けようとする。

ガシッ。

羅「あん?」

羅鬼が足下に目を向ける。そこには春蘭が羅鬼の足にしがみついていた。

春「行か・・せん・・。華琳・・様には・・指一本・・触れさせん・・」

羅「ちっ! うぜぇなぁ」

ガスッ! ガスッ!

羅鬼はしがみつく春蘭の頭を足蹴にする。

春「ぐっ・・くっ・・」

春蘭は何度も足蹴にされてもその手を離さない。

羅「あーうぜぇ。ならてめえから殺してやるよ」

羅鬼は拳を振り上げた。




















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


凪side

敵将、羅鬼が拳を振り上げた。

このままでは春蘭様が・・。春蘭様だけじゃない、秋蘭様も、華琳様も沙和も真桜も、皆も殺されてしまう! どうして、どうして私はこんなにも弱いんだ! 力が欲しい。皆を守れる力が! 私にはどうすることも出来ないのか・・。何も手立てが無いのか・・・・!?




















いや、あった。

師匠から旋氣掌と一緒に授かったものがもう1つ・・。でもこれは・・。

昴『凪、君にもう1つ教えておく。正直、あまり教えたくないものなんだが、万が一にも力が必要な時が来るかもしれないからな。これは氣功闘法の終着点というべき技だ。凪なら扱えるだろう。ただこれは極力使うな。これを使えば一時期に俺はおろか、あらゆる者を凌駕する力を得られる。だがこれを使えば君は2度と武人として武を振るえなくなる。だから極力使うな』

師匠はそう言った。

でも・・・それでも私は守らなければならないんだ! 大切な者を守るために私は!

すみません師匠・・。

私は使います。

凪「七星閃氣・・貪狼、解放・・」


















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


羅鬼side

羅「あーうぜぇ。ならてめえから殺してやるよ」

俺は拳を振り上げ、足にしがみつく眼帯の女に拳を落とした。

ガシッ!

羅「あん?」

だが俺の拳は途中で止められた。振り向くと、無手の女が俺の手首を掴んでいた。

凪「春蘭様から離れろ・・」

無手の女は呟くように言った。

羅「あん? てめえ何言ってんだ? その手を離し・・っ!?」

俺は女から手を外そうとした。だが俺は手を動かすことが出来なかった。

動かねぇ・・。

凪「春蘭様から離れろ・・」

無手の女がもう片方の手で俺の腹に裏拳を入れる。

ドス!!!

羅「がはぁ!」

その瞬間、俺の腹にとてつもない衝撃が襲い、吹き飛ばされた。

羅「ぐっ!」

俺は勢いが止まると、無手の女に振り返る。無手の女は眼帯の女を抱き抱えると・・。

シュッ・・。

羅「!?」

消えただと!? 何処に行きやがった!?

俺は辺りを見渡した。無手の女はかなりの距離に倒れていた弓の女の傍にいた。

あの女・・。一瞬であんな距離を移動したのか・・。それも眼帯の女を抱えたまま・・。

春「凪・・お前・・」

凪「春蘭様はこちらにいてください」

秋「凪?」

凪「大丈夫です。すぐに・・終わらせますから」

そう言うと無手の女はこっちに歩いてきた。

凪「お前が、私の大切な者を犯すというなら・・、私はお前を倒す。この命に変えても」

女が両目を閉じた。

凪「七星閃氣、巨門、解放・・」

無手の女が青い光に包まれていった・・。











続く

-87-
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