小説『真・恋姫†無双〜外史の守り手〜』
作者:ブリッジ()

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第87話〜傾く戦況、決する勝敗〜















第三者side

昴「勝敗は決した、この戦、俺達の勝利だ」

桃「どういうこと? あの人達は五胡の軍じゃないの?」

桃香は疑問に感じ、昴に尋ねた。

昴「いや、あれは紛れもなく五胡の軍だ」

桃「ならどうして・・」

昴「五胡内にも色々事情がある。・・覚えてるか? 以前に話した五胡の内情を」

桃「うん。確か、五胡の国って、今作物が育ちづらくって、そのせいで貧困に喘いでるんだよね? それで食料と土地を奪う為に私達の国に攻めてきたんだよね?」

昴「そうだ。奴らは貧困問題を解決するために奴らは攻めてきた。だがな、五胡内には、貧困問題を解決するためにもう1つ、他の意見を出す者達がいる」

朱「!?」

雛「まさか、あの人達は・・」

朱里と雛里は共に同じ考えに至った。

昴「ああ。2人の思った通りだ。あの部隊は五胡の穏健派の勢力だ」

桃「えーーっ!?」

朱「ご主人様、どうやって穏健派を・・」

昴「根拠があったわけではないが、刃が五胡に向かってから、この国に侵略するまで、逆算してもあまりに短い。穏健派が主流だった五胡を完全に掌握出来たとは思えない。おそらく一部は力で押さえ込んだんじゃないかと考えた。だから俺は五胡の国に雫を向かわせ、穏健派に協力を要請した」

雛「でも、どうやって穏健派を説得したんですか? 派閥は違えど、あの人達からすれば同胞を手にかける事になるのに・・」

昴「もっともな質問だ。穏健派も急進派とは意見が異なるだけで憎み合っていた訳じゃない。だから俺は協力してくれる見返りとして2つ程条件を出した」

桃「条件?」

昴「1つは俺達が五胡の国を援助、及び復興の手助けをする。もう1つは俺達と盟を結ぶことだ」

朱「!? それは・・」

昴「勿論これは俺の独断だ。だがこうするしかなかった。曹魏と孫呉がそれぞれ五胡の分隊を撃破して合流したところで勝敗は五分五分と見た。これでは勝敗がどう転ぶか分からない。たとえ勝利してもかなりの犠牲が出るだろう。だから最後の一手、いや最後の賭けとして穏健派に協力を要請するしかなかった。賭けが成れば戦況は一転する。均衡が大きく崩れれば損害も双方少なく戦を終わらせられる。五胡の兵の多数は刃の力の恐怖によって従っているだけだろうからな。後は、穏健派の代表はこの話に乗ってくれると信じていた。何せ、刃が五胡を掌握し、この国に侵略する意図を教えてくれたからだ」

昴は思い出す。姜維伯約の告げた言葉を。

雛「ではご主人様はこの戦の後に五胡とは・・」

昴「盟を結ぶ。この約束を破るつもりはない。独断専行になった形になったが構わないか?」

桃「私は賛成だよ♪ そうすれば流れる血が少なくて済むし、何よりたくさんの人が笑えるようになるから」

朱「私も賛成です。問題は起こるかもしれませんが、それをどうにかするのが私達軍師の仕事です♪」

雛「・・(コクッコクッ)」

昴「決まりだ。・・よし、曹魏孫呉を含めた全軍に通達! 南西より来た五胡の兵を友軍として引き入れ、攻勢をかけろ!」

「「「「はっ!」」」」




















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


雫「協力感謝いたしますわ」

雫は横に並ぶ姜維へ礼をした。

姜「・・我らは蛮族。なれど獣に非ず。他者を食い尽くして生き永らえる事を良しとはしない」

雫「立派な事ですわ」

姜「我らはあなた達に協力する。その代わり交わした約定を守ってもらう」

雫「勿論ですわ。ですがそれはこの戦の終結後、五胡をあなた方穏健派で意志を統一する事が条件ですわよ。出来ますか?」

姜「する。誓う。この姜維が必ず。前王であり、我が父でもある劉豹の名にかけて」

雫「!? あなたは・・」

姜「我が産まれた時、穏健派と急進派は一触即発の状態であった。場合によっては私が人質に成りかねなかった。故に産まれてすぐに母様と共に五胡の国を離れた。母様が死に。それをきっかけに父のもとを訪れ、そして父と共に誓った。五胡と、そして漢の地との争いを無くし、ゆくゆくは手を取り合い、共に共存する道を目指す、と」

雫「そうでしたか・・。でしたら、是非にも約定を果たさなくてはなりませんわね」

姜「肯定。・・全軍、刃に踊らされ、獣に身を落とした同胞の目を覚まさせる。皆行くぞ」

「「「「応ーっ!」」」」





















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


愛「南西から襲来した五胡の部隊を友軍として引き入れろと?」

「はっ! あの部隊は我らに味方をするとの事です」

愛「ご主人様がそうおっしゃったのか?」

「はっ!」

愛「ふぅむ。相変わらずご主人様の考えと行動は読めんな」

星「良いではないか。これにより、この戦の戦況は我らに傾いた」

愛「そうだな。後は・・」

星「我らの手で敵将を討ち果たすだけだな」

愛「ああ。では行くぞ、星!」

星「ああ!」


















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・


越「おらぁ!」

ザシュ!!!

「がはっ!」

越「ちっきしょー! 姜維の奴、寝返りやがった!」

越吉は短槍を振るいながら嘆いていた。

越「ああもう! 鬱陶しい! こんなんで負けたら姉さんに顔向け出来ねぇ。1人でも多くの将を・・」

?「探したか?」

越「!? てめえは確か趙子龍か!」

星「覚えていてもらって光栄だ」

愛「我が名は関羽。字は雲長。貴殿の首、貰い受ける」

越「おもしれぇ、虎牢関でのケリ、着けようじゃねぇか!」

星「望むところだ!」

愛「私が居るのを忘れるな!」

愛紗と星。そして越吉が同時に飛び出した。

愛「うおぉぉぉーーーっ!」

星「はぁぁぁーーーっ!」

ガキン! ガチン!

愛「ぬっ?」

星「ちぃ!」

愛紗と星の一撃は越吉の盾に阻まれた。

星「気を付けろ愛紗。奴の盾はかなり丈夫だ。迂濶に大振りをすれば盾で払われ、一撃をもらってしまうぞ」

愛「分かった」

愛紗と星は左右に別れた。

愛「ならば今一度行かせてもらう。うおぉぉぉーーーっ!」

星「はいはい、はいーっ!」

愛紗の鋭い斬撃と星の素早い槍の嵐が越吉を襲う。

越「へっ! その程度で殺られるかよ!」

越吉は愛紗の青竜刀を短槍で払い、星の槍を盾で防いだ。

越「おらぁ!」

越吉は愛紗に槍を振るった。

愛「ちぃ!」

ガキン!!!

愛紗はそれを青竜刀で受け、一度距離を取った。

星「まだまだ行くぞ!」

星は再び槍の連続攻撃を見舞った。

越「無駄無駄無駄ーっ!」

しかしそれも盾で阻まれる。

越「へっ! おりゃ!」

星「くっ!」

星は何とか槍を避けると距離を取った。

愛「くっ! あの盾、厄介だな」

星「盾だけではない。こやつは恋並みに強い」

越「この程度か? あまりがっかりさせんなよ!」

星「ちぃ!」

愛「侮るなよ。我らの力はこの程度では・・」

愛紗と星がもう一度飛び掛かろうとしたその時・・。

鈴「にゃにゃーっ!」

星「!?」

愛「鈴々!?」

左側100メートル程の場所で鈴々が倒されていた。

越「ありゃ、姉さんか。あのガキ死ぬぜ? 何せ姉さんは俺より強いからな」

愛「くそっ!」

その言葉に大きく動揺する愛紗。

星「・・・行け、愛紗」

愛「星?」

星「ここは私1人で充分だ」

愛「しかし!」

星「義妹が心配なのだろう? 早く行ってやれ。それとも私1人残すのは不安か?」

ニヤリと愛紗に笑みを向ける。

愛「・・かたじけない。星、ここは頼む!」

愛紗は踵を返し、鈴々のもとへ走っていった。

越「何だよ、お前1人か?」

星「ふむ、ここからは私1人で相手をさせてもらおう」

越「構わねぇけどよ、ただ・・人選誤ったな」

星「何?」

越「お前が向こうに行って、関羽がこっちに残れば僅かに勝つ可能性が残ったんだけどな」

星「貴様・・」

越「分からねぇか? お前の槍は軽すぎる。その槍じゃこの盾は貫けねぇし、盾を抜くことも出来ねぇ」

星「そんなことは・・」

星は槍を構え・・。

星「やってみなければ分からぬさ!」

星は越吉に飛び掛かった。

星「はいはい、はいーっ!」

星は突きの嵐を浴びせる。

カツン! カツン! カツン! カツン! カツン!

だがその突きは全て盾に阻まれた。

越「無駄なんだよ!」

ザシュ!!!

星「ぐっ!」

越吉は突きを盾で防ぎ、止んだところで短槍を振るい、星の太股を傷を負わせた。

星「ならばこれならどうだ!」

星は越吉の側面に回り込み、槍を突いた。

越「俺の盾を避けれると思うな!」

越吉は即座に反応し、槍を盾でいなした。

ザシュ!!!

星「ちぃ!」

今度は星の肩口を斬り裂く。

星「それならば! はいはいはい、はいーっ!」

星は更に突きの数を増やし、越吉に突きの乱れ突きをした。

越「無駄なんだよ!」

ガチン!!!

星「なっ!」

越吉は突きの乱れ突きから槍を見切り、短槍で星の槍をかち上げた。

越「おらおらぁ!」

ザシュ! ブシュ!

短槍が星の脇腹と肩を掠めた。

越「突きの数を増やせばお前の槍は更に軽くなる。避けられなくとも一撃だけ見切って槍を防ぐなんてのは造作でもねぇ」

星「くっ、まだだ、まだ終わらんぞ!」

星は再び越吉に飛び掛かった。

越「はっ! 足掻きだな!」

越吉も迎え撃つ。だが、星がいくら攻撃を繰り出してもその攻撃は全て盾で阻まれてしまう。そして、星はどんどん傷を増やしていった。















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


星「ハァ、ハァ・・くっ!」

越「もう諦めな。お前じゃ俺には勝てねぇ」

星「まだ、まだ!」

越「しつけぇな・・なら次で終わらせてやるよ」

越吉は短槍を構え直した。




















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※※※※


星side

越吉が短槍を構えた。その構えからはこれで決めるという気迫が伝わってきた。

これで良い・・。

奴は次で決めてくるだろう。伏線は充分に張れた。

私は龍牙を構えた。

私もこれで決める。取っておきの切り札をもって・・。






















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


それは以前に主と模擬戦をした時の事。

昴「俺の勝ちだな」

星「流石は主。お強いですな」

昴「星もなかなかだったぜ」

なかなか・・。

昴「どうした?」

星「いえ、私は弱いと、改めて痛感致しまして・・」

昴「弱くはないだろ。星は充分強いし、どんどん強くなっていると思うが?」

星「私も、主と初めて出会った時に比べ、心も身体も強くなったと自負しております。しかし、私の欠点はその時から依然として変わらぬままです」

昴「・・一撃の軽さ、か」

私の一撃は速さも手数もあるが、重さがない。故に怖さがない。

昴「そんなに気に病む必要はないと思うが?」

星「気に病むというものです。その軽さ故に、主や恋には槍を見切られ、捕まれ、手詰まりとされてしまう」

主や恋と戦うと、決まってそのような負け方をしてしまう。

星「私の武はこんなにも脆い」

昴「・・ま、そればかりはどうにもならない。別のもので補うしかない」

星「・・・」

やはり、それしかない、か・・。

昴「さしずめ、そんな星にはうってつけの技を1つ知っている」

星「技、ですか?」

昴「ああ。星の槍術に合った技だし、これである程度欠点も補えると思う。どうだ、覚えてみるか?」

星「・・そうであるなら、よろしくお願い致します」

私は主に師事を仰いだ。





















※※※※※※※※※※※※※※※※※
※※※※


主より授かりし技。使うならここしかあるまい。幸い、越吉は盾を正面に構え、真っ直ぐ向かって来ている。

星「行くぞ!」

私は足幅を大きくし、重心を後ろに取った。

昴『この技は全身を駆使して一撃を放つ技だ。まずは足幅を大きく広げて後ろに構え、力を溜めろ。次に地を大きく蹴って突進しろ』

私は大きく地を蹴って突進する。

昴『その際の上半身のバネ。上半身の全ての力を槍に集約する』

私は上半身を大きく使い、槍に力を集約した。

昴『そして突く際に槍をねじりこむことで更なる力が加算される。突進力、上半身の力、ねじりこむ力が全て合わさればその一撃の破壊力は凄まじい。その技の名は―――』

















―――龍牙旋迅突!!














その一撃は盾にぶつかり・・

バキィィィッ!!!

越「ぐわぁぁーっ!」

盾を貫き、越吉に突き刺さり、後ろへ弾かれた。

星「龍牙旋迅突。偶然か我が槍の名が入った技。私の取っておきだ」

越「ぐっ! ・・まさかてめえが闇雲に攻めていたのは・・」

星「ああ。我が槍にお主の盾を貫く力が無いと思わせる為の伏線だ。この技は破壊力は類を見ないが、予備動作が大きすぎる故、避けられやすい事この上ないからな」

更に言えば外すともはや無防備状態になってしまう為、迂濶に撃てない。

越「くそ! 傷と引き換えにしての一撃かよ。何てぶっ飛んだ考えだよ」

星「肉を切らせて骨を断つ。だが咄嗟に致命傷を避けたお主も流石だ」

越「へっ! 伊達に五胡の将をやってんじゃねぇんだよ!」

越吉は短槍を拾い、立ち上がった。

星「盾を失い、決して軽くはない傷を負った貴様に、もはや勝ち目はない」

越「てめえの傷も軽くはねぇだろ。俺はまだ負けてねぇ」

ふっ、やはりこやつは強いな。

星「ならば・・」

越「行くぞ・・」

再度私は越吉に飛び掛かった。





















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※※※※


愛紗side

私は越吉を星に任せ、鈴々のもとへやってきた。

愛「鈴々、無事か!?」

鈴「愛紗! 鈴々は全然平気なのだ!」

鈴々は立ち上がった。

?「援軍か」

目の前には私と似た武器を持った女がいた。

愛「我が名は関羽、字は雲長」

徹「私は徹里吉。五胡の四の将だ」

四の将・・。ならばこやつはさっきの奴より・・。

鈴「何かこいつやりずらいのだ。まるで最近の愛紗みたいなのだ」

最近の私?

愛「鈴々、まずは私が行かせてもらう」

私は前に出て青竜刀を構え、心を鎮め、徹里吉の心を探ろうと試みた。

・・・・読めない。以前に戦った楽進は手に取るように心が読めたが、奴の心は読めない。というより、奴も同じようにして私の心を探っているのか。

愛「そうか。奴も私と同じ、柔の武を使うのか」

どおりで鈴々が簡単にあしらわれる訳だ。

徹「来ないのか?」

柔の武を相手に先手を取るのは危険なのだが・・。

愛「では行かせてもらうぞ!」

私は徹里吉に飛び掛かった。

ガキン!!!

私の青竜刀を奴はいなす。

徹「ふっ!」

徹里吉がその隙を突いて得物を振るった。

愛「はっ!」

ギィン!!!

同じように私は奴の得物をいなした。

ギィン! ガキン! ギン! ガキン!

お互いがお互いの得物を流しながら攻撃を加えていく。

愛「はぁ!」

私は青竜刀を振り下ろした。

ガキン!!!

奴は自身の得物の中央で私の青竜刀を受け止め、それを押し出すと刃のついていない方の先を私に振るった。

愛「ちぃ!」

私は後ろへ飛び、それを避けた。

強い。何より柔の武と戦うのは張任殿以来だ。しかしあの時はまだ柔の武は会得していなかった。

徹「1つ尋ねる」

愛「何だ?」

徹「お前のその武、最近になって会得したものではないのか?」

愛「・・だとしたら何だと言うのだ?」

徹「だとするなら貴様に勝ち目は無い。付け焼き刃の武で敵う程、私は甘くない」

愛「・・・」

奴の言うことは決して侮りでもなければ驕りでもない。事実、先ほどから私は後手後手に回されている。

愛「・・確かに私はこの武を最近になって会得した。貴様に比べ、練度はいくらか劣るだろう。だが私はお前以上の熟練の武を持った人を知っている。練度では劣っていようとも経験では負けん!」

徹「そうか、ならば新たに経験させてやろう。更なる上の武を」

愛「経験させて見ろ!」

私は青竜刀を構え直し、徹里吉に再度飛び掛かった。

ギィン!!!

徹「ふん!」

徹里吉が得物を振るう。

ブォン!!!

私はそれを避ける。

確かに奴は張任殿より力も速さもある。だが張任殿のような強かさや駆け引きはない。ならばやりようはある。

愛「はぁ!」

ガキン!!!

私の一撃を徹里吉は止める。

愛「まだまだ!」

私は連続して青竜刀を振るい続けた。

ブォン! ブォン! ブォン! ブォン!

だが私の攻撃は全て避けられていく。

くっ、当たらない! 全て紙一重で避けられてしまう。間合いが僅かに遠い、もう一歩踏み込まなければ。

一歩踏み出したその時・・。

ガツッ!!!

愛「なっ!」

私が一歩踏み出すと、奴は私の足を踏み、動きを封じた。

徹「捉えた」

そう呟くと奴は得物を短く持ち換え、斬撃を振るった。

愛「しまっ・・!」

鈴「鈴々を忘れてもらったら困るのだ!」

徹「ちっ。」

ドゴォォン!!!

鈴々の蛇矛が地に突き刺さる。徹里吉はそれをいち早く察知し後ろへと退いた。

徹「そういえば童(わっぱ)がいたのだったな」

鈴「う〜、鈴々は子供じゃないのだ!」

ぷぅっと頬を膨らませる鈴々。

愛「すまない。助かった、鈴々」

鈴「えっへん、なのだ!」

徹「ちょうど良い。2人まとめて相手になろう」

鈴「う〜、鈴々達の事馬鹿にしてるのだ!」

愛「決して驕りではない、奴はそれだけの実力を持っている」

鈴「分かってるのだ!」

愛「では・・」

私と鈴々が同時に構える。

愛「行くぞ!」

鈴「合点!」

同時に徹里吉に向かった。





















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※※※※


徹里吉side

徹「・・・」

関羽と張飛が同時に向かってきた。

鈴「にゃにゃーっ!」

張飛が先に来た。

こいつの心は単純だな。

ギィン!!!

徹「ぐっ!」

だが力だけは規格外だ。

愛「こっちにもいるぞ!」

私は張飛をはね除け、関羽の一撃に備える。

こいつも私と似た戦い方をするようだが、まだ甘い。心が消しきれていない。

私は自身の得物を回転させて弾いた。

ガキン!!!

徹「ぬるい」

そのまま関羽に蹴りを入れる。

愛「くっ!」

関羽は何とか防いだものの弾かれた。

鈴「愛紗ー! このーっ!」

再び張飛が向かってくる。

徹「軌道が丸見えだ。それでは・・っ!?」

ドゴォォン!!!

私は張飛の一撃を流さずに避けた。

この童の一撃、今速さが増した・・。

愛「まだまだ!」

次に関羽が再度向かってきた。

徹「っ!?」

さっきまで微かに見えていた心が見えない。

ブォン! ガキン!!!

くっ! 未熟故にこの戦いの最中にまた熟練したとでも言うのか・・。

徹「はっ!」

私は関羽を弾き、距離を取る。

徹「・・・」

関羽は戦いの最中に武を熟練させていっている。張飛は関羽に触発され、不安定な実力を発揮し始めた。

愛「・・・」

鈴「・・・」

2人の目、とても強い目だ。それに2人の一撃からはとても強い意思を、想いを感じる。

徹「更にもう1つ尋ねる」

愛「?」

鈴「にゃ?」

徹「お前達は何のためにその武を振るう?」

愛「我が武は主の理想を叶える為にある」

鈴「そうなのだ! 戦争を終わらせて、皆が笑って暮らせる世にするのだ!」

徹「なるほど・・」

その主と言うのは随分と夢想家だな。前王劉豹に良く似ている。だが・・良い主なのだろう。

徹「そうか・・」

この者達は、強き意思のもとに集まり、戦っている。

徹「・・・興が削がれた」

私は踵を返した。

愛「何処へ行く!」

徹「私は退かせてもらう」

鈴「? どういうことなのだ?」

徹「私は退く。それだけだ。・・・越吉! 私は退くぞ! 後は好きにしろ!」

私はそれだけ告げると、戦場を後にした。

















・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


徹「・・・」

越「姉さーん!」

越吉が後ろから走ってきた。

徹「随分派手にやられたな」

越吉は腕から血を流していた。

越「ヘマしただけだよ! そんなことより、どうして退くんだよ!」

徹「・・我らの行いに疑問が生じてしまった」

越「疑問?」

徹「私は五胡の民を守る為には漢の国を侵略し、豊かな領土を得る事こそ唯一の方法だと考えた。だが、この国の者を見て、そして、前王劉豹の理想を貫こうとする姜維を見て、我らの行い以外にも道があるのかもしれない、という考えに至ってしまった」

越「姉さん・・」

徹「前王劉豹が提示した五胡の国を救う為の方策。あれなら五胡の国を救えるかもしれないな」

越「はぁ!? 姉さんあんだけ否定してたじゃんか!」

徹「ああ。正直、不可能だと思ったからな。刹那の奴に至っては世迷い言と吐き捨ていたな。だが、可能かもしれない。今のこの国の指導者となら、劉豹殿の掲げた理想を叶える事が」

越「ん〜、難しい事は分かんねぇけど、姉さんがそういうならそうなのかもな」

相変わらずな考えだな。

徹「曹魏と孫呉。奴らが援軍に来た事から、刹那と羅鬼は死んだか・・」

越「・・だろうな」

刹那も羅鬼も、投降など決してしない。指一本動く限り戦うだろう。

徹「羅鬼はどうでも良いが、刹那の死は惜しいな」

越「・・ああ」

刹那が1番五胡の未来を憂いていた。若干考えが過激ではあったが・・。羅鬼の事はどうでも良い。むしろ死んで精々している。

徹「此度の戦、奴らの勝利だろう。だが、最後に勝利するのは、刃様だろう」

越「どういう事だ?」

徹「刃様の力、あれは異常過ぎる。五胡最強の劉豹殿を歯牙にもかけなかったのだから。もし、刃様がこの国を滅ぼした後、刃様は五胡の国を滅ぼすだろう」

越「!?」

徹「刹那は刃様に心酔していたが、私には刃様が五胡の国の為に戦を起こしたとは思えない」

越「なら何で・・」

徹「恐らくだが、あの方が求めているのは無。全てを奪い尽くし、壊し尽くし、殺し尽くした先にある無」

越「・・・」

徹「刃様が認めた唯一の存在の御剣昴。彼の者に期待するしかないだろうな」

越「御剣昴、か」

敵方に希望を託すなど、皮肉話だな。

徹「帰るぞ、我らの国に」

越「応っ!」



















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※※※※


第三者side

曹魏と孫呉。五胡の穏健派が参戦し、更に四の将、徹里吉と五の将、越吉が撤退したことにより、戦況は完全に三国連合の優勢となった。戦場は敵味方が入り乱れ、戦は終局へと向かい始めた・・。











続く

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