小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 大凡学園祭とは言えない雰囲気になっていた麻帆良全土。
 一行は一度散開し情報収集を開始。

 言いようの無い『嫌な予感』を感じながらも現状を見てみると、矢張り学園祭とは言い難い。

 「一体どうなっているのだ?此れではまるで通常の麻帆良ではないか!」
 「でも、だとしたら一体どうして…」

 どこをどう見ても『何時もの麻帆良』にしか見えない事にエヴァの苛立ちは募り、ネギも不安になる。

 で、大概そう言う状態であると目的以外は目に入らなくなる。
 この2人も其れに漏れず、


 ――ドンッ!


 「うわっ!」
 「ぬおっ?」
 「キャ!」

 前方からやってきた誰かと激突。

 「す、スイマセン!」

 慌てて謝るネギだが…

 「あたたた…ん?あーーーーーっ!ネギ君!?」

 「夏美さん!?」

 ぶつかった相手は3−Aの生徒の1人、村上夏美であった。










 ネギま Story Of XX 36時間目
 『MAD FANTASY』










 「其れにエヴァンジェリンさんも!今まで何処に行ってたのーーーっ!?」

 「えっ!?あの今までって?」

 夏美はなにやら興奮しているらしく、話が要領を得ない。
 ネギも勢いに飲まれてしまうが、エヴァはそうならないのは偏に生きてきた時間の差だろう。
 そしてその差が夏美の言葉に僅かな違和感を感じ取る。

 「おい、村上夏美。」

 「アスナ達も一緒なの!?もー、心配したよ―――――」
 「え?あ、ハァ…」

 が、何かを問おうとしても興奮気味の夏美には届いていない様子。
 ネギは完全に飲まれているようだ。

 「…おい。」

 「ホラ早く教室行こ♪皆待ってるよ!」
 「えっ?あの…」

 再度呼びかけるも効果なし。
 で、エヴァは長生きであるが、お世辞にも気が長いとは言えない。
 となれば当然、

 「人の話を聞かんか、この脇役地味娘が〜〜〜!」

 「はぶっ!?」
 「ま、師匠(マスター)!?」

 跳び蹴り炸裂。
 喰らった夏美は吹き飛んだものの怪我は無いようなので一応の手加減はしたらしい。

 「い、痛いよ、エヴァンジェリンさん!」

 「やかましい!人が呼んでいるのに無視する方が悪いんだろうが!」

 跳び蹴りを喰らわせた事など如何でも良いのだろう。
 確かに今大切なのは、この現状を正しく知る事ではあるのだが…

 「幾つか質問をする。嘘偽りなく答えろ。拒否権はない。」

 僅かばかりの殺気と威圧感。
 決して強いものではないが、一般人である夏美を黙らせ従わせるには充分だ。
 ネギも発せられた其れに、一瞬驚くがエヴァに考えが有っての事だろうと何も言わない……『信頼』と言う奴だろう。

 「そう固くなるな、別にとって食ったりはせんよ。簡単な質問をするだけだ。…先ず1つ目、私とネギを含め何人が今まで居なかった?」

 「えっ?んと…ネギ君とアスナ達に稼津斗先生、アキラと朝倉達も居なかったから…えっとクスハちゃん含めて19人?」

 「クラスの半分以上じゃないか…稼津斗の奴まで居ないのか?」

 「うん。担任、副担任揃って不在だから大変だよ〜。おまけに半分以上も生徒が居ないから殆ど学級崩壊状態!」

 「ふむ…では2つ目だ。私は詳しくは知らんのだが…学園祭最終日(・・・・・・)に何か大掛かりなイベントが有ったそうだな?」

 事実は不明、だが略確信を持って問う。
 同時に嫌な予感もまた確信へと変り始める。

 「最終日…?あ〜〜っ!有った有った大花火!こう、世界樹が物凄く光って、飛行船とかから花火が一杯!綺麗だったよ〜!」


 ――…矢張りか。と言うことは…!
 「最後の質問だ……『魔法使い』を知っているか?」

 「何言ってるのエヴァンジェリンさん。」

 この問に笑いながら、













 「知ってるに決まってるじゃん。」












 とんでもない事を答えてくれた。

 「えっ……?」
 「ち、矢張りか…!」

 此れにネギは驚きエヴァは苦い顔。
 特にエヴァは自身が思った『最悪の状況』が確定する答えだっただけに余計にだ。

 「うん、前から普通じゃないとは思ってたけどネギ君が魔法使いってのには驚いたかな?あ、若しかしてエヴァンジェリンさんもそうなのかな?」

 自分がドレだけの事を言ったのかなどは露知らず夏美は思った事をドンドン口にしていく。

 「その通りだよ村上夏美。知っているなら話す必要もあるまい!魔法関係の事で今まで欠席していた19人は今日も欠席だ!
  臨時の担当教師にはそう伝えておけ!…行くぞネギ!」

 「うぇ、エヴァンジェリンさん!?」

 戸惑う夏美などはこの際無視だ。
 エヴァはあまりの事態に顔を青くしているネギを引き連れてその場を離脱。

 「ま、師匠!?」
 「完全にやられたなネギ。どうやら超の奴の計画は完遂したようだ!」
 「えっ!?」

 まるで空を飛ぶような移動。
 何時もなら多少は周囲に気を付けるが、今はそんな事お構い無しだ。

 「親父、貰っていくぞ!」
 「あ、お嬢ちゃん御代…」
 「釣りは取っとけ豚野郎!」



 ――ゴイン!



 途中の売店で新聞を(何故か物凄く攻撃的に)購入し日付を確認。
 その新聞の日付が全てを物語っていた。

 「師匠?」
 「…見てみろ。」
 「?……えぇ〜〜6月20日!?学園祭最終日から1週間後!?」

 そう、記されていた日付は6月20日。
 つまりは学園祭の最終日から1週間も経っているのだ。

 此れならば先程の夏美の言う事も尤もだ。
 学園祭最終日から1週間も3−Aの生徒半分と教師が居なくなれば誰だって慌てるというものだ。

 「事態は最悪だ。ネギ、アスナ達に連絡を取れ、一旦私の家に全員を集めるんだ。」
 「わ、分かりました!!」

 言われたとおりにネギは仮契約カードを使ってアスナ達にエヴァの家に向かうように指示を出す。
 同様にこの2人も向かい始めたのだが…

 「ネギ先生!!」

 突然の呼び声。
 其れの発生源は…ガンドルフィーニだ。
 2人の姿を居つけて追いかけてきたのだろう、可也息が上がっている。

 「ガンドルフィーニ先生…?」

 「く…闇の福音も一緒だったか。…まぁいい、矢張り君に超鈴音を任せたのは大きな間違いだったよネギ先生。」

 「え…?」
 「ほう?」

 「其処の闇の福音含め、君には重罪が課せられる事になった!」

 穏やかでないこの一言に呼応するようにあちらこちらから『正義の魔法使い』である魔法教師&魔法生徒が姿を現す。
 全員が武装しているこの状況…恐らく何を言っても聞き入れられることは無いだろう。

 「ガンドルフィーニ先生、此れは一体!」

 「言っただろう、君には重い罰が課せられると!此れは君が逃げないための布陣だよ。
  行け、ネギ先生を捕えろ!闇の福音は…殺しても構わない!!」

 「!!!」

 過剰戦力とも言えるこの布陣だが、ネギが反応したのは別の事だ。
 其れは他でも無い『闇の福音は殺しても構わない』と言う点。


 ネギはお人好しで厚情だ。
 良くも悪くも最初に『ウルトラ馬鹿』が付くくらいの。
 そんなネギにとってエヴァは尊敬すべき『師匠』であり、同時に掛け替えの無い大切な『仲間』だ。
 其れを『殺しても構わない』といわれたら黙っては居られない。



 ――ゴウッ!



 瞬間、魔力が溢れ出す。
 武道大会の時よりも洗練され強くなった魔力、其れがネギを中心に逆巻いている。

 「師匠は…否、エヴァンジェリンさんは僕の仲間です!殺らせませんよ?」

 およそ10歳とは思えない鋭い眼光でガンドルフィーニ達を睨みつける。
 其れを見たエヴァは満足そうに笑い、自身も魔力を解放する。

 「くくく…私達が貴様等の言いなりになるなどと思うなよ?
  正直に言うと貴様等如きと遊んでやる暇など無いのだが…まぁいい、少しばかり遊んでやろう。来い小僧共。」

 封印が解かれた事で、真の力を取り戻したエヴァから発せられる魔力はネギの其れをも遥かに上回る。
 先天属性の『氷』がその力を揮い、そろそろ7月も近いと言うのにエヴァを中心に氷が広がっていく。

 同時に同様の事はネギを中心にしても起こっている。
 此方は雷を伴った暴風が吹き荒れている。

 正直に言って普通にやって……否、搦め手を使っても勝つのは殆ど不可能と思わせる位の魔力と威圧感。
 だが、ガンドルフィーニも退く事はできないと言うのが本音。

 「く…抵抗するとは!此れではオコジョ刑だけではすまないぞ!?」

 「そうはなりませんよ…此処は僕達が勝たせてもらいます!」
 「覚悟は良いな?三下共ぉぉぉ!」

 戦いが始まった。








 ――――――








 ――同刻・エヴァンジェリン邸


 ネギから連絡を受けたアスナ達は此処に。
 裕奈達も携帯で連絡を受けてこの場に居る。

 「やっぱり間違いねぇな。今は学園祭最終日から1週間後の6月20日だ。」

 そんな中で一行は千雨のPCから現状を把握していた。
 麻帆良内で分かった事は『今が学園祭中ではない事』と『魔法の存在がばれているかもしれない』と言う2点のみだ。

 が、それだけの情報があれば千雨には充分だ。
 茶々丸のサポートも有っての事だが、PCを駆使しネットから必要な情報を吸い出していたのだ。

 「1週間後……そしてこの状況を顧みるに超殿の計画は完遂されたと言う事にござるか?」

 「間違い無いな。恐らくネギの時間渡航機に何らかの細工がして有ったんだ。」

 導き出されるのはつまりそう言うことだ。
 早い話、『戦わずして負けた』のだこの面子は。


 だが疑問もある。
 其れは稼津斗の所在だ。

 念話で話そうとしても一切繋がらない。
 携帯に掛けても圏外。

 何よりも和美と楓とリインは稼津斗の気を感じ取る事ができなかった。(稼津斗の従者の中で完全な気の察知が出来るのはこの3人のみ)

 だからこそオカシク思う……『如何言う事だ』と。


 「う〜む…念話も携帯もダメなら仮契約カードで連絡は取れないアルか?」

 停滞しそうな雰囲気をぶっ飛ばしたのは古菲。
 確かに仮契約カードを使っての念話は試していない。
 普段は使う事も無いから忘れていたと言うのも有るのだが…

 「確かに其れはやってみるべきだな。それじゃあ……………え?」

 古菲の提案を受け、仮契約カードを取り出した真名だが、その動きが止まった。

 取り出した仮契約カードを見たまま動かなくなってしまったのだ。
 しかもよく見ればその身体は小刻みではあるが確実に震え、遂には崩れるように座り込んでしまった。

 「ちょ、どうしたの真名!?」

 ただならぬ様子に和美が、全員が呼びかける。
 だが、それでも真名は震えたまま答えない。

 いつ何時でもクールで、クラスでも精神年齢が高い彼女のこんな姿は想像できない。
 今の真名に何時もの雰囲気など無い。
 その姿はまるで、怯える小さな子供そのものだ。

 「…そんな…嘘だろ…?稼津斗にぃ…」

 あまりにも弱々しい姿に不安が募る。
 一体なんだと言うのか?

 「しっかりしなよ真名!如何したの!?」

 問い掛ける裕奈に、真名は自身の仮契約カードを渡す。

 「此れがどうか………って、え?何これ…?」

 渡されたカードは何処かがおかしかった。


 カードには真名の姿が描かれている点は変らない。
 だが、其れだけだ。
 その他の事――ナンバー、称号、星辰性、徳性、アーティファクト…その全てが消えていた。


 「真名!此れは如何言う事や?」
 「…私のカードも同じ事に成ってます〜〜!」
 「若しかしてカヅトに何か有った…?」

 口々に問う。

 のどかは自分のカードを確認したが矢張り同じことに成っている。
 と成れば、他のメンバー…少なくとも稼津斗と仮契約を交わしたメンバーのカードは全て同じ事になっているのは想像に難くない。

 問う事こそしないが、アスナ達も千雨達も気になる様子だ。

 「答えろ真名!」

 答えない真名に業を煮やしたリインが、強引に引き起こし立たせて問う。
 尋常じゃない事は理解できても、『何が起こったか』までは分からない。
 と成れば何かを知ってる様子の真名に聞く以外に手が無いのだ。


 「…認めたくない…。信じたくない……だが、此れは間違いなく現実だ…」

 「一体何を言ってるでござるか?」

 全く分からない。
 だが『嫌な予感』だけはヒシヒシと感じる事ができる。



 「この仮契約カードの状態……間違いない…」


 覚悟を決めたように目を閉じる真名に不安が高まる。













 「稼津斗にぃが…………………死んだ……!」













 そして、発せられたの一言は確かに認めたくない、信じたくない事だった…
















  To Be Continued… 

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