小説『ネギま Story Of XX』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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  場所は『レーベンスシュルト城』。
 稼津斗組、ネギ組、修行組には最早切っても切れない絶好の鍛錬場。

 その城の上空を高速で飛び交う2つの影。

 1つは杖に跨ったネギ。
 もう一つは気を使って飛行する稼津斗。

 本日の模擬戦はネギが稼津斗に挑んでいる模様。

 「羅刹葬爪!」

 「くっ!!」

 無数の気弾を何とか避けるが物量が凄まじく全回避は不可能。
 其れを示すように、一発がかすりネギは吹き飛ばされる。

 「魔法の射手・光の17矢!」

 だがネギもただではやられず『魔法の矢』で反撃。
 尤も其れは稼津斗には通じるものではなく、簡単に回避され接近を許す。

 が、避けられる事くらいはネギも織り込み済み。
 寧ろ『避けさせて接近させる』為に放った一撃なのだ今の魔法の矢は。

 「!!」
 ――虚空瞬動か…!


 稼津斗の一撃をかわし、ネギは背後をとる。

 「雷華崩拳!」

 「波導掌!」

 ネギの拳打と稼津斗の掌打がかち合い、その衝撃で城の周囲に有る滝や湖の水が巻き上げられミストシャワーを降らす。
 この攻防を『模擬戦』だと言って信じるものは多分殆ど居ないだろう。
 其れ位のハイレベルな戦いだった。











 ネギま Story Of XX 56時間目
 『それが諸々の理由也』










 「な…な…!」

 このハイレベルな戦いに絶句したのは、言うまでも無くネギの幼馴染であるアーニャ。
 修行は怠っていないし、実力が大きく伸びている事はこの間の海で自分の一撃を撃ち砕いた事で分っていたつもりだった。

 だが、今の戦闘での一撃はこの前の一発を遥かに上回っている。
 海での一撃も強烈だったが、アレはそれでも手加減してたのだと言う事が嫌でも分ってしまった。


 「は〜〜…やっぱりカヅトには敵わないや。」

 「そう簡単には追いつかせはしないさ。だが、虚空瞬動も略完全に使いこなしてるじゃないか。
  達人クラスでも、アレを使いこなすには相当な錬度が必要なんだが……此れも驕らずに鍛錬を続けた結果か。」

 模擬戦の結果だけを言うなら稼津斗の勝ちだが、間違いなくネギは麻帆良武道会の時よりも強くなっている。
 雷華崩拳の威力も上がってるし、虚空瞬動は略完璧状態。

 エヴァの『実戦形式の戦闘訓練』や『極限状態でのサバイバル』は間違いなく効果を上げているようだ。


 「ちょっとネギ!何でアンタがこんなにスゴイ魔法戦闘が出来んのよ!こんなの上級教本でも見た事ないわよ!?」

 が、アーニャには今の模擬戦が信じられない。
 ネギの魔法戦闘技術が歳の割りに高いのは知っていた。
 だが、少なくともウェールズに居た頃は此処まででは無かったはずなのだ。

 それが今目の前で行われた模擬戦を見る限り、まるで『最高位魔法使い』の其れのようだった。
 同時に相手である稼津斗の実力だってアーニャにとっては目が飛び出るほどのものであったのは間違いに無い。

 「何でって…師匠が最高だからだよ?それから一緒に修行してる人達も強いから。」

 「だからって…!でもそれ以上に、今のネギを倒しちゃうアンタは何者なのよジャパニーズ・ヤクザのお兄さん!」

 「…やっぱりヤクザに見えるのか?」

 「仕方無いんじゃ無いかな?」

 其れがそのまま今度は稼津斗に矛先が。
 『ジャパニーズ・ヤクザ』と言った理由が分るだけに複雑な気分。
 真名のフォローは当然だろう。

 「アレ?手紙に書かなかったっけ、カヅトは僕の友達だよ?」

 「そー言う意味じゃないわよ!!この強さは何なのか聞いてるの!!」

 「強さって…今の模擬戦で僕は全力出したけどカヅトは全然本気じゃないよ?多分…出てて2割5分くらい。」

 「嘘でしょ!?」

 ネギの説明で更に吃驚。
 今の戦闘でまるで本気では無いとは到底信じられないだろう。

 「本当だよ。そもそも変身してないし。」

 「はぁ!?更に変身までするの!?」

 「…この間の海で変身してたよ?」

 「マクダウェルに半殺しにされかけたショックで覚えて無いんじゃ無いか?」

 「あ…うん、そうかも。完全に放心状態だったから。」

 海で稼津斗がXXに変身したのは覚えていない様子。
 殆どマジギレ状態のエヴァが居たのだから、此れは仕方ないだろう。

 「見てみたいか?」

 「え?そ、そりゃ…まぁ…」

 で、その状態を見てみたいと思うのはある意味で当然。
 覚えていないのならば尚更だ。

 アーニャの答えに軽く笑うと、稼津斗は気を高めて行く。

 「んな!?」

 その力の上昇に、又も驚く。
 稼津斗の周囲に稲妻が発生し、大気が震える様を見れば仕方が無いだろうが。

 「覇ぁ!!」

 そして気合一発、爆音と共に変身完了。
 銀髪蒼眼、稲妻を纏ったXXの御登場だ。

 「ななななな…こんな…嘘でしょ…」

 「此れが俺の全開状態『XX』だ。この状態だと戦闘能力は大体50倍って所かな?」

 「50倍!?」

 アーニャはこの日だけでどれだけ驚いたのか…。
 若しかしたら一生分驚いてしまったのかもしれない。


 だが、此れだけでもまだ足りないだろう。
 なんせ、修行はそこかしこで行われている訳で…

 「集え刃、ブルーティガードルヒ!」

 「おっと、流石だねイクサ!沈めろ…魔天葬送華!」
 「私を忘れちゃ困るぜ!切り裂け、スクリーンディバイド!」



 「ほうほう…此れは中々。凄まじい成長度にござるな?」

 「はっ!置いてけぼり喰ってたまるかい!!」



 「む…やりますねアスナさん!」

 「此れを防いだ刹那もね。」



 「やから治療の時は〜〜〜」

 「せやな〜。けど火傷の場合には〜…」



 「って事はだ、お前のアーティファクトと私のアーティファクトを連動できれば、敵さんの考えはこっちに筒抜けなんだな?」

 「そうなりますね。連動するには和美さんのアーティファクトの仲介が必要になりますけど。」


 リインフォースvs和美&裕奈、楓vs小太郎、アスナvs刹那の模擬戦。
 亜子と木乃香による治療魔法談義。
 千雨とのどかのアーティファクトを使った戦術談義等等、魔法学校よりも質の高い事が行われているのだ。

 こうなるとアーニャの目は点になるしかない。
 殆どが一般人と思って此処に来たのに、実際には『超人』の巣窟に他ならないのだ。

 「何で皆こんなにスゴイのよ!?超人集団じゃない!!一般人じゃなかったの?」

 「少なくとも此処に居る面子は全員が相応の力を持った関係者だ。
  そのうち、裕奈、和美、亜子、真名、楓、のどか、リインフォースとクスハは俺と契約を交わしている。」

 「えぇ!?…ってちょっと待って若しかしてネギも?」

 驚きは止まらない。
 此処に居る面子の何人かが稼津斗の従者であるのだ。
 ならばネギにも契約者が居ると思うのは至極当然。
 即時問いただす。

 「うん。アスナさん、刹那さん、木乃香さん、夕映さん、千雨さん、茶々丸さん、いいんちょさん古老師…そしてエヴァンジェリンさん。」

 「ってことは…!!ネギ、アンタ8人もの女の人とキスした訳!?」

 今度は答えにぶっ飛んだ。
 あながちその答えに至ったのは間違いではない。
 昨今、最も簡単かつポピュラーな仮契約方法が所謂『接吻』なのだから。

 勿論ネギはその方法での仮契約はあやか1人とだけで、稼津斗はクスハ1人とだけだ。
 それもネギの場合のアレは完全な『事故』の結果なのだからノーカンだろう。
 尤も其れは言わないが…

 「この女の敵!女の敵よアンタ等2人とも!!
  大体ネギ、そのエヴァンジェリンとか言う人ってこの前の海で…如何言う関係よ!」

 ネギの答えを聞かずに大暴走だ。
 勘違いから此処まで暴走できるのは…ある意味すごい。

 「その辺にしておけアンナ・ココロウァ。ネギは只の1人ともその方法での仮契約など行ってはおらんよ。無論稼津斗もな。」

 その暴走にストップを掛けたのはエヴァだ。
 余りの暴走ぶりが見ていられなかったのだろう。

 「む…貴女は…」

 「エヴァンジェリン。ネギの師にして従者だよ。尤もお前には『闇の福音』とでも言えば分りやすいか?」

 アーニャの視線を軽く受け流し、逆にカウンターをかます。
 『闇の福音』の名は魔法関係者――こと、世間の言う『立派な魔法使い』を目指すものや正義の魔法使いにとっては忌み名。
 絶対恐怖の対象に他ならない。

 「闇の福音て…嘘でしょ…!」

 「嘘ではない。長らくナギの馬鹿が掛けた呪いに苦しめられて居たが、稼津斗が解いてくれてなぁ?
  今の私は正真正銘最強の『悪の魔法使い』さ。尤も全力出した稼津斗や変身したリインフォースには勝てんが。」

 更には肯定され、少しばかり解放された魔力に当てられ後ずさる。
 僅かな解放にも拘らず感じた圧倒的な威圧感に『本物』であると嫌でも認めさせられた格好だ。

 だが、そうなると当然アーニャは慌てる。
 世間的に見て、様々な恐怖の異名を持つ存在がネギの師であり従者など到底認められないし認めたくなかった。

 「冗談じゃないわよ…!な、何でネギがアンタの…伝説級の大悪党n「其れは違うぞアンナ。」へ?」

 即座に反論し、よく聞くであろう事を口にしようとしたアーニャの言葉を遮ったのは稼津斗。
 通り一遍等の考えを言わせるのはどうかと思ったのだろう。

 「マクダウェルは悪党ではないさ。もし本当に噂どおりの大悪党だったら、ネギはとっくの昔に血を吸い尽くされてミイラになっている。
  それに、まぁ人を殺したと言う事実はあるだろうが其れはあくまで自衛の為、『殺さねば殺される』から。
  もっと言うならそうせねばならない状況に追い込んだのは他でもない『正義の魔法使い』だ。
  恐らくは助けを求めたであろう彼女を『吸血鬼の真祖』と言う事実だけで一方的に『悪』と決め付けて…な。」

 「そ、其れは確かに。って、ネギの事は兎も角その後は何!?其の話しマジなの!?」

 思ってもいなかった事だ。
 ネギの事は言われてみれば確かにそうだ。
 エヴァが真実『大悪党』であるのならば、修行のふりをしてネギから血を吸い尽くしてミイラにするなど造作も無いだろう。

 だがそれ以上に寝耳に水だったのは後半の話。
 当然ながらアーニャはそんな話など聞いた事はない。
 『闇の福音』に関する話など、精々『極悪非道の賞金首』であると言う事と常識外の強さを持った大魔法使いであると言う事位だ。

 「ふぅ…何処で調べたのだ貴様は?まぁ間違っては居ないが、余り暴露してくれるな。流石に気恥ずかしい。」

 「其れは失敬。配慮が足りなかったな。」

 「まぁ隠すほどの事では無いがな。全て真実だよアンナ・ココロウァ。
  そもそも、私は最初から吸血鬼であった訳ではない、貴様と同じくらいの時に『吸血鬼にさせられた』のだ。」

 「!!」

 更なる衝撃。
 吸血鬼は最初から吸血鬼と思っていたのだからある意味当然だ。

 「無論そんな事をしてくれた馬鹿はこの力を持ってして滅してやったが…流石に怖くてな。
  教会に助けを求めたが、連中め、助けるどころか私を攻撃してきてな、『吸血鬼は殺せ』と。
  話など聞くか、私の声は届く事はなかった。当然だな『吸血鬼=悪』の構図が頭の中にあったのだから。
  其処からは地獄だ。来る日も来る日も追っ手から逃げる日々。絶対的な力を手にするまでは恐怖のどん底だったよ。
  だが、力を手にしたとて追っ手は減らず…己が平穏の為に随分と追っ手を手に掛けた。
  けどなぁ此れだけは天地神明に誓って言うが、私が殺意を持って殺したのは私を吸血鬼に変えた阿呆のみだ。
  殺意と敵意を持って攻めてきた奴は滅したが、力なき女子供を進んで手に掛けた事だけはないと言っておくぞ。
  信じるかどうかは…貴様次第だがな。」

 あまりの事にアーニャは押し黙る。
 もしも今の事が本当だとするならばトンでもない事だ。
 正義の魔法使いの方がずっと醜悪な悪ではないか…そう思ったのだろう。


 更にネギが続ける。

 「アーニャ…僕は見たよ、似たような光景をこの目で。」

 「ネギ?」

 「学園祭の時にある事件が有って、僕とエヴァンジェリンさんは一緒に情報収集してた。
  其の時に正義の魔法使いである先生や生徒さんに見つかったんだけど…問答無用でエヴァンジェリンさんを『殺せ』って言ったよ。
  僕達の話なんて最初から聞く気を持たないで一方的に!」

 そう、あの『異常な未来』での出来事、ネギが『正義の魔法使い』との決別を決めたあの時のことだ。

 「お題目的に掲げられた正義に従うのなんて僕は嫌だ。僕は僕の正義と信念を貫く!」

 もう、何も言えなかった。
 ネギの瞳には強い意志があるし、過去を語ったエヴァの瞳にも嘘はなかった。
 そもそも、稼津斗の言葉を嘘と断する事ができなかった。

 「一般的には正義の魔法使いが言う事が『真実』として伝えられているんだろうが…其処から少しだけ視線を外して物を見る事も必要だ。
  もっと言うなら人の言う事を鵜呑みにして信じるんじゃなく、己の目で見た事と併せて判断する事が大切だぞ?」

 締めに稼津斗の一言。
 なんとも重い。

 今の話を聞いた後では余計にだ。


 「ふぅ…分ったわよ。」

 何かに納得したような顔で溜息一つ。
 如何やら自分の中で答えが出たのだろう。(この短時間で大したものだ)

 「確かにカヅトの言う通りね。自分で見なきゃホントのとこは分んないわ。
  いいわよ、この目で見届けてあげるわネギ、アンタの正義と信念とやらを。
  それから……え〜っと闇の福音…もといエヴァンジェリンの事もね。」

 「アーニャ…」

 「村の事や皆の事を忘れた訳でも無さそうだし…修行頑張ってるのも分ったから、帰ってこなかった事はチャラにしてあげる。」

 「うん、ありがとう。」

 取り敢えずは終息だ。
 思いがけない事だったが、アーニャにとってもこれから先の成長にいい意味での影響はあっただろう。



 「此れにて一件落着か。」

 「その様だな。」

 稼津斗とエヴァも其れを見ながら一息。

 「しかしあの小娘……くくく、ナギの約束破りや育児放棄の事を知ったら今とは別の意味で暴走しそうだなぁ?」

 「だろうな……まぁ、言う必要も無いだろう?言ったら言ったで別に害も無いとは思うが。」

 「無いさ。精々ナギの事を殴る人間が1人増えるだけの事だ。」

 「左様でございますか。」

 尤も、まだ明かしていない事もあるので其れを明かした際にはまた一悶着ありそうではあるのだが…



 「そうと決まれば私も修行するわよ!誰でも良いわ、つきあって〜!」

 「なら、私と簡単な模擬戦でもするか?」

 アーニャもやる気を出して修行に参加。
 リインフォースが其の相手に名乗りをあげ…

 「り、リイン強ぇぇ…」
 「XXに変身しての2人がかりでも勝てないって…流石…」

 其の後ろでは今まで模擬戦をやっていた裕奈と和美がグロッキー。
 XXで挑んだが、リインフォースもXXでは2対1でも勝てなかったようだ。

 「貴女は…お願いするわ!」

 「では始めるか…」

 この分ならばアーニャも魔法国にまで来る事になるだろう。



 翌日より修行は更に激化。
 戦闘訓練も、魔法技術訓練も今までよりも濃く強く!
 徹底的に鍛えていった。(アーニャに言わせると魔法国の軍隊でも多分良くて引き分けとの事)



 そんな修行の日々が続き、時は8月12日を迎えるのだった。










  To Be Continued… 


 

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