小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 『さぁ、盛り上がってきました!
  優勝最有力候補の古菲選手がまさかの1回戦敗退で優勝争いは分からなくなってきた〜!
  そして次なる試合も、大注目の1戦!!
  何かと話題の子供先生と、予選で意外な強さを見せ付けたエヴァンジェリン選手の対決!!』

 真名が古菲を下したリング上では、休む間も無く次の試合の準備が完了していた。
 リングに立つはネギとエヴァ。

 いつも通りに不遜かつ余裕な態度のエヴァに対し、ネギは若干緊張気味。
 しかし、その目には一切の迷いは見て取れない。


 ――良い顔をするじゃないかネギ。ふふ『ダメで元々』と開き直ったか。
   だが其れで良い。がむしゃらに挑んだ先に見えるものも有る。
 「ネギ、普段の修行の成果を私が直々に見てやろう。遠慮なくかかってくるが良い。」

 「はい!全力で行きますよ師匠(マスター)!!」

 エヴァの一言にネギは力いっぱい応える。

 『さぁ、奇しくも女子中等部3−Aの担任vs生徒の戦いとなったこの1戦!
  勝利の女神は果たしてどちらに微笑むのか!1回戦第4試合Ready……Fight!』

 和美の掛け声で、物凄い師弟対決が幕を上げた。









 ネギま Story Of XX 28時間目
 『色んなモノの大激突!』










 先手を仕掛けたのはネギ。
 試合開始と同時に瞬動術を使ってエヴァに肉薄し、古菲直伝の中国拳法で接近戦を挑む。

 「行き成り瞬動とは気前がいいな?」
 「最低でも此れくらいはしないと師匠には触れることは出来ませんよ!」

 思った以上に完成度の高い瞬動に、一瞬対応が遅れるが、其処は真祖の吸血鬼。
 得意の合気柔術を駆使し、的確にネギの攻撃を捌く。


 ――く…流石は師匠……攻撃が通らない…!


 ――思いのほか厄介なものだな中国拳法と言うのも…こうも硬軟織り交ぜられると捌くのも楽じゃない。


 ネギはエヴァの固い防御に有効打が入らず、エヴァはエヴァで変幻自在の拳法を捌くので手一杯。
 勿論、エヴァは全力ではない。

 が、全力で無かったが故にこの均衡状態は崩れることになる。


 ――このままじゃ埒が明かない…ちょっとずるいけど。

 ネギは右手に魔力を少しだけ溜める。

 ――む?微量な魔力だが…来るか!?

 それを的確に感じ取り、エヴァも防御姿勢に。
 だが、しかし。


 ――パチンッ!


 「な、なにぃ!?」

 伸ばされた右手が繰り出したのは突きでも掌底でも無く、所謂一つの『ユビパッチン』。
 更にこのユビパッチン、指先で微量な魔力を炸裂させるおまけつき。

 余りにも予想外かつ、目の前で超極小とは言え魔力炸裂を受けたエヴァは一瞬、だが確実にその動きを止めた。

 そしてその一瞬は、ネギにとって絶好の好機に他ならない。


 ――よし!魔法の射手(サギタ・マギカ)、雷の一矢(ウナ・フルグラティオー)!!
 「弓歩沖拳!!」

 魔法の矢を乗せた拳打一発。

 ――魔法の矢を乗せた拳打か…中々の威力じゃないか!

 ギリギリ防御したエヴァだが、虚を衝かれたせいで反応が遅れて捌けず、初めて『受ける』防御をしてしまった。
 それを見逃さず、ネギは一気に攻め立てる。

 そう、捌く暇を与えないほどに。


 ――八極拳金剛八式!
 「翻身伏虎!!」

 ガードさせる事が目的の全身を浴びせての掌底に始まり、

 「硬開門!」

 着地と同時に踏み込み式の肘打ち。

 「ぬぅ…!」

 剛と柔が織り成す波状攻撃の前に、エヴァの体制が崩れガードが開く。


 ――此処で!!魔法の射手 収束・雷の三矢!!!いくぞ、僕のオリジナル技!!
 「雷華崩拳!!!」


 先程の一撃とは比べ物にならない一発がエヴァに炸裂した。
 今のネギの限界……威力を落さずに溜め無しで放てる限界の三矢を乗せた、中国拳法式の重い拳打。

 それを受けたエヴァは場外へ吹き飛ばされ、水切りする小石のように、リングの周りの水面をバウンドしながら観客席の方まで!

 『決まった〜〜〜!一体何だ今の一撃は〜〜!!
  人がまるでトラックに撥ねられたかの様に吹き飛んだ〜〜!?
  まさか此れも中国拳法の一種なのか!?何とも恐るべき少年だ〜〜!!!』

 解説もそこそこに、和美は場外カウントを開始。
 吹き飛ばされた先は水煙が立ちこめ、詳細をうかがい知ることは出来ない。

 『…4、5、』


 ――ドォォン!


 『!!な、何事だ〜〜って…!無事だったかエヴァンジェリン選手!!』

 「当然だ。だがまぁ今のは中々に効いたぞネギ?」

 轟音と共に舞い上がった水しぶきからエヴァが飛び出し、そのままリング上に帰還する。

 「やっぱり、決定打にはならなかった…」
 「まぁ、相手が相手だ。だが、断言してやろう。今の一撃を受けて立つ事が出来る奴は早々居ないだろう。
  おまけにマダマダこの技の威力は上げる事ができるだろう。ふふ、師匠としては文句無く合格点をくれてやろう。」

 そのままリングの中央へと歩を進め…


 ――ゴッ


 突然、今度はネギが吹き飛んだ。

 「!?…!!?」
 「此処からは敵として対峙する場合は如何かを見てやるとしよう。」

 見れば、何時の間にかエヴァは今しがたネギが立っていた場所で掌打を打ち込んだ体勢で居た。
 つまりはネギはエヴァの攻撃で吹き飛んだ事になる。



 「マクダウェル…柔術の真髄を見せるか?」
 「柔術の…真髄?」

 選手席で観戦していた稼津斗にはエヴァが何をしたのかが瞬時に理解できた。

 「あぁ、柔術って聞くとその字面と、其処から派生した『合気道』や『柔道』から相手の力を利用する『柔』の格闘技と思われがちなんだが実は違う。
  確かに、使う技には捌きや受け流しからのカウンターの投げが多いが、蹴りや当身といった打撃は普通に存在するんだ。」

 「それって如何言う事やねん兄ちゃん?」

 「分からないか?さっきのネギの一撃を受けるまでマクダウェルは『柔』の技のみを使っていた。
  言うなれば『守り』の戦いだ。だが今は打撃を…『剛』の技を使った。守りから『攻め』に転じたんだ。」

 「つまり、今度は純粋に戦うという事でござるか!?」
 「間違いなく。」



 そして、リング上では再び激しい戦いが始まった。

 が、今度はネギが劣勢。
 エヴァの打撃を辛うじて防御しているが、防御に手一杯で攻撃が出来ない。

 「打撃に気をとられてばかりでは危険だぞ?」
 「!!!」

 勿論エヴァの攻撃は甘くなく、肩口をぶつける『浴びせ当身』から、掌底へとつなぎ、

 「裏雲落とし!」

 繰り出した掌底でネギを掴んでそのままリングに叩き付ける。

 「ガハッ!」
 「まだ終わらんぞ?」

 そのまま強引に起き上がらせボディに当身を喰らわせ、今度は今とは反対側に叩き付ける。
 それで終わらずに…

 「雷鳴轟破投げぇ!!」

 ダウンしたネギを再び持ち上げ強引にリングに投げつける。

 「アグッ…!」
 「戦いに休息は…無い!!」

 そして止めとばかりにネギを場外まで蹴り飛ばす。
 何ともサディスト全開の情け容赦無い猛攻だ。

 『こ、今度はネギ選手が吹っ飛んだ〜〜!』…てかエヴァちゃん、ちょっとやりすぎ。観客引いてるよ?」

 司会兼実況なので、個人的なことはマイクに乗らないように気をつけながら聞いてみる。
 いや、和美や観戦している『3−A魔法関係者』はネギの普段の地獄の修行を知っているからこの程度でくたばるとは思っていない。
 しかし事情を知らない一般の観客達は…


 「Sだ。」
 「Sだよ…」
 「寧ろドSだろ。」
 「やりすぎじゃね?」


 和美の言う通り見事に引いていた。

 「ギャラリーの反応など知るか。それにだ…ネギには未だ切り札がある筈だ。そうだろう?」

 「勿論です!!」

 吹き飛んだ方向、水煙が晴れない中からネギが飛び出し近くの灯篭の上に降り立つ。
 その姿はびしょ濡れで、服はあちこち裂けたり穴が開いており、エヴァの攻撃の凄まじさを物語っている。

 姿だけ見れば満身創痍に見えるネギだが、その目は未だ死なず、更に自らの周囲には停滞させた9発の魔法の矢が展開されている。

 『ネギ選手根性で復帰〜〜!!てか其処は場外だけど、なんか凄い事が起きそうだからこの際カウントはな〜し!!』

 「ほう、ネギよ今度は何を見せてくれる?」

 和美はドン引き状態の観客のテンションを復活させるために司会をこなし、エヴァはネギの様子に笑みを浮かべる。


 ――魔法の射手が拳に乗せられるなら、全身に乗せることも可能…でもそれじゃあきっと師匠には届かない…


 考えながら9発の矢を1つに集約させていく。


 ――だったら乗せるんじゃなくて、魔法の矢と僕自身に『融合』させれば!


 集約した矢を手に取り、それを自身に押し付けた!
 瞬間、物凄い閃光が発生し、目を開けることすら出来なくなる。
 加えて閃光と同時にあふれ出す力の本流。

 「ぬ!?ネギめ一体…!」

 光が収まると……全身を淡く輝かせたネギの姿があった。


 「なっ!?」
 ――馬鹿な!?あの姿…魔法の射手を自身に融合したというのか?
   …何と言う奴だ、術式そのものは不完全で不安定だが、とっさの閃きで辿り着いたのか…話が秘術の理論に!


 誰よりも驚いたのはエヴァだった。
 ネギが行った事は、術式も様式もまるで違うが根幹の理論そのものは自らが開発した秘術と同様のものだったのだから。

 「ふふふ…ふははは!良いぞネギ!何処までも予想の上を行く奴だ!良かろう、その力受けてやる!」
 「行きますよ師匠!!」

 瞬間、轟音と共にネギが灯篭の上から瞬動術を使って飛び出す。
 エヴァもそれを受け流そうと構える…が、途中で僅かに軌道がぶれた。

 「!?」
 ――特攻はフェイクか!


 「連環掌!」

 全力の体当たりはフェイクだが、突進の勢いは殺さずに掌打を打ち込み、零距離に引っ付く。

 「この距離なら攻撃は捌けないですよね?」
 「くく…成程。見事なものだ…」

 零距離から放たれた攻撃を合気投げでカウンターすることは略不可能。
 持てる力の全てがネギの右手に収束。

 「此れが僕の全力全開!出力最大…『雷華崩拳』!!!」

 掌底で体勢を崩したエヴァに略垂直に拳が叩き下ろされる。



 ――バガァァァァァン!!!!



 全力の一撃に轟音が鳴り響き、粉塵が舞い上がる。

 『な、何か物凄いのがヒットーー!!大丈夫かエヴァンジェリン選手!?』

 粉塵が晴れる。

 『だ、ダウ〜ン!エヴァンジェリン選手完全にダウン!てか生きてる!?』

 エヴァがダウンした場所は大きく窪み、板も粉々になっている。
 それほどまでの一撃だったのだ、ネギの全力は。

 『取り合えずカウント…「必要ないぞ朝倉。」うぇい!?』

 ダウンカウントを取ろうとした和美を制し、エヴァは上半身だけを起こす。

 「効いて無いんですか!?」

 「そんな筈は有るまい。相当に効いたぞ今の一撃は?
  一般人ならこの一撃で内臓破裂、脊髄損傷、肋骨の粉砕骨折で即死だろうよ。
  全く、とっさの思いつきでこんな方法を思いつくとは、お前の開発力は底無しか?
  おまけに、今お前が使ったのは大昔に私が編み出した秘術と根幹を同じにするものだ…正直に驚いたよ。」

 「師匠…」

 「このまま続ける事は可能だが、お前の可能性をもっと見てみたくなったぞネギ。
  1回戦で終わらせるには余りにも惜しいのでな……この勝負はお前の勝ちだ。その才能には降参だよ。」

 自ら負けを宣言した。

 『エヴァンジェリン選手、此処でギブアップ!担任vs生徒は、子供先生・ネギ選手に軍配だ〜〜!!』

 途端に沸きあがる歓声。
 それらは全てネギを称えるものだ。

 「ふ……良い弟子を持ったものだ。師匠冥利に尽きるな。」
 「僕も、最高の師匠を得ましたよ。…ありがとうございました師匠!」

 師弟対決は、取り合えず弟子の勝利で終わった。


 ――○ネギ・スプリングフィールド(13分48秒 雷華崩拳→ギブアップ)エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル●――








 ――――――








 「ネギ君もエヴァちゃんも凄い怪我や。今治すえ〜。」

 控え室に戻ってきたネギとエヴァは、速効で有無を言わさず木乃香に治療されていた。

 その片隅では、次の試合を控えたアスナと刹那が準備をしていた。

 リングの修繕作業のため、次の試合までは少し時間がある。

 「刹那、手加減は無しだよ?」

 「勿論です。ルールの中でではありますが全力でお相手します。」

 親友であり、又剣術の師弟関係にある2人もやる気は充分だった。
 さらに、

 「刹那〜!アスナちゃんもおるな?」

 千草が控え室に登場。
 その手には何かを持っている。

 「せ、師匠(せんせい)!」

 「ほうほう、良い面構えやな刹那。アスナちゃんもやる気充分かな?」

 「勿論。」

 「其れは結構なことや。存分にやるとえぇ。それと刹那、此れをわたして置くえ。」

 「此れは…?…!!!この衣装は!!」

 「それを纏うのがアンタにとって辛くきついモンやいうんは理解しとる。
  せやけど、もう己を卑下する必要は無いんと違うかな?」

 千草が持ってきたのは烏族の伝統的な戦闘衣装。
 勿論刹那にとってそれは良く知るものであり、同時に迫害の記憶でも有る。
 だが、

 「大丈夫です師匠。私は…もう迷わない!」

 そう言うと、刹那は自分の頭をガシガシと擦る。
 すると、髪から何かが剥がれ落ちその後からは綺麗な白髪が。

 「ふん、それが貴様の覚悟か刹那。」
 「せっちゃん……綺麗な白や…」

 エヴァは面白そうに笑い、木之香は初めて見る刹那の姿にちょっと感激していた。

 「流石に翼を曝すことは出来ませんが、本当の自分を取り戻したアスナさんと戦うのに、偽ったままの私では無礼千万です。
  この姿に烏族の衣装を纏い、本来の私でお相手しますアスナさん!」

 「刹那……うん、本気でやろう!」

 カラーコンタクトも外し、刹那は白髪紅眼の姿を現す。


 『さぁ、リングの修繕も終わり、次は第5試合だ〜!』


 そして丁度リングの修繕が終わり、和美が次の試合のスタンバイを告げる。

 刹那は手早く千草が持ってきた服に着替え木刀を携える。
 アスナもエヴァが用意した漆黒のゴスロリ服を纏い、ハリセン状態の天魔の剣を装備完了。


 いざリングへ。








 ――――――








 『大熱戦が続くまほら武道会!次なる試合は予選で並み居る屈強な男達を葬り去った美少女2人の大激突!
  イメチェンか、何時もの黒目黒髪から白髪紅眼と姿を変えた桜咲刹那に対するはバカレッドから天才に究極クラスチェンジした神楽坂明日菜!
  この大会初の得物を持ったもの同士の戦い!身体能力はどちらもお墨付き!!さてどうなるこの勝負!!
  1回戦、第5試合!Ready……Fight!!!』


 試合開始の合図と共に両者同時に地を蹴り突進。

 「はぁぁぁ!!」
 「てぇぇい!!」

 リング中央でぶつかる木刀とハリセン。
 腕力に関しては略互角で鍔迫り合いはどちらも押し切れない。

 「てぁ!!」
 「させない!」

 そのまま近距離での剣戟に発展。

 刹那の木刀も、アスナのハリセンも得物としては相当に大きい部類に入る。
 その大型武器を用いての超高速の剣戟に観客は盛り上がる。


 ――流石ですねアスナさん。記憶を取り戻した事で、格段に動きが良くなっている!

 ――一撃一撃が早くて重い…今の刹那の剣には迷いが無い…!


 互いに相手の力に感服しつつ、その攻防は更に激しさを増すが…


 ――聞こえますか明日菜さん?


 突然アスナの頭の中に声が響いてきた。
 ネギでもエヴァでもないその声…しかしアスナには聞き覚えが有った。


 ――もし宜しければ、アドバイスを…

 ――必要ないわ。無粋な真似は止めなさい、アル。


 アドバイスをするというその声をばっさり切って捨てる。


 ――で、ですが!

 ――聞こえなかったの?私は純粋に刹那と戦ってるの。無粋な横槍は許さない!

 ――明日菜さん?…いえ、まさか貴女は…!

 ――…もう話しかけないで。


 一方的にその声を遮断し、アスナは戦いへと戻る。

 「アスナさん?」
 「気にしないで刹那。無粋なバカを締め出しただけだから。」
 「はぁ…」

 こんな会話をしながらも激しい攻防は途切れない。
 何と言うかこの2人の周囲には言うなれば『剣戟の結界』とでも言うものが発生しているような気がしてならない。





 一方で選手席では、


 「くくく…良いザマだな。アスナに拒否られたか?」
 「戦いに横槍を入れるなど無粋極まりないな。確認するまでも無く阿呆だろお前?」
 「お前程度には全くもって負ける気がしないな。」

 黒いフードを纏った男――今しがたアスナに念話で話しかけていた人物がエヴァと稼津斗、そしてリインに口撃されていた。

 「真剣勝負に口出しとは…二流だな。」
 「でござるなぁ。如何なる目的があるかは知らぬが、到底信じられぬ暴挙にござるよ。」

 真名と楓も容赦なし。

 「な、何故こんなことに?」

 ローブの男、クウネル・サンダースに味方なんて者はいなかった。






 戻ってリング上では、剣戟が更に進化していた。
 得物の打ち合いの合間に掌打、拳打、蹴りといった無手の体術が加わり、最早一般人では到達できない戦いになっていた。

 そしてこうなると、完全防御は出来ず、刹那もアスナも少しずつ被弾が増えて行く。


 「くっ!!」
 「あっ…!」


 激しい打ち合いのなか、間合いが広がる。
 正に一進一退の互角でどちらも引かない。

 「やりますねアスナさん。」
 「刹那もね。」

 既に10分以上も超高速の剣戟を続け、息も上がり始めている。

 「そろそろ決着と行きましょう。」
 「いいわね。次の一撃で決めるわ。」

 決着宣言をし、互いに得物を構える。

 刹那は木刀を正眼に構え、アスナはハリセンを両手で腰の辺りに構える。


 そのまま睨み合いどちらも動かない。

 1分、2分…


 『さぁ、試合時間は残り1分!』


 和美のこの一言で両者が動いた。


 木刀を打ち下ろす刹那に対し、アスナはハリセンを打ち上げる。

 完全に対照的な両者の一撃。


 その一撃は威力を殺さず、夫々に炸裂。

 刹那の木刀はアスナの肩に、アスナのハリセンは刹那の脇腹上方に。


 ――グラリ…


 ヒットしたのは同時だが、崩れたのはアスナだった。

 「やっぱ剣術では刹那には敵わないか…」
 「そう簡単に超えられたら流石にショックですよ。」

 基本的な実力は略互角。
 しかし、得物を使った戦闘では刹那に一日の長がある。
 最後の一撃で、その差が出た。


 『決まった〜〜!!お互いの全力を掛けた一撃は刹那選手が僅かにアスナ選手を上回った!』


 「立てますか?」
 「うん、大丈夫。『明日菜』のおかげで頑丈さは相当だから。」


 片膝をつくアスナに刹那は手を差し伸べ、アスナもそれをとる。


 「次の相手はどっちにしても強敵…頑張ってね?」
 「あはは…まぁ出来るだけやってみます。」

 そう、勝利した刹那の2回戦は稼津斗かタカミチ。
 どちらが出てくるにしても、自分の遥か上を行く強敵に変りはないのだ。


 『親友同士の戦いを制したのは桜咲刹那〜!しかし、激戦を終えて更に強くなったこの友情に大拍手を!!』


 和美が見事な司会で両者を称え、会場からは溢れんばかりの拍手が刹那とアスナに向けられた。


 ――●神楽坂明日菜(14分34秒、唐竹割)桜咲刹那○――



 大激戦の2試合を消化し、1回戦は残り3試合。











  To Be Continued… 

-28-
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