小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 飛び交うビーム(脱げビーム)とマジックアイテムの光(人体影響なし)。
 ゲーム開始を告げる鐘の音が鳴り響くと同時に、6つの防衛地点では大規模な戦闘が行われていた。

 特に、奇襲を受けた麻帆良湖湖畔は並みの戦闘状態ではない。
 まるで本物の戦争さながらのド派手な戦いになり、あちこちから怒号が飛び交う。

 「ホントに、金掛かってるな〜〜!」
 「わはははは、こりゃスゲーや!モノホンの戦争みてー!」
 「優勝賞金は、俺達軍事研が頂くぜ!」
 「させるかバカ!!」

 だが、命の危険がないゲームである分、其れはこの状況を楽しむ声が多数。(脱げビームを喰らった女子の悲鳴はあるが…)

 「「「敵を撃て(ヤクレートゥル)!!」」」

 B級臭たっぷりのイベントは、開けて吃驚、本格SFアクション映画に負けない位のモノになっていた。










 ネギま Story Of XX 41時間目
 『Exceed The Limit』










 「す、凄いです!湖岸一般人大隊善戦しています!撃破数160超!」

 「流石はうちの生徒だな〜〜…」

 そして、其の大規模戦闘の様子は、この作戦司令管制室で随時監視されてる。
 同時に、現在の戦力、敵機の撃破数、味方の被害状況等の情報をリアルタイムで集計し医務室や現場スタッフに伝えて行く。
 此れだけの情報処理を適切かつ的確に行えるのも、学園の最上級設備と和美のアーティファクトが連動しているからこそだ。
 故に情報処理と言う、戦闘に於いて最も重要なファクターで超サイドに後れを取る事はないだろう。

 「し、しかし敵の数が多すぎます!湖岸防衛線を突破した敵・人型兵器12体!世界樹広場前の防衛拠点に到達します!」


 しかしながら前線で戦うのは素人の一般人も含むゲーム参加者。
 戦闘用に作られたロボット相手には物量では拮抗できても戦闘力には差が出てしまう。
 防衛線の穴を抜けた田中×12体が世界樹広場に突貫。

 その道の途中で、防衛軍の面々が攻撃を加えるも田中軍団は恐るべき運動性能で其れを回避し目的地へ向かう。

 此れだけならば敗北は必至。
 だが、世界樹広場には3−Aでも屈指の運動神経を誇るアキラとまき絵、そしてこういったお祭ごとには滅法強い鳴滝姉妹が控えている。

 寧ろ此処からが防衛戦の真髄といっても過言ではない。

 「来たよ〜〜!!」

 「凄いジャンプ力だ…」

 「反撃〜〜〜!!!」

 其れを示すように、空から襲い来る田中軍団を…

 「「「「敵を撃て(ヤクレートゥル)!!」」」」

 見事に迎撃。
 流石に全部撃破とは行かないが、それでも数は半分以下に減った。

 しかしながら残ったモノは当然、地に降り立ち先ずは障害を排除せんと攻撃を開始。


 ――キュィィィン…パァッ!!


 放たれる脱げビーム。
 だが、この世界樹防衛拠点の面子は只者ではない故にそんな攻撃は当たらない。
 華麗な動きで回避され、

 「敵を撃て(ヤクレートゥル)!!」

 逆に迎撃。
 中でも特に凄いのはアキラだ。

 アキラは其の控えめな性格のせいで3−Aの中ではあまり目立つ方ではないが運動神経はぴか一だ。
 魔法その他と出会う以前であっても、其の身体能力は凄まじく『瞬動』とも言える動きを自然と会得していた。
 更には全く無自覚ではあるが、運動の際に無意識に『気』を使う事も出来ていた。
 そんなアキラが稼津斗とエヴァのもとに本格的な修行をしたらどうなるか?

 答えは簡単だ、大凡一般人では敵いっこない身体能力を手に入れることになる。
 更には、極簡単ではあるが魔法と気の手解きを受けている以上、支給された魔法具の尤も効果的な使い方だって分かる。
 現に、

 「敵を撃て(ヤクレートゥル)!!」

 手にした杖の一振りで、残った田中5体を葬りさる。

 鎧袖一触とは決して誇張表現ではない。
 この防衛拠点におけるエースは間違いなくアキラであった。








 ――――――








 所変ってエヴァンジェリン邸。

 「オイ、何か騒がしいが始まっちまったんじゃねぇか?」

 「だろうな。なに、此れだけ大々的に動いたのだ、超の奴が奇襲に打って出るくらいは予想済みだ。」

 「逆を言うならば、奇襲をかけなければ成らないほどに焦ってるという事ですか。」

 「如何だろうな?まぁ、投げられた賽がどんな目だろうと私達に負け等有り得ん。」

 外の喧騒を聞きながら、意外と余裕があるようだ。

 相変わらず千雨と茶々丸はデータ戦を展開&状況整理をし、夕映はまほネットで魔法的な情報の収集。
 で、エヴァはネギを膝枕――しながら、魔力を送り続け疲労の回復を促進している。(魔力の方は危険そうな飲み物で回復している…)

 「う…く…エヴァンジェリンさん…?」

 「目が覚めたかネギ?…まだ完全ではないだろうギリギリまで休め。」

 外の喧騒につられたのか、ネギが目を覚ますも、其れを優しく撫でもう少し休むようにエヴァは言う。
 其の瞳に慈しむ様な光があるのは見間違いではないだろう。

 「で、でも…」

 「いいから休め。大丈夫だ、お前の提案した作戦は見事に嵌った。超の奴、焦って奇襲策に出たぞ?
  だが奇襲は所詮奇襲、最初の一波さえしのげば後は如何と言うことは無い。現に防衛拠点は何処も落ちてはいないのだからな。」

 其れを聞いて、ネギは安堵の表情を浮かべ力を抜く。
 膝枕をされていることには…多分気付いてない。

 「なぁ、ネギよ。お前は超と戦うと言ったが、稼津斗殺害を企てているバカ共の切り札は朝倉和美とリインフォースが破壊し、銃弾も回収してある。
  此れならば連中が稼津斗を殺す事などできまいよ。其れでもお前は超と戦うのか?」

 其の通りだ。
 稼津斗の死の直接の原因は、和美とリインによって既に取り除かれている。

 そうである以上ネギが超と戦う必然性は最早無いのだ。
 だが、ネギはそれに首を軽く振って『そうではない』と伝える。

 「確かに僕が戦う必要は無いかもしれません。でも、そのカヅトを殺した人達が『隠し球』を持っていないとも限らないですし。
  其れにそうだった場合、高度4000mもの上空での戦いは、格好の的だと思うんです。
  カヅトと超さんの2人を死なせないためには、やっぱり僕が戦うのが一番だと、そう思うんです…駄目ですか?」

 「いや…くくく、良く考えているなネギ。そうだ、相手の一手を潰したからといって油断は出来ん。
  常に敵は二重三重に策を巡らせていると考えるべきだ。行動は慎重に、だが戦いは大胆にだ。分かってるじゃないか。」

 ニッコリと微笑む。
 それだけ見たら、大凡彼女が600万$の賞金首だとは誰も思わないだろう。

 「さぁ、眠れ。ラスボスとの戦いに向けてな…」

 「はい…」

 撫でられたのが気持ちよかったのか、ネギは目を閉じ再び眠る。
 此れならば最高のコンディションで戦いに望む事が出来るだろう。

 「…オイ茶々丸、コーヒーくれねぇか?出来れば濃い目のブラックで。まさかリアルに砂吐く状況に出くわすとは思わなかったぜ…」
 「私もお願いするです…。何ですかこの桃色空間。」

 其れとは別に、何とも『ラブ臭』漂うエヴァとネギの状況に砂を吐きかけてる人物が2名。

 「あぁ、マスターったらあんなに幸せそうに…。此れは録画しておかなければなりません…!」

 回路とAIが微妙にショートしてバグってるガイノイドが1体であった。








 ――――――








 再び場所は世界樹前防衛拠点。

 倒しても倒しても湧いてくるロボット軍団に対し、多少の被害は出しつつも防衛隊は見事にこの場を護っていた。
 中でも特筆すべきはアキラ、次いでまき絵だ。

 抜群の運動神経を誇る2人の活躍が、この場の護りの要と言っても良いだろう。
 現に、ゲームの鉄器撃破数ランキングでは、アキラとまき絵で1位と2位。
 其の状況下で、アキラはまき絵に倍ポイントをつけているのだから凄まじい。

 とは言っても、矢張り次々と敵機が補充されるというのはきつい。

 「だんだんキツクなって来たぜ…!」
 「あの多脚戦車みたいなの、バズーカでも8発当てないと倒せないぞ!」

 加えて、補充されるロボが大型の物が多くなり、ジリジリと押され始めていた。

 「きりがないよこれ〜〜〜!」
 「押されてるね…」

 徐々に焦りが生まれる。
 世界樹広場を占領されたらその場で負けだ。
 今の状況が、リアルに其れを伝え、否が応でも『負け』を想像してしまう。

 だが、こう言ったイベントには盛り上げるための一手が用意されているものだ。


 「んじゃ、行こうか。」
 「あぁ、出番だな…」

 防衛拠点の傍の建物に降り立つ2つの人影。
 其れが飛翔し、

 「下がれ佐々木。」

 「へ?」


 ――ドドドドドドドドドドドドド!!


 「のわっ!!」

 無数の紅い短剣が降り注ぎ、ロボ軍団を一蹴。
 更に、

 「スクリーン…ディバイド!!」

 降り立ったうちの1人が、右腕と一体になった剣を一振りし残りのロボを一掃!
 哀れロボ軍団はボロボロのスクラップ、くず鉄回収屋さんに引き渡されそうな状態に。

 その、スクラップになった大型ロボの上に立つのは裕奈とリインフォース。
 裕奈は黒い軍服風の衣装と白いマントを纏い、リインフォースの方は蒼を基調としたレザースーツと言った出で立ち。

 「おまたせまき絵!アキラもお疲れ!」

 「ゆーなとリインフォースさん!?何やってるの?」

 当然、突然の登場にまき絵は驚く。
 いや、事情を知っているアキラも思った以上の派手な登場に少々驚いているようだ。

 「何って…私達『ヒーローユニット』ってのやってるから。」

 「へ?ユニット?…ゆーな、リインフォースさんとアイドルにでもなるの?あ、でも案外似合うかも…」

 天然炸裂。
 ゲームの熱との相乗効果で良い感じに脳味噌がオーバーヒートしているようだ。

 「其のユニットじゃな〜い!パンフちゃんと見てないの!?蒼髪のアホの子かアンタは!」

 「パンフって…あ、此れですか?」
 「ゲーム開始後、暫くして強力なお助けキャラ(ヒーローユニット)が現れます、彼等と協力して…成程〜!」

 イベントのパンフレットにはちゃんと記載されていた。
 と、言うかまき絵はパンフの配布をやっていたのだから知っていて然るべきだろうが…

 「え〜〜?ゆーな達だけずるいよ〜。賞金取り放題…」

 「安心しろ。私達は運営側が用意した、ゲームを盛り上げるための演出…言うなればNPC扱いでランキングには関与しない。」
 「そう言うことだから安心して…っと、また来たよ大群!!」

 自分達の立場を簡潔に説明してるところで、再度来襲。
 一体どれだけの戦力を用意していたのか…考えるのも面倒臭くなりそうだ。

 「あ〜もう説明中に〜〜!」
 ――稼津君、本気でやって良い?

 ――爺さんも多少の無茶は目を瞑るそうだ。今なら『ゲームの演出』で何とかなるから…まぁ、思いっきりやれ。

 ――OK!
 「リイン、稼津君が『本気』でやって良いって!」

 「本気でか。なら遠慮は…」

 「いらないっしょ!!」


 ――ドォォォォォォン!!


 念話で稼津斗に確認をし、『本気』でやって良いと言われ2人はオリハルコンの力を解放しXXに変身。
 其の力の余波だけで、数対のロボを吹き飛ばす。

 「「「変身した〜〜〜〜!?」」」

 当然、まき絵も鳴滝姉妹も驚く。

 「え?え?どうなってるの?」

 「此れもゲームの演出〜。格好良いでしょ?ま、そんな訳で私等は他行くから此処ヨロシク!行こうリイン!」

 「あぁ!」

 一足飛びで下位層に降りて行く2人を、『ポカ〜ン』と見ているまき絵達。
 3−Aの面々でも今のは衝撃的な光景だったようだ。

 『お待たせしました!ヒーローユニットの登場です!
  強大な戦闘力を持つヒーローユニットと協力して高得点を目指し、世界樹を防衛して下さい!!!』

 此処で司会の和美から、ヒーローユニット登場のお知らせ。
 見れば其処彼処で、魔法先生及び魔法生徒が戦闘に参加。

 圧倒的な力でロボ軍団を制圧している。

 当然…

 「虚空…裂風穿!!!」


 ――ダガァァァァァン!!


 「スゲェ!!」
 「チャンピオンだ!!大会のチャンピオンだ!!」
 「かめ○め波キタ〜〜〜\(゜∀゜)/」

 稼津斗も手加減なしで戦っている。
 某龍玉的漫画の主人公を思わせる山吹色の胴衣に身を包み、ここぞとばかりに気功波でロボ軍団を吹き飛ばす。

 「デァァァァァァァ!」


 ――ドォォォン!!


 更にXXに変身し、攻撃は激しさと派手さを増して行く。
 当然、このド派手な演出に参加者は大興奮。

 「リアル超サイ○人だ〜〜!!」
 「凄い演出だぜ〜〜!!」
 「こりゃ負けてらんねぇ!!」

 其処から火が付き、押され気味だった防衛軍が少しずつ盛り返して行く。

 「なるほど――ゲームの演出って事なら私達も存分に力が使えますもんね!よく考えられた作戦です!あと稼津斗先生達凄いです…」

 「稼津斗先生達に関しては最早ノーコメント…。ん、ん感心するのは後で、私達も戦闘に参加しますよ!」

 「ハ、ハイ!!」

 高音と愛衣のコンビも戦闘に参加。
 ヒーローユニットの登場は、間違いなく戦況をひっくり返していた。


 ――俺達の登場で参加者の士気が上がったか。だが、まだ真名達が地下で見たって言う巨大兵鬼は出てきてない。
    学園結界の影響下ではアレは使えない筈だから、結界を無効化するために学園警備システムにハッキングと言うところか…


 この状況下でも稼津斗は冷静に状況を分析し、戦局を見極める。
 確かに、超はまだ切り札の1枚である巨大兵鬼を切ってはいない。
 ならば、更に強力な増援が有ると考えておくべきだろう。


 ――真名、楓、裕奈、リインフォース、恐らくこれから学園結界が落ちて巨大兵鬼が出てくる。
    俺もある程度は対処するが、基本的にはお前達に任せていいか?


 ――大丈夫さ稼津斗にぃ。今の私達に隙は無いよ。

 ――左様。拙者達にお任せにござる。

 ――其れはいいが、お前はどうするんだ?

 ――俺を殺そうとしてる連中を誘き出す。そして直々に叩く。

 ――そりゃ良いね♪やっちゃえ稼津君!

 ――あぁ。お前達も派手に暴れてくれ!


 念話で戦闘に参加している真名達に簡単に用件を伝え、ロボ軍団をまた1体、また1体と粉砕して行く。

 「おぉぉぉぉぉ!無闇神楽ぁ!!」

 自身の最強技をも繰り出し、身体の動くままに暴れる。
 まぁ、一般人には絶対に攻撃が飛び火しないように注意はしているのだが…

 「如何した火星ロボ軍団?反撃してみろ!!羅刹…葬爪ぉ!!」

 そして派手に暴れながらも、周囲への警戒は怠らない。


 ――流石に此れだけの人だかりの中では仕掛けてこないか…巨大兵鬼が出て来たら1、2体倒して適当に人気に無い所に移動するか…


 自分の殺害を企てている輩を誘き出す算段をしながら戦闘継続。
 もし此れが一般参加者だったら、確実にランキング1位だっただろう。



 ヒーローユニットの登場で攻勢に転じた防衛隊の情報は作戦司令管制室でも其の様子が確認されている。

 「げ、撃破数1000体を突破!作戦順調です!」

 「逆に言えば、この作戦が無ければ僕達は手の出しようが無かった…ゾッとするね。」
 ――本当見事な作戦だ…学園長は明言されなかったがもしやネギ君が?だとしたら流石だ。
    其れに稼津斗君、裕奈から聞いてはいたけどこれ程とは…神多羅木さん達が危険視するのも少し分かるかな…


 管制室の実質上のリーダーである眼鏡の大学教授――明石教授は状況を冷静に見極め、其の中でネギと稼津斗を評価していた。

 このまま行けば、勢いでロボ軍団を制圧し、防衛を完遂するのは難しく無いだろう。
 だが、世の中そんなに甘くは無い。


 ――ビーッ!ビーッ!!


 突如警戒音が鳴り響き、光学モニターに『Emergency』が表示される。

 「如何した!?」

 「こっ…此れは!!学園の警備システムメインコンピューターが何者かのハッキングを受けています!」

 「何だって!?」

 そう、稼津斗が予想した警備システムへのハッキングが開始されたのだ。
 いや、『開始された』と言うのは正確ではないだろう。

 「メインに進入されるまで気付かなかったのか!?幾重にも張り巡らされた多層防御プログラムをどうやって!?」

 恐らくは時限式。
 この日の為に少しずつ、少しずつ、学園側にばれないようにシステムに干渉していたのだろう。
 そしてこの学祭最終日のこの時間に全てのハッキングシステムが作動するように組み込んでいたのだ。

 「防壁突破されました!」
 「学園結界出力20%ダウン!」
 「サブシステム停止!…復旧不能!」

 其れが瞬く間に学園のシステムを突破し、結界を無効化して行く。

 「防衛システム中枢へのアクセスコード下8桁まで掌握されました!このスピード…人間技じゃ有りません!!」

 混戦する戦いの中、先に切り札を切ったのは超。
 そして其れは充分すぎる効果を発揮しているようだ。

 「修正プログラム…駄目です間に合いません!最終アクセスコード掌握されました!学園結界…落ちます!!」



 18:15……学園結界――停止












  To Be Continued… 

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魔法先生ネギま!(37) (講談社コミックス)
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