小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 小太郎を撃退したネギ一行は関西呪術協会総本山に到着していた。

 「あ、来たみたい!」

 直ぐには中に入らず入り口で待っていたのだが、明日菜が何かを見つけ、其れに向かって手を振る。

 「ふん、やっと来たか。」

 相変わらずの不遜且つ尊大な態度のエヴァの視線の先には刹那と木乃香を先頭にやってきた稼津斗一行。

 手を振る明日菜に稼津斗もまた手を軽く上げて応える。

 親書組と護衛組、今此処に揃っていざ総本山へ!









 ネギま Story Of XX 14時間目
 『襲撃!総本山!!』









 「頭を使って勝ったみたいだな?…此の傷は其の代償だが計算通りと言ったところか?」

 ネギの頭を撫ぜ、同時に額に出来た傷をみてそう推測する。

 「わ、分るの!?」

 「分るさ。其の傷は流血するために態と攻撃を喰らって付けさせたんだろ?
  後は派手に血を流しつつも点をずらしてダメージを抑え、相手の大振りに合わせてのカウンターと言ったところか?」

 最早誰も何も言わない。
 僅かな傷から此処まで推測するとなると、達人通り越して超人の域である。
 が、取り合えず聞いてみる…代表して明日菜が。

 「態とって…何のためによ?」

 「相手の隙を誘うのが一番大きい。自分の攻撃で怪我させて更に其の相手が防戦一方となれば誰だって攻撃が効いたと思うだろ?
  そうなると総じて早期決着を狙って攻撃は大雑把で雑になりやすい。特に『自分の方が上』と思っていればなおさらな。」

 説明する稼津斗だが其処には注意も含まれている。
 『どんな時でも決して油断と慢心だけはするな』と言う注意が。

 「如何なる状況でも慢心と油断だけはするなと言うことだ。さて、全員揃ったんだそろそろ行くとしよう。」

 エヴァが纏めにかかり、総本山の門をくぐる。

 「キティ!?ちょ、敵の総本山に…」

 余りにも大胆不敵なエヴァに明日菜は焦るが…

 「「「「「「おかえりなさいませ木之香お嬢様〜〜〜」」」」」」

 敵意皆無の巫女集団が一行を出迎えた。

 「「「「「「「は?」」」」」」」
 「此処が近衛嬢の実家なら、まぁ当然の対応か。」

 突然の状況に付いて行けてない一行(真名と楓を除く稼津斗の従者とネギ&明日菜)だが稼津斗はさも当然と言わんばかり。

 「と言うか貴様等其れ位察しろ。」
 「何にせよ敵意は無いんだ、上がるとしよう。」

 そのまま一行は巫女達に案内されるまま屋敷の大広間へ。
 其の途中木之香は明日菜に実家がこんな所だという事に引いたかと言うことを心配していたが、明日菜は特に気にはしていなかった。
 まぁあやかがアレだから当然だが…








 で、広間で待つこと十数分。


 「お待たせしました。ようこそ木乃香のクラスメイトの皆さん。そして担任のネギ先生、副担任の稼津斗先生。」

 現れたのは細身の中年男性。
 そして、

 「ご苦労様です〜。そしておかえりなさいませこのかお嬢様〜。そして始めまして〜天ヶ崎千草いいます、以後お見知りおきを〜」

 眼鏡が知的な感じを思わせる京美人とも言うべき女性。


 「ネギ、良く覚えておけ。あれが『真』の京美人と言うものだ。」
 「うん、覚えておくよ稼津斗。」

 メンバーの中で唯一の男性である教師2名は如何でも良い事を話していた。


 「久しぶりや、お父様〜。」
 「ははは、これこれ木乃香…」

 其れを尻目に父親である長――近衛詠春に抱きつく木乃香と、

 「し、渋くてステキかも…!」

 小父様センサー(?)に触れた明日菜が…(汗)


 「此の人が西の長…」
 「顔色悪いでござる。」
 「痩せずぎじゃないか?」
 「てかこのかのお父さんて…」
 「意外すぎだよ。」
 「スクープ…にはならないねこりゃ。」
 「和美さん流石に其れは無理です。」


 「詠春め、随分と痩せたな?」
 「『長』と言う立場上の精神的ストレスかと思われます。」
 「明日菜さん…貴女の趣味は相変わらず理解に苦しみますわ…」
 「委員長…貴様が其れを言うか?」


 …………(滝汗)


 ともあれ、何時までもこうはしていられないので、

 「あの、此れを。東の長・近衛近右衛門より西の長への親書です。お受け取り下さい。」

 ネギは親書を詠春に渡す。

 「ふむ…」

 受け取った詠春は中身を見て苦笑い。




 ――下の者を抑えられんとはなんじゃい!しっかりせんか婿殿!!


 ――相変わらずお義父さんは手厳しい…
 「分りました。東の長の意を組み、東西の蟠りの解消に尽力すると伝えてください。
  任務御苦労、ネギ・スプリングフィールド君。そして、氷薙稼津斗君。」


 親書の受け渡しは成功。
 其れを労う詠春だが、稼津斗は何処か浮かない表情…と言うよりも天ヶ崎千草を見ているように思う。

 「…のどか、悪いが。」
 「!あ、はい。このかさん、良ければ屋敷の中案内してくれませんか?広くて迷いそうです。」

 即座に其の意を読み取り、木之香をこの場から離そうとする。

 「えぇよ。ほな行こか?」

 木之香もまた生来の性格ゆえかあっさりと承諾。


 結果この場には稼津斗、ネギ、エヴァ、刹那と詠春、千草のみが残る事と成る。

 「木乃香をこの場から離したという事は…」
 「あぁ『こっち側』の話だ。実は、初日に刺客と思われる連中からの襲撃を受け近衛嬢が攫われた。
  結果だけ言うなら近衛嬢の奪還・保護には成功したが、相手の黒幕…と言うか今回の件の首謀者と思われる女が言っていたんだ。」

 「其の者は師匠(せんせい)に『腰抜けは黙って自分のやる事も見ていろ』と伝えろと…」

 其れを聞いた詠春と千草は顔を見合わせる。
 どうやら思い当たる節があるらしい。

 「千草さん…」
 「えぇ、間違い無く『彼女』でっしゃろうな。」

 「師匠(せんせい)『彼女』とは…?」

 「『天ヶ崎しずる』…ウチの叔母や。」

 「「「「!!!!」」」」

 「千草さんは先の大戦の際に両親を亡くされています。」
 「せやけどそれはしょうの無いことや。戦争やからな。オトンもオカンもウチに復讐なんぞ望んどらん。
  でも、叔母はダメやったみたやなぁ…自分の姉の仇である西洋魔術師に一泡ふかせんと気が済まんのやろな…」

 「それでこのかの魔力を利用か…フン、三流が!」
 「憎しみだけで事を構えては其れは只の破壊者だと言う事に気付いていないのか?」

 敵の黒幕――天ヶ崎しずるの事を聞き、しかし稼津斗とエヴァは同情など無い。

 稼津斗もエヴァも憎しみだけで戦っては無意味だということを知っている。
 『負の感情』は時として思いもよらない力を引き出すが、其れを振るった後に残るのは虚しさのみ。
 残るのは『負の連鎖』のみである。


 「彼女でしたか…分りました此方で対処しましょう。重ね重ねご苦労様でした。
  今日は此方に泊まると良いでしょう。ホテルの方に身代わりをお願いできますか千草さん。」
 「はいな。ほな、皆さんこちらへ…」

 其の言葉を受け大広間へ、



 そんな中、詠春は稼津斗を見ていた。



 ――成程、あの若さで相当な修羅場を潜って来たと見える。それも私やナギの様に仲間とではなくたった1人で。


 そう、印象を抱く詠春に稼津斗は声を掛ける

 「そうだ長殿、連中の事なんだが首謀者の女なら問題無く確保できるだろうが…護衛の女剣士と白髪の少年魔法使いには気を付けてくれ。
  剣士の方は『快楽殺人者』とも言うべき殺人狂。魔法使いの方は…如何にも得体が知れない。」

 「ふむ…分りました用心しておきましょう。」

 「そうして欲しい。今日は、未だ何か起こるだろうからな…」


 数時間後、この予感は現実の物となる。








 ――――――








 「些か無粋すぎじゃ無いか?」

 現在大広間では盛大な宴が行われている。
 表向きは木乃香の帰郷(?)を祝ってと成ってはいるが、実際は親書と護衛の労いの意味が強い。
 が、稼津斗と…

 「それとも昼間の件で相当に焦ったか、若造?」

 エヴァ、は其の大広間ではなく、広い庭の一角に居た。
 そして2人の目の前には、

 「僕は兎も角しずるさんは焦ってるね。まぁ君達は明日には麻帆良に帰ってしまうんだから仕方ないとも思うけど…」

 あの白髪の少年。
 この総本山の結界を突破して侵入してきた辺り相当な使い手である。
 其れも稼津斗とエヴァ以外には気付かれずに…

 「御喋りは不要だ…来ないのか?」
 「私も稼津斗も態々貴様の稚拙な罠に掛かってやったのだ、がっかりさせてくれるなよ?」

 少年の顔が(恐ろしく分り辛いが)歪む。

 「…僕が罠を張ってるのに気付いてたのに来たの?余程自身があるのか、それとも馬鹿なのか…
  君達なら前者の方が強そうだけど…気付いてるなら無用だね。精々『遅れないように』ね。」

 それだけ言うと少年は消える…と同時に景色が一変する。


 「結界か…在り来りだな。」

 「だが、流石に唯の結界じゃあ無いな。俺やお前が使ってる特殊空間の逆…結界内の1分が外では10分とてとこだな。」

 「其れは又…で、解けるか?」

 「厄介な結界だが、お前に掛けられてた呪いと比べれば如何と言うことは無い。簡単に解けるさ…こんな風にな。」

 百聞はなんとやら。
 結界の壁(?)に手を当てただけで簡単に解除してしてしまう。

 「反則此処に極まれりだな貴様は…と、成程此処での連中では相手にならん位の実力者か…」


 結界の外で見つけた最初の人物は…石像。
 だが、其れは昼間出迎えてくれた巫女の1人。
 つまりは『石化』させられたのだ、恐らくは白髪の少年によって。

 「ぼーや達は無事な様だが、このかは攫われたか。稼津斗、貴様の従者達はどうなった?」

 「全員無事だ。今念話で確認を取った…だが、興味本位で此処に近づいてた馬鹿者2人の内1人が石に成ったらしい。」

 「はぁ?誰だ其の愚か者は?」

 「早乙女と綾瀬。石になったのは早乙女の方。で、楓の携帯に綾瀬から救援要請。」

 「阿呆共が…『好奇心猫を殺す』と言う言葉を知らんのか…」

 「日本じゃ馴染の無いことわざだから多分知らないだろうな…と、雑談してる場合じゃない。近衛嬢が敵の手に落ちたとなると…」

 「予断は許さんか…」

 「和美によると敵の目的は近衛嬢の魔力を利用してこの地に封印されてる『何か』を呼び覚ますことらしい。」

 「この地に封印されていると言うと『リョウメンスクナ』か…小悪党の考えそうな事だ!」

 すぐさま稼津斗は『気』を、エヴァは『魔力』を解放しその場から飛び立った。








 ――――――








 其の頃…


 「リミット・ブレイク フル・スロットル ハイテンション…殲滅魔砲『月光の殲滅者(ルナライト・ブレイカー)』!!…あぁもう限が無い!」
 「このかさんの魔力つかって手当たり次第…『虚空穿』!…召喚したみたいですから。」
 「足止めも楽じゃないかな?」
 「いっそウチのアーティファクトで瓶詰めの『核』でも出して吹っ飛ばしたろか?」
 「其れも良い手かもしれないな…」
 「ちょいと待ちなよ、んな事したら京都が無くなるでしょうが!…和美謹製六拾七式・煌煌流星!!」


 不穏な発言が飛び出すほどに大混戦となっていた。
 楓を除く稼津斗の従者達は各々がアーティファクトを展開し魔法や気功術を駆使して召喚された妖魔を蹴散らし蹂躙していた。
 元々の戦闘力が段違いの上、亜子がアーティファクトから出した魔法薬で更に強くなっている超チート状態。
 それ故にまかり間違っても負けることは無いが、如何せん数が多すぎる。
 幾ら倒しても又直ぐ沸いてくる。
 戦力差は軽く見積もって1:50と言った所。


 勿論此れだけの戦力差を相手にしているのには訳がある。
 木乃香奪還へ向かったネギチームの負担を減らす為に、総合戦闘力で上回る彼女達が敵の大多数を引き付け『足止め』を買って出たのだ。



 ――皆聴こえるでござるか?ネギ坊主達は無事に突破したでござるよ。


 此処でネギチームの助太刀へ向かっていた楓から念話通信が入る。


 ――思ったより早かったじゃん?ネギ君達大丈夫なんだね?

 ――無論でござる。尤も拙者より早く助太刀が到着したようでござるが…

 ――稼津さんが来たん?

 ――いやいや、驚いた事に敵側だった少年にござる。

 ――は?何其れ。

 ――作戦の詳細は知らされてなかったのでござろうな。木之香殿を利用しようとしてるのを知って見限った様でござるな。

 ――成程…其の純粋さに漬け込まれて利用された訳か。了解だこちらも〆にかかる!

 ――直にカヅトも来るしね!

 ――あいあい、拙者も此処でもう一踏ん張りでござる!


 此れで通信を終え…

 「さぁもう『足止め』の必要は無い、思い切り行こうか!」

 真名の掛け声と共に、本気を出した史上最強の少女軍団による妖魔殲滅が始まった。


 まぁ基より数で負けているだけで戦いになどなっては居なかったのだが…








 ――――――








 さて、楓と小太郎の助太刀で妖魔軍団を突破したネギチームは天ヶ崎しずるの元へと突貫していた。

 「あかん…術式が殆ど完成しとる!」

 総本山で唯一無事だった千草が顔を歪める。

 前方の祭壇からは光が溢れ、間も無く術式が発動するだろう…スクナ復活の術式が。
 そうなれば自分達では如何にもならない。

 ならばやるべき事は一つ!
 此処まで来るのにだいぶ消耗しているがそんな事には構っていられない。


 「刹那!ありったけの力で一発かまし!坊ちゃんと仮契約した今のアンタならあそこまでの道開けるやろ!?」
 「無論です!はぁぁぁぁ…神鳴流奥義『雷鳴閃』!!」

 千草の命を受けた刹那が文字通り『全力』で攻撃を放ち、其れは護衛で付いていた妖魔を吹き飛ばし祭壇までの1本の道を作る。

 「敵戦力30%ダウン…このまま突破します。」

 それでも沸いてくる妖魔を茶々丸が機関銃で牽制し…

 「邪魔ですわ!」

 あやかが鉄扇で還して行く。
 そうして開けた道を突っ切るのはネギと明日菜。



 この突貫に焦ったのはしずるだ。
 木乃香の魔力で呼び出した妖魔がまるで相手になっていない。
 術式は完成寸前とは言え、此処で攻撃されたら堪らない。


 「千草とあのガキ共…ちぃ、新入り少し時間稼ぎ!」

 「ふぅ…仕方ないね。ま、僕も彼には興味があったし丁度良いかな…」

 白髪の少年は正面から向かってくるネギと明日菜を見据える。


 ――まさかこのまま突っ込んで接近戦を挑むつもりかい?だったらとんでもない期待はずれだよネギ君…


 其の勢いからそう考えるが…

 「召喚(エウオケム・ウォース)!ネギの従者(ミニストラエ・ネギィ)、桜咲刹那(サクラザキセトゥナ)、雪広あやか(ユキヒロアイェカ)!」

 「!!」

 予想に反して仮契約カードを使って刹那とあやかを召喚してきた。

 「油断…」
 「大敵ですわ!!」
 「吹っ飛びなさい!!」

 其の2人が背後から、ほぼ正面から明日菜の一撃が炸裂するが…

 「此れは流石に意表をつかれたよ…ま、無駄だったけど。」

 難なく障壁で防がれる。
 だが、此れも計算の内。

 「解放(エーミッタム)!魔法の射手(サギタ・マギカ) 戒めの風矢(アムール・カプトゥラエ)!」

 防御の為に一瞬で来た隙を逃さずネギの拘束魔法が少年を拘束する。

 「無詠唱で…成程遅延呪文(ディレイ・スペル)。其れを悟らせない為の布陣だったと言う訳か…」

 「基本呪文だけど脱出には数十秒かかる。それだけあれば…!」

 そのまま祭壇へと向かうが…

 「馬鹿な、お嬢様が居ない!?」
 「嘘、確かに此処に居たはずよ!?」

 先程目視した場所に木乃香の姿は無い…同様にしずるの姿も。

 「ネギ先生!!」
 「こ、此れは…!」


 其れは到底信じられないものだった。


 「一足遅かったようですなぁ…術式は完成し、儀式はたった今終わりましたえ?」

 「間に…合わんかった…」

 転移符でこの場へ移動してきた千草は思わず膝を付く。
 いや、眼前に現れた巨大な存在に千草だけでなく誰もが膝を付きそうになる。

 「二面四手の巨躯の大鬼『リョウメンスクナ』。千六百年前に打ち倒された飛騨の大鬼神や。
  ふふふ呼び出しは成功やな。」

 しずるは既に勝った気で居る…が、諦めの悪い奴は何処にでも居る。

 「ラス・テル マ・スキル マギステル!来たれ雷精(ウェニアント・スピリートゥス) 
  風の精(アエリアーレス・フルグリエンテース)!」

 「ちょ、ネギ!?アンタ消耗した状態でそんなの使ったら!」

 明日菜が叫ぶが詠唱は止まらない。

 「雷を纏いて吹きすさべ(クム・フルグラテイオーニ・フレット・テンペスタース)南洋の嵐(アウストリーナ)!」

 強大な力がネギに集約する…

 「雷の暴風(ヨウイス・テペスタース・フルグリエンス)!!」

 最大出力で今出来るネギの最強魔法がスクナに炸裂する。
 ありったけの力を込めた正に『切り札』。


 だが其れも…


 「そ、そんな…」

 スクナには丸っきり効いていない。
 直撃したにも拘らず…だ。


 「ククク…アハハハハ!どうやら万策つきたようですなぁ!?
  お嬢様の力でこいつは完全制御可能!ウチの勝ちや!!」

 更に…

 「善戦したけど残念だったね…」

 白髪の少年の拘束が解けてしまう。
 最悪な事に今の一撃でネギの魔力は空。
 おまけに妖魔相手に散々戦った後に無理して放った為に体が限界を向かえ…右腕は使い物に成らなくなっている。

 真名達が気付いて此処に来るには時間が無さ過ぎる…絶望が支配しかけたが…


 「決着には未だ早い。」
 「私の弟子と親友が世話になったな若造!」

 そう聴こえたかと思ったと同時に銀と金の閃光が少年を吹っ飛ばした。


 「キティ!」
 「カヅト!」


 現れたのはエヴァンジェリン。
 そしてXXへと変身した稼津斗。

 ギリギリで現れた最強の援軍に皆表情が明るくなる。

 「しかも稼津斗先生超サ○ヤ人状態だし!」

 「まぁこっちの方が移動も早いからな…さて、如何したものかな…」

 明日菜の一言を軽く流し目の前の巨体を見やる。
 正面から挑んでも良いが其れでは木之香が危ない。
 如何したものかと考えた矢先…


 「お嬢様は私が救い出します!私ならあの場所まで行ける。」

 意を決したように刹那が言いスクナの肩の辺りを睨み付ける。
 そして僅かに背を丸めた次の瞬間…



 ――バサァ…



 巨大な白い翼が其の背中から現れた。

 「此れが私の正体…奴等と同じ化け物です…」

 物悲しそうに言う刹那だが…


 「神楽坂よ、黒髪美少女には矢張り白い鳥の翼が似合うな。」
 「ほんと良く似合うわ。てかメッチャ綺麗。」
 「よう覚悟を決めた!誉めたるえ刹那!」

 誰も気にしちゃ居なかった。(ネギとあやかは驚いてるが…)

 「あ、あの驚かないんですか?」

 「今更だな。お前が化け物なら私は如何なる?私など真祖の吸血鬼だぞ?」
 「私はアンドロイド。」
 「完全魔法無効体質持ちの異常な体力馬鹿。」

 …化け物は他にも居た。

 「基より非常識な連中の集まりだ。お前が何者か等小さいことさ。」

 其の一言にあっけに取られてしまう。

 「まぁ此れで如何にか成る。行くぞ桜咲!お前は近衛嬢を助けることだけに専念しろ。露払いは俺がしてやる。」

 「!…はい!!」

 稼津斗の号令で全てが吹っ切れたのか暗い表情など何処へやら…刹那は翼を広げ飛び立つ。
 其れを追う様に稼津斗も飛び立つ。








 ――――――








 「おんのれぇ最後の最後で又出よったな氷薙稼津斗ぉ!おまけにあのひよっ子烏族のハーフやと!」

 スクナの肩の上でしずるは叫んだ。
 無理も無い。
 稼津斗とエヴァが現れなければこの場での勝利は略確定していたのだ。
 だが現実にはどうだ?

 現れた2人に新入りは吹き飛ばされ、あまつさえ烏族のハーフだったひよっ子がこちらへ猛スピードで向かってきている。
 妖魔を迎撃に向かわせても其れは全て稼津斗の気弾で粉砕されてしまう。


 「天ヶ崎しずる、お嬢様を返して貰うぞ!!」

 「な、嘘やろなんてスピードや!く…この距離じゃスクナの力は使えへん!」

 慌てて式神を呼ぶも…

 「邪魔だ。」

 難なく稼津斗が還してし、其の隙に木乃香を奪還し離脱する。
 其れを確認し、稼津斗は一旦スクナから距離を取る。


 「オンノレェェェ…何処までも邪魔しくさって。目に物見せてくれるわぁ!」

 しずるの怒号を受け…しかし稼津斗は冷静だった。

 「やってみろ…出来るならな。」

 それだけ言いXXの状態から更に気を高めて行く。
 火花放電は激しくなり、大気の震えも大きくなる。

 そして…


 「覇あぁぁぁぁぁぁぁ…デヤァ!!」


 轟音と共に爆発的な闘気が迸る。
 纏う稲妻は何時もの蒼ではなく眩いばかりの銀色。


 「XX銀装…久しぶりだなこの姿は。」


 静かに呟く。

 絶対強者とも言うべき銀の武闘神が京都の夜空に降臨した…

















  To Be Continued… 

-14-
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