小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 立ち昇る黒煙…
 崩れ落ちた高層ビル…
 荒れ果てた大地…
 そして灰色の空…

 「…夢か。矢張り、未だ…否、永遠に俺の記憶から消える事は無いか…」

 其れは稼津斗が元居た世界…その成れの果て。
 感傷が起きる訳ではない、只忘れられないだけだ。

 そんな景色の中に記憶に無いもの――1人の少女が佇んでいる。
 外見は明日菜に良く似ているが、その瞳には光が無い。
 言うなればまるで人形のような…

 「…彼方は誰?」

 少女が問う。

 「稼津斗…氷薙稼津斗だ。…君は?」

 稼津斗の問いに今度は少女が答える。

 「アスナ。アスナ・ウェスペーリナ・テオタナシア・エンテオフュシア…」









 ネギま Story Of XX 16時間目
 『戦い終わって何とやら』









 「…?妙な夢だな…なんなんだ一体?」

 只今AM6:00…気のせいかこの表現多いな…
 兎に角何時もと比べれば遅いとは言え、一般的には起床には早い。


 ――あの子は一体…神楽坂に良く似ていたが…
 「…考えても仕方ないか。詳しい事は麻帆良に帰ってからだな。」

 時間的に二度寝する気にはならない。
 障子を開けて廊下に出れば、庭に面した廊下は早朝の空気が肌を刺激する。
 少し温度が低めの外気は、目覚めたばかりの身体には心地良い。
 なお、ネギは未だ寝ている。

 「おはよ〜稼津斗先生。」

 「おはよう神楽坂……疲れは取れたのか?」

 「ん〜まぁね。ちょっと変な夢見て目が覚めたってのも有るけど。」

 「変な夢?」

 「なんかね、小さい私が出てきて…内容は良く覚えてないんだけど、何か自分の名前言ってた様な…確か…」

 少しばかり考えて、

 「「アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア。」」

 「え?」
 「やっぱりか。」

 明日菜は驚き、稼津斗は何処か納得顔。

 「先生、如何して?」

 「俺の夢にもその子が出てきてな。自らをそう名乗った。」
 「どゆこと?」
 「『夢の共有』だな。高い魔力が集中する場所では異なる人間が夢の一部分を共有してしまうことがあるらしい。
  特に高い力や、特別な能力を持つ者同士ほど、共有する確率は高くなる。場所と条件は…充分だ。」

 確かに。
 関西呪術協会の総本山と言う場所に、特別高い魔力を持ったネギと木之香とエヴァ+チート軍団稼津斗の従者。
 そして夢の一部を共有したのは、不死身のバグキャラと完全魔力無効体質持ち…条件ピッタリ。

 「そんな事が有るんだ?」

 「俺自身、体験したのは初めてだが…」

 「ふ〜ん…ま、いっか顔洗ってこよ。」

 単純に納得し明日菜はその場から洗面所の方へ。
 そして明日菜が向かった方を見ながら、ポツリと、


 「或いは、記憶が封印されている場合、無意識に封印されている記憶の一部が『夢』と言う形で他者に流れ込んでしまう場合だ。」
 ――詳しい事は麻帆良に帰ってからになるが…神楽坂は一体『何の記憶』を封印されているんだ…?


 疑問はあれど此処ではどうしようもない。
 取り合えず、考えるのを止め、自らも顔を洗うために洗面所へと向かった。



 尚、ハルナと夕映の2名だが、昨晩稼津斗にきっつ〜〜〜いお説教を受けた上で、一行と共に総本山に泊まった。
 特にハルナは石化させられるわ、夕映は怖い目にあうわ、2人揃って説教されるわと散々。
 まぁ、全ては自業自得である。合掌。








 ――――――








 場所と時間は移ってホテル嵐山。

 一行は総本山で朝食を終え、此れから頃を見て身代わりと入れ替わる予定だったのだが、
 身代わりが何やら問題を起こしているというのを電話で瀬流彦から聞き、急いで戻ってきたのだ。


 「むん!此れでお終いでござるかな?」
 「やね、ウチ等の身代わりは全員確保や。」

 ま、あっという間に暴走してた身代わりは到着した本人達によって沈黙。

 「うむ、此れで全部にござるよ稼津斗殿。」

 「ご苦労さん。同調・解!」

 楓から渡された札と自分と他のメンバーで集めた札の術式をいとも簡単に解除する。

 「師匠(せんせい)の掛けた術式をこうも簡単に解除するとは…」
 「せっちゃんアレって凄いん?」
 「えぇ、師匠の術式ならば仮に一流の魔法使いでも解除には苦労する筈です。其れをこうもあっさり解除するとは…」

 「ふ、奴ならば此れくらい軽いだろうよ。何せこの『闇の福音』が唯一、絶対勝てないと思った男なのだからな。
  しかし、身代わりが暴走とは…術式のレベルが高いのなら札の質が悪かったのか?詠春め…」

 「いや、術式も札の質も最高レベルだ。暴走の原因は濃密な『邪念』だな…アイツの。」

 稼津斗の視線の先では…


 「何しやがんでい!離しやがれこの狐!」
 「うっさい!」

 クスハに捕縛されたカモが燃やされてた。

 「良い感じのウェルダンだね?」
 「マナ、食べる?」
 「遠慮しておく。どちらかと言えば肉はレアの方が好きでね。」


 「てかオコジョって食べられんの?」
 「食って食えなくは無いレベルでござるかな。」
「食べたんですか!?」
 「さすが忍者や…」
「感心すんのは其処かい…」



 「カモ君…」

 「ネギ…」
 「ぼーや…」

 「「本気でアレ、イギリスに送り返した方が良いんじゃないか?」」

 稼津斗とエヴァの言葉は皆思った。
 特に明日菜は他の誰よりも思った。

 「まぁ、黒焦げになった生もの…生もの?姿焼き?どちらでも良いか。其れは放って置くとして此れから如何する?
  ネギの親父さんが一時期居たって言う場所に案内してもらうには時間があるだろ?出来なかった分の観光でもするか?」

 「その提案は素晴らしいのですが、逆に時間が足りないのでは?」

 あやかの言う事は尤もだが、其処は勿論考えている。

 「俺が瞬間移動を使える事を忘れたか?有名所のみになるが、認識障害魔法を併せて使えば誰にも怪しまれる事なく3〜4個は廻れるぞ。」

 「瞬間移動だと…貴様、昨日其れを使ったらもっと早くぼーや達の所に着けたんじゃないのか!?」

 「そう言うな。余り万能じゃないんだ俺の瞬間移動はな。特定の場所や人の気が分らないと駄目なんだ。
  昨日は場所は不明だし、白髪の奴とスクナの気が強すぎてネギや神楽坂の気を掴めなかったんだ、大目に見てくれ。」

 「ならば仕方ないが…」

 「なら良いだろう?和美は如何する?確か写真頼まれてたはずだが…」

 「大丈夫さ、アーティファクト使って写真撮ってるから。」

 容易は万全であった。

 「その準備の良さは尊敬に値するな…それじゃ全員で行くとするか。」

 ネギとエヴァで認識障害魔法を発動し、一行はその場から消えた。








 ――――――








 ――金閣寺



 「わぁ…ピカピカだ〜。」
 「生で見ると凄いわね〜。」
 「矢張り写真とは違いますわ〜。」
 「凄いなぁ〜きらきらや〜」
 「此れは復元されたものですが、鍍金とは言え略純金箔…見事なものです。」

 生で見た大迫力の金閣寺にネギ達は大興奮。

 「確かに凄いが…」
 「悪趣味だな。」

 稼津斗とエヴァの反応は今一。
 有名所だから来てみたがエヴァのお気には召さなかったようである。

 「確かに、言われてみればちょっと成金趣味っぽいかな?」
 「だとしても、此れだけのモン作れた当時の財力てすごいんとちゃう?」
 「当時は貿易で栄えてたみたいですから。」
 「ま、記念に撮っとこ♪」

 「とき何故クスハ殿は狐状態にござるか?」
 「獣娘の方が良かった?」
 「…いや、そのままで良い。」
 「誰も気にはしないとは思いますが…」







 ――三十三間堂



 沢山の千手観音が置かれている場所で自分に似ているものが1つは有ると言われている場所。
 写真撮影は出来ないので皆、大人しく鑑賞中なのだが…


 「千手観音とは言っても実際には86本しかないな…流石に1000本は作れなかったか。」

 中央に鎮座している巨大な千手観音を見て呟く。
 尤も大きいものでさえ腕の数は86本(作者調べ、数は違う可能性有り。)、小さいものはもっと少ないだろう。

 「だが、此れだけ細かいのを全部人の手で彫ったと言うのは凄いな…」
 「それだけ当時の日本人にとって『仏』と言うものが重要であったのだと思われます。」

 感心するエヴァに茶々丸が説明する。

 「でもさ〜自分に似たのなんて無いよ?」
 「あの、其れは全部人の手で創られてるから『同じものは無い』って事を言った比喩なんです。」
 「あ、そうだったの?」

 平和だ…


 さて、本当ならば後1、2個廻りたかったのだが、この三十三間堂で思いの他長居してしまったため、此処でタイムアウト。
 一行は詠春の元へ向かう事に…








 ――――――








 「お待ちしていましたよ皆さん。」

 詠春の気を探って、瞬間移動した一行の前には昨日とは違い、ジャケット姿の詠春が待っていた。

 「この奥、3階建ての建物になります〜。」

 同様に、Yシャツとスラックスと言うラフな服装の千草も。

 一行は詠春と千草の案内で件の建物へ。
 その道中…

 「時に長殿、スクナはどうなった?俺の一撃で気は完全に消え去ってたんだが?」

 「えぇ、大丈夫です。スクナの力は欠片すら感知できません。君の力で文字通り消滅したんでしょう。」

 「なら、良いさ。」

 更に、

 「長さん、小太郎君は…?」

 「それほど重くはならいでしょうがそれなりの処罰は…尤も其れもネギ君の嘆願と、昨日君達に協力したと言う事で可也厳罰されるでしょう。
  天ヶ崎しずるの方も含め、まぁその辺は私たちに任せて置いてください。」

 「其れよりも問題はあの白髪のガキだ。」

 「其れは現在調査中ですわ。」

 此れには千草が答え、其れを黙って聞くことにする。

 「名前はフェイト・アーウェルンクス。1ヶ月前イスターンブールの魔法協会から研修で日本にって事やけど、恐らく経歴については偽装やろうな。」

 「だろうな…」
 ――それにしてもフェイト…運命か。…まさかな…


 判明した名前に稼津斗は僅かに顔を歪ませる。
 フェイト――運命はかつて自分の世界で戦った最後の敵であったのだから無理も無いが…

 「さて、此処ですよネギ君。10年の間に草木が茂ってしまいましたが中は当時のままです。」

 詠春の言葉に思考の海から帰ってくる。
 到着したのは、京都には珍しい洋風の建物。
 案内されて入ってみれば…

 「「「「「「「「「「「「わぁ〜〜〜」」」」」」」」」」」」

 「フン…」
 「此れは…」

 「彼が最後に訪れた時のまま保存してあります。」

 「ここに、昔父さんが…」

 そして各々、思うように行動する。
 大抵は本棚にある本をてにとって読み始める。
 無論言語がギリシャ語やラテン語なので殆ど読めないが、其れはエヴァとのどかで翻訳するので無問題。

 当然稼津斗も、本を見てみるが…


 「…亜子、ちょっと…」
 「どないしたん稼津さん?」
 「良いから…」
 「?」

 呼ばれた亜子は稼津斗の元へ。

 「此れは如何思う?」

 渡された本を見て…



 ――ピシッ



 亜子が固まった。

 「此れは、あの少年の為と、サウザントマスターの威厳保持のために見なかった事にして永久に秘伝書として封印するのが良いと思うんだが…」

 「そやね。そうすべきや…ネギ君の為にもな!」

 こう結論付けられたこの本、その内容はと言うと…


 『スカートめくり魔法』


 ほんとに下らなかった。
 しかも物凄い分厚いハードカバーの癖に内容は、適当な強さの風魔法のやり方が書いてあるだけで後は真っ白。
 稼津斗と亜子の判断は正しかった。


 「稼津斗君も此方へ。君も聞いておいた方が良いでしょう。」

 其処に詠春から声がかかる。
 どうやら何か話が有るようだ。








 ――――――








 「…此の写真は?」

 「サウザントマスターとその仲間達。黒い服が当時の私です。」

 「この赤毛の人がネギの親父さんか。成程、顔は良く似てる。」

 「確かに似てるわね〜…ん?」
 ――アレ?この人…


 「どうかしたか明日菜?」
 「え?何でもないわ、大丈夫よキティ。」
 ――?…??

 写真のナギを見て明日菜は何かを感じていたらしい。


 「私はかつての大戦で、未だ少年だったナギと共に戦った戦友でした…」

 詠春は静かにサウザントマスター…ナギ・スプリングフィールドの事を語り始めた。
 其れは詠春の知る範囲の事ではあったが…

 「彼は20年前にはその活躍によりサウザントマスターと呼ばれていました。
  しかし、彼は10年前に突如として歴史の表舞台から姿を消し足取りが途絶えてしまう。
  以降の彼がどうなったのかを知る者は居ません…ただし公式記録では1993年に死亡――
  それ以上のことは私にも…すみませんネギ君。」

 「いえ、そんな…ありがとうございます。」

 申し訳なさそうな詠春にネギはそう伝える。

 「結局は収穫なし、か。残念だったなぼーや。」
 「師匠(マスター)…そんなこと無いですよ。父さんの部屋を見れただけでも甲斐がありました。」
 「そうか…」


 「ネギ君、実は此れなんだがね…」
 「え?」

 詠春がネギに何かを渡した所で…


 「はいは〜い、難しい話はもう良いかな〜。記念写真撮るから集まって。」

 和美が号令を掛ける。

 「記念写真?」
 「そ、私等だけ撮ってないんだ。他の半のはばっちり撮ったんだけどね〜。ささ、皆並んで並んで!」

 あっという間に1階に全員並べられる。


 「長さんも入って…うん、そいじゃ行くよ〜。」

 カメラをタイマーセットし和美も列に加わる。

 「はい、チーズ!」



 ――カシャッ!



 他のどの班とも違う。
 誰も持ちえない1枚が撮られた。


 其の後一行は、千草の案内で京都の甘味を堪能し最終日を終えた…




 そして、




 ――翌朝、京都駅



 3−Aの面々は駅のホームで新幹線待ち。
 午前中の内に麻帆良に戻り、後はそのまま解散となる。

 「思い出深い修学旅行だったことは確かだが、何で居るんだ天ヶ崎?」

 そう、何故かこの場には荷物を抱えた千草が…

 「長の計らいどす。東西の蟠り解消の1歩として、麻帆良に出向することになったんですわ。
  学園長さんの了解も取り付けとります。女子寮の管理人をさせてくれるそうですわ〜。」

 「成程な。」
 ――こりゃあ、あの爺さんよりも長殿のほうが政治的手腕は上かも知れないな。


 一方で、


 「ネギ先生ー!先生も締めの一言お願いしまーす!」
 「あ、は〜い…わ、うわぁぁぁ!!」

 ネギが派手にすっころんでいた。


 「全く…」
 「ホントに…」

 「「昨日とは別人(ね)(だな)」」

 その姿に明日菜とエヴァは呆れていた。





 で、車内。



 「やれやれ…あれほどうるさかった3−Aが静かなものだね。」

 「旅行中目一杯騒いだみたいだから当然だろうな。」

 稼津斗と新田の言う様に、3−Aのメンバーは全員が熟睡(エヴァまでもが)。

 「稼津斗君は大丈夫なのかね?」

 「俺は麻帆良に帰ってからゆっくり休むことにしますよ。大体俺まで寝たら…ね。」

 そう言った視線の先。
 其処には熟睡している明日菜と、その明日菜に寄りかかるようにして眠っているネギが…

 「はは、まるで姉弟の様だね。」
 「言えてるな。」
 ――ご苦労さん…今はゆっくり安め。麻帆良に戻ったら、また慌しい日常が待っているからな…



 稼津斗とネギ、そしてその従者達にとって、生涯忘れることの出来ない修学旅行はこうして幕を閉じた。






















  To Be Continued… 

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