小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 ――西暦2803年:アメリカ・ニューヨーク・自由の女神像跡地


 崩壊した女神像と瓦礫の山。
 かつて『世界の中心』とまで言われた面影は既に無い。
 其処に黒髪黒目の青年と、全身が銀色の明らかに人で無い存在が居る。

 「漸く辿り着いたぞ…運命の輪!貴様が世界崩壊の…人類滅亡の元凶だったんだな…」

 「ナラバ如何スル?」

 「決まってるだろ…貴様を消し去るまでだ。」

 瞬間、青年の姿が黒髪黒目から銀髪蒼眼へと変る。

 「悪いが本気ださせてもらう…!」

 「ソノ姿…貴様モ人デハ無カッタカ…!」

 そして戦いが始まった。









 ネギま Story Of XX 1時間目
 『滅びた世界から…』









 戦いは最初から青年が圧倒した。
 運命の輪と呼ばれた存在の攻撃は1発たりとも青年に絣もしない。
 反対に青年の攻撃は着実に運命の輪に対してダメージを与えて行く。

 「馬鹿ナ…コンナ…コンナ事ガァァァ!!」

 「…憐れだな。」

 半狂乱の運命の輪に対して青年は心底哀れみを込めて言う。

 「何ダト!?」

 「己を生み出した実験の全容くらい知っとけよ…」

 たった一言、その一言が重要だった。

 「…!ソンナ貴様ハマサカ…私以外デ唯一ノ成功例…XX(サイ・クロス)カ!!」

 「XX(サイ・クロス)…違うな。俺はXX(ダブルエックス)!究極の戦士『XX(ダブルエックス)』氷薙稼津斗だ!!」

 「オノレェェェェ!!」

 運命の輪に多大な魔力が集結して行く。
 逆転を狙った大技と言ったところだろうか?

 「分からない奴だな、お前じゃ俺には勝てないんだ…どうやったってな。」

 青年…稼津斗の両手にも膨大な『気』が収束する。

 「真ノ支配者ハコノ運命ノ輪ダ!消エ去レ氷薙稼津斗ォォォォ!!」

 「消えるのは貴様の方だ!あの世へ送ってやる!」

 収束した『気』が臨海に達する。

 「虚空裂風穿…フル・パワーだ!!」

 稼津斗の放った最大の一撃は、運命の輪の攻撃を容易く飲み込み、一直線に進む。

 「これで、最後だぁぁぁぁ!!」

 裂帛の気合と共に迫る気の奔流はいとも簡単に運命の輪を細胞レベルで消滅させた。
 其処に残ったのは稼津斗のみ。

 「此れで化け物共は消滅か…………ん?」

 何処か違和感を感じ、周囲を見渡し…そして見つけた。
 女神像の台座付近に設置された稼動している不可思議な機械を。

 「!此れは…転移魔法?…アレはまさか次元転送機なのか?」

 稼動実験中だったのだろう。
 其れの機動は既に止まらず、稼津斗の転移が開始される。

 「ち…まぁ良いか。こんな世界に未練は無いし…せめて此処よりも幾分マシである事を願うぜ…」

 直後、稼津斗の姿はその場から消え去り…




 ――ガァァァン!!




 無理な稼動だったのだろう。
 次元転送機は爆破・炎上し消滅した。








 ――――――








 ――西暦2003年・埼玉県麻帆良市・麻帆良学園都市周辺



 「…転送完了か?」

 如何やらビルの屋上に転送されたようだ。
 誰かに見られる可能性が低い場所に転送されたのは幸運だったと言える。

 「人の『気』…何処だ此処?……取り合えず情報収集と行きたいが…」
 ――この格好じゃ無理だよなぁ…

 近くに設置されている金属製の給水タンクに己の姿を移して1人ゴチル。
 と言うのも今の稼津斗は古びてところどころ破けている黒のGパンとTシャツにこれまたボロボロの白の革ジャン。
 後はオープンフィンガーのレザー・グローブと外套代わりに羽織っている年季の入ったボロ布。
 おまけにあちこちが埃と血で汚れている、如何見たって不審人物である。

 「取り合えず…っと。」

 飛んできた紙切れをジャンプして掴む。
 如何やらそれは読み捨てられた新聞の切れ端のようだ。

 「日付くらいは分かるだろう。えっと……2003年3月28日…800年前だと!?」
 ――過去に遡ったとしたら、相当に飛ばされたな…俺まだ人間じゃないか。…ん?

 「この気配…1人は人間だが残りは…ふっ、何か分かるかもしれないし行ってみるか!」

 気を解放すると、そのまま中空へと舞い上がり物凄いスピードで移動を開始した。
 目指すは一際目立つ巨大な木。
 その周辺の雑木林。








 ――――――








 「く…なんて数だ!」

 稼津斗が気付く数分前、その場所では1人の少女が異形を相手に戦っていた。
 長身に褐色の肌が特徴的な少女――龍宮真名は既に30以上の異形を葬り去っていた。
 だが、それでも次から次へと留まる事無く異形は姿を現し襲い掛かってくる。

 真名の実力を持ってすれば例え怪我をする事はあっても負ける事は無い相手。
 それでも如何せん数が多すぎる。

 「刹那と別行動を取ったのが裏目に出たか…」

 手にしたハンドガンのトリガーを絞りながら己の迂闊さを呪う。
 それでも集中力は乱れず、ハンドガンから銃声が発せられるたび異形が消えていく…が!

 「…ついてないな、ジャムったか!」

 休み無しの連続使用が祟ったのだろう、ハンドガンが動作不良(ジャム)を起こし使用不能になってしまう。
 ハンドガンは残り1つ。
 ライフルも持っては来ているがこの状況では如何せん使い勝手が悪い。

 と…


 「シャラァァァァァ!!」


 気合一閃。
 強烈な飛び蹴りが異形を粉砕した。
 言うまでも無く此処に向かっていた稼津斗である。

 「化け物は夜に出るものだ…オイ、大丈夫か?」

 真名は突然の乱入者に驚く物の、すぐに平静を取り戻す。
 流石はプロフェッショナル。

 「あぁ、大丈夫だ。貴方は…」

 「其れは後でな。先ずは化け物退治だ。」

 「確かに…貴方の言う通りだな。」

 「ふ…行くぜ!!」


 其処から先は圧巻の一言に尽きる。
 先ず、稼津斗が自分を中心に『気』で衝撃波を発生させる。
 此れで相当の数の異形が消滅する訳だが、其れから外れた奴は真名が的確に銃器で止めを刺す。
 先程の数倍のスピードで異形が消滅していく。

 そして2分後。


 「此れで終わりだ…羅刹爪!」


 稼津斗の放った強烈な鎌状の気弾が残った数体の異形を消滅させた。

 「強いな。」

 「結構な修羅場くぐって来たからな。…時に、此処は何処だ?」

 唐突な質問に面食らうが、

 「何処って…埼玉県の麻帆良市だが?」

 冷静に返す。

 「…埼玉県?…此れは相当遠いな…2時間ぐらいあれば大阪まで行けるか?」

 「大阪に行くのか?東京行きの電車は今日はもう無いぞ?」

 「大丈夫だ飛んで行く。」

 そう言うと、稼津斗はその場から浮き上がる。

 「さっきの戦闘でも思ってたが貴方は魔法が使えるのか?」

 「魔法じゃない気孔術の一種さ。俺は魔法が使えない。」

 それだけ言うと稼津斗は即行でその場から飛び去ってしまった。
 残された真名はしばし呆然とする。

 「…まるで風のような人だな…凄い強さだった…」
 ――もう1度会えるだろうか?

 「!!何を考えてるんだ私は…?」

 浮かんだ思考を振り払う。

 「学園長に如何報告しようか…」

 そしてこの後の処理に頭を悩ますのだった。
 だが、それでも圧倒的強さを見せた稼津斗の姿は真名の頭から離れなかった…








 ――――――








 ――大阪府江坂市



 「ま、大体予想はしてたけどな…」

 記憶を頼りに辿り着いた場所で稼津斗は誰に言う訳でもなく呟いた。
 己の記憶に有る『氷薙家』があった場所には待ったく別の人物の住宅が建っている。

 「親父達の『気』はおろか、知ってる人の気配を感じない…完全な異世界と言う事か…」
 ――如何したモンか…そう言えば…


 先程のことを思い出す。


 ――あの馬鹿でかい木は一体何なんだ?とてつもない『魔力』を感じたが…


 「ふぅ…当ても無いし、もう一度あそこに行って見るか。」

 再び気を解放し、再度麻帆良に向けて飛び立って行った。








 ――――――








 ――麻帆良学園・学園長室


 真名は其処で学園長・近衛近右衛門に先刻の事を報告していた。


 「成程のう…」

 「加えて彼の姿を見る限り、既に何者かと戦闘を行った後だと思います。でなければあの埃と血痕は説明がつかない。」

 「うぅむ…益々謎じゃ。君と刹那君が相手にしていた以外には異形は居なかったはずじゃが、一体何と戦っておったのか…」

 余りにも情報が少なすぎる。
 分かっているのは、圧倒的な戦闘力を持った超一流の『気』の使い手であるということだけ。
 此れだけではどうしようもない。

 「すまなかったのう。ご苦労じゃった。」

 「はい、失礼します。」

 一礼をし、真名は部屋から出て行く。


 ――彼の力を知って学園長が放っておく事はありえないな…


 1人そんなことを考えていた。
 そして、真名自身も気付いてはいないだろうがその顔には笑みが浮かんでいた。








 ――――――








 ――麻帆良学園都市周辺・上空


 既に日は沈み、夜の闇が辺りを覆っている。
 満月が浮かぶ夜空から、稼津斗は眼下の麻帆良学園を見つめていた。
 この闇の中ではあの巨大な木は一掃その存在を際だ出せているように感じる。


 「やっぱりとんでもない魔力だなあの木は。となると…」
 ――昼間の化け物共はアレの魔力に惹かれてきたのか?


 経験上理性無き異形が、より強い力に引き寄せられる事を稼津斗は知っている。
 だからこそこの結論に辿り着くのだが…


 「…考えても仕方が無いか。取り合えず寝床探さないとな。」


 そろそろ4月とは言え夜はまだ肌寒い。
 何処かで暖を取りたいものである。


 気を操り、ゆっくりと降下して行く。
 着陸地点は、さっき上空から見つけた焚き火をしている場所。
 巧く行けば暖くらいは取れるかもしれない。


 「…其処にいるんだろ?出て来なよ。」

 着地と同時に稼津斗は背後の林に向かって話しかける。

 「分かっていたでござるか。気配は完璧に消していたはずでござるが…」

 現れたのは長身と細い目が特徴的な少女。

 「気配は消えてたさ。でも、俺の索敵範囲内に入ってたからな。分かっちまった。」

 「索敵範囲内でござるか。」

 「そ。最大半径1kmまでな。その範囲内に入れば誰であろうと感知できる。」

 「其れは凄いでござるな。」

 感心する少女。

 「時にこのテントと焚き火は君のか?だったら悪いが暖を取らせてくれないか?流石に寒くて敵わん。」

 「あいあい、構わないでござるよ。」

 「悪いな。っと名乗らないのは流石に悪いよな。俺は氷薙稼津斗、君は?」

 「拙者は長瀬楓でござる。」

 少女――楓はそう言って微笑む。

 「それにしても大分汚れているでござるな…良ければ風呂は如何でござる?」

 「ん〜、実に素晴らしい提案なんだが、生憎着替えが無くてな。風呂は諦めるしかなさそうだ。」

 「着替えが無いのでは仕方無いでござるな。」

 「贅沢は言えないさ。風呂は残念だけど今日は久しぶりに…安心して…眠れ…そうだ…」

 それだけ言うと稼津斗はぱったりと動かなくなる。

 「稼津斗殿?」

 楓も何事かと顔を覗き込むが…

 「Zzz…」

 「ね、眠ってるでござるか…恐るべき寝つきの良さ。疲れていたのかな…」

 思わず、言葉遣いが標準語になる。
 ホンの少ししか言葉は交わしていない。
 だが、洞察力に優れる楓は稼津斗の何処か気さくな性格を感じ取っていた。

 「このままだと風邪を引くでござる。」

 テントの中から毛布を取り出すと、其れを稼津斗にかけ、楓はテントの中に入って行った…


















 To Be Continued…

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