小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第83話〜曹魏決戦、蛮族なる戦〜
















孫呉は二の将率いる五胡の軍を撃破し、更に呂布と孫呉の猛将の活躍により、二の将、刹那を討ち取る事に成功した。時を同じくして、曹魏も五胡との戦を繰り広げていた。






















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華琳side

私は三国同盟の盟主である昴の命で自領である魏領の天水に駐軍した。陣を敷き、待ち構えていると、昴の思惑通り、五胡の軍がやってきた。兵数は約60万。我が曹魏を上回る兵数だ。五胡の軍がやって来ると、睨み合うことなく開戦した。

















・・・・・・・・・
・・・・・・・
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華「戦況は?」

桂「はっ、現在、我が軍が優勢です。将兵共に戦果を上げています」

そう、戦が始まってから舞い込んでくる報告はどれも吉報。それはもちろん良いことなのだけど・・。

華「・・歯応えが無さすぎるわ」

風「そうですねー。敵さんは先ほどから無謀な突撃を繰り返してるだけですからねー」

そう。五胡の軍勢はさっきから勢い任せに私達の陣に突撃をかける。ただそれだけしかしてこない。

華「何かの策という可能性は?」

稟「当初はその可能性を考え物見を放ちましたが、未だに向こうが何かを仕掛けたり、妙な動きをしたという報告は受けていません。例え、何かの策だったとしても、ここまで被害を出す意味があるとは思えません」

華「そうね」

確かに意味が無い。何か仕掛けるならとっくに仕掛けてもいいはず。

桂「あんな戦い方、まるで春蘭・・いえ、春蘭でもしないわね・・」

同感ね。春蘭も暴走、突撃する悪癖があるけど、あそこまでは酷くない。

華「まるで賊ね」

桂「本当ですね。向こうの将は春蘭以上の馬鹿なのでしょう」

稟「とはいえ、相手は精強な五胡兵な上、数はこちらを上回り、さらに兵は皆死兵だけあって、すでに何回か前線を抜けています。侮りは危険かと・・」

風「そうですねー。お兄さんの話では、蜀の軍師を手玉に取るほど者がいるようですし」

桂「そうは言ってもあんな無茶苦茶な戦を仕掛けるような奴に蜀の軍師が手玉に取られるなんて思わないわ。こっちには来てないんじゃないの?」

華「断定するのはまだ早いわ。今は敵に動きがあるまで現状を維持しましょう。物見の数を増やして逐一私に情報を渡しなさい」

「「「「御意!」」」」

このまま、何もなく敵を撃破出来れば良いのだけど・・。




















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五胡・羅鬼side

羅「おい、まだ突破出来ねぇのか?」

「はっ! 敵も手強く、突破するには時間が掛かるかと・・」

羅「言い訳なんざ聞きたかねぇんだよ。早く突破させろ」

「し、しかし、相手も巧みに兵を動かしているため、無作為な突撃ばかりでは・・」

羅「あっ? そりゃ俺のせいで突破出来ねぇって言ってるのかお前?」

「ひっ! そ、そういう訳では・・」

ちっ! 使えねぇ奴らだな・・。

羅「とにかく早く突破させろ。どんな手段(て)使っても構わねぇからよ」

「はっ、はっ!」

羅「ちっ! あんな雑魚共に用はねぇんだよ」

俺が戦りてぇーのは御剣昴っていう奴だ。刃が言うには強ぇーらしいな。早く魏とか言う奴ら蹴散らして戦りに行きてぇーな。

羅「さっさと潰しやがれ」




















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春蘭side

春「むっ?」

敵が何か動き出したな。

春「季衣。奴らが動き出したぞ」

季「あっ、本当ですね」

五胡の兵が一塊に集まっていく。

季「うーん、向こうは兵を集めて一点突破をしようとしてるみたいですね。・・どうします?」

春「まずは華琳様に報告だ。我らは奴らをここで食い止めるぞ」

季「はい! 分かりました!」

季衣は走って伝令を出しにいった。

来るなら来い、五胡の蛮賊共よ。この夏候元譲が相手になる!





















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華琳side

「ご報告致します! 五胡の兵に動きが。敵は兵を纏め、一点突破をかけるとの事です!」

華「ご苦労。下がって良いわ」

「はっ!」

伝令兵が下がっていく。

遂に動き出したわね。

桂「懲りもせず突撃・・。どうやら相手にはまともに兵法を知る者はいないみたいですね」

華「そのようね」

対応策が突撃の仕方を変えただけ。正に賊だわ。

華「とは言うものの、精強な五胡兵に一塊になられて突撃されればこちらもそれなりに被害が出てしまうわ」

後の事を考えれば、無用な被害は避けたい所ね。

茉「私に・・一計があります・・」

茉里がポツリと呟く。

華「聞きましょう。その策は?」

茉「はい・・。私の提案する・・策は――――」





















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春蘭side

季「春蘭様ー! 華琳様からの伝令です」

春「うむ! して、その内容は?」

季「えっとですね、夏候惇隊は敵が突撃を仕掛けたらその部隊に横撃して敵を華琳様のいる本隊に押しやれ、とのことです」

春「華琳様の元に?」

敵を華琳様の元に誘導するとはどういう事だ? ・・・・うーむ、考えても分からん! だが華琳様の命令なら従うまでだ!

春「よし! 我らもそのように動くぞ! 季衣、皆に準備をさせろ!」

季「は、はい! 分かりました!」

細かい戦略や策など私には分からん。私はただ、華琳様の命令通りに動くだけだ。



















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茉里side

提案した通り、春蘭様の部隊が横撃をかけて敵をこちらに誘導してくれました。思惑通り、敵は本隊を見つけると脇目を振らず、本隊に突撃をかけて来ました。

茉「思惑・・通り・・」

私の予見通りに事が進んでいます。後は私の機、次第・・。

茉「まだ・・後少し・・後少し・・」

相手はどんどんこちらに近付いて来ます。私の立てた策は・・。















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


茉「私の提案する・・策は・・本隊を鶴翼陣形に形成し・・春蘭様の隊を敵に横撃・・本陣に誘導します・・」

桂「!? あなたまさか、華琳様を囮に使うつもり!?」

茉「そうです・・」

桂「駄目よ! そんなことしなくてもあいつらなんて・・」

茉「倒せます・・ですが、こちらも被害が出てしまいます・・」

桂「だからと言って・・」

華「話は最後まで聞きなさい、桂花・・。続けて茉里」

茉「はい・・。一塊に纏まった隊を・・センセから預かった・・兵器で・・一掃します・・」

華「昴から預かった兵器・・鉄砲とか言う奴ね」

茉「はい・・。威力は実証済み・・。これが・・私の策です・・」

桂「危険よ! あれは一度しか使えない代物でしょう? 万が一取りこぼしたらその残存部隊が華琳様に遅い掛かるのよ!?」

茉「で、あるなら・・取りこぼさなければ良い・・だけの事・・」

桂「そんな保証が何処にあるのよ!?」

華「黙りなさい、桂花!」

桂「っ!? 申し訳、ありません・・」

華「気を悪くしないで桂花。あなたの私に対する気持ちは理解しているわ」

桂「華琳様・・」

華「後でたっぷり可愛がってあげるわ・・。それで、茉里、あなたはこの曹孟徳を囮とし、危険を課す、という訳ね?」

茉「はい・・その通りです・・」

華「・・・」

茉「・・・」

華琳様は黙って私の目を見つめる。私も目を反らさずに華琳様の目を見つめ続ける。

華「・・良いでしょう。茉里、あなたの策通りに行きましょう。皆茉里の指示に従いなさい」

稟「よろしいのですか? 桂花殿の言うことももっとも、危険ですよ?」

華「ふふっ、心配はいらないわ。敵は来ない、残らず全滅する。そうでしょう?」

茉「・・(コクリ)」

華「そういう事よ。皆すぐに動きなさい。敵はすぐに来るわよ」

「「「「御意!」」」」

















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


以上が私の考えた策・・。敵はジワジワと華琳様の本陣に近付いていく。

・・・・ここです。

私は手に持った羽毛扇を空に掲げた。それを合図に鉄砲隊が一斉に鉄砲を構える。

私は鉄砲隊2千人を一列にではなく、二列に並べ、鉄砲の弾が交差するように配置した。センセ曰く、鉄砲は先の丸い穴から小さな弾が人の目に止まらぬ早さで、矢以上の威力で目標を撃ち抜く兵器。その軌道は矢のように山なりではなく、真っ直ぐに先の丸い穴から目標に到達する。で、あるなら一列に並んで撃つより、鉄砲の弾を交差させて撃ち抜く方が理屈としてはより効果が得られるはず。

茉「放て!」

私が羽毛扇を前方に振り下ろす。

ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン! ドン!

茉「っ!?」

大きな轟音と共に鉄砲が放たれる。私の耳が轟音でキーンとなった。やがて耳から音が消え、前方に視線を移すと・・。

茉「・・すごい・・」

敵部隊は1人残らず全滅していた。




















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華琳side

華「・・すごいわね」

鉄砲による射撃で、敵部隊は全滅した。

稟「確かに、あの鉄砲なる兵器、改めてすごい兵器です」

華「違うわ」

稟「えっ?」

華「昴から説明と威力を見せてもらった時から鉄砲がどの程度の効果があるかは分かっていたわ。私が言ってるのはそれを大きく理解し、さらに効率の良い使い方を考案した茉里の事を言ったのよ」

稟「・・・」

華「もはや疑いようがないわね。茉里こそ、三国一の軍師だわ」

風「ですね〜」

桂「・・っ」

華「あら桂花? 不満かしら?」

桂「・・いえ、頼もしい限りです」

とは言うものの、桂花は悔しさで顔を歪ませている。ふふっ、本当に桂花は可愛いわね。

華「安心なさい桂花。三国一とは言ったけどそれは軍略、戦に関しての事よ。軍師の務めはそれだけではないでしょう?」

桂「あっ・・」

華「国庫、つまり政で言えば桂花。あなたの方に私は信頼を置いているわ。その王佐たる才。頼りしてるわよ」

桂「はい! 華琳様//」

華「風、稟。あなた達ももちろん頼りしてるわ。その才、存分に私の元で振るいなさい」

稟「はっ、はい!」

風「もったいないお言葉です〜」

華「ふふっ、・・では行くわよ。今が好機! 敵を一気に殲滅する! 総攻撃をかける! 全軍に通達しなさい!」

「「「「御意!」」」」




















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羅鬼side

「も、申し上げます! 前線より突撃を敢行した部隊が謎の轟音と共に全滅しました!」

羅「謎の轟音だぁ〜?」

何だそりゃ?

「敵軍、それに合わせ、全軍で総攻撃をかけてきた模様です!」

羅「ちっ! あ〜めんどくせぇな〜!」

「・・もう駄目だ・・」

羅「あっ?」

「敵には妖術使いがいるんだ・・。もう我らの・・」

ズシャッ!!!

「ぎゃは!」

俺はそいつが言い切る前に脳天から剣を振り下ろし、真っ二つにした。

羅「今なんつった? 良いか。俺達の戦に、死はあっても負けはねぇ。勝つか、死ぬかだ。てめえらもこうなりたくなきゃ戦って勝ちな。分かったか!」

「「「「はっ、はっ!」」」」

羅「けっ!」

イライラさせやがるぜまったくよ。こっちの方が数が多いのに何してやがる。



















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春蘭side

春「よし! 我が隊はこれより総攻撃をかけるぞ! 皆私に続け!」

季「皆〜、いっくよ〜!」

「「「「応っ!」」」」


















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秋蘭side

秋「我らも動くぞ! 姉者の隊を援護する。皆行くぞ!」

「「「「応っ!」」」」


















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凪side

凪「華琳様より伝令だ。私達も行くぞ」

沙「分かったの!」

真「了解や!」

凪「我らも敵本隊の殲滅に加わる! 行くぞ!」

真「皆行くで〜! ウチらに続き〜!」

沙「ついて来れないノロマな奴はタマ切り取ってグズの家系を根絶やしにしてやるのぉ〜!」

「「「「応っ!」」」」

「「「「サーイエッサー!」」」」



















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羅鬼side

「駄目です! 敵の勢い凄まじく、本陣に迫る勢いです! もう持ちこたえられません!」

羅「ガァァァァーッ!」

「がふっ!」

俺は伝令を叩き斬った。

どいつもこいつも役に立たねぇ奴らばかりだ! めんどくせぇ!

羅「俺が直々にぶっ殺しに行く! ついてきやがれ!」

「はっ、はっ!」

俺様をイラつかせやがって! てめえら、ただで済むと思うなよ!



















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霞side

霞「遼来来! 遼来来やーっ! 皆ウチに続けやーっ!」

ウチら張遼騎馬隊は遊撃として敵部隊を撹乱して回った。突撃は上手いこといき、敵陣の中腹まで斬り込めた。

霞「この調子でどんどん行くでー!」

ええ感じや。このまま・・。

?「てめえ、将か?」

霞「っ!?」

突如声と共に寒気が襲った。声の方を向くと上半身裸の大男がおった。

何や、こいつ・・。

?「聞いてんだよ。質問に答えろよ」

霞「ウチは張遼。魏の将や」

羅「ほぅ、やっぱりそうか。俺は羅鬼。五胡の三の将だ。よろしくな?」

三の将・・。こいつがこの軍の総大将か! まさか総大将自ら前に出るとは・・。

「覚悟! 敵総大将の首、もらった!」

ウチの隊の1人が飛び出した。

霞「あかん! やめるんや!」

慌てて止めるが一足遅かった。

羅「引っ込んでろ!」

「ぐふっ!」

霞「なっ!?」

羅鬼と名乗る大男は背中から大剣を抜き、飛び出した騎馬兵を騎馬ごと真っ二つにしおった。

羅「雑魚ばかりで退屈してたんだ。てめえも将なら強ぇんだろ? なら俺様を楽しませろや!」

その瞬間ウチにでかい殺気が襲った。この殺気・・長坂橋での昴・・いや、それ以上や・・。

霞「・・・っ」

よく見ると、あいつの後ろには大量の魏の兵の死体が並んでいた。数は百どころやない。おそらく数千や。

ウチは背中に冷たい汗が流れるのを感じながら構えた。


















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凪side

凪「春蘭様! 秋蘭様!」

私達の隊は沙和と真桜と共に敵本隊に斬り込み、次々と撃破していき、春蘭様と秋蘭様と合流を果たした。

春「凪か! 首尾はどうだ?」

凪「はい。沙和と真桜と共に順調に敵部隊を突破、撃破しています」

秋「よくやった凪。この調子で行くぞ」

凪「はい!」

春「敵は数だけの蛮賊だ。華琳様率いる魏の敵ではない。早々にこの国から叩き出すぞ!」

春蘭様が私達に鼓舞をする。戦況はこちらが圧倒的に優勢。

勝てる!

そう思ったその時・・。

?「おーおー。ここにも活きが良さそうなのがぞろぞろ並んでんな」

凪・春・秋「!?」

突如、低い声が轟いた。振り向くとそこには巨体で、上半身裸の男がいた。

春「何だ貴様は!」

春蘭様が怒鳴ると男は頭を掻きながら・・。

羅「ちっ! いちいち名乗るのめんどくせぇな・・。俺は五胡の三の将、羅鬼だ。てめえらも名乗れや」

春「私は曹魏の将、夏候元譲だ!」

秋「同じく曹魏の将、夏候妙才だ」

凪「楽文謙だ」

羅「やっぱりてめえら将か!」

春「貴様が総大将だな! その首、貰い受ける!」

春蘭様が剣を構え・・。

秋「覚悟しろ」

秋蘭様が矢をつがえた。

凪「・・・」

私も無言で構えを取った。

羅「せいぜい俺様を楽しませろよ! がっかりさせるなよ、こいつみたいにな」

春・秋「!?」

凪「!? ・・・霞、様・・」

奴が背中に担いだ大剣。その剣の峰に、傷だらけでボロボロになり、ぐったりした霞様が乗せられていた。











続く

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真・恋姫†無双 麻雀 (麻雀セット)
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