プロローグ『光』
ある名も無き世界のとある街
その街は数日前まで多くの人々で賑わい、とても美しい街並みを誇っていたが今ではそのような街並みを誇っていたとは思えないほどにほとんどの建物は崩れ去り廃墟と化してしまい、あたりには恐ろしいほどの死臭が漂っていて、空を覆いつくす黒雲が大粒の雨を降らせていた。
そんな街のほぼ中心部で1人の少女が全身傷だらけになりながら空を見上げる形で倒れていた。
「あー、流石にもう体が動きませんね。この世界での生活もこれで終わりですか」
そうつぶやく少女の周りには異形と呼ぶに相応しい怪物の死体が多数横たわっていた。
しかしながらそこには怪物の血だけではなく彼女自身の血も大量に流れ出していて、それは素人の目から見ても少女がもう助からないことが分かるほどであった。
「まあ、悔いが残らないといえば嘘になりますが、あの子は逃げられたみたいですし私は満足ですよ。それに、この世界がどうなるかは後はあなた達しだいですから精々頑張ってくださいね?怖くて逃げ出したへたれな勇者様?」
そう語りながら少女は自分の体がどんどん冷たくなり動かなくなっていく感覚を感じていく。
しかし、少女にとって死ぬことは初めてではない。
残念なことだが彼女はは今までに数え切れないほどの世界を死ぬたびに渡り歩いてきた……それこそ普通の人が経験すれば心が折れ絶望してしまうほどの回数を(具体的には億を軽く超えるほどに)。
しかし、彼女は何度転生を繰り返そうとも世界に拒絶されようともあきらめることはしない。
その胸にはいつも希望を宿している。
その希望がある限り彼女は絶対に絶望はしないだろう。
「それに彼女とも約束しましたからね。彼女を…そして、あの人を救うためにも絶対…あきらめ…ない…と……」
そう語っていくうちに彼女のの瞳からは光が無くなっていき体からも力が抜けていく。
そんな彼女が自らの命が完全に失われる最後の瞬間にその目に移した光景は………自らが身を挺して守り逃がしたはずの少女が泣きながらこちらに向かってくる姿であった。
「…………ぁ……」
その光景を最後に目に焼き付けながら最後の力を振り絞り少女に向けて笑いかけながら……彼女はその世界での短い生涯に幕を下ろした。
そんな彼女が次に目を覚ました時その目に飛び込んできたものは……
すべてが真っ白な空間と170cmくらいで長い金髪の女性の姿だった。
「やっと起きましたか」
「(え?なにこのデジャブ?)」