小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第86話〜洛陽の戦い、終幕への序曲〜















孫呉、曹魏がそれぞれ五胡の軍を撃破し、勝利した。その頃蜀勢も、水関、虎牢関で五胡の本隊の足止め、時間稼ぎを行い、その間に洛陽周辺に勝利の為に策を労し続けていた。




















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昴side

星達が足止めをしている間に俺達は出来る限りの事をした。まずは相手の騎馬を封じる為に、大量に先が尖った柵を用意した。その柵を幅広く設置すれば不用意に突撃は出来ない。その後方に簡易ながら砦もいくつか築いた。あくまでも即席な物だから力攻めをされれば簡単に落ちる代物だが、柵とセットになればかなりの効果をもたらすだろう。他にも通常よりも長さがある長槍、鈴々の持つ蛇矛よりも長い全長5メートル程の槍を用意した。如何に五胡の軍が柵の合間を縫って騎馬を突撃させても長槍がそれを阻む。2〜30人が重なって槍を1つに合わせれば騎馬ごと吹き飛ばせる。その次は華琳が官都で麗羽相手に使ったっていう投石車も何台か用意した。構造は単純だったから話を聞いただけで再現は出来た。後は鉄砲だ。でもこれは・・。

昴「使う場所と機を考えないとな・・」

華琳や雪蓮の方面ならかなりの効果があるだろうが、こっちには刃がいる。鉄砲の知識も当然あるだろう。少なくとも鉄砲が連射が出来ない事は即座に気付かれる。元来の鉄砲と違い、試作品故に砲身が一発しかもたない。とりわけ、不用意な一斉掃射は出来ないな。まあ、こんなものだ。この防御施設は洛陽の進路上にあるからみすみすこれを避けて遠回りすることはないだろう。無視して遠回りすれば挟撃されるだけだからな。これでどこまで持つかは分からないが・・。

昴「後は華琳達と雪蓮達次第、か」

信じるなんて言葉、戦において、しかも一国の軍の総大将が使ってはならないんだが、今は信じるしかない。星達も既に虎牢関から撤退し、俺達と合流済みだ。

昴「状況は芳しくない。むしろ最悪。頼みの綱は援軍。ははっ、笑えるな」

桃「もう・・笑い事じゃないよ」

桃香が諌めるように言う。俺は桃香の頬を引っ張った。

桃「いはい、いはいよ〜(痛い、痛いよ〜)」

昴「そんな不安そうな顔をするな。笑って笑って」

桃「もう、ご主人様!」

昴「そんな顔をするな。国の頂点が不安な顔を浮かべたら将兵にまで不安が伝染しちまうぞ」

桃「あ・・」

昴「だから笑え」

桃「うん! そうだよね!」

それで笑えるから大したものだな。

桃香と話をしながら待っているとトテトテと朱里と雛里がやってきた。

朱「ご主人様、柵の配備と砦の設置、兵の配置も完了しました」

昴「ご苦労様。朱里も雛里も時間まで休んでくれ」

朱「いえ、私は大丈夫です」

雛「私も大丈夫です・・」

昴「そうか、でもあまり無理はするなよ。無理は・・これからする事になるんだからな」

朱・雛「はい」

まったく・・。2人がそういうならしょうがないか。

朱「あの、ご主人様、これから始まる戦には・・」

昴「心配するな。俺は全体の指揮は取るが前には出ない」

雛「お願いします」

俺は出るつもりはない。俺は刃を相手にしなければならないからだ。極端な話、刃は五胡の大勢力よりも厄介な存在だ。万全で挑まなければ勝てない。可能な限り、力は温存しておきたい。何より、俺が出れば兵の士気は上がるだろうが、将の士気は落ちちまう。

昴「月並みだが、皆を信じる。任せたぜ」

朱・雛「はい! 任せて下さい!」

桃「うん! 任せて!」

頼もしい限りだ。後は、相手を待つばかりだな。

それから3日後、五胡の大軍勢がやってきた。





















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第三者side

愛「来たぞ! 槍を束ねて迎撃しろ!」

愛紗の指示により、兵30人が長槍の穂先を重ね、1つにして敵の騎馬隊を騎馬ごと弾き飛ばす。その後方に控えていた騎馬隊が腰に身に付けていた短弓を構えた。

紫「弓隊、放ちなさい! 関羽隊を援護するのよ!」

紫苑が率いる弓隊が一斉に矢を放ち、騎馬隊を撃ち抜く。

星「次の騎馬が来たぞ! 長槍を構えろ!」

蒲「援護は任せて! 皆、矢を放って!」

たんぽぽの部隊が弓を構え、矢を放った。長槍は騎馬の進軍を阻み、矢は、長槍隊を射ぬこうとする敵兵を撃ち抜いていく。

焔「ほう、貴様は矢も使えたのか・・」

蒲「へへーんだ。ご主人様から戴いた新しい武器を使いこなす為に紫苑さんと桔梗さんに弓を習ったんだもんねー♪」

焔「しかし、よくもまあそんな偏屈な武器を扱えるものだな」

たんぽぽが昴からもらった新しい武器とは、弓の穂先に刃を付けた弭槍と言われる物だ。これにより、槍と弓を瞬時に扱えるという利点がある。が、しかし、扱いが難しく、ある程度器用な者でないと扱えないという難点もある。(ちなみに星は自身の槍術の為、翠は不器用な為に扱えなかった)

桔「話をしている場合か! 早く次を構えんか!」

蒲「は、はい!」

焔「了解です、桔梗様!」

その言葉にたんぽぽは矢をつがえ、焔耶は鈍砕骨を構えた。

愛「しかし、あの長槍、当初はどうなるかと思ったが、ここまでの効果をもたらすとはな」

星「うむ。騎馬を相手にはこれ以上にない効果だ」

皆が長槍の効果に驚愕する。しかしそれも僅かな時間だった。

星「むっ? まずいな、敵が長槍の左方面から突撃をかけてきたようだ」

想「くっ! もう対応してきたのか・・」

想華は苦々しい顔を浮かべる。長槍を持った者が一塊になると、その長さが仇になり、左側から攻められた場合、一度槍を持ち変えなくてはならないため、左側からの攻撃にすぐさま対応出来ない。

紫「ふふっ、相手がそう来るなら、こっちは左側へ行かせないようにするだけだわ」

桔「紫苑の言う通りじゃな」

紫苑と桔梗。そしてそれぞれが率いる部隊が矢をつがえ、突撃をかける敵部隊を撃ち抜いた。

白「投石車の準備が整った! 皆離れろ!」

白蓮の指示により、兵達が退いていく。

白「今だ、放て!」

ブォン!!!

投石車が作動し、岩を飛ばしていく。

ドゴーン!!!

岩が五胡の部隊に命中する。

白「次を放つまでに間が空く、援護を頼む!」

星「心得た。趙雲隊、敵弓隊へ横撃をかけるぞ!」

「「「「応っ!」」」」

趙雲隊が突撃を敢行した。

想「華雄隊も行くぞ! 援護射撃の後、騎馬で突撃をする」

焔「我らも行くぞ! 皆私に続け!」

「「「「応っ!」」」」

華雄隊が趙雲隊の援護射撃を行い、そのまま騎馬での突撃を敢行し、魏延隊がそれに続いて突撃をした。それぞれの部隊は敵部隊にぶつかり、切り裂いた後にすかさず撤退をする。

白「よし、今だ! 今一度岩を放て!」

ブォン!!!

再び投石車が作動した。

ドゴーン!!!

岩が五胡の部隊に激突した。それにもかかわらず、五胡の兵は死兵の如く勢いで蜀の陣目掛けて突撃を敢行する。

愛「くっ! 向こうには恐怖というものがないのか!」

星「面倒だな・・」

想「ボヤいても始まらん。我らは1人で多くの敵を討ち取り、少しでも長い時を稼ぐだけだ」

愛「そうだな・・」

星「ふっ、違いない」

桔「うむ。相手の兵も確実に減っておる。このまま押しきるぞ」

焔「はい! 桔梗様!」

蒲「応っ♪」


















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


そう意気込んだものの、敵兵の圧倒的な数により、蜀軍は徐々に押され始めた。砦や防御施設も急遽拵えた即席なものの為、次第に抜かれ始めてきた。

詠「限界ね。銅鑼を鳴らして! ボク達は洛陽近辺の本陣近くまで退くわよ!」

ゴォーン! ゴォーン!

盛大に銅鑼が鳴らされた。
















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


ゴォーン! ゴォーン!

愛「むっ・・」

星「撤退の銅鑼か」

紫「潮時みたいね」

想「・・何と不甲斐ない・・!」

紫「成果は充分に挙げたわ。後は、信じましょう」

想「・・分かった」

愛「うむ。・・・これより砦を放棄して洛陽にまで退く! 皆急ぎ準備せよ!」

蜀軍の前線部隊は撤退を開始した。





















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昴side

昴「・・・」

前線部隊が帰還した。程なくして五胡の軍勢がやってきた。

「申し上げます! 左翼、突破されました!」

昴「馬超隊を向かわせろ」

「はっ!」

「右翼、更なる敵部隊が向かっている模様です!」

昴「華雄隊及び、馬岱隊を救援に向かわせろ」

「はっ!」

まずいな。そろそろ限界が近付いてきているな。あちこちで抜かれてきている。・・ここしかないか。

昴「本隊の陣形を鶴翼陣形に変える」

朱「鉄砲を使うんですね」

昴「ああ。一度相手の勢いを止めないとこのままズルズル押し込まれる」

朱「分かりました。では直ちに・・」

本隊の陣形が朱里の指示の下、変わっていく。

昴「銅鑼を鳴らせ、敵を本隊に引き込むぞ」

ゴォーン! ゴォーン! ゴォーン!

銅鑼が3度鳴らされた。その直後、前線部隊に変化が現れた。真ん中に位置する愛紗の部隊が僅かに横に逸れ、陣に穴が出来た。すると好機と見た敵がここぞとばかりに手薄になった箇所を攻め始めた。敵は次々と包囲網を掻い潜り、俺達のいる本隊へと近付いてくる。

昴「・・・・今だ! 銅鑼を鳴らせ!」

ゴォーン!

銅鑼が1回だけ鳴る。それと同時に・・。

ドォン! ドォン! ドォン! ドォン! ドォン!

轟音と共に鉄砲が一斉に発射される。

昴「敵先駆け部隊を何とか仕留めたか・・」

後は鉄砲の効果がいつまであるかだが。あまり長い間は無理だろう。後は既存の手札で凌ぐしかない。

昴「正念場だな」
















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


やはりというべきか、鉄砲の脅しが効いたのは僅かな間だけだった。しばらく経つと、すぐさま立て直し、再び進軍、突撃を敢行してきた。こちらを上回る兵力での突撃を絶えず仕掛ける為、こちらも自ずと限界が来る。左翼はもはや限界。むしろ、良くもっている方だ。

このままじゃまずい・・。

次抜かれたら総崩れをおこしちまう。左翼を抜かれたら相乗効果で右翼も抜かれるのも時間の問題。それは避けたい。

やむを得ないか・・。

俺が腰の村雨に手を置こうとしたその時・・。

「も、申し上げます! 西方より砂塵が!」

昴「!?」

砂塵、という事は・・。

昴「旗は?」

「旗は・・・・曹! 曹魏の牙門旗です!」

昴「来たか! 待ちわびたぜ!」

ようやく頼みの綱がやってきた。

「南方からも砂塵! 旗は孫呉! 孫呉の牙門旗です!」

昴「こちらも目論見通りだ!」

賭けに勝った。これで勝敗は五分と五分。

昴「全軍及び、曹魏、孫呉に通達。これより総攻撃を掛ける! 曹魏、孫呉、そして俺達蜀はそれぞれ3方向より攻め立て、殲滅する。ここが正念場だ! 後は戦略も策もない、想いが強い方が勝つ! 我らの想い1つにして五胡を討ち果たすぞ!」

「「「「応ーーーっ!!!」」」」

俺の檄と共に兵達の雄叫びが戦場に轟いた。

戦は佳境へと移行した。




















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第三者side

曹魏、孫呉の参入により、戦は更に激化した。劣勢を巻き返したものの、戦況は五分五分。曹魏は兵力こそ健在なれど春蘭、秋蘭、霞、凪が負傷しており、敵に斬り込める将及び、前線で指揮が出来る将が不足している。孫呉は将こそ健在なれど、先の戦で多くの兵を失っている。そして双方共に、二の将、三の将が率いる五胡の隊を撃破後、ほとんど休息を取らずに強行軍で兵を進軍させた為、疲労も限界に近付いている。そのため、兵数こそ僅かに三国連合が上回っているものの、戦況は均衡を保っている。互いに決定打がなく、足踏みをしている状況である。

何か1つ。何か1つあればこの均衡は崩れる・・。そこに蜀軍の本陣に報が飛び込んだ。

「ももも、申し上げます! 南西より砂塵が! は、旗は五胡のものです!」

「「「「!?」」」」

「兵数はおよそ、約7万です!」

桃「そん・・な・・」

朱「この状況で7万兵が参入したら・・」

昴「・・・」

戦況は五分五分。互いに決定打がない。この状況で援軍が参陣するば均衡は一気に崩れる。蜀本陣に暗雲と共に絶望という闇が覆い始めた。

雛「このままでは・・!」

桃「ご主人様! どうしよう!?」

桃香が半ば錯乱しながら昴に問う。昴はそれに答えず、一歩、二歩と前に歩み出た。

昴「どうするもこうするもない。勝敗は決した・・」

ポツリと昴が呟く。そして桃香に振り返り・・。

昴「この戦―――」

















――――俺達の勝利だ。











続く

-89-
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