小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 「えっと、何がどうなったんですの?」

 「絡繰の攻撃に対して放ったネギのカウンター…に反応して出された絡繰の更なるカウンターの拳にネギの拳が炸裂した。」

 「トリプルカウンター…凄いです。」
 「天才とはかくも恐ろしいものでござるなぁ…」

 視線の先では、拳を振りぬいたネギと右腕が破壊された茶々丸が居た。









 ネギま Story Of XX 18時間目
 『語られた過去』









 「其処まで。見事だネギ。まさか茶々丸のカウンターのカウンターに対応するとは思わなかったぞ。」

 課題である『一撃当てる』を達成し、肩で息をしてるネギを素直に賞賛する。
 まぁこの課題自体が『約1週間でネギがどれほど上達したか』を見る、言わば試験である。
 だが、この結果に誰よりも驚いていた者が居る。
 他でもないネギの格闘の師匠、古菲である。

 「いやはや驚いたアルよ。確かに茶々丸に一撃当てられるように徹底的に中国拳法式のカウンターを仕込んだけど、
  まさか、トリプルカウンターを、其れも実戦の中でやるとは思わなかったアル…」
 「ネギは天才だ。だが、其れもお前と言う一流の師有っての事だがな。徹底的にカウンターを教え込んでいたからこそ出来た芸当だ、アレはな。」
 「にゃはは、照れるアルよ稼津斗老師。」

 稼津斗の賞賛に照れては見せるも満更では無さそうだ。

 「さてと、絡繰腕を見せてみろ。」
 「?」
 「いいから見せろ。葉加瀬に直してもらうにしろ、応急処置位しておいた方が良いだろう。」
 「そうですね。お願いします。」

 近くで見てみると茶々丸の腕の損傷は凄まじい。
 駆動系が全て破壊されつくしているこの状況から、ネギのトリプルカウンターの威力の凄まじさがうかがえる。
 此れがもし生身の人間に炸裂していたとしたら…?考えたくも無い。


 ――古菲に弟子入りしたのが月曜日、それで今日―土曜日までの5日間でこの上達速度…末恐ろしいな。
 「派手に壊れたな…取り合えず、『同調・癒羽羅』!」

 ともあれ、自身の気を同調させ腕を治す。
 その完全なまでの修復力に治してもらった茶々丸は勿論エヴァも驚く。

 「修復率99.8%、正常稼動には一切問題ないレベルです。」
 「もう驚かん…何でも有りだな貴様…」
 「裕奈に言わせると『無限チートのバグキャラ』らしいからな俺は。」


 こんな会話の一方で…


 「この馬鹿ー!茶々丸さんの腕壊してんじゃないわよ〜!!」
 「うわ〜御免なさい!!」
 「あ、明日菜さん今回の事は不可抗力…」
 「明日菜、堪忍したって〜!」
 「そ、それに損傷した腕は稼津斗先生が治しましたわ!」


 ネギが明日菜に怒られ、刹那・木乃香・あやかが其れを抑えていた。


 「相変わらず賑やかな…さて、少しは吹っ切れたか佐々木?」

 其れを視界の端に収め、稼津斗はこの場についてきていたまき絵に問い掛ける。
 と言うのも、実はネギが古菲に弟子入りした翌日の早朝、まき絵はネギの修行現場に立ち会っていたのだ。
 そして、丁度そのとき自分の新体操演技に悩んでいた時で…

 結果ネギの頑張る姿を見て、今日の試験の見学と相成った。

 「うん!ネギ君の頑張り見てたら元気でてきた!」
 「なれば良し。後は思うようにやってみれば良い。お前の、『佐々木まき絵』の心のままに、な。」
 「うん!」

 予想外の成長を見せたネギのトリプルカウンターで集結した試験は、まき絵にも大きな影響を与えた。
 因みにまき絵は後日、地区大会で上位の成績を納め県大会への切符を手にするのであった。








 ――――――








 時は流れて更に1週間後の土曜日。


 「「「「「「海だー!!!」」」」」」

 場所は雪広財閥が所有する南国のリゾート地。
 修行続きでは身体にも精神にも良くないという事であやかが提案したこの小旅行。

 特に秘密にしたわけではないので、参加者が増えてこの状況。
 皆が思い思いに私語している状況。

 「覇、飛んで行け!」

 「うひゃ〜!」
 「わぁい!」

 稼津斗もまた楽しんで居る。
 次から次へと生徒を海へ投げ込んでいる。

 一見すると乱暴な光景だが、落下地点は海の上なので危険度は0。
 更に稼津斗の投げ方が巧いので恐怖よりも楽しさが先にたつ。

 其れを裏付けるように鳴滝姉妹なんかは既に10回以上稼津斗に投げられている。

 「ネギ、マクダウェル、お前達も飛んで来い。」

 「おい、貴様!」
 「え?わぁぁ!」

 ネギとエヴァも海に投げ込む。

 「さて、次は誰が行く?」

 その問いに…

 「次に飛ぶのは…」
 「稼津斗殿にござる!」

 「お!?」

 真名と楓が両脇から稼津斗を抱えて持ち上げる。

 「「「「そぉれぇ!」」」」

 其処に裕奈と和美が加わって一気に投げ飛ばす


 ――ザッパ〜ン!


 勢いよく上がる水しぶき。
 が、稼津斗が顔を出さない。


 「「「「?」」」」

 不審に思った直後…

 「やってくれたな?」

 「「「「!!」」」」

 背後から稼津斗登場!
 投げ込まれた直後に潜水で背後まで回ったらしい。
 で、

 「逆襲。」

 その圧倒的力で4人を沈める。
 だが、やられて只で済みはしない。
 それどころか…

 「稼津さん隙だらけや!」
 「あの、油断大敵です。」

 死角から亜子とのどかが強襲。
 加えて、

 「今度は此方の番だ!ネギ、明日菜、お前達も加われ!」
 「まっかせなさい!行くわよネギ!」
 「え、わぁぁぁ!?」

 エヴァ、明日菜、ネギ(強制)が参戦。
 そして此れを皮切りに、双子やチアガールズも参戦!

 「人海戦術か…受けて立つ。」

 其処からはもう、掴んでは投げ、沈め、時に沈められの1vs多数!

 「…傍から見てると凄い光景ですわね、此れ。」
 「あの数を一度に相手するとは…」
 「凄いなぁ〜。」

 大乱戦の浅瀬(とは言っても稼津斗の腰くらいまでの深さはある)では、しかし笑い声が飛び交っていた。








 ――――――








 ――夜



 「ふぅ、流石にあの人数を相手にするのは少々無理があったか?」
 「よく言うよ、全く本気出してなかったくせに。」


 夕食後、稼津斗組とネギ組&古菲は水上コテージの1つ(ネギと稼津斗に割り当てられた部屋)に集合していた。


 「この…銀髪にならなかったから本気でないとは思ったが、反則チートめ。」
 「いや、バグキャラやて♪」

 談笑。
 修学旅行後も、授業やら修行やらで結構忙しかったので、今回の南の島バカンスは良い息抜きになっているようだ。

 「さて、皆を此処に集めたのには何か理由があるんだろう?」

 ネギに視線を移し問う。
 ソレに頷き、ネギは切り出す。

 「此れから、皆さんに僕の過去…6年前、父さんと会った日に何があったのかを話す…いえ、見て貰おうと思うんです。」

 「ほう…?ナギと会った時の事だと?如何いう風の吹き回しだネギ?」

 意地悪そうにエヴァが問うもネギは揺らがず答える。

 「知ってもらった方が良いと思うんです。特に僕のパートナーである明日菜さん達や師匠には。ソレと勿論カヅトや老師にも。」

 「成程。では、見せてみろネギ。お前の『過去』とやらを。」

 「……はい。」


 記憶再生の魔法が発動し、ペンションの室内だった景色は一変する。

















 其処は山間の小さな村だった。

 少年はその村で魔法の練習をしながら生活していた…いつか父に会えると信じて。

 何時しか少年は思うようになる…『自分に危機が訪れれば父が助けにやってきてくれる』…と。

 そして危機を自ら演出する少年を姉は叱責する。そして少年は誓う『二度とこんな事はしない』。

 だがある日のこと、この平穏は崩れる…久々の姉の帰郷を楽しみにしていた少年が釣りから戻ってきて見たものは…


 ――炎に包まれた己の村だった。


 石化した村民と燃え盛る村を見た少年は己を攻める…『自分があんな事を思ったからだ』。

 更に悪い事は続く…次から次へと現れる異形の魔物。

 少年にはそれらを倒す術はおろか、自らを守ることも出来ない。

 だが少年に『死』は訪れなかった。


 『雷の斧』


 少年と魔物の間に割って入った赤毛の男によって、襲ってきた魔は両断された。
 それだけではなく、更に襲い来る魔物を鎧袖一触。

 『雷の暴風(JOVIS TEMPESTAS FULGURIENS)』

 その力…正に一騎当千。
 だが、ヒーローの登場は遅すぎた。
 少年の姉と、少年の世話をしていた老人が石化魔法の餌食となってしまった。

 姉の石化した足は砕け、老人は辛くも魔物を封印するが全身石化してしまう。
 泣きじゃくる少年は何とか、姉を運び出そうとし、赤毛の男がソレを手伝い…


 村から離れた高台で漸く男は気が付いた。

 『お前…そうか、お前がネギか。』

 姉を守ろうと必死に自分の前に立ちふさがる少年が自らの息子だと。

 『大きくなったな…』

 乱暴に頭を撫で、思いついたように自らが持っていた杖を少年――ネギに託す。
 『俺の形見だ』と

 ネギも漸く自覚する…目の前に居るのは自分が何よりも会いたがっていた父親だと。

 『悪いな、お前には何もしてやれなくて。…こんな事いえた義理じゃねぇが、元気に育て…幸せにな!』

 男はその場から去り、後にはネギだけが残された…













 「3日後に救助された僕達はウェールズにある魔法使いの街で過ごす事になったんです。
  それから5年間は魔法学校で勉強の毎日です。
  思えばこの時からなんです僕が凄い勢いで勉強に打ち込むようになったのって。
  ただもう1度…僕を助けてくれた父さんに会いたいって、その一心で。」

 「その結果、稀代の天才少年が出来上がったという訳か…」

 溜息…誰も何もいえない。
 当時3歳の少年が体験したにしてはアレは余りにも重い。
 のどかやあやかなんかは涙ボロボロである。


 「ネギ…分ったわ…。私もアンタのお父さん捜すの手伝ってやるわよ!」

 「え、えぇぇぇ!?」

 「文句は言わせないから!いいんちょも良いわよね?刹那さんとこのかと茶々丸さんも!キティも異論は無いわね!?」
 「勿論ですわ!」
 「ウチも手伝うわ。」
 「私も微力ながらお手伝いしましょう。」
 「お役に立てれば幸いです。」
 「ふ、よかろう。弟子の為だ。それに親友からの頼みを無碍に断る事などできんしな。」
 「アスナ〜私も忘れないで欲しいアル!」

 驚くネギを尻目に明日菜は『ネギ父探索に協力する』と言うことをぶち上げる。
 良くも悪くも真っ直ぐ一直線なのだ、『神楽坂明日菜』と言う少女は。

 「で、でも!」
 「デモもストも無い!キティとくーちゃんはアンタの師匠だし、私やいいんちょ達はアンタのパートナーでしょ!?
  偶には頼んなさいよ。そうじゃなきゃ、私達何の為にアンタのパートナーになったのか分らないじゃない?」

 正論。
 明日菜(バカレンジャー・レッド)にしては珍しいほどに筋の通った正論にネギも何も言えなくなる。

 「お前の負けだネギ。神楽坂の言ってる事は正しいよ。それに神楽坂達だけじゃない、必要なら俺達だって力を貸してやる。」

 喉の奥で笑い、しかし真剣な表情で言えばネギは押し黙りしばし考え…

 「分りました。宜しくお願いします!」
 「「「「「「了解!」」」」」」
 「ふん、任せておけ。」

 決意を込めて言えば全員がそれを受け入れ了承する。



 「結束が固まったかな?」

 「かも知れない。だが、悪い事じゃあ無いだろ?」

 「でござるな。」

 其れを見ている稼津斗組の面々の表情も柔らかい。



 そして、どうしてそうなったのか、ネギの父親を捜しに行く決意を固めただけだったはずが何時の間にやら宴会になり、
 其れを嗅ぎ付けた、他の生徒達が加わり、この日の夜は朝までの大宴会となったのだった。

















 ――ネギが記憶再生をしていたのと略同時刻、麻帆良学園・学園長室




 ――Rererererererere



 「ワシじゃ。」

 鳴り響く電話を取る近右衛門。
 てか相手の確認をして、己の名前はちゃんと言うべきだと思うのだが…何処の悪の組織の首領なのか…

 「おぉ、婿殿。なんじゃ?…ふむ…ふむ…。なんじゃと?脱走!?」


 近衛詠春よりかかってきたこの電話が、後日大騒動へと発展する事になる…






















  To Be Continued… 

-18-
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